蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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24話

24話

 

 

 

「どうぞお座りくださいお嬢さん」

 

「……ありがとう」

 

 

ニコニコしながら私に着席を促すリ・デストロ。こうやって社長まで成り上がってきたんだろうなぁ。

 

 

「お父上から話は聞いておりますとも。我々異能解放軍を高く評価してくださっているとか」

 

「書物は読んだ。なかなか面白かったし、私の考え方と通ずる所があったから反りは合うと思った」

 

「なんと!?既に絶版となった『異能解放戦線』をお読みになっているとは!!恐縮ですがお嬢さんの考え方というのをお聞かせ願いますかな?」

 

「……民衆とヒーローとヴィランは演劇の客と演者であり、その姿は喜劇に見せかけた笑い話だ。自分達が確実に安全だからこそヒーローとヴィランが演じる舞台を見ていられる。まあつまるところ守られる事が当たり前となった社会はおかしい、とそういう事。通ずるところってのは、こせ……異能はヒーローとヴィランの使う舞台道具となって民衆には無用の長物となっている点」

 

「…………なるほど。デストロの思想をよく理解した上でのその意見、感服いたしました!!お父上もご存じで?」

 

 

こういう人間はその人の根幹となるものを褒めとけばとりあえずどうにかなる。この人はその典型例らしい。

 

 

「父さんは超常黎明期からの生きる歴史と言っても過言じゃない。11万人の戦士を持つ解放軍なら分かっているはずでは??」

 

「ええ、試すような物言い、誠に申し訳ない。オール・フォー・ワン殿の噂は裏社会では伝説として語り継がれていますとも。その上で問いたいのです、彼は何をお考えで?」

 

「…………」

 

 

一口、レモンティーに口をつける。お、美味しい……自販機のより圧倒的に違う。

 

 

「まあ……最終目標は世界の支配、だと思う。私も聞いた事ないから知らないけど。そっか、解放軍からしたら邪魔だもんね……父さんもヴィラン連合も」

 

「ッ!!」

 

 

ニコニコと営業スマイルは変わらないけど、その中で瞳の奥に確かに驚きと警戒が感じ取れる。

 

 

「大丈夫だよ、その程度なら父さんは把握してるし分かっててあえて放置している。ヴィラン連合はリーダーがあんなのだから知らないはず。私達から手を出す事はないから安心してほしい」

 

 

何気にオール・フォー・ワン陣営と解放軍がこうやって話すのは初めてだ。私は実力という圧倒的アドバンテージがあるのでこうやって余裕をこいてられるけど、相手側は堪ったもんじゃないと思う。

 

 

「……それはそれは。さすがと言わざるを得ませんな」

 

「まあ今を壊すという点では目的は共通している。そのおかげでこうやって話せるんだからいいんじゃない?そもそも今日はそっちの話じゃないし」

 

「ええ!!もちろん存じておりますとも!!いやはや、まさかオール・フォー・ワン殿の御息女が雄英高校ヒーロー科に入学しているとは思いませんでした。お父上がそうするようにと?」

 

「まあね。でも今回ここに来たのは私が個人的に頼んだだけ」

 

「なんと!!完全に闇に潜んでいるつもりでしたが、異能解放軍のことをご存知とは……随分目がいいのですな」

 

 

メデューサだから……とかは別にいう必要もないか。まあ今のでちょっと私にビビってることは分かったし十分。

 

 

「ヒーロー志望として私がこの職場体験で望むのはこの街に住む解放戦士全員を対象とした戦闘訓練。制限時間は168時間」

 

「168時間……7日間休みなし!?」

 

「そう、あらゆる戦術を使いいかなる手段を持ってしてでも私を殺しに来てほしい。もちろん私は殺さない。あくまでヒーローとして無力化を続けるだけ」

 

「馬鹿なッ、正気ではない!!」

 

「今のところ最長継続戦闘時間は5日とちょっとかな?まあ先に相手がくたばったからそれ以上が確かめられてないんだよね」

 

「」

 

 

あり得ない、こんな小娘が、ああ……怒りやストレスを自分の中に溜める人間というのは『目を盗む』とすごく面白い。ちなみにこの時の相手はギガントマキアだけど、一睡もさせずに攻撃を続けたから寝不足で勝手に沈んだ。お互いに体力が多すぎるからいつまで経っても決着がつかないからこういういう勝ち方しかできなかったけど、いつかは瞬殺できるようになりたい。

 

 

「あー、でもせっかくだし異能解放軍の人と話もしてみたいから6日でいいかなぁ……それにジョージさんのご飯食べたい」

 

「腕によりをかけて作らせてもらうよ」

 

 

シェフのコスチュームの袖を捲って快活に笑うジョージさん。見た目で人を判断しちゃいけないね。あ、弔君はどう見ても不審者だから通報したほうがいい。

 

 

「私に足りないのは自制心……体育祭では勝って当たり前の場面で調子に乗って油断した結果負けた。この程度の理由で足を掬われるわけにはいかない」

 

「……なるほど、お嬢さんの考えは理解できました。しかし我々に利益がない」

 

「オール・フォー・ワン陣営がどれほどの戦力を有しているか、その一端を知るだけでも十分だと思ったんだけどなぁ……でも引き受けてくれないと私が正体バラしただけだし……今後のことを考えたらスケプティックだけは殺さないといけなくなるんだけどいい?あ、キュリオスって人も処理しないと。集暎社には申し訳ないけど消えてもらうとして……外典と貴方はいいかな。戦闘特化だし」

 

 

ヤバい、顔がニヤけそう。『目を欺く』で誤魔化してるけど表情筋がすっごく仕事したがってる。自分達の個性がバレてるとか考えたくないよね、だって今まではそっちが情報戦で完全優位だったんだもの。私の個性はネットとか見ても異形型と発動型の複合としか考察されてないし私が優勢すぎる。

 

 

「……参りました。どうやらあなたのほうが上手だったらしい……いいでしょう、異能解放軍の実力を体験してください」

 

「そう……楽しみ」

 

 

早速コスチュームに着替えることにした。あ、レモンティーおかわりください。

 

 

 

 

 

 

 

『準備が出来たようですので始めさせていただきます』

 

 

 

とてつもなく広い空間にスピーカーを介して響くリ・デストロの声を聞きながら軽く準備運動をしている。

 

【運動音痴だったアイツとは違いすぎてたまに怖くなるぜェ……泣き虫なのはそっくりだけどよ】

 

相棒がたまに言う()()()が誰なのか分からないけど特に気にしない。こういうところがあるのは昔から知っているから。

 

 

『制限時間は無し……いえ、一応6日ですね。最終日は帰宅準備などもありますので空けておきましょう。泥花市に住む解放戦士の中で時間に空きがある向上心の高い者を呼び寄せております。彼らにも日常生活がありますので交代で戦闘訓練に参加することでしょう』

 

「擬態が上手い……訓練の賜物?」

 

『その通りでございます。多忙ゆえに私めは参加できませんがご了承ください』

 

 

申し訳なさそうな声音、演技ではないようだ。ぱっと見ここには誰もいないけど謎の違和感がある。まあ私が個性を使ってないってだけで使えばすぐにわかる。

 

 

『では、健闘を祈っております。始め!!』

 

 

「先手必勝だしんっぶべらっ!?」

 

「まずは……極限状態にならないと……ね」

 

 

棘だらけのデブを1人沈め、それを皮切りに100人を超えるだろう解放戦士達が私に襲いかかってきた。

 

 

 

「同志をよくもぉ!!」

 

「子供だからって手加減しないわよ!!」

 

「うるさい」

 

「「ぐっはぁ!?」」

 

 

フライパン型のサポートアイテムを持った主婦の脳天、そしてよくわからない敵対心を向けてきた青年の鳩尾を無音拳でしばく。そんなことで解放戦士の波は止まることを知らずキリがないと思えるほどに遠距離個性が飛んできた。

 

 

「『我流捕縛布操術・縦横無尽』」

 

 

緑谷の閃きをなんとか形に落とし込んだ捕縛布操術。インナーの上に布を巻きつけコスチュームのおかげで口が大きく開いている袖に通すことで腕の可動域に合わせて様々な動きを可能にした。もちろんまだまだ稚拙で相澤先生のように敵を捕縛するのは難しい、てかできない。首に巻いてる時は相澤先生の真似でできるけど今の状態じゃできない。捕縛布なのに敵を捕縛出来ないとかコンセプトやばいね。そしてこの『縦横無尽』は、大層な名前こそつけたものの今のところ私の半径1メートル圏内で捕縛布を好き勝手に振り回すだけ。

 

【お前の場合、力一杯振り回すだけでハンマーとかより威力出ちまうからなァ】

 

手首の捻りや指に加える力加減がまだ理解できなくて布を飛ばした後の動かし方が分からない。

 

 

「「「「「「ぐあぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」」」」」」

 

 

炎や水、風、砂塵には風圧で、雷は無理だから片腕の捕縛布で受け流し(勿論布を伝って私に電撃が来る)、もう片方で本人にダイレクトアタック。

 

個性を吹き飛ばしたら一旦捕縛布を手から離しポケットに両腕を入れ無音拳を放つ。そしてそれが終わったら素早く捕縛布を手元に引き寄せる。大変両腕の動きが忙しいけど、首に巻いていた時よりはマシになった。

 

 

「やっぱり電撃だけはどうしようもないね…………うん、上鳴を盾にしよう」

 

 

クラスで何かすることがあったら上鳴バリアで全部防ごう。ウン……良いよね。

 

 

「さぁ……私をもっと楽しませて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来た……これだ、陽炎さんの言ってたことって!!」

 

 

職場体験2日目の夜、オールマイトからの紹介でグラントリノというヒーローの元に職場体験にきた僕、緑谷出久は全身に『ワン・フォー・オール』を纏わせた状態『フルカウル』をようやく成功させた。

 

 

「2%でも難しかったのに、もう5%までフルカウルを発動できるようになった。もう下地は出来てるって……あれだけでよく分かるなぁ」

 

 

フルカウルを成功させてからこの感触を忘れないために2、3回トライしてから僕は布団に入った。それにしても陽炎さんってすごいなぁ……体育祭もかっちゃんを圧倒してたし轟君にもあんなあっさり……ほんとにすごいなぁ……

 

どうしてあんなに強くなれたんだろう?そういえば陽炎さんがヒーロー科に入った理由もよく知らないし、謎が多いっていうか……クール?普段は席の近くの尾白君達とよく話してるし無口ってわけでもない、いや……どっちかっていうとお喋りだよね。

 

 

「僕もいつかは……陽炎さんみたいに強く……なれる……か……ぐぅ……」

 

 

はじめてのフルカウルは思ったより疲労が溜まってたらしくてすぐに寝てしまった。着替えるのも忘れて……

 

 

……

………

…………

 

 

 

「ハッ!?僕は一体なんて夢を!?うわぁぁぁぁぁ陽炎さんごめんなさいぃぃぃ!!!!」

 

 




何もせずともワンフォーオール継承者に精神的ダメージを与えていくオールフォーワンの娘(ただの自爆)
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