蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

27 / 45
27話

27話

 

 

放課後、私はいつも通り体操服に着替えて屋内運動場に行く。だけどなんか人数が多い気がする。他にも使う人がいるのかな?

 

ぱっと見、見たことない生徒が多いからきっと上級生だろうね。なんかメカメカしいのがいる気がするけど。

 

 

「お待たせ」

 

「あっ、陽炎さん。お疲れ様、今日もよろしくお願いします!!」

 

「ん」

 

 

緑谷がいつも通り待っている。なんかいつもより目がキラキラしてるし、練習の成果を見せたいのだろう。

 

 

「よう陽炎、今日は俺も見学させてもらうぞ」

 

「……先生?いいけど、暇?」

 

「誰が暇人だ、今日はエクトプラズム先生とセメントス先生が見れないから代わりに俺が来たんだ。励めよ」

 

 

今日の監督は相澤先生らしい。あー、向こうで他の生徒の監督してるのあの2人なんだ。

 

私は別に誰でもいいけど、緑谷は緊張するかな。

 

 

「じゃあ始める……成果次第では褒めてあげる」

 

「ッ、はい!!…ッッッッ!?!?」

 

「……なるほど。大体わかった」

 

 

緑谷が返事をした瞬間に、『目を隠す』で緑谷からの認識を阻害、姿勢を低く突っ込んでわざと個性をオフにして敵意を拳に乗せる。

 

急に視界から私が消え緊張し始めた緑谷の顔面に拳が当たる……直前で止める。

 

 

「か、はっ…はぁ……か、陽炎さん何を……」

 

「視界から消えた時点で警戒するべき、敵意を感じた時点で構えを取るべき、そして個性の発動が遅い……まあ1週間なら仕方ない」

 

 

冷や汗が緑谷の額を濡らしている。一瞬息を忘れていたのか嗚咽のような声を漏らしたけど、殺気をのせてないだけまだ優しい方なんだけどなぁ。一つだけ及第点とするなら、敵意に対して後ずさらない、腰を抜かさない胆力がついたことかな。まあステインの本気の殺意を浴びたらこれくらい耐えてもらわないと困る。

 

明らかな落胆を緑谷に感じさせ緊張感を生ませることに成功した私は拳を下ろして緑谷に向き直す。

 

 

「これから少し……ギアを上げる。今日から組み手」

 

「ッ、はい!!」

 

「ほう……(悪くない。今日のヒーロー基礎学の録画を見た所緑谷は全身にパワーを巡らせる技を覚えたはずだ。それを持続させるために組み手を選ぶとはな。先日まで受け身の訓練をさせていたのがよく活かされそうだな)」

 

 

一応先生の心の中を『目を盗む』してみたけど大体狙いは合ってる。

 

こうしてる間にも緑谷の心の声がすんごい。どれくらいすごいかっていうと、『わかんないよ!(以下詠唱)』を超えるくらいすごい長いし大きいから聞きたくない。だからすぐ個性オフ。

 

緑谷がいる時は『目を盗む』しないようにしなきゃ、耳壊れる。耳で聞いてないけど。

 

 

「フルカウル!!」

 

「良い上昇率……1週間で何かを掴んだのか、それとも個性の性能がいいのか……おいで」

 

「はぁっ!!」

 

 

敢えて私からは攻撃しない。緑谷の拳を躱すか、手首を弾いて逸らす。攻めの姿勢を体に染み付かせる目的もあるけど、出来れば私の動きを見て防御の仕方も学んで欲しい。

 

……データ型だからなぁ緑谷。体で覚えさせるのには時間がかかりそう。

 

 

「なんでっ、攻撃がっ!!……当たらないんだっ!?」

 

「……単調」

 

 

体感3分ほど攻防が続いたので適当に足を引っ掛けて転がす。蹴り覚えたらまた違うのに……どうしてパンチばっかりなんだか。ううん、パンチしかしないなぁ…せっかく手が使えるんだからもっと色々使えばいいのに。

 

 

「一旦……総評」

 

「はい……」

 

 

地面に大の字で倒れてる緑谷を尻目に私は容赦なく言葉を浴びせる。

 

 

「上がったパワーに脳が追いついてない。仕方ないけど、今日からはその訓練しか出来ない。パワーになれたら持続と体術……かな」

 

「持続って?」

 

「……今の緑谷……力んでるだけ。息をするようにフルカウルだっけ?を使えるようにして」

 

 

こうは言ってるけど、要は今までと同じ。はよ慣れろってこと。

 

 

「あの、今更なんだけど陽炎さんはどうして僕にそこまでしてくれるの?」

 

「ストレス発散」

 

「え」

 

「コイツは生粋の戦闘狂だよ。体育祭のうちに把握できて良かったよ」

 

「あー……」

 

 

あーってなんだよあーって。相澤先生もため息までつくし。私そんなに問題児でもないでしょ。

 

【いやー、お前はどっちかって言うと……なんでもねェ】

 

 

「冗談……全身100%の緑谷なら満足いくまで戦れそうだから……その時は死ぬ気で殴り合おう緑谷」

 

「冗談だとしても内容は変わってないよ陽炎さん!!」

 

 

休憩代わりの雑談を終え、次は緑谷に自由にさせる。私が捕縛布で捕まえる番だ。

 

 

「くっ……(一瞬でも気を抜いたらフルカウルが解けそうだっ!!)」

 

「……当てもできない。緑谷の動きは直線的なはずなのに」

 

 

今日使ってる運動場は凸凹した地形なので緑谷は三次元的な挙動をしている。だからか私は一向に捕縛布が当てられない。理由としては両腕からしか捕縛布を射出してないから2本しか出せないし、方向も腕の向きにしか出せないから。あと、無音拳より遅い。

 

 

「陽炎、1発だけあの衝撃波を当てろ。その後捕縛布だ」

 

「ん……わかった」

 

 

相澤先生のアドバイス通りに私は体のギアを一段階上げ、無音拳で正確に緑谷を狙う。

 

 

「うわっ!?」

 

「……なるほど」

 

 

衝撃を受けた緑谷が落下を始めたのですかさず捕縛。うん、こっちの方が楽かも。

 

 

「お前は俺より身体能力が高く選択肢も広い。いつかは捕縛布だけで出来るようになるべきだが基本的な使い方は隙を晒したヴィランを確実に捕縛する、だ。基本を怠るなよ」

 

「はい」

 

「緑谷、お前は三次元的な動きがおぼつかないな。さっき陽炎も言ってたが慣れてないのがよく分かる。基礎体力があるんだ。個性なしでパルクールができるようになればより素早く動けるだろう」

 

「はい!!なるほど、パルクール…!!」

 

 

捕縛布から解放された緑谷はどこから取り出したのかノートに相澤先生からのアドバイスをメモし始めた。まめなことするね。

 

 

「今日はここまでにしとけ。職業体験のレポート、忘れないように」

 

「「はい」」

 

 

相澤先生はタブレットをしまうと出口に向かって歩き出す。

 

 

「陽炎さん、今日もありがとう」

 

「ん、じゃ」

 

「また明日!!」

 

 

あっ、最後に出る人が鍵を返すから早めに終わったんだ。流石相澤先生、合理的だよ。

 

 

prrrr……

 

「ん……もしもし。っ!!父さん!!うん、うん……分かった!!すぐ行く!!今すぐ帰るね!!」

 

「へっ、か、陽炎さん?」

 

 

(やった!!今日は皆で晩ご飯だ、はやく帰らなきゃ!!」

 

「……『父さん』って、陽炎さん、意外とすごいお父さんっ子なのかな?見たことないくらいの笑顔と声音だったなぁ」

 

 

黒霧さん早くワープゲート出して〜!!

 

【ハァ……聞かれてるの、気づけよォ。途中から声で出てんのもバレてら】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「おかえり睨美。元気そうで何よりだよ」

 

「うん、父さんも」

 

 

黒霧さんのワープゲートで父さんの場所までやってきたわたしは、久しぶりに食卓を囲むことになった。やっぱりまだ管やらマスクやらしてるけど、元気そうでなにより。

 

 

「泥花市はどうだったかい?」

 

「思ってたより規模が大きい。後、狂気的……かな」

 

「へぇ?」

 

「自らを犠牲にすることに何の疑問も抱いてない。えっと……」

 

「死兵のことだろう?」

 

「それ。プロヒーロー並みの実力の死兵が11万……しかも1人たりとも公安にバレてない。何が起こればあんなことが出来るのか分からない」

 

 

私からすれば有象無象だったけど、なかには私に深手を負わせた人もいた。体の作り直しができなければあのまま死んでいてもおかしくなかったほどのけがだったよ。

 

まああの人数相手に大立ち回り出来る時点で、私という戦力に戦々恐々としてるはずだよ。でももうちょっと骨のあるやつが居てくれても良かったのに。

 

 

「彼らはリ・デストロという絶対的なトップと初代デストロを象徴するものがあるからね。あれはもう概念的な意味で宗教だと言っても過言じゃないんだ」

 

「父さんは違うの?」

 

「僕は彼らのことを大切な友人だと思っているよ。その縁は決して途切れることはない」

 

 

暴力と恐怖を植え付けた支配という名の友情関係……だから彼らは一生逃げることはできない、父さんがそんなことを許すはずがない。さすが父さん。やることのスケールが違う。

 

 

「ああそうだ、友人で思い出した。学校で友達はできたかい?」

 

「友達……よくしゃべる人なら何人かできた」

 

「それはもう立派な友達さ睨美。君の考え方だとクラスメイトという仲間、の印象が強いのかな。ともかく友達は大事にしなさい」

 

 

友達、ねぇ。A組の人たちって友達だったんだ。じゃあ初めての友達だ、しかも20人くらい一気にできちゃった。

 

【心操と信濃、あと庄田とかも関わりあるだろ】

 

え、カウントしていいの?体育祭とかちょっとしたくらいの付き合いなのに?

 

【お前が友達だと思いたいならそれでいいんだ。友達の定義なんざ人それぞれなんだからよォ】

 

ふぅん、そういうものなんだ。相棒には友達いるの?ほかの蛇たちとか?

 

【……あー(アイツは元ご主人サマだし、あっちは元相棒、あいつらは元相棒の教え子に義理とはいえ娘たち)

……いねェなァ】

 

ふふ、かわいそ。私たくさんいるよ。

 

【このガキ、すぐさま調子に乗りやがってェ】

 

冗談、でもいいじゃん相棒。私たちは『友達』なんかよりもっと、すごいんだから。だって『相棒』だからね。

 

【……アァ、そうだなァ】

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「睨美は美味しそうに食べるから食卓を囲む甲斐があるよ」

 

「ん。私も父さんと一緒で……うれしい」

 

「ありがとう。そうだ、最後に一つ聞きたいことがあるんだった。今年の誕生日プレゼントは僕が決めていいかな?」

 

「誕生日プレゼント……うん、すっごく楽しみ」

 

「期待に応えられるよう頑張るとも。欲しくないものだったらすまないね」

 

「そんなのない、父さんがくれるものならなんだって最高のものに決まってる」

 

 

私の誕生日は8()()1()5()()

本当の誕生日は別にあるらしいけど、私にとって私が生まれた日は、父さんと出会ったあの日だけだから。

 

 

【ここまでくると運命ってもんを信じたくなるぜェ。いつも通りに8月15日が終わってくれればいいんだがなァ。こっちは毎年毎年、カゲロウデイズが開かないかヒヤヒヤするぜ全く……にしても今年の誕プレ、なんか嫌な予感がすんなァ】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。