蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
3話
到着した。やけにテンションの高いヒーローの説明を聞いた。
…………筆記試験はあんまり出来なかった。
だって仕方ないじゃん。いくら『先生』や黒霧さんに教えてもらってたとはいえ、偏差値79の学校の試験が簡単な筈無い。ただ……
【何であれが分からねェんだよ?】
(ごめん……正直助かった)
筆記で活躍したのは、まさかの相棒。なんでか知らないけどすっっっっっっごく勉強が出来る。なんというか……『冴えてる』ね?
【はっ、オレは『目が冴える蛇』だっつってんだろ。まァ、オレの昔の願主様が高校教師だったって言うのもあるけどなァ】
Qこれはカンニングですか?
Aいいえ、自分の『個性』なので大丈夫です。
この理論で私は気にしなかった。ていうかヴィランに育てられた私がこんなこと気にしてなんになるのってね。まあ、最初はちゃんと自分で解いたよ?半分くらいしか分からなかったけど……
(相棒、今までで1番輝いてたよ)
【ふざけンなガキ。オレはカンニングペーパーですかっての。
(分かってるよ)
筆記試験
【……『女王』のお前なら心配いらねェが、精神が未熟だったら
実技試験の会場に来てみたら、他の受験者がわんさかいてみんな自信ありげな顔してたよ。よっぽど個性に自信があるんだろうね。
『ハイ、スタートォォォォォォォ!!!!』
ぽけーっとしてたら急にテンションの高いヒーローが開始を宣言した。あ、もう始めていいんだ。それじゃ……
「『目を醒ます』」
丈夫で強い体に作り替えて私は走り始める。私以外誰も動かないのはどうしてかな……?
『どうしたぁ!!実戦じゃカウントダウンなんてねえんだよ!!走れ走れ!!賽は投げられてんぞ!!』
後ろの方で試験内容を説明してた人が言った。なるほど、急すぎてみんな反応できなかったんだね。……うん、実戦じゃ、まった、もなにもない。急な不意打ちから放たれる圧倒的な暴力なんて数知れないし。だからなギガントマキア、お前いつか絶対ぶっ飛ばしてやる。『先生』の部下だからって調子乗るな。いつもいつも訓練のたびにボコボコにしやがって……『目を醒ます』個性で体を『作り直す』ことが出来なかったら死んでたからな!!
【おい、キャラは守れよ】
(うるさい)
「『目を凝らす』」
試験内容は簡単。10分間で0P、1P、2P、3Pと割り振られたロボット型の敵を潰してポイントを稼ぐだけ。0Pのやつだけアホみたいに強いらしい。効率強化のために私は『目を凝らす』個性を『この会場の全ての仮想敵』という範囲で発動。全ての敵を同時に見るにはどうすればいいと思う?
会場全体を上から見るんだよ。現在地から1番近くて1Pが3体。そこからはまばらに色んなポイントのやつが散らばってる。そろそろ他の参加者も走り始めた頃だろうし、とっとと稼ごう。
『コロス!!コロス!!』
「はは、ちゃっちぃヴィランだね。消えろ」
物陰から飛び出してきた1P敵の腕を掴んで地面に叩きつける。そんなに力は入れてなかったけど派手に壊れた。どうやら結構脆いらしい。
「次」
それから5、6分は『目を凝らす』で索敵して殴る、蹴る、握り潰す、叩きつけるなどの繰り返し。倒した敵の合計ポイントなんてロクに数えてないから知らないけど、上空から俯瞰した様子だと会場の半分は私が倒してる筈。本当だったらもう少しいけたんだけど、話に聞いてた0P敵が意外にも近くて、避けつつ移動してたら他の人にポイントを取られてた。
「きゃぁぁあああああ!!!!」
「ッ……?」
高いビルの窓のサンを足場に少し休んでいると、私からみて後ろの方で悲鳴が聞こえた。なになに、おもしろい事になってる?
「おおー……でかっ」
ポイント的にまず不合格じゃないことは分かってる。だから安心して声の方へ行ってみると、5階建サイズのビルが倒壊してた。しかもその下に瓦礫に巻き込まれたっぽい女の子もいる。片足が挟まって抜けないみたいだね。
「君、個性は?」
「うぅ……えっと、『目利き』って言って、人間以外の物の善し悪しが分かるの」
(そんな個性で何で雄英を受験したかな……)
「じゃあ自力の脱出は無理だね。ほい」
今の私の力で持ち上げられないものはほとんど無い。ましてや、高校の試験に使う素材なんてカスだよカス。ささっと瓦礫を退かせてやれば、青くなってる足を引き摺って女の子が出てきた。
「ありがとうございます!!……私、どうなるかと」
「自分で歩ける?」
「あ、はい!!たぶんだいzy……いっ!?……無理みたいです……」
「棄権したら?救助の人が来てくれるよ」
「……悔しいけど、そうします。でも、1ポイントくらい欲しかったなぁ」
助けた理由?別に、気分だよ。腕っぷしだけでヒーローが務まるわけないじゃん?ヒーローは『守らないといけないもの』が多いからね。きっと、説明外でも何かの採点基準があると思っただけだよ。そうじゃなかったら、暴力だけで全てを解決できるヴィランと変わらないし。
「……じゃあやってみたらいい。あのロボットは普通の力でも壊せるくらい脆い。貴女の個性なら出来るでしょ?」
「…………え?」
「あのロボットに個性を使って。硬い部分、柔らかい部分、武器があるところとか……」
「えっと……うぅ!!」
私の助言を元に、彼女が個性を発動させた。偶々近くにいた1P敵を見つめている。
「あ、腕の付け根……!!」
「正解。はいご褒美」
「うぇ!?」
シュッと敵に近づいてシュッと持ってくる。歩けない彼女のそばに投げ捨てた。
「どうぞ。これ壊してさっさと退場したら」
「う、うん。えいっ!!」
片手間で瓦礫の一部を渡してあげれば、腕だけで思いっきり腕を攻撃。見事機能を停止させた。
「はぁ……はぁ……ありがとう!!」
「どういたしまして」
嬉しそうな女の子が手を上げて棄権を宣言したら、どこからともなく白いロボットが現れて女の子を乗せた。そのまま立ち去ろうとした瞬間、後ろに大きな気配があった。
「危ないっ!!」
「ん?ああ、邪魔しないでよ。珍しく私が人助けなんてしてるんだからさ」
巨大な腕を振り下ろして来た0P敵。きっとビルの倒壊もコイツがやったんだろうね。女の子が顔面蒼白になってるけどもーまんたい。片手で受け止めて握り潰してあげたよ。
「すごい……」
「じゃあね」
「え、消えた……?」
女の子が鉄屑となった敵を呆然と見ている隙に、私は『目を隠す』個性を発動。これは周りから認識されなくなるっていう能力。このまま変に話しても時間の無駄だしね。まあ対象に見られてたら認識されるし、直接触られたりしたら効果が無くなるから使いどころが肝心だよ。
「うわぁぁ!?」
「……もうちょっと稼ぐかな」
悲鳴がするということはまだ敵がいるということ。走って向かえば、20人くらいの参加者が0P敵3体に囲まれていた。
「ゼロじゃん……個性の組み合わせでも実験してみよっと」
【だったら『目を奪う蛇』と『目を合わせる蛇』でやってみろ】
「……なるほどね」
流石相棒。それめっちゃ強い。
私は跳躍して2階建てのビルの屋上に着地した。
「『目を奪う』」
個性を発動。この個性はざっくり言えばヘイトを私に向ける個性。敵味方関係なくね?制御が難しいけど、大型のが3体もいれば対象をとるのは簡単。私の方に振り向いて来た0P敵が私を見た時、さらに個性を使う。
「『目を合わせる』」
そして敵の動きが完全に止まった。この個性が1番メデューサらしいと思う、相手を石化させる個性。普通に使えば相手を石にするんだけど、今回は人が相手じゃないしちょっといじって敵の動きを止めるだけにした。
「……逃げれば?」
「す、すげぇ……ありがとうっ!!」
「助かったぞ!!」
「怖かったぁぁぁ……」
……やる気が感じられないのは何故だろう?どうにも屁っ放り腰で、諦めが早い。さっきの女の子は違うけど、コイツらはそうだ。
【記念受験ってやつだ。受からないのは分かってるけど、人生で一回しかない高校受験。折角だったら受けてみたい。あわよくば合格したい。みたいな奴は多いんだよ】
「へぇ……なるほどね」
走って行くのを見届けながら、私は呟く。まあ、これでリタイアしてくれるならライバルが減っていい。目立って強いやつもいなさそうだしさ。
『『『コロス!!コロス!!コロス!!』』』
「あれ、弱めすぎたかな……?」
機械音声に気付いて振り返れば、すでに動き出している敵達。どうやら個性の調節を間違えてたらしい。
まあ……関係無いね。
「どうでもいい。潰すだけ」
3分後。会場から、稼働する仮想敵の反応が全て消え失せたのは言うまでもない。私がやったから。
◆
「入試の自信はどうかな睨美?」
「余裕。壊滅させたから」
「素晴らしいね。流石は僕の自慢の娘だよ」
「『先生』のおかげ」
「それは誇らしい」
あれから1週間経った。私は表向き住んでいる家として使っているセーブハウスで食っちゃ寝してたんだけど……黒霧さんに強制ワープで『先生』の元に連れてこられた。一言言ってくれればすぐ行くのに。
「ついでにこんなものもあるよ」
「ほう?」
私は、チェックしようと思って開きかけていた封筒を取り出して先生に見せる。もちろん、雄英からだ。
「開けていい?」
「もちろんさ」
ビリっと雑に封筒を破れば、中から出て来たのは円形の機械。
『んっんん〜……私が投影された!!』
「オールマイトッ!!」
突然、機械が作動し空中にディスプレイが出てきてこの日本No. 1ヒーローにして現代の平和の象徴、オールマイトが現れた。そして、『先生』の顔を潰した怨敵でもある。
『HAHAHA!!今年から雄英高校で教師になったオールマイトだ!!初めまして、陽炎睨美君!!1人1人にコレ作ってるから巻きで行かせてもらうよ!!』
「ふふふ……はっはっはっは!!まさか、君が教師とはね!!なるほど、
「……『先生』?」
「いやなんでもないよ……面白いことが分かったからね」
「『先生』が嬉しそうなら良い」
マスクをしてて分からないけど、何か楽しげな『先生』。うん、私も嬉しい。
『早速合否を発表しよう!!筆記試験はなんと全教科満点!!雄英高校初の快挙さ!!うん、君ホントに凄いね!?一体どんな先生に教えてもらったのか気になるよ!?』
「僕だよ、オールマイト。知ったらどんな顔するんだろうねぇ?」
『さて続いて実技試験、121ポイント!!私は審査していないけど見ていたよ。最終的に会場全ての仮想敵を倒したのをね。まさに圧倒的。敵ポイント、余裕の一位!!』
「……まあそうでしょ」
あんなに壊して私が一位じゃなかったらと思うと、他の人が恐ろしい。『先生』の元で育った私の人生は全て無に帰すんだから。
『この時点で、君の総合成績は1位。入試首席の座を手にしている。つまり……合格だ!!』
「……」
「おめでとう睨美。期待通り……いや、期待以上だ!!よくやった」
「……えへへ」
撫でてくれた。これが私にとって何よりのご褒美。嬉しい、『先生』の期待に応えれた。でも……
「これからだよ『先生』」
「ん?」
「まだ私、『先生』の後継者を成長させてない。だからまだ」
「……く、ククク。そう、そうか」
『では、陽炎少女……雄英で君を待っている!!』
「あ……」
『先生』と話している間に見逃してしまった。
「良いじゃないか。入試首席は君の物……今日はお祝いだ。御馳走を用意するよ」
「ッ!!鶏肉!!ありったけ鶏肉が食べたいッ!!」
「うん、じゃあすぐに手配しよう。準備ができたらすぐに呼ぶよ」
「やった!!」
鶏肉は全てを凌駕する!!唐揚げ!!照り焼き!!シチュー!!バター炒め!!
【……現金だなお前】
◆
「…………なるほど」
【なるほどなァ……】
男と蛇は、それぞれの場所で考える。片や、表示されるディスプレイを眺めながら。片や、しっかりと見届けていたソレを思い出しながら
『救助ポイント95。合計216!!君の勇気、しっかりと見届けたッ!!来いよ……雄英にッ!!』
「【ヒーローの才能も、あるみたいだね/あるんだなァ】」
「ホント……先に手に入って良かったよ。ただ……僕も少し、甘くなったかな。彼女は僕が育てた。そして……これからオールマイトが育てる……長く生きてみるものだねぇ……」
【アイツ……アザミとは違うベクトルでバカだなァ……が、面白い。長く生きてみるもんだ。オレの願いは『消えたくない』……そしてお前の願いは……】
ーーーー死にたくないーーーー
【似てんだなァ……オレ達】
睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)
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アザミ
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クロハ
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カゲロウデイズ
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メデューサ
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ゴルゴン
-
スネーク・アイ
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カンナ(永遠)
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サルビア(家族愛)
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エーデルワイス(大切な思い出)
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モミジ(大切な思い出)
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カエデ(大切な思い出)