蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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《夕方》


「さっ、昨日言ったね!!世話焼くのは昨日まで!!」

「己の食う飯くらい、自分で作れ!!カレー!!」

「料理……まあいいや」


クソを下水で煮込んだような悪辣な訓練がようやく終わり、ピクシーボブに頼んで山一つできるんじゃないかってくらいの土を八つ当たりで破壊しまくってストレス発散しました。
雄英に戻ったら教師陣に1発ずつ殴っていいか聞く事を決意しました。

絶対許さん……!!

【職場体験で遊んでたお前にゃいい薬だァ】

…………ちっ、一理ある。

それはそれとして、今から料理するらしい。元から料理は出来る方だし苦じゃないけど、地獄(笑みたいな訓練してる他のみんなはなかなか辛そう。


「そういや陽炎って料理系のヒーローのとこに職場体験行ってたよな?作ってくれよー」

「いいよ」

「いいのか!?」

「ダメだぞ!!みんなで作るんだ!!」


飯田から注意を受けつつそれぞれ役割を決めて準備に取り掛かる。


「これ貸して、火をつける」

「おう、いいけどどうするんだ?ヤオモモにチャッカマン貸してもらおうぜ」

「こうする」


バチィン!!!


「「「「「「はい???」」」」」」

「前に漫画で……指パッチンで火をつけてたから、やってみたかった」

「それ漫画だからね!?」

「か、陽炎がどんどんバグキャラに……」


某グルメじだぁいな漫画はとても面白かったです。いつか釘パンチ出来たらいいね。

【大体似たような事やってんだろォ】



「俺……個性無しで火をつけられたら立つ背ねぇ」

「陽炎!!轟に謝れ!?」

「……なんで?」

「「「「「「いいから謝れ!?」」」」」」


この世の理不尽を味わった。なんでB組までそんなに言ってくるの???

【いや……今のはオマエが悪ィ】

相棒まで!?


ちなみにカレーは美味しかった。


35話

2日目 夜

 

 

2日目もクソみたいな訓練をなんとか耐えて、さっき夕食と風呂を済ませた。

 

今から始まるのはどうやら肝試し。お互いのクラスが交互に脅かし合う感じらしいけど、幽霊とか別に、ねぇ?

 

 

「ほら陽炎。くじ引き」

 

「ん」

 

 

尾白が持って来た箱から紙を一枚取り出した。ぶっちゃけ峰田以外なら誰でもいいんだけどね。あ、補習組は肝試しせずに相澤先生に連れ去られていったので5人マイナスの16人。偶数だからあまり物が出なくてよかったね皆。

 

 

「あ、陽炎さんと一緒の番号だ。よろしくね!!」

 

「……男子の中じゃ緑谷が1番ビビりそう」

 

「あはは……ご期待に添えないけど、僕そういうの大丈夫なんだ」

 

「へぇ……意外」

 

「意外とかっちゃんが、ね。あ!!これ内緒で!?」

 

 

ふ〜ん、へぇ?爆豪、苦手なんだぁ?いいネタ仕入れたなぁ?

 

 

「あの、陽炎さん……顔が怖いよ!?」

 

「ふふふ……ふふふふふふ」

 

「陽炎さん!?」

 

 

そして始まった肝試し。森の奥からA組の悲鳴がちょこちょこ聞こえてくる中、変な気配がして来た。

 

 

「……スンスン、焦げ臭い匂い、燃えてる?あの小鳥、大丈夫かな」

 

「陽炎さん、何か言った?」

 

「なんでもない」

 

 

【オイ、こいつァ……】

 

うん、多分弔君の作戦でしょ。ようやく他人を使う事を覚えたらしいね。しかも森を焼くのは陽動、目眩し、火力全てにおいて優れてるしとってもいい作戦。流石の私でも森林火災の中を進むのは御免だからね。

 

【あの愚図でもここまで成長するとはなァ。お前はどう動くんだァ?】

 

そうだね……()()()が来てくれたら1番いいんだけど……あ、来た?

 

 

「キャッ!?」

 

「ピクシーボブ!?」

 

 

突然ピクシーボブが草むらに吸い込まれていった。そしてその中から2人の男……男?が出て来た。

 

 

「ご機嫌よろしゅう!!我らヴィラン連合開闢行動隊!!」

 

「この子の頭、潰しちゃおうかしら?どうしちゃおう!!」

 

 

1人はトカゲの見た目の男。もう1人は布に包まれたでかい棒でピクシーボブの頭を抑えている、口調からしてオネエの大男。

 

ふぅん。少数精鋭……精鋭?あの個性で?

 

 

「あら?捕縛リストにあった顔。名前は確か……陽炎睨美、だったかしら?」

 

「「「「「「ッッッッッ!?」」」」」」

 

 

あれ、本当にお迎えが来てくれたみたい。うーん……ヒーロー2名、飯田、緑谷、その他大勢がいるこの状態で私だけどうやって捕獲されようかな?いや、むしろ捕獲されない方が今後の弔君のため?

 

さて、どうしようかな。

 

 

「委員長!!狙いは陽炎さんよ。絶対に交戦はしないように宿まで行って!!」

 

「了解しました!!行くぞ皆、陽炎君も早く!!」

 

「……ん」

 

「逃すわけ……ッ!?」

 

「逃させる!!」

 

 

私に向かって突撃させようとして来たトカゲ男を、虎が食い止めた。おー、やるねぇ。

 

 

「先に行ってて!!マンダレイ、僕、洸太君の居場所知ってます!!」

 

「ッ……分かったわ!!保護をお願い。みんな急いで!!」

 

 

まっ、いいや。緑谷だけでも離れていってくれるなら、適当な所で『目を隠す』で姿を晦まそうっと。

 

【ケッ、クラスメイトが浮かばれねぇなァ……】

 

どうでもいいよ。だって……いつかは絶対()になるんだから。

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

「うまく抜け出せた……さてと。出て来たら?」

 

「マジか。気づかれるのかよ。おおっと、お初にお目にかかるよヒーローの卵。陽炎睨美さんで間違いないかな?」

 

「ん、あってる」

 

 

あれからみんなで走っている途中、私だけじゃなくみんなに『目を隠す』個性を使って全員がまるで迷ったかのように演出してこっそり抜け出して来た。そして適当な木に寄りかかっていると、狙い澄ましたかのようにヴィランが1人やって来た。仮面をつけたトレンチコートの男。見た目はまるでマジシャン。

 

 

「おいおい、ヴィランの質問に素直にはいって答えたらダメだろう」

 

「関係ない……貴方が私に勝てるとでも?ミスターコンプレス」

 

「おや、よく知ってるねお嬢さん。おじさん有名人みたいだ。でも一つ間違っている。勝つ必要はない、目的を果たせたら……ね?」

 

 

ミスターコンプレス。確か盗賊王の子孫とかで父さんが口にしていた。だから覚えている、ただそれだけ。そして彼の手にはビー玉みたいな玉があった。

 

 

「なにそれ?」

 

「君のお友達さ」

 

 

パチンと音を鳴らすと、玉が変化して委員長になった……人や物をビー玉にする個性?強いね。

そのまま彼は懐から取り出したナイフを首筋に当てた。

 

 

「ッ、ここは……?陽炎君!?」

 

「取引と行こうお嬢さん。彼の命か、お嬢さんの身柄か」

 

「なっ、応じてはダメだ!!ヴィラン連合の狙いは君だ!!」

 

「…………いいよ。帰り道の生徒達に危害は加えてないのだろうし」

 

「よく分かっているじゃないか。流石雄英体育祭2位、優秀だねぇ」

 

「陽炎君!!」

 

 

そして私は両手をあげた状態で近づく。

 

 

「飯田、黙って……もう一つ条件がある」

 

「なんだい?」

 

「私が捕まったら……隠してあるもう1人、それも無傷で解放する事」

 

「もう1人だって!?」

 

「おいおい、そんなのいるわけないだろ?」

 

「場所まで言わないと伝わらない?……右ポケットか」

 

「ッ……ハハッ!!すごいな君!!見破られたのは初めてだ!!いいだろう、ただし無抵抗で捕まってくれよヒーロー。これは敬意だ、マジックを見破った客へのね」

 

 

そして私はミスターコンプレスの前に立つ。

 

 

「飯田、もう1人の解放タイミングを指定してないから、追って来たら殺されるかも。ちゃんと2人で帰って。いいね」

 

「ッッッッッ…………分かった。陽炎君の判断に従う……!!」

 

 

うっわぁ……苦悶に満ちたその表情、さいっこうだよ飯田。ミスター、素晴らしいショーをありがとうね。

 

【なんだこの茶番】

 

 

「じゃ、あとはよろしく……これでも乙女なんだから丁重に扱ってね」

 

「任せてくれ、これでも紳士でね。快適な旅を約束するよ、お嬢さん」

 

「陽炎君ッ!!」

 

 

そして私は、ヴィランの個性に捕まった。

 

 

「目標確保、じゃあメガネ君……飯田君だっけ?おじさんが逃げたらもう1人も解放するから追って来ちゃダメだよ。お嬢さんの覚悟を無駄にしたいなら別に構やしないけど」

 

「くっ……早くもう1人を解放しろ!!」

 

「ハイハイ、それじゃあね」

 

 

 

 

 

 

 

 

某バー

 

 

 

「目標確保したよボス。いやー楽な仕事だった」

 

「よくやったコンプレス。そいつは置いてもう1人の確保に行ってくれ」

 

「了解。おじさん使いが荒いね〜」

 

「戦果はお前が1番だ。よくやってくれたさ」

 

「んじゃ、行ってくるぜ」

 

「…………ん?ああ、ここか」

 

 

ミスターコンプレスの個性の中、なにもない空間が広がっててつまらなかったなぁ……って、あれ、弔君じゃん。ああ、黒霧さんの個性で先に私だけ飛んできたんだ。いいね。

 

 

「やぁ、よく来てくれた陽炎睨美。久しぶりだなぁ?」

 

「久しぶり……えっと、私の圧にビビってた人」

 

「こらこら、睨美。あまり言ってはいけませんよ」

 

「……?いいの?」

 

「ええ、許可はとってあります」

 

「そっか。じゃあ黒霧さん、()()()()

 

「あ?」

 

「お帰りなさい睨美」

 

 

どうやら捕まった後は別にバレてもいいらしい。じゃあ普通にゆっくりしてよっと。

 

 

「おい黒霧、どういう意味だ?俺に何か黙っていやがったのか?」

 

「ええ、あの方からのご指示です。申し訳ありません」

 

「その指示を説明しろ。聞いてないぞ」

 

「ふふ、『先生』に信用されてないんじゃない弔君。黒霧さん、レモンティー」

 

「かしこまりました。少々お待ちを」

 

 

黒霧さんを追い払い、私と弔君の2人だけの状況にしてソファに座り込む。

 

 

「お前……まさか元からこっち側だったのか?」

 

「少し違う……私は『先生』の味方であって、弔君の味方ではない。だから勧誘も御免だね」

 

「そうかよ、お前が敵じゃないならいい。じゃあ雄英のスケジュールを報告した内通者ってのもお前か」

 

「……ん?なにそれ。知らないよ」

 

「は?」

 

「「……他にいるのか」」

 

 

へぇ……!!面白くなって来た。まさか雄英の中に私以外にも父さんの息のかかった人がいるんだ!!誰かな?林間学校の場所まで教えたってことは一緒に来てた人、もしくは先生の中にいるのかな?これは、趣味が捗るねぇ。

 

【ほう……今まで睨美の『目を盗む』に引っかからずによくも隠し通せたなァ】

 

ああ、確かに。タイミングか、『目を盗む』を無効化できるのか。どっちにしてもいいね、面白い。探すのも楽しそう。

 

 

「お前さぁ、ヴィラン側ならなんで雄英襲撃の時殴りかかって来てんだよ。殺されるかと思ったぞ」

 

「ん?不甲斐ない奴だったら殺しててでも育ててあげるって『先生』に言ってあったし……むしろ感謝してほしい……いい薬」

 

「チッ……なまじ理にかなってるあたりウゼェ。殺してやろうかな」

 

「できそう?」

 

「…………ハァ、無理だ。俺には手が余る。大人しくしとけ」

 

「分かった」

 

 

こんな会話してるけど、人質とってる組織のリーダーと人質の会話なんだよねこれ。私なにも拘束されてないけど。

 

 

「睨美、どうぞ」

 

「ありがとう黒霧さん」

 

 

レモンティーも届いたのでスマホを取り出してゲームを始める。

 

 

「お前……寛ぎすぎだろ」

 

「もう1人が届く頃には止める……今日のデイリーくらいやらせてよ」

 

「……なにやってんだ」

 

「オープンワールドの課金ゲー」

 

「あれかよ、面白いか、アレ?」

 

「LoLやってる方がマシ」

 

「へぇ……レーンは?」

 

「トップ」

 

「トップかよ。俺はミッド」

 

「もしかしたら一緒になったことあるかもね」

 

「ああ……面白そうだ」

 

 

弔君、確かゲーム用語よく使ってたけど、ゲームやる人だったんだ。まあこのくらいの出不精ニートじゃそりゃそうか。

 

【お前が言えたことじゃねェぞ】

 

うるさい。私は学生という立派な職業についてます。

 

 

 

「なぁ、なんで雄英に入ってんだよ」

 

「『先生』にヒーローになりなさいって言われたから」

 

「あぁ?それだけか?」

 

「それだけが私にとっては1番大事」

 

「あっそ、つまんね。でもまぁガキ共も可哀想だな。1番強いクラスメイトがまさかヴィラン側なんてよぉ。てか考えてみりゃ当たり前だな?あのレベルが入学前にいる方がおかしい」

 

「……私の全ては『先生』のために。それが私の居る理由だから」

 

 

そう。あの日、父さんに命を救われてから私の行動指針は変わらない。全ては父さんのために、そのために、雄英に入ったんだから。

 

 

「なあ一つ教えろよ。なんでお前じゃなくて俺がヴィラン連合やってんだ。お前の方がいいだろ」

 

「……?弔君以上にヴィラン連合が似合う人、居ないでしょ」

 

「どういう意味だ?」

 

「私は、『先生』のために動く。弔君は、なんのために動く?」

 

「何のために……か。今の所はこのヒーロー社会をぶっ壊すこと、じゃねえの?」

 

「どっちが、人がついてくる理由?」

 

「ああ?そりゃ……って、そういうことか。わかりやすい理由がある方が下にも俺にも都合がいい」

 

 

私の問いに弔君は自分の意思を確かめるように、手を見ながらゆっくりと開いたり閉じたりしている。

 

 

「自分の意思がある奴には自ずと人が付いてくる」

 

「ハッ、なるほどな。ガキに説教されるなんて不快極まりねぇけど、勉強になったぜ。やっぱりお前、ウチに入れ。No2……いや相談役っていうポジションでもいいぜ」

 

「断る……私は弔君には毒だよ」

 

「毒……?」

 

「暴力沙汰、全部私1人で解決できちゃう……弔君の成長にならない」

 

「成長、ねぇ?……ちょっと待て……よし、帰ってこい。おい、目標が帰ってくる。黒霧、ゲートを出せ。お前は別の部屋に移動だ。大人しくしとけよ」

 

「睨美」

 

「あ?」

 

「私の名前。呼んでいいよ」

 

「…………チッ、睨美、あっちの部屋にいっとけ」

 

「分かった」

 

 

心底鬱陶しそうな声と表情で、別室の扉を指差す弔君に私はそれはもう愉しそうな声音で返事をしてあげた。

 

私は移動した部屋の扉の部屋の前に立ち、こっそりと中の会話を聞くことにする。

 

【あそこにおあつらえ向きにテレビがあるぜ】

 

ん、いいね。映るのは……バーの部屋。最高だねぇ。さっすが黒霧さん、分かってる。

 

 

じゃあ、楽しませてもらおうかな。爆豪♪

 

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