蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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目が回るような話
31話 2人の英雄編 #1


 

 

「お嬢様、お飲み物をお持ちしました」

 

「ん……御影も休んでいいよ」

 

「かしこまりました」

 

 

窓の外は見渡す限りの青。晴天の空とキラキラと輝く海が綺麗だなぁと思う。そういえば私は飛行機に乗ったことがなかったっけ。黒霧さんと御影が居れば世界中どこでもいけるからなぁ。

 

【人生初の飛行機がプライベートジェットっつゥことにはもう驚くほどでもねェなァ】

 

 

私の目的地は巨大人工移動都市『I・アイランド』

 

世界中の科学者達が集まるこの島では個性やヒーローアイテムの研究成果を展示した個性技術博覧会『I・エキスポ』が開かれるらしい。

 

私は()()()企業の代表代理としてレセプションパーティーの招待を受けている……という体になっている。

 

私の本当の役割は、この島で起こる茶番の後始末だ。

 

現役時代のオールマイトのコスチューム制作を全て担っていた天才科学者デヴィット・シールド博士とその助手が組んだ計画。そのために手引きされたヴィランが起こすだろう事件に於いて、成功しても、失敗してもその主犯格であるヴィランを人知れず抹殺するのが今回の私の役割。

 

そのヴィランというのが、個性『金属操作』の……名前なんだっけ。

 

【ウォルフラムだろォ。覚えとけよ】

 

あーそう、ソイツ。父さんの話を聞く限り、筋力増強の個性を一つあげたみたいなんだよね。どうしてそこまで手伝ってあげるのか質問したら、

 

 

『オールマイトの親友が悪事に手を染めるのを見てみたい』

 

 

だとさ。いい趣味してるよね父さん。そういうところも好き。

 

【お前の趣味もまあまあ終わってるだろうがァ】

 

うるさいよ相棒。

 

 

でも、オールフォーワンに関わったのがたとえこちら側からだとしても、その末路は……変わらない。それはきっと私も同じ。今のヒーローに父さんを倒せるとは思えないし、そもそもヴィラン連合がいい感じに成長すればきっと詰む。

 

どうしてこんな役割を引き受けたのかって?

 

決まってるじゃん。勘を取り戻すため。私は少し怠けすぎたんだと思う。だからこの前の買い物でいらない感情が沸き起こった。今回の仕事でちゃんと殺意と使命感を思い出すんだよ。まあ全部が終わった後に一睨みするだけなんだけどね。

 

そういうわけで私は御影と一緒に目的地に向かっているというわけ。でもちょうど今機内アナウンスがなったからもうすぐ着くらしい。さてと、コスチュームに着替えなくちゃ。

 

なんか学校に申請しとけば、ヒーロー科学生でもコスチューム着用オーケーらしいよ?タルタロス並のセキュリティって話だけどどうしてこういうところガバガバなんだよ。コスチュームの中には攻撃性の高いものもあるだろうし。

 

「御影、ふざけた格好しないでよ」

 

「もちろんですわお嬢様。今回はお嬢様の付き人としての役割を全うするためにお供させていただいております。ワタクシのミスは旦那様に傷をつけることと同義と捉えていますわ」

 

「……よろしい」

 

 

御影の言う旦那様とは父さんのこと。御影も本性がアレだが自分の役割というのはちゃんと理解しているらしい。そもそも脳無なのだから理解してなければ欠陥品も欠陥品だけどね。

 

 

「ん……御影、本当に戸籍関連に問題はないんだよね」

 

「そう伺っております。ドクターが経営する孤児院出身者ということになっておりますわ。もちろん表向きの孤児院ですが」

 

「まあ……大丈夫じゃないと父さんは送り出したりしないよね」

 

 

普段の言動のギャップで本当に心配なんだけど、マスター権限は私にあるから最悪強めに命令すれば遂行するだけのマシーンになるっておじいちゃん言ってたしなんとかする。

 

 

飛行機が島に到着した。ドラマで見たものより何倍も厳重な管理所を無事に通過して私達は島内に足を踏み入れることができた。

 

 

「……御影が22才設定なの、絶対おかしい」

 

「あら、見た目の年齢的には最適とドクターは仰っていましたわ」

 

 

見た目は艶のある綺麗な黒髪の巨乳美人なんだからそりゃ大丈夫だろうね。生後1ヶ月も経過していない奴が何言ってんだって話だよ。

 

 

「それにしても……」

 

 

人が多い。今日はまだ正式なエキスポ開催日の前日、プレオープンだというのに、一般参加者や島の関係者をはじめ世界中のヒーローがそこら中にいる。タルタロスの警備を越えた上でこの数のヒーローを相手にするのは流石に私でも厳しい。

 

この人数じゃ『目を盗む』個性も使いたくないし今日だけは純粋に楽しもうかな。

 

 

「それではお嬢様、先にホテルへチェックインを済ませましょう。お荷物、失礼しますわ」

 

「ん……助かる」

 

 

このコスチューム、なぜか本当に着心地がいい。仕様書に書いてあった通りの性能のはずなのに普段着としても優秀。ミニスカートがちょっとミニ過ぎる気がするけどまあいいや。あーでも靴はなんとかしないとなぁ、今のところ問題ないけどもうちょっと機能性が欲しいかも。

 

 

ホテルでのチェックインを終えて私と御影は散策に出かけることにした。アトラクションは乗る気が起きなかったのでパスし乗っている人のリアクション見て楽しむ。

 

【誰かさんに似ていい趣味してんなァ】

 

いやだってさ、アトラクションより高速だったり高い場所だったりとスリルのあることしてるんだから今更じゃない?

 

【それはァ……チッ……やっぱ次元がちげェ……】

 

 

「誰かと来てるならまだしも、御影だし」

 

「唐突にとんでもない悪口を言われましたわ!?」

 

 

およおよ泣き真似をしてる御影だけど、そこまで人間のフリが得意なら1人でほっぽり出しても大丈夫そう。

 

 

「御影、飲み食いは?」

 

「通常の人間と同じ仕様ですわ。排泄等も必要です」

 

「じゃあカフェ……行こう」

 

 

そこにちょうどいいカフェがある。パラソル付きのテーブルが外にもあるので、風景を眺めなから少しゆっくりしたいな。

 

 

「好きなものを……好きなもの、ある?」

 

「はい、アイスコーヒーをいただきますわ」

 

「……昔の好み?」

 

「ワタクシでは分かりませんが、このメニューでわざわざブラックコーヒーを望むのはおそらくベースになった人格の好みでしょう」

 

「自らを知覚してバグが生じない……御影、お前は優秀でいい。黒霧さんは完全に別人格らしいのに」

 

「お褒めに預かり光栄ですわ」

 

 

私はいつも通りレモンティー、御影はアイスコーヒーをそれぞれ注文し配膳を待つ。と言うこともなく、意外とすぐに出てきた。

 

 

「お待たせしましたお客様」

 

「ん……ん?上鳴?」

 

「おいらもいるぜっ!!」

 

 

飲み物を持ってきたのは、まさかの上鳴と峰田。なんで店員なの、というかなんでここにいるの?

 

 

「……なぜ?」

 

「ここのバイト中なんだ。休み時間はプレオープンを楽しめるし一石二鳥だろ?」

 

「そんなことより陽炎!!そこの美女は誰なんだよっ!!」

 

 

I・アイランドってバイトで外部の人間を雇うんだ……やっぱりガバガバじゃない?

 

 

「付き人の御影」

 

「御影と申します。睨美お嬢様のメイドでございますわ。上鳴様、峰田様、いつもお嬢様がお世話になっております」

 

「あ……はい、上鳴電気って言います!!って、お嬢様!?陽炎お前やっぱいいとこのお嬢様だったのかよ」

 

「うちのクラス……八百万以外にもお嬢様いたんだなぁ」

 

 

御影の所作はメイドとして完璧だと思う。そこまで詳しいわけじゃないけれど、普段のチョケがないと本当にしっかりしたやつに見えるのがタチが悪い。

 

 

「まあ……会社の代表代理で来たし」

 

「すっげぇ!?マジでお嬢様じゃんか。買い物の時の世間知らずっぷりに謎の説得力がでたな」

 

「他にも、A組……いるの?」

 

「えっと……緑谷、麗日、耳郎、八百万、爆豪、切島、轟……あと委員長もいたっけ」

 

「…………多くない?」

 

 

思ってたより人数が多い。ここまでくると運命的な何かを感じる。でも、少し面倒かな。知り合いが多ければ多いほど、私の『目を隠す』個性の信用度が下がる。

 

 

「爆豪は体育祭1位の景品、切島はその付き添い。八百万は株持ってるから招待されてるってよ。麗日と耳郎がその付き添い。轟と委員長は親がヒーローで招待されてるからその代理らしい。緑谷は知らね」

 

「……なるほど」

 

 

緑谷だけ理由不明ね、隠してる?でも隠す理由がないしクラスメイト同士の会話でわざわざ自分だけ説明しないのもおかしい。何かあるのかな?

 

上鳴との会話で情報を整理している途中、峰田はずっと御影にだる絡みしてる。

 

 

「御影さん彼氏いるんすか!?」

 

「メイドですのでお付き合いしている男性は居ませんわ。お嬢様の家で使用人としての職務を全うしておりますので作る予定もございません」

 

 

びっくりするぐらいまともに、正論で返していた。雰囲気的に取り付く島もないと言う感じじゃないけど、拒絶はしっかり伝わってくるこの感じ。

 

 

「いいなぁ。陽炎いつもあの人にお世話されてんの?」

 

「ん……優秀」

 

「一人暮らしって言ってなかったか?」

 

「父さんが、一人暮らしを始めて結構経つのに心配して送ってくれた」

 

「へ〜、いい親父さんだな!!」

 

「うん……尊敬してるし大好き」

 

 

上鳴、わかってるじゃん。その通り父さんは最高に偉大で私に優しいんだよ。

 

 

「……で、他の人達は?」

 

「ヴィランアタックっつーアトラクションやりに行ったっぽいぜ。そのあとはわかんね」

 

「へぇ……ん、じゃあ……バイト、お疲れ様。御影」

 

 

御影も飲み物を飲み終わったっぽいので、席を立つ。私の声に、御影はすぐに反応し峰田との会話を切り上げた。

 

 

「お二人とも、お仕事頑張ってくださいませ」

 

「「は、はい!!頑張ります!!」」

 

 

ニコッと御影が微笑めば、2人はめっちゃ照れながら返事してる。コイツらはほんとに……

 

 

「面倒なことになった」

 

「そうですわね。お嬢様のご学友の方々に出くわさなければいいのですが」

 

「多分無理……レセプションパーティーで最低でも轟、飯田、八百万はであってしまう。緑谷以外はパーティーに出る。もしかしたら緑谷も」

 

 

特に目的地もない。上鳴の言ってたヴィランアタックは気になるけど目的遂行のために目立つのも良くないからね。格好の時点でまあまあ目立ってる気がするのはご愛嬌。

 

 

「ホテルに戻ろう。やることない」

 

「畏まりましたわ」

 

「……歩くよ?」

 

「わかっておりますわ〜」

 

 

コイツ、個性を使う振りだけしやがって……はぁ、本当にするつもりがないのは分かるけど一瞬焦る。

 

ホテルの部屋に戻った私たち。私は持ってきた携帯ゲーム機で無限に続く周回作業をやっている。具体的に言えば一狩り行って御守りガチャタイム、後はわかるね?

 

そして御影はといえば、夕方のレセプションパーティーで着る私のドレスコードを悩んでいた。

 

 

「お嬢様の美しい髪色に合わせるならこのドレスなのですが、黒ばかりではやはり地味に感じてしまいますわね。しかしあまり派手すぎるのも使命遂行にはふさわしくありませんし……」

 

 

思ったよりガチ悩みしていた。何よりタブレット端末で衣装の貸し出しカタログをずっと物色しているのが本当にガチってる。流石にプロヒーローでもないのでコスチューム着用での出席はマナー違反だろうと思い適当なドレスは選んできたんだけど、そんなことは御影に伝えていないので今一生懸命悩んでいる。滑稽で大変面白い。

 

【死体に同情するのなんか初めてだぜェ】

 

まあどうせ真面目に戦闘をするわけでもないので今日はコスチュームよりも高めのヒールを履こうと思ってるし、今御影が見ているであろう衣装でも十分だと思うので、私が選んだやつよりよさそうならそっちにしようかな。

 

ぶっちゃけパーティーで美味しいものをただでいっぱい食べられるって事実のほうが私には大事だし。

 

 

「ああ〜!!悩みますわ〜!!」

 

 

うるっさ。あっ……閃光玉外した……チッ……

 

クソほどうるさい御影を横目に、私はレセプションパーティーの時間までゲームに勤しんでいた。ネトゲ出来ないからね、仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワタクシは、神を見ている気分ですわ。ああっ!!後光がっ!?」

 

「見えるわけない……褒め方が大袈裟。その後光は多分、夕陽がバックだから……」

 

 

夕方、御影に身支度を頼みドレスの着付けと化粧をし終わった私は、過剰反応をとる御影の頭をしばきながら会場まで歩いてきた。

 

この間になぜか飯田から連絡があったんだけど、

 

『陽炎君!!君もレセプションパーティーに参加すると上鳴君と峰田君から聞いたよ!!雄英生として恥ずかしくないよう時間厳守で集合してくれたまえ!!場所は〜〜だ!!』

 

とのこと。余計なことを口走るバカ2人は後で締めるとして、なぜこうも人の話を聞かないんだ飯田は。そもそもこっちは御影もいるのだから個人で参加しようと思ってたのに、それにお前らが居たら私が動きにくいだろう?なんて、心の中でグチグチ文句を言ってやる』

 

 

「あの、その愚痴をワタクシの脳内に直接語りかけるのはやめていただけませんかお嬢様」

 

「ん……ごめん。わざと」

 

「従者の扱い方が雑ですわ〜!!」

 

 

御影で遊ぶとこういう時暇じゃなくていいね。

 

会場であるセントラルタワー2階に到着した。ゲームに熱中しすぎてたせいもあって少し遅れたけど、パーティーへの参加はいつでも大丈夫なので口うるさく言ってくるのは飯田だけだろうということでなんの気知らずにそのまま行くことにする。

 

あ、そうだ。せっかくだし少しイタズラをしようかな。

 

 

「御影……従者らしくしろ」

 

「承知いたしました」

 

 

『目を欺く』個性発動。姿勢を正しく歩き方をよりらしく、口角を少し上げ眉を少し下げる。

 

 

「お見事でございます」

 

「ふふ、そうでしょう?」

 

 

喋り方も丁寧なものにしたことで雰囲気の格が変わった。よし、完璧。じゃあ扉を潜ろう。

 

 

「あ、陽炎さ……ッ!?」

 

 

緑谷が私にいち早く気づき、そして目を見開いて言葉を失った。続いて飯田、八百万、轟、上鳴、峰田、麗日、耳郎、そして見知らぬ金髪メガネの女の子。全員が私の姿に目を奪われる。

 

 

「ごきげんよう。みなさんお揃いで、遅れてしまってごめんなさいね?」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

 

側から見れば深窓の令嬢。控えめな姿勢に声のトーンは申し訳なさを露わにしその立ち振る舞いは昔の上流貴族そのもの。

 

 

「みなさん……?ふふっ、パーティーに緊張してらっしゃるの?」

 

「か……かげ、ろうくん、だよな?」

 

「そうですよ?◯◯株式会社代表取締役代理、陽炎睨美です」

 

「「「「「「……!?!?」」」」」」

 

 

さらに全員が口を開けて絶句。元々声も出てなかったけど、余計にすごい。

 

ついでに『目を盗む』っと。

 

 

『えっっっっっっっ!?!?ダレ!?カゲロウサン!!ウソダッ!?カカカカカカゲロウサンガアンナヒョウジョウデホホエムワケガ……!?』

 

『こ、公私混同しないタイプだったのか!!ならば陽炎君、この飯田天哉。全身全霊を持ってヒーロー一家代理としての役目を果たさねば!?』

 

『陽炎さん、大人しい方だと認識していましたが上流階級の心得を習得されていますわね……実力もさることながら、末恐ろしいです』

 

『…………綺麗だ』

 

『うぇえぇぇぇぇ!?!?陽炎!?うっっそだろおい!!さっきまで気だるげに紅茶飲んでたアレがこの絶世の美女かよ!?世の中不公平だなぁ!?』

 

『【閲覧禁止】!?【自主規制】!!!!!うっひょっぉぉぉぉおグポペッ!?」

 

『睨美ちゃん!?ブルジョワやったん!?百ちゃんに負けず劣らずの気品……うっ』

 

『あっるぇぇぇぇぇ?おっっっかしぃぃぃなぁぁぁぁぁ????普段の更衣室じゃあたしより胸ないと思ってたのになんかドレス着てるとあたしより大きいってアレ詰め物だよねソウダヨネソウトシカカンガエラレナイハハハハハハハハハ………』

 

『すっごい美人さん。雄英高校ってこんなに綺麗な子もヒーローを目指してるんだぁ。イズク君の友達って凄いんだね』

 

 

かねがね好評である。峰田は煩悩というか気持ち悪かったからつい無音拳で処した。あれ、ほんとに好評かな?まともに褒めてくれてるの轟しか居なくない???あと金髪メガネ女子。君たちはゆるそう。

 

緑谷は次の訓練でしばき倒そう。あと女慣れしろ。

飯田はもっと抑えろ。

八百万は何考えてるかよくわからないや。

上鳴、どういう意味だ。アレってなんだアレって。

 

峰田、死ね。

 

麗日、そろそろ耐性つけて?

耳郎、ごめん。ごめんだからその思考そろそろやめてほしいな。憎悪がすごいんだ。後これ詰め物じゃないよ。御影の技術。

 

 

『当たり前の結果でございますわ!!!!お嬢様の魅力にかかればその辺の男など微笑むだけで落とせること間違いなし!!従者であるワタクシも鼻が高いですわ〜!!!!』

 

 

御影、うるさい。ああもうお前はいいやうるさいし。

 

 

「…………ん、冗談。ほら、戻した」

 

「「「「「「タチの悪い冗談過ぎる!!!!」」」」」」

 

 

口調はみんなバラバラだけど大体こういうこと言ってる。チョー楽しいこれ。またやろう。

 

 

【オマエはァ……ホントに……ハァ……クソガキがァ】

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