蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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28話

28話

 

 

「えー、そろそろ夏休みも近いがもちろん君らがずっと休める道理はない」

 

 

昨日は緑谷をボコボコにできて楽しかったし久しぶりに父さんとご飯だったのもよかった。

 

今日のHRでは相澤先生がなんか大事そうに話し始めた。長期休暇は引きこもってゲームするはずだったのに、なにか行事でもあるのかな。

 

 

「「「「「まさか!!」」」」」」

 

「夏休み、林間合宿やるぞ」

 

「知ってたよー!!やったー!!!」

 

「肝試そー!!」「風呂!!」「花火!!」「カレー!!」「行水」

 

 

へい相棒、林間合宿。

 

【……ざっくり言うと山で宿泊して勉強するイベントだァ。普通の学校なら勉強云々よりも遊びとかのイメージがあるなァ】

 

相棒も板についてきたね。

 

【いくら否定しても聞いてくるだろうがよォ】

 

 

「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は学校で補習地獄だ」

 

「みんな頑張ろうぜ!?」

 

 

じゃあ何も気にしなくていいや。どうせ楽勝だし。今日も緑谷ボコしてゲームしよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※中間成績 名前数/数位

 

 

「全く勉強してねー!!!!」上鳴21/21位

 

「あっはっはっは……あたしも!!」芦戸20/21位

 

「確かに」常闇15/21位

 

「まあ演習試験もあるのがつれぇとこだよな」峰田10/21位

 

 

期末試験まで1週間をきった。クラスの様子はやはり試験についてで盛り上がっているけれど、いつも通りやればいいのになって思う。みんなの話を聞き流しながら私は投影ディスプレイで理科の復習をしている。

 

【そこは間違っているぜェ。33ページの……あァそこだ。】

 

なるほど……さすが相棒。分かりやすいね。

 

【そりゃ担当科目の教師してたからなァ】

 

 

「陽炎さん、休み時間も勉強してるんだ。すごいね!!」緑谷5/21位

 

「……理科、苦手だから」陽炎2/21位

 

「2位!?陽炎いつも授業ボケっとしてるくせに頭いいのかよ!?」瀬呂18/21位

 

「瀬呂……陽炎は先生からの指名の時、正答率100%なの覚えてないの?どんなに目線が黒板に向いてなくてもだし」耳郎8/21位

 

「授業の範囲くらいならわかる」

 

 

今やってるのだって超応用問題だから授業のとは難易度が全く違うし、相棒に教えてもらわないと全く分からない。

それに八百万に負けたの、少し悔しいし。

 

 

 

そしてお昼。いつも通り食堂でランチラッシュのご飯を食べようとしたら、たまたま出会った信濃に誘われて一緒にご飯を食べることになった。

 

 

「お疲れ様……目元の隈、すごい」

 

「あははぁ、ちょっと提出物がねぇ〜?」

 

 

サポート課の信濃は、通常筆記試験に加えてサポートアイテム関連の試験もあるらしい。当日に何かをするのではなく、期限までに課題を提出するというもの。

 

 

「先輩に聞いてた機械修理の試験じゃなかったんだ〜。今年から変わったらしいよ」

 

「へぇ……去年は何の機械?」

 

「えっとぉ、入試と体育祭で使ったロボだって。毎年期末試験でヒーロー課が使うついでにサポート課の試験をやってたんだって〜」

 

「……それは、今年はロボの修理をしてないってこと?」

 

「うん。授業でも特にやってないし、あ!!そういえば倉庫にロボの残骸がたくさん転がってたし今度直すのかなぁ」

 

「…………なるほどね」

 

 

聞き取りにくいけど、別の所で緑谷達がB組と話してる。内容は、『期末試験の内容は入試のような対ロボット戦闘』らしい。本当かどうか知らないけど、たった今信濃から聞いた話を踏まえるとおかしい。いくら雄英と言えど予算は無限じゃないはずだし、無限だったらサポート課が修理したロボをヒーロー課で使うわけがない。

 

つまり、試験はロボとの戦闘じゃない。

 

 

「そういえばヒーロー課の期末試験ってどんな感じなの?ヒーロー課って他の課との関わりがないから噂もあんまりなんだよね」

 

「……こっちも、他の課の話ない」

 

「やっぱりかぁ〜」

 

 

別に試験が何との戦闘だって私なら突破できる。何をどうしたって不合格になるわけはないけれど、『目を覚ます』を使っても不可能な情報収集は今までほとんどしたことがなかった。そう、コミュニケーションの必要な他人を頼りに情報を集めることだ。今日信濃と出会えたのは偶然だったけどこうして会話から拾える情報がこんなに有意義なものだとは思ってなかった。

 

ううん……違う。昨日の父さんとの話を踏まえると、ただ情報収集をすることが重要じゃないよね。

 

 

「睨美さんって、私のクラスじゃ結構怖がられてるんだよ?この前人だかりを割って歩いてたし、体育祭で大立ち回りしてたしで。私は友達があんなに活躍してて鼻が高かったけどね!!なんたって私の個性、『目利き』だからねっ♪」

 

「ッ……うん、ありがとう」

 

 

ともだち……友達かぁ。人から言われると、私もそう思っていいんだって感じるなぁ。

 

【典型的なこと言ってんなァ】

 

その後も私と信濃は話をしながら昼食を食べた。相変わらず食堂は騒がしいね。

 

 

(……今作ってる超圧縮重り、守秘義務があって言えなくてごめんね)

 

 

今、信濃の心の声を個性で盗み聞きしてなかったのが少し悔やまれた。

 

 

 

信濃と別れて教室に戻ると、時間がギリギリなのにやけに静かだった。そしてなんか緊張感がある感じがする。

 

 

「あ、睨美ちゃん」

 

「なにこれ……ああ、いいや。大体わかった」

 

「はや!?」

 

 

麗日が話しかけてきたけどなんとなく察した。爆豪が緑谷にキレてるだけだよ、いつも通り。

 

 

「お、おい陽炎……」

 

 

別に気にすることじゃない。ていうかもう授業なんだから皆早く準備すればいいのに。

 

 

「何言ったか聞いてないし興味もない」

 

「アァ!?」

 

「別にお前がキレてようが私にはどうでもいい……でも今日一日面倒だから一言だけ」

 

 

私は緑谷を退かせて爆豪の前に立つ。みんなが露骨にオロオロしてるのを感じるけど……うん、シンプルごめん。

 

 

「ふふっ……焦ってんの?」

 

((((((こ、この状況で煽ったァァァァァァァァ!?!?!?))))))

 

「…………………………チッ」

 

 

『目を欺く』まで使ったのに、ヘイトを私に向けなかった?それに急激に怒りや憎悪の感情が消えたし……なんで?しかも出て行ったし……いや授業だよ?

 

 

「陽炎お前、怖いもの知らずかよ」

 

「……爆豪が()()なのはいつも通りだけど、今日ずっとは面倒」

 

「そりゃそうだけどよ」

 

「まあなんか落ち着いてたしいいんじゃね?」

 

「これから爆豪のストッパーは任せたぜ!!」

 

「絶対いや」

 

 

ほんとに、絶対いやだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日間の筆記試験が終わった。まあ大体余裕で解けたので問題はないと思う、理科科目は相棒お墨付きだし。

 

そして今日は待ちに待った演習試験。私たちの前には、10人ほどの教師が並んでいる。これは予想通り、ロボとのバトルじゃないらしい。だからと言って特に訓練はしなかったけど、まあここにいる面々なら何も心配することはない。

 

()()()()()()()()()

 

 

 

「それじゃあ組み合わせを発表していく」

 

 

話しているのは相澤先生。私の番が来るまで聞き流そうと思っていたけれど、八百万・轟VS相澤先生が言われたすぐに順番が来た。

 

 

「次、緑谷・爆豪……そして陽炎」

 

「「「ッ!!」」」

 

 

私達だけじゃない、クラス全員がこの組み合わせに驚いている。

 

 

「くっそぉ、陽炎がいりゃ大体行けるはずだったのに……」

 

「諸々で判断していると言っていた。ならば妥当だろうな」

 

「そして対戦相手は……」

 

ドォォォォォン!!!

 

「私が、するッ!!」

 

 

オールマイトが空から現れた。やっぱり……オールマイトの姿が見えないからもしかして参加しないのかと思ってたけれどそんなことはなかった。むしろ私と爆豪、爆豪と緑谷の組み合わせを考えたら本当に妥当かもしれない。でも良かった。

 

【何がだァ?】

 

私がオールマイトと戦わせるという評価がされてること。

 

【戦闘狂……あんま出すなよォ?】

 

味方次第だよ。ふざけたこと抜かすなら私1人で相手する。

 

 

「協力して勝ちに来いよ?3人とも」

 

「「っ……」」

 

「ん」

 

 

緑谷と爆豪はお互いになんか驚いたまま固まっているけどまあ私は私でやらせてもらう。せっかくだからギアも2、3段階上げないといけないかもしれないし備えておこうかな。ああ、『目を醒ます』にはしっかり働いてもらうよ。

 

【……アザミが見たらどんな顔するんだろうなァ、バケモノばっかの世界でもっとバケモノみたいな使い方されてる『目を醒ます蛇』に対して。ククク、面白そうだァ】

 

 

30分の制限時間の中で教師にハンドカフスをかけるか、生徒の誰か1人でもゴールに辿りついたら勝利。しかもハンデとして教師は身体機能を縛る重りを体につけるらしい。体重の半分の重さらしいけど、これオールマイトにはほとんど意味ないよね?

 

全ての説明が終わりそれぞれ会場に向かったり作戦会議の時間になった。幸い私たちの番は最後なので少しくらい話してやろうと思った。どうやら緑谷も同じ考えだったらしく目があった。しかし、

 

 

「あっ……かっちゃん……」

 

「ん、いい……分かりきってたこと」

 

 

爆豪がスタスタとどこかに歩いて行ってしまった。まあ『目を盗む』で聞いた感じ、どうやってオールマイトを倒すか、どう私と緑谷に邪魔させないかを考えてるみたいだし。

 

 

「そう、だよね。じゃあ僕達だけでも作戦を考えよう陽炎さん!!あっ!?でもみんなの個性も見たいしモニタールームで……でもそこじゃうるさくて迷惑だよね!?どっちを優先すべきk…「緑谷」…はっ!!ご、ごめん陽炎さん」

 

「作戦は緑谷に任せる」

 

「え……で、でも、陽炎さんはオールマイトと戦いたいよね?」

 

「……ん、もちろん。でも、それをすると負ける」

 

「どうして?」

 

「爆豪が邪魔をしてくる。私がサポート()()()()()のは簡単だけど、それをすれば爆豪の攻撃対象は私に移る」

 

「そんなッ、ありえる……!!」

 

 

ああうん、緑谷の方が爆豪のことを理解してるとは思ってたけど、ありえるんだ?とんでもないね爆豪。

 

 

「私の最優先目標は()()()()()()。面倒な補習さえ無ければなんでも良い。だから一つだけ、成功率30%の作戦を提案する」

 

「さ、30%!?ひく…………いや、あのオールマイト相手に30%勝てる作戦が……でも、それでも僕に任せるって言うのは?」

 

「先に作戦を聞いて。爆豪をオールマイトに相手をさせる。その間に私か緑谷がゴールに走る」

 

「それだけ!?」

 

「それだけ。爆豪の機嫌をとりつつ目標遂行を目指す場合の最良」

 

「…………」

 

 

考えてるね緑谷。いいよ、これはサービス。放課後訓練の延長。

 

 

「30%なのはどうしてなの陽炎さん」

 

「爆豪じゃ3秒持たない。その後、まだ個性制御が甘い緑谷はオールマイトに気配を察知されて風圧で吹き飛ばされる。私は石化、身体能力、それと技術としての気配消し(ほんとは『目を隠す』)ができる。でも、オールマイト相手にどれだけ通用するかの目算ができない。良いところでトントンだから30%」

 

「……つまり、どう頑張っても僕とかっちゃんじゃ相手にならないんだね」

 

「ん」

 

「はっきり言ってくれてありがとう陽炎さん。うん、改めて自分の力不足を痛感した」

 

「その上で緑谷に任せることにした理由。向いてそうだから、それだけ。試験までに考えて。ないなら私の作戦で……じゃ」

 

「え、ちょ……陽炎さん!?」

 

 

一瞬緑谷が隙を見せた瞬間に気配を消す。せっかく山側の演習場に来てるんだ。

 

 

「なぁ〜ん」

 

「……ん、ひさしぶり……家族、できてる……!!」

 

 

猫を愛でようと思う。




〜数日前〜


「「「「「「…………」」」」」」


ヒーロー科教師達が集まる会議室。オールマイトを含めたプロヒーロー達が揃いも揃って口を閉ざしていた。たった1人の生徒の存在のせいだ。


「陽炎睨美、個性『メデューサ』。近年稀に発現する()()()だと臆される個性の持ち主。勉学では非の打ち所がない秀才、戦闘面では視線を合わせることで相手の動きを完全に止める石化能力と脅威的な身体能力から繰り出される八極拳、そして俺が今教えている捕縛布を用いた搦手と、多彩なスキルを持ち合わせています。欠点として戦闘狂な一面があり、高揚で少し注意が散漫になります」

「少し、なのかい?」

「はい。体育祭決勝で爆豪との戦闘の際に自覚したはず……いえ、元々自覚していたが()()()()の相手がいなかったのでしょう。苦い経験をしたのでおそらくもう克服されているはずです」

「……恐ろしいな。戦闘スキルだけならもうビルボードチャート上位並みだろこれ」

「普段温厚な分、怒らせると怖い子よ。ちょっと浮世離れしてるイメージだけどね」


睨美の情報を説明する相澤にスナイプが素直な感想を述べた。ミッドナイトも、ヒーロー名の授業を思い出して言った。


「今年は異例の21人。ペア学習で1人余るのを承知で入学させたのは間違いじゃなかったね相澤先生」

「ええ、この才能がヴィラン側に居ると思うとゾッとしますよ。おそらく陽炎は実力を隠しています」

「これでか!?」

「この石化能力、本人は50%も発揮していないらしい。つまり普段から手加減して使用している」

「100%、つまり()()()使ったら……」

「本当に石になってしまう」

「「「ッ!!!」」」


再び会議室の空気が凍った。使い方次第では人を殺すことなど容易い個性の持ち主は沢山いるが、通常の出力で個性を使うと人を殺してしまうのは、個性終末論などと言う与太話に現実味を与えてしまう。


「神話級ってのは、それほどなのね」

「とにかく、今回の議題は演習試験の組み合わせを決めることサ。立候補したい者はいるかな?」

「「「……」」」


無理もない。この中に、普通に戦って陽炎を抑えることができる者がどれだけいるというのだ。


「私は無理ね。オールマイトみたいに拳圧で個性吹き飛ばされちゃう」

「俺もだ。いくら必中とはいえあの動体視力じゃ弾を摘まれてもおかしくない」

「オイラもパスするぜ。サポートアイテムでどうにかなる範疇じゃねぇ」

「体育祭であっさり個性のセメント、壊されたんですよね……」

「相澤君の抹消は効いたらしいね?」

「身体能力は異形型の据え置きらしいので無理です。捕縛布もあの調子なら縛った状態から引きちぎられます」


「「「「「「………………」」」」」」

「……そうなりますか。いや、なんとなく察してたんだけどね」


全員の視線がオールマイトに向いた。ここまで一言も発さず目を瞑っていた彼がため息をつき観念したように言う。


「私が相手をしよう。緑谷少年と爆豪少年、そして陽炎少女の3人をね」

「頼めますかオールマイト。負担をかけることになりますが」

「私の体調を考慮してもらって30分の試験なんだ。ただ、陽炎少女がもしいつもより実力を見せてきた場合、手加減が難しくなるかもしれない。その重みは少年達が背負うことになってしまうのが気がかりだ」

「それこそチームワークです。爆豪が一方的に陽炎に突っかかっている状態、緑谷は陽炎に師事している状態と関係値に天と地の差があるのが不安ですが……他に選択肢がありません」

「わかったよ相澤君。これは私でも骨が折れそうだ」
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