蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
2話
「……ねぇ相棒。今暇?」
【アァ?オレに暇じゃない時間なんてねェよ】
「ふふっ、確かにね〜」
こんにちは。今日は良い天気だね……窓が無いから空なんて見えないけど。
私の名前は陽炎睨美。本名がちゃんとあるけどどうでもいい。『先生』がつけてくれたからね。えっと、14歳らしいよ?
【何で疑問型なんだよ】
「うっさいよ相棒」
今の声?うーんとね……なんていえばいいんだろうね〜。じゃあ相棒自己紹介してあげて。
【はァ……?誰にだよ。まあいいか……コイツの奇行は今に始まったことじゃねェな。
名前は無い。コイツの『個性』として宿ってる『蛇』だ。このガキには相棒って呼ばれてる】
愛想がない挨拶でごめんね。いつもこんなんだからさ、慣れてほしい。
え?『個性』ってなにかだって?まあ一言で言えば特殊能力ってやつ。この世界は殆どの人が自分だけの『個性』っていう能力を持ってるんだって。かくいう私も持ってるんだ。まあ……ちょっと色々あって変な個性になっちゃったけどもう慣れたよ。
【おい、変言うな。この力はな、『女王』であるお前の元に自ら集まって来た『蛇』達の力だっつってんだろ?】
ごめんね、ウチの相棒ってなんかよく分からないことをいつも言ってるんだ。相棒以外はみんな『先生』が私のためにくれたって言うのに……
【ッ……それは、そうだが……アァもういい……説明すんのも面倒くせェ……】
こんな感じなんだよね。あ、『先生』って言うのはね?私が小さい頃から育ててくれた人で私のことを娘みたいに思ってくれるんだ。『オール・フォー・ワン』っていう、ほかの個性を奪って使ったり、他の人に与えたりできるんだって。流石『先生』、凄まじい個性だよね。
コンコン
「どうぞー」
「失礼しますよ睨美。授業の時間です」
「あーそういえばそうだったねー、黒霧さん、今日はなにからやるの?」
「私達に最も縁の無い道徳ですよ」
「えー……そんな薄っぺらい内容の文字の羅列を聞くだけの授業になんの意味があるの?」
「さぁ?私にも理解できませんが、先生のご命令なので。ほら、始めますよ」
「……はーい」
(ごめん相棒、後でね)
【おうよ】
それから1時間くらいかったるい授業だった。『先生』曰く、表社会で生きる上での最低限の教養、らしい。『先生』が言うんだったらやるけどさー……正直どうでもいいんだよね……
これだったら個性の訓練をした方がいいよ。
「ヒーローとヴィランが敵対関係にあるのは既にわかっていますね?」
「当たり前。不正に個性を使う犯罪者『ヴィラン』を法に則って実力行使でぶちのめして捕まえる『ヒーロー』。法律に則っているかそうで無いかって言うだけで、別に両方暴力を振るってることには変わりないのにさ。嫌な制度だよ。正当防衛での個性使用って過剰防衛だっけ?」
「さあ、法律なんていうものも私には縁が無いですからね。そういうのはあの方に聞いてください。では私の授業はここまでにしましょう。お疲れ様です」
「黒霧さんもお疲れ様〜。まあ、私は『目を覚ます』があるから疲れるもなにも無いんだけどね」
「便利な個性ですね。まあ私も休息が必要かと言われたら微妙なところですが……おっと、死柄木弔の元へ行かなければ。失礼します。次の授業は、リモートでドクターからです」
「はーい」
そう言って黒霧さんは出て行った。黒霧さんを見送った後、私は勉強机から自分のベッドにどかっと倒れ込んで天井を見ていた。
「『目を凝らす』」
私が持つ11の個性のうち一つを使う。何故だか分からないけど、私が個性を使っている間は瞳が黒色から血みたいな赤色に変わるらしい。個性を使ってるってバレるけど、11あるうちのどれかを正確に当てれるやつなんていないからほっといてるよ。
『目を凝らす』個性はとてもシンプル。俗に言う千里眼だ。みたいと思ったものを瞳に映してくれる。今見てるのは普通の街並み、『先生』が、偶には俗世に触れなさい、って言ってたからこうやって偶に目だけで散歩してる。……ん?面白そうなことやってるね。
生憎、この個性は音を聞くことは出来ないから映像だけなんだけど……まあ音無の映画を見てるみたい。実況でもしてみようかな。
夕暮れの街並みで、異質な光景が映ってる。ヘドロみたいなスライム?が目つきの悪い金髪君を捕まえて何かを叫んでいる。恐らく、野良のヴィランが人質をとって何かをしてるんだろう。野次馬だったりプロヒーローだったりがわちゃわちゃしてて面白い。人質がいるもんだからヒーロー達もうかつに手が出せないし、あの金髪君は死んだかな。これが今の社会だから仕方ない、運がなかったみたいだね。もう見なくていいかな。人間の死体なんてどうでもいい。ここに住んでれば飽きるくらい見るし……解除。
【オレが言うのもなんだけどよ……お前擦れてんな】
「相棒にだけは言われたくないね」
寝っ転がってる私の頭の隣にいつのまにか出て来てた黒い蛇、相棒はこっちを見ながら呟いた。何でこんなのがいるかって言うと簡単。私の個性は『メデューサ』、その個性の一部で髪の毛が蛇になったりする。相棒は偶にその蛇を1匹乗っ取って勝手に出てくる。ずっと私の中にいて飽きるんだってさ。
「ねえ相棒……私、ヒーローになれるかな?」
【知るかよォ。お前の努力次第だろ?ちなみにオレは今まで生きてきて努力してない時は無かったぜ?】
「今まで……?まるで私の中にいる前から生きてるみたいな言い方するね」
【事実その通りだからなァ……長くなるけど聞くかァ?】
「3行で」
【3行で 伝えられると 思ったかァ?】
「おー俳句だーセンスあるじゃん。季語ないけど」
思ってたよりジョークができる蛇で驚いちゃったよ。
【飽きるくらいには人間社会に居たからなァ。最も、個性なんていう馬鹿げた力なんてなかったが……】
「それって……超常黎明期より前ってこと?」
【違う……が、説明しても信じねぇだろ?オレの話を全部信じる気になったら話してやるよ】
どうやらウチの相棒は強情らしい。まあ『先生』並みに世話になってるから頭が上がらないのも事実だけど。
【おら、暇なんだったら『目が覚める蛇』の訓練でもしとけ。今の文明には最強だ】
「あいあい……ッ」
『目が覚める』個性を発動すると、睡眠の必要ないこの体が崩れ落ち、私の意識は電子の世界へと飛ぶ。この個性のおかげで私の精神は不老不死となった。精神だけだけどね。だから電子の世界でもネットさえ繋がっていればデリートされようが端末を破壊されようが関係ない。いくらでも復活できる。私はこの個性でネットサーフィンをしたりヒーローの情報を集めたりしている。
『先生』曰く現代文明最強クラスの個性らしい。だったら先生が使うべきでは……と思ったが『先生』はヒーローとの戦闘の末、口以外の顔が無くなってしまったらしい。私の個性は全て『目』を介さないといけないから、捨てるには惜しい個性を持て余していたところ、私を見つけたらしい。
『あっはははは!!!!やっぱこの個性使ったらテンションあがっちゃうね!!なにもしてないのにすっごく楽しいッ!!』
【……そういや、貴音の奴もアホみてェなテンションだったな。いや、アイツは元々アホか】
そして私はテンションの赴くままにいろんな施設の情報を抜き取り続けて……満足した頃に現実に戻ってきた。うん、楽しかった。電子生命体のような状態だった私がサーバーにアクセスしても、アクセス元が発見できないだろうから問題なし。だって私自身が一つの個だからね。
「メモ……しても『先生』は見えないか。点字分からないしなー……」
【じゃあ『目をかける蛇』を使え。俗に言うテレパシーだ。使い方は、蛇が教えてくれる筈だ】
「うーん……『目をかける』……ッ!!『先生……個性の練習で…………』」
先生に抜き取った情報を伝えた。どうやら一方的にしか言えないらしく伝えることは出来たが変なタイミングだったら良くない。しかも、どうやら伝えたい相手を見ないといけなかったらしく、仕方ないから『目を凝らす』個性で『先生』のことを見ながらになった。
「便利だね」
【オレ達蛇は女王たるお前のためにあるからな。役にたたねェなんてことがあったらそれこそ蛇の名折れだ】
「……よく分からないからいいや」
【……まァ、知らない方が幸せかもな】
◆
〜雄英高校受験当日〜
「準備はできたかい?」
「うん。受験票も持ったよ」
『目を凝らす』個性で事件現場を見てからはやくも8ヶ月とちょっと。今日は雄英高校ヒーロー科の入試がある日だよ。
「行ってらっしゃい睨美。楽しみにしているよ」
「任せて。絶対合格してみせるから」
「君なら心配することはなさそうだね。なんたって僕の娘だ。黒霧、頼んだよ?」
「お任せください」
靴を履いて『先生』に軽く挨拶した私は、黒霧さんの個性『ワープ』で人気のない座標へワープ。そこからは先生がこの前裏ルートから買ってくれたスマホで雄英高校への道を調べながら歩いて行った。
【……座標だけ調べて『目を凝らす蛇』で直接見た方が早いんじゃねェの?】
「……確かに」
個性の使い所にしては勿体無い気がしたのは相棒には内緒の話。
睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)
-
アザミ
-
クロハ
-
カゲロウデイズ
-
メデューサ
-
ゴルゴン
-
スネーク・アイ
-
カンナ(永遠)
-
サルビア(家族愛)
-
エーデルワイス(大切な思い出)
-
モミジ(大切な思い出)
-
カエデ(大切な思い出)