蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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「期末試験、よく頑張ったね睨美」

「うん。オールマイト、弱体化とハンデありで私が押し負けた」

「なんと……睨美でさえも及ばなかったのですか。末恐ろしいですね」


現在地は分からない、でもここには父さんと黒霧さんがいる。だから家。おじいちゃんがいないのは残念だけど、テレビ越しに顔は見せてくれるから満足。


「そうだろう?なんせ僕に勝った男だ」


私たちは今、食卓を囲んで話をしている。まともにご飯を食べているのは私だけだけど、家族で食卓を囲んでいるのだからなんだって良い。


「黒霧さん、弔君の調子は?」

「とても苛ついていますよ」

「……だろうね」

「ですが、義蘭からの紹介で仲間を増やす流れにはなりそうです。発展途上ですね」

「今のままだと使えないからしっかりさせてね」

「承知しました」

「そうだ!!睨美、少し早いが誕生日プレゼントを用意したんだ。当日はまた忙しくなりそうでね。直接渡せないのも忍びないから今ここで渡させておくれ?」

「やった!!今年は何をくれるの!?」


父さんからのプレゼント!!毎年私が欲しいものをピンポイントでくれるから今年も楽しみ!!


「まずは私から、あまり品質がいいものとは言えませんが……こちらを。開けていただいて構いません」


黒霧さんからは長方形の箱に可愛らしいピンクの包装がされたものを渡された。丁寧に開けて中身を見ると……


「写真立て?いや……壁掛けタイプのフォトフレーム……」

「ええ、手作りしてみました。お気に召さなければしっかりしたものを後日郵送しますが……」

「ううん、これが良い。ありがとう黒霧さん」

「喜んでいただけたようで何より」


まさか、脳無のはずの黒霧さんにこんな細かい作業ができると思わなかった。いや前までは出来なかったはずだしできたとしてもやらないはず。どんな調整をしたんだろう。


「家族写真はどうしても撮れないからね。せめて級友との思い出作りをしてごらん」

「……難しいけど、父さんがそう言うのなら頑張る」


すごいなぁ、しかも装飾がいちいち可愛い。私向けというよりは、ネットで女の子が喜びそうな装飾を調べた感じがする。でも、黒霧さん……お兄ちゃんみたいな存在が私のために作ってくれただけでとても嬉しい。


「次は僕から。少し気が早いけれど……今までこういう贈り物はしたことがなかったからね。今までとは趣向を変えてみた」

「これは……マフラー?夏前だよ?」

「クリスマスはいつもジャンルが違っただろう?年頃の娘にこういうプレゼントは好まれないと聞いたことがあったから今まで送らなかったんだがね」


【…………】

父さんからのプレゼントは真っ赤なマフラー。夏前の今の時期にはふさわしくないけれど、寒暖差の影響を受けない私は確かにこういうのを一つも持っていなかった。

それでも、なにより……


「ありがとう!!父さん!!一生大事にするね!!」

「一生とは、嬉しいこと言ってくれるね。海外の知り合いに頼んでサポートアイテムにも使われる素材をふんだんに使ってもらったんだ。耐久性、防火性にも優れているからとても頑丈だよ。それにね睨美、これだけじゃない」

「まだあるのっ!?」

「でもそれはまたの機会にしよう。出来るだけ誕生日当日に渡したいんだ」

「うん、じゃあ待ってる」

『最後はワシからじゃな』


そして画面越しにおじいちゃんが話しかけてきた。


『正確にはワシ、先生、黒霧からのプレゼントにはなるんじゃが……』

「何を言うんだドクター。ドクターのおかげで最高のプレゼントが出来るのだから誇ってくれよ」

『先生がそう言うなら仕方なかろう。黒霧』

「はい」

「ワープゲート……?」


おじいちゃんの合図で黒霧さんがワープゲートを出した。ということはこっちの拠点には輸送出来なかったのかな?


「お初にお目にかかります()()()


へっ……?お嬢様?


「ワタクシの名前は黒影、黒霧と同じ特殊型脳無でございます。本日よりお嬢様のメイドとしてお世話をさせていただきます。ワタクシはお嬢様の()()ですのでお好きなようにご活用くださいませ」


ゲートの中から歩いてきたのは、自己紹介から想像もできない真っ当な人間の女。ただし全裸だ。


「なぜ……全裸……」

「直前まで培養液でのスリープモードでしたので。省エネというやつですわ」

「なるほど……?」

『驚いているところすまないが説明をしておこう。ワシからの誕生日プレゼントは其奴じゃ。まあ死柄木弔にとっての黒霧と同じように扱えば良いじゃろう。黒霧よりも戦闘面では役に立たないじゃろうが本人が言う通りメイドのように身の回りの世話はできる。それと個性じゃが……黒影、説明しなさい』


おお、ちょっと面倒くさかった家事全般任せても良いってこと?超便利じゃん。


「はい、ワタクシの個性は『潜影』。黒霧と同じく座標さえわかれば影と影を移動することが可能です」

「ッ!!影同士が繋がっている必要は?」

「ありませんわ。ただし時刻で影の位置も形も変わりますのでその都度座標を変えないといけませんわね」

「あー……使いにくいんだ。黒霧さんの下位互換……ん、調整は?」

『今の所必要ない。特殊型、とは一概に言ってもその実例は黒霧と黒影だけなんじゃ。黒影は本来はまた別のジャンルで区切らねばならないんじゃよ。個性因子の突然変異と言っても過言ではないわい。それほど人間らしい脳無は見たことないじゃろ』


ほんとだよ。脳無って名前負けするくらいには人間らしい。これでも一応どこかの誰かの死体を元にしてるんでしょ?とんでもない脳無が完成したんだね。


「でも、これは父さんが持つべき脳無のはず。使い方が面倒だからと言って、大事な逃走手段の一つになる。サンプルだけ取って個性を抜くべき」

「睨美の言う通りだよ。でも、出来なかった。個性が奪えなかったんだ」

「そんなことがっ……?」

「個性因子の定着が激しくてね。個性を奪えば機能を停止させてしまう。脳無としては欠陥品もいいところだが、僕には別の個性がある。だからこそ、睨美にあげたかったんだ。受け取ってくれるかい?」


受け取らない理由がない。むしろ私が居れば黒影のデメリットは薄まるのだから活用しない手はない。


「黒影」

「はい」

「名前、女の子らしくしよう」

「かしこまりまし……は?」

「いいよね、父さん?」

「好きにするといい。それはもう君のものだ」


黒影が呆けている、表情までしっかりしていてよく出来た脳無だね本当に。


「私の名前から一音あげる……ん、今日からお前の名前は御の影と書いてミカゲ……『御影』」

「ッ!!ありがたき幸せ……ワタクシ、御影はお嬢様に永遠の忠誠を捧げますわ」


良い、良いね、これで私が家事を気にせずゲームができる!!便利な道具を手に入れてしまったよ!!どうする相棒!?

【お前の堕落をこれから見なきゃいけないオレの身になれよォ】

それにしても、御影って少し私に似てると思わない?髪とか顔とか。

【そりゃまァ、遺伝子使ってんじゃね?】

だよねぇ……じゃあ妹?

【まァ捉え方次第だなァ……(人間扱いする気か?この動く屍を?)】


「じゃあ御影、最初の命令」

「何なりと」

「服着て」


「おやおや」『ホッホッホ』

「気が合いそうで何よりだよ、僕の可愛い娘」


30話

 

 

 

「御影……便利」

 

「光栄の極みですわ。それでは行ってらっしゃいませお嬢様。家事はお任せください」

 

「……よろしく」

 

 

御影を家に連れて帰った翌日、私はやらせることを説明して登校をするはずだった。でも、御影が座標さえ教えてくれれば『潜影』で送迎ができる、と言うので『目を凝らす』個性で座標を言うとすぐに送ってくれた。今いる路地なら、学校のある朝は絶対日陰だから安心。それに目の前がマンションだからよっぽど変なヴィランや天才でもない限り破壊されることもない。

 

つまり、登校時間ギリギリまで遊べるし日課の稽古が捗る……!!

 

トプン…と御影が影に潜るのを見届けてから私はいつも通り学校に向かう。はぁ……この坂道が1番だるいけど、流石にこの場所より先は誰に見つかるかわからないのがネック。

 

 

「おはよう諸君。早速だが、先日行われた期末試験の結果を伝える」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

 

ホームルームの時間、いつも通りにやってきた相澤先の発言によってクラスに緊張が走った。様子を見る感じ、4,5人冷や汗だらだらのがいるけど相澤先生の思考的に結局なんとかなりそうな気もする。

 

 

「残念ながら赤点は5人……芦戸、上鳴、切島、佐藤、瀬呂だ。したがって林間合宿は……全員行きます」

 

「「「「「どんでん返しきたぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」

 

 

魂の咆哮ってこういう感じのことだと思う。すごい声量。

 

【学生からすりゃァこういうイベントは逃せねェだろうからなァ】

 

ふうん、そういうものなんだ。林間合宿って1週間あるんでしょ?御影に家事を任せられるからあまり家のことは気にしなくて良いけど、ゲームのログインくらいはしたいなぁ。

 

 

「筆記の赤点はゼロだが実技でいま言った奴らが不合格だ。今回の試験、我々教師側はあえて生徒側に勝ち筋を残した状態で試験に臨んだ。そうしなければ最初から詰むやつばかりだったからな」

 

「本気で叩き潰すとおっしゃっていたのは……?」

 

「追い込むためさ。そもそも林間合宿は強化合宿……赤点者ほどここで力をつけてもらわないといけない。合理的虚偽って奴さ」

 

「「「「「ゴウリテキキョギーー!?!?」」」」」

 

 

でた、相澤先生お得意の合理的虚偽。

 

 

「しかし2度も虚偽を重ねられると、信頼に揺らぎが生じるかと!!」

 

「水差すなぁ飯田くん」

 

 

飯田の言いたいことは分かる。この後の試験とかで何言っても合理的虚偽で結局大丈夫でしょ?みたいな空気になるのは良くない。まあそもそもこの3、4ヶ月で相澤先生にそんなこと思うわけないってのも分かる。

 

 

「確かにな、省みるよ。ただ全部嘘ってわけじゃない。赤点は赤点だ。お前らには別途で補習時間を設けてる。ぶっちゃけ学校に残って補習するよりキツいからな」

 

 

これでHRは終了。その後は試験後なのでいつもより軽めの授業を受けた後、放課後まで時間が過ぎた。

 

 

 

「何はともあれ、全員で合宿に行けるのは良かったよね」

 

「1週間の強化合宿か」

 

「結構な大荷物になりそうだね」

 

 

下校前にみんなが話している。私はさっさと帰ろうかと思ってたけど、女子組に少し引き止められてるから会話をしていた。話題はもちろん合宿について。HRで配られたしおりを見ながら話している。

 

 

「林間合宿なら虫除けスプレーは欲しいよね」

 

「色々準備しなきゃ……」

 

「……私、そういうのほとんど持ってない。そこまで必要?」

 

 

皆合宿に持っていくものについて話してるけど、要は1週間分の着替えがあればいいんでしょ?

 

 

「ダメだよ睨美ちゃん!!日焼け止めとかないととんでもないことになるよ!!」

 

「……そうなの?」

 

 

日焼けしても『目を醒ます』個性でもと通りになるし別にいらない気がする。

 

 

「じゃあじゃあ明日は休みだし試験明けってことで、みんなで買い物行こうよ!!」

 

「お、良いじゃん。何気にそういうの初めてじゃね?」

 

 

え、え……ちょっと待って。もうそういう感じの空気になってる。いや私はまだ行くとは……あ、はい、行きます……

 

轟と爆豪は上手く逃れたらしい。ちくしょう……せっかくの休日が……でも、まあいいや。

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ここら辺で1番大きいショッピングモールに集合することになったので適当な服に着替えて家をでた。送迎はもちろん御影の個性で。

 

 

「行ってらっしゃいませお嬢様。本当にその服装でよろしいんですの?ワタクシの手にかかれば最上のコーディネートを……」

 

「いい。皆で買い物に行くだけ」

 

「畏まりました。出過ぎたことを言ってしまい申し訳ありません。ぜひ楽しんできてくださいませ」

 

 

『目を凝らす』個性で影がある場所の座標を把握して御影に送迎してもらう楽さが異常すぎて怖い。このまま私は怠惰になっていくんだろう。うん、最高。

 

 

「お、陽炎じゃん……それ暑くねぇの?」

 

「……別に」

 

「見てるこっちが暑くなってきたよ……」

 

 

まず出迎えてくれたのは上鳴、耳郎。2人とも私の格好を見てうげって顔してる。

 

何を隠そう、私の私服は紫のジャージ。お腹のとこにディスクの柄が入っててなかなか気に入ってる。ズボンは緑色の長ズボンで、左だけ膝下まで折り上げてる。普段使いしてる良い値段のイヤホンを首からぶら下げておけばもう完璧。

 

【……なんでこの時代に木戸つぼみみたいな格好の服売ってんだかなァ】

 

 

「睨美ちゃんって非対称っぽいの好きなの?コスチュームも足のとこに輪っかみたいなのついてるよね」

 

「……コスチュームは発注先の趣味。でも、嫌いじゃない」

 

「大体揃ったな」

 

 

葉隠とか麗日と話しているうちに、今日来る予定の全員が揃った。固まっていると時折一般人から声をかけられる。どうやら体育祭のTV中継を見ていたらしい。私たちって意外と有名なんだね。

 

 

「皆欲しいもんバラバラみたいだし、3時にまたここで集合しようぜ!!」

 

「じゃあ解散!!」

 

「睨美ちゃん行こー」

 

「ん……どこに?」

 

 

葉隠が私の腕を掴んで誘ってくれた。隣には上鳴も居てどうやらシューズを買いに行くらしい。

 

 

「アウトドア系って、どんなのが良いんだろうな」

 

「山登りの頑丈な靴みたいなイメージかなぁ」

 

「お、これよくね?」

 

「……良いカラー」

 

「だよな!!分かってるわ陽炎!!」

 

 

流石にここら辺で1番広いだけあって、靴屋だけでも数軒見えた。まだほとんど歩いてないけど、さすが個性に合わせたものを売るって謳ってるだけある。サイズ以外にも形が獣足にあったシューズとか色々ある。

 

 

「そういえば連れてきちゃったけど、睨美ちゃんシューズ必要だったかな?」

 

「ん、こういうの大体持ってないから……今日で揃える。着替え以外、しおりに書いてあるもの持ってない」

 

「とんでもねぇ大荷物に……って、陽炎の怪力なら余裕だもんな」

 

「……自分で買い物、しないから色々教えてほしい」

 

「「…………任せて!!」」

 

「……ふふ」

 

 

すっごい笑顔でサムズアップする2人につい小さく笑いが出る。

 

 

「よっしゃ陽炎、今日は買い倒すぞー!!他の奴らも手伝ってくれるよう頼んでみるわ!!」

 

「今日はいっぱい楽しもうね!!睨美ちゃん!!」

 

「……ん、ん?」

 

 

あれ……なんか、ちょっと哀れまれてる気がする。

 

【そりゃお前……いやァ、面倒くさいからいいかァ……】

 

なに、相棒。急に裏切るじゃん。

 

【いいから今日はその2人に任せとけェ】

 

……分かった。

 

 

 

それから1時間ほど、たまにほかの買い物してるメンバーと合流して色々買って少し休憩することにした。

 

 

「先にキャリーケース買ってよかったな陽炎」

 

「……ん、重くないけど袋を全部持ち歩かなくていいから、ちょうど良い」

 

 

私、上鳴、葉隠に加えて尾白、佐藤、耳郎の6人はフードコートのテーブルを囲んで飲み物を飲んでいる。

 

 

「陽炎が思ってたより常識知らずでびっくりしたよ」

 

「女性ものは葉隠と耳郎がいてくれて助かったわ」

 

「というか、普段どうやって生活してるのかな陽炎さん……」

 

「こんなで料理できるの詐欺だろ……」

 

「でも、睨美ちゃんのことあんまり知らなかったし、ちょうど良かったよね!!」

 

 

上から順に耳郎、上鳴、尾白、佐藤、葉隠の言葉だ。うん、ひどい。

 

【酷いのはお前の生活態度だろォ】

 

私が買ったキャリーケースは2週間分サイズの大きいやつで、身長的にちょっと持つのが辛い。もっと小さいやつでよかったんだけど、女子2人から色々アドバイスされた結果、こうなった。でも他にも皆のアドバイス通りに必要なものを揃えた結果ケースの中に色々買ったものがしっかり収まった。

 

 

「それにしても陽炎って一人暮らしだったんだな。飯はどうしてんの?」

 

「気が向いたら作る。それ以外はレトルトか出前」

 

「出費すごくない……?」

 

「……自慢じゃないけど……お金には余裕がある。八百万基準で見られると困る」

 

「羨ましいぜまったく。バイトする余裕ないくらい忙しいのも雄英っぽいけどさ」

 

 

クソ暑い日に飲むコーラが1番美味しい。

 

 

「……そういえば、峰田がピッキング用品がどうとか言ってた」

 

「アイツはほっとけ。今とめてもどうせ別で買うだろ」

 

「あの執念はもう尊敬のレベルだよ。低俗すぎるけどね」

 

「「最低」」

 

 

その後も適当に雑談をしてからまた買い物に戻ろうとした時、私のイヤホンが変な音を立ててイカれた。

 

 

「ッ!?!?イヤホン……がっ」

 

「うわ、本格的に壊れてるじゃん。これは……買い直しだよ」

 

「ぶふっ……陽炎、顔すごいぞw」

 

「お気に入り……愛用品が……」

 

「今から買いに行く?」

 

 

いついかなる時でも一緒に過ごしてきた親友レベルの私のイヤホンが……ショック。

 

【本当の意味で()()()()()()()()()一緒にしてたからだろォ。風呂トイレ以外ずっと使ってるか首からかけてたら劣化が早くなるのも当たり前だァ】

 

ぐっ……何も言い返せない。

 

 

「……皆の買い物が優先。別の日に買いに行く」

 

「あたしはついでにオーディオコーナー見たかったし。皆は?」

 

「俺は全部そろえたから全然良いよ」

 

「俺も」

 

「私もー!!」

 

「俺ヘッドフォン買いに行きたかったんだよな。せっかくだし良いの教えてくれよ陽炎。そういうの詳しいんだろ?」

 

「……うん、ありがとう」

 

 

皆、優しい……席が近いからよく話すだけかと思ってたけど、どうしてここまで良くしてくれるんだろ。

 

【友達だからだろ】

 

友達?……そっか、友達からかぁ。私には難しいかも。

 

 

「あ、そうだ!!ついでに皆で写真撮ろうよ。私服で皆で集まるのもなかなかないし」

 

「良いじゃん良いじゃん。後で集合写真とろーぜ!!」

 

「委員長に、『一般の方の邪魔になるから控えないか!?』とか言われないかな」

 

「尾白似てねー」

 

「……ふふ、うん。似てない」

 

 

なんか……心が落ち着く。『目を覚ます』個性を使ってるわけでもないのに。

 

 

「あっ、すいませーん。シャッター押してもらえませんかー!!」

 

「ええ、畏まりましたわ」

 

「え……?」

 

 

葉隠がスマホお手に話しかけた一般人。黒髪ロングの私より少し背の高いゴスロリファッションのその女……御影がなぜかそこにいた。しかもなんか日傘差してるし。

 

 

「うおっ、すっげぇ美人!?葉隠ナイス!!」

 

「ゴスロリが似合う人、初めて見たかも」

 

「………『御影、何をしてる』」

 

 

『目をかける』個性で御影の脳内に語りかけ『目を盗む』個性で御影の返事を待つ。私の個性についてはおじいちゃんから聞かされているらしく御影には説明せずとも理解しているはずだ。

 

 

『お嬢様のご学友を一目見てみたいと思いまして……まさか声を掛けられるとは思っていませんでしたの。ドクターから外出の許可を頂いていますのでお気になさらずお過ごしください』

 

 

いや、気にはなるでしょ。外出許可が出てるのは、御影の戸籍が存在することから想像に難くない。でも、目立つのは違うよね?ゴスロリなんか着てたら超目立つよね?てかその服、まさか今朝私に着させようとしたやつじゃないよね???

 

 

「それでは皆様、お並びください…………ああ、そこの蛇目の方少し右に。ありがとうございます」

 

「『後で……お仕置き』」

 

『ああん!!いけずですわ。ワタクシはただ黒霧の誕生日プレゼントを活かすべきと考えただけですわ〜』

 

 

コイツ……いい性格してる。生前の性格がベースになってるって話だけど、一体どんな奴だったんだろう。まあ、今のうちに本性が顕になっただけいいか。この愉快犯め……まあどうせベースの人間も元ヴィランだろうし、好戦的じゃないからいいや。私の命令には忠実だし、これくらいラフな方が私も遠慮しなくてすむ。

 

 

「『他人のふりしてるけど、今後一緒にいるところ見られたらどうするつもり?』」

 

『ヴェールのおかげでそこまで顔は見えませんわ。それにこのヴェール、ドクター経由でいただいたサポートアイテムでございますわ。この通り濃さを調節出来ますので今はほぼワタクシを認識出来ません』

 

 

なるほど、用意周到にしてる分タチが悪い。確信犯じゃん。まあ後にしよ。

 

 

「それでは撮りますわね。はい、チーズ」

 

 

カシャッ




夕方


なんか、弔君居たらしい。

緑谷が自分の命と周りの一般人の命を盾に話し込んでたそう。あの雑踏の中で『目を盗む』個性なんか使ったら大量の心の声で頭が割れるくらい痛む。

2人の会話内容はわからないけど、あのクソ陰キャがわざわざこんなショッピングモールにまで出向いてくるくらいには心境の変化があったんだろうね。

うん、でもね弔君。どうして今日なんだ。さっきまで超楽しかったのに……今は急なモール閉鎖でお通屋ムード。せっかくみんなで買い物してたのにとんでもない水の刺され方で今イラついてるんだよね。

次あったら腹パン一発くらい入れとかないと気が済まない。


「おかえりなさいませお嬢様」

「ただいま御影。次回からはせめて事前に報告して」

「畏まりましたわ。少し茶目っ気を出しすぎました」


少し、ねぇ……


「まあ別に利敵行為をしてるわけでもないし。まあ私の機嫌次第では普通に殴るから」

「一応ワタクシ……『潜影』以外の個性を持っていないので身体能力は人間と同じですわ」

「知ったことじゃない。じゃあご飯よろしく」

「はい、今日は反省を込めてお嬢様の好物ばかりにしてみました」

「許す」

(チョロ……)

「聞こえてるよ」

「少々お待ちくださいませ〜」


本当に調子いいなアイツ。
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