蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
「あの陽炎だぞ!?ヴィランに負けるわけがっ」
「戦闘許可が出る前に、俺と口田君を人質に取ったヴィランの交換条件に乗って、そのまま……」
「それは……いくら睨美ちゃんでも……」
「委員長として不甲斐ない!!済まなかった!!!!謝っても、謝りきれない……」
「いや、陽炎の判断はおかしくなかった。攫ったということは傷つけることが目的ではない。陽炎自身も含めて3人救ったことには変わりはない。その状況では的確だと言わざるおえん」
「陽炎と爆豪が同時に攫われちまうなんて、これからどうなるんだろうな」
「とりあえずみんなのお見舞い行かね?果物とか買ってさ!!」
「ああ、そうしよう。今の俺たちにできるのはそれくらいだからな」
8月15日の午後12時半くらいの頃 天気がいい
「暇になって来た」
【お前、人質の自覚ないよなぁ】
半日くらい時間が経って、弔君達の爆豪の勧誘はどうやら実りが無さそう。おんなじような問答の繰り返しにも飽きて来た。
「ねぇねぇ睨美ちゃん、チウチウしていい?いいよね?するね?」
「トガちゃん……いいけど……注射器からにして」
「やったぁぁぁ!!睨美ちゃん大好きー!!」
まあ、コイツの相手をしてるから暇じゃないと言えば暇じゃない。トガヒミコ、本名がそのままヴィラン名らしいけど、なんかかっこいいやつつければいいのになーって思う。なんか血を吸うことが大好きらしいのと、蛙吹と麗日と友達になったらしい?どう考えてもそんなわけないんだろうけど、『目を盗む』個性でも嘘っぽくないのが怖い。思い込みが激しそう。
「睨美ちゃん、アナタすごいわね。メイクなしなのに可愛すぎじゃないの?」
「マグ姉も……イケてる」
「あっらぁ!!嬉しいこと言ってくれるじゃない!!やっぱヴィラン連合入りましょうよ」
「それはムリ」
2人ずつ交代で私のところにもヴィラン連合がやって来てるけど、1人ずつ同じ説明するのも面倒なので弔君に私が元々ヴィラン側だって伝えてもらっているのでスムーズに話が進んでいく。
「え〜、交代ですか。もっと睨美ちゃんとお話したいです」
「とっとと代われ」
次はどうやら荼毘とコンプレスらしい。女性2人?を見送って次の2人を受け入れる。
「よぉ、人質とは思えない寛ぎっぷりだな」
「おかげさまで」
「は〜、やけに聞き分けのいい嬢ちゃんだと思ってたが、まさかこっち側だったとはなぁ。俺の人を見る目もまだまだだったらしい」
荼毘は森を焼いてた個性の人らしい。全身火傷跡だらけでいろんなとこ縫ってる。個性でもミスったのかな。
「爆豪どうしてるの?」
「まだ元気に吠えてるよ。お前とは大違いだ」
「……だろうね。爆豪……絶対無理そうだし、公開処刑で見せしめにでもすればいいのに」
「おお、こわ。クラスメイトになんてこと言うんだこの嬢ちゃんは」
「へぇ……いい案だな。本当に無理そうだったら死柄木に提案してみるか」
そんなこんなで、スピナーと死柄木の番が来てゲームの話題で盛り上がったりもした。
「いやいや陽炎、アレ発売当初はデマ情報ばっかでなにも当てにならなかったぜ?」
「そうなの?……最近買ったけど、そんなに変なこと言われる要素あった?」
「スピナーが正しい。どいつもこいつもホラ吹きしかいねぇでクソゲー呼ばわりしてた」
「……結構面白かったけど」
「「それな」」
うーん、やっぱりヴィラン連合入ろうかな?なんか結構いいとこだった。
次は黒霧さんとトゥワイスの番。トゥワイスはなんか正と負のことを同時に言ってた。変な人だった。
「んじゃ、計らせてもらうぜ。優しくしてやるよ、首絞まるほどやってやるよ!!」
「と、まあこのような方なので慣れてください」
「……ちょっと、時間かかりそう」
体のサイズを正確に測ることでその人の複製を出せるらしい。私が2人とか敵なしじゃん怖い。
てか、自分と殺し合ってみたかったんだよねぇ。出来ないかな?
「ん……お前はコピー、分かってる?」
「ん……分かってる」
「私の行動指針は?」
「「全ては『先生』のために。ん……完璧」」
デッドコピーしか出せないのか、『目を合わせる』以外の個性だけ使えるコピーだったのがよく無いけど、まあコピーとしては悪く無いので一旦よし。胴体ぶち抜いて『二倍』を解いた。
【(……なるほどなァ。生まれ持った『目を合わせる』蛇だけが個性の影響を受けない。それは『目を合わせる』蛇が『目を合体させる』蛇でもあるからかァ?アザミの蛇達は永い時の中で『個性』になっちまってオールフォーワンによって譲渡できるから他の人間の個性でも複製されるのかァ。ケッ、まァ良いだろう。
どのみち勝負は今日、全ての蛇が睨美の元に集まっているとは言え、伝えていない『カゲロウデイズ』を呼べるわけがねェ。16の誕生日、しかも十中八九何かが起こるイベントの真っ最中になにも起こらないわけなんてねェが……なにも無いことを祈るしかねェなァ)】
「ねぇ……黒霧さん。私のサポートアイテムが完成してるなら頂戴」
「おや、何故ですか?」
「正体隠して爆豪にちょっかいかけたい」
「……睨美、死柄木弔に大人しく、と言われたのをお忘れで?」
「弔君に声かけて来てよ」
「……聞くだけ聞いてみましょう」
流石黒霧さん、身内には甘いよね。数分経って黒霧さんが戻って来た。
「いいだろう、とのことです。絶対にバレるな、ともおっしゃっていました」
「弔君わかってるー……じゃあ準備しようかな」
黒霧さんが一緒に持って来てくれた段ボールから、義蘭に頼んでおいた私のヴィラン用アイテムを身につける。
服装は至ってシンプル。読者の皆さんだけにわかりやすく言えば、『黒コノハ』だよ。私にはなんのことかわからないけど、その衣装に真っ白の仮面をつけてる。フードも被って髪の毛を隠し、ボイスチェンジャーも起動。いいね。
「……あ、あー。うん。問題ない。相棒、好きにやるから」
【チッ……わあったよ。好きにしろ】
私はバーの部屋に入ってヴィラン連合の視線を受けながら進む。
「よぉ、ずいぶん似合ってんな。名前は決めたのか?」
「名前?」
「ああ、ヴィランネームだよ」
「名前……名前……どうでもいいさ。別に必要じゃあない」
「ハッ、いいねぇ。んじゃ、あとは任せた」
弔君の許可が出たので、厳重に縛られてる爆豪の前に立つ。
「んあ?誰だテメェ。昨日にはみなかった顔だなぁ?」
「私は陽炎睨美の拷問担当だ。意味はわかるな?」
「ああ?……なんだと」
そうだよね、爆豪ならちゃんと私の言う意味が分かるよね。
「生憎とお前に危害を加えるのは禁じられている。よって会話という生ぬるい手段になるのが残念だ」
「ハッ、何を言うかと思えば、ヴィラン連合サマも随分とあめぇ組織だなぁオイ!!ガッ……!?」
あまりにも煩かったので爆豪の口を手で押さえつける。
「口を慎め。危害を加えてはならないとは言われているが後に残らないくらいならばどうとでもなるのだからな。さて、静かになったところで本題に入ろう。爆豪、お前はヴィラン連合に入るべきだ」
爆豪から恐怖の視線が送られていたけど、私の最後の言葉で強く睨んできた。
「理由は3つ。
一つ目に幼少期に強力な個性に目覚めてからの増長。そして同級生へのイジメ行為。力を手に入れて調子に乗ったか?個性が目覚めなかった緑谷出久への暴力行為が中学卒業まで目立つな。まさに自分の個性を好き勝手に使いたい、ヴィランになる典型的な理由だ。これについて反論は?」
「〜〜!!!!」
「なるほど、反論まみれのようだ。では次」
「……なあこれ」
「よせコンプレス。アイツ、思ってたよりエグいぞ。横から見える口元見てみろ。めっちゃ嗤ってやがる」
「あは、ステキですぅ」
コンプレスのつぶやきにスピナーがなんか言ってる。まあいいや。
「2つ、雄英体育祭で見せた性格面。実力に見合った自信は尊重出来るが、公共の場でも我を突き通した結果のあの醜態。社会に正しく適合できなければたとえ実力のみでヒーローを目指していてもいつか限界が来る。覚えは?」
「…………っ!!」
「なるほど、覚えがあるらしい。では次だ」
(陽炎睨美、先生のとこで育ったらしいが俺とは違ってヴィラン向きに育ってんな。アレが俺がヴィラン連合のリーダーに相応しい理由、ねぇ?ハッ、いいじゃねえか。本人に入る気がない?知らねえよ、お前はウチに入れる。今、俺が決めた)
「3つ、自分がまだヒーローになれるとほざいている点だ」
「ッ!?」
「ここまで挙げた2つ、自覚があるだろう?心の中では思っていたんじゃないのか?ヒーローになれる実力はある。だが今までの行動がヒーローとして相応しいものだったか?もしそれを今更ほじくり返されたら、世間に公表されたら?そう、自分はヒーローにはなれないのではないか」
「ッ…………」
「人には全て始まりがある。オリジンってやつさ、何かをしたい、なりたい、憧れ、なんでもいい。人に傷つけられた、誰かに助けられた、誰かを傷つけた、誰かを助けた。
さて、君のオリジンは……人を救っていたかい?」
「ッ!?プハッ……はぁ……はぁ……ゲホッ、ゲホッ……」
ここで私は口を自由にした。鼻でしか呼吸していなかったからかむせてるけどじっくりと待つ。幸い時間はあるからね。
「なに、答えは私ではなく、死柄木弔に言うといい。だがあえて君にはこの言葉を贈ろう。
過去は消えない
色良い返事を期待しているよ。失礼する」
それだけ言って私は部屋を出る。仮面を取って人質の時から着ていた体操服姿に戻ったところで弔君が入って来た。
「……ノックくらいしたら?」
「んあ?……わりぃ、そういやお前女だったな」
「しばく」
「悪かったって。お前、なかなか演技派だったな?」
「『先生』の真似事。口で相手自身に自分を自覚させる。自分に一つでも粗を自覚すれば、それはその後ずっと自分にまとわりつく荊になる」
「なるほどなぁ、とりあえず助かった。爆豪君、さっきからずっと黙って俯いてやがんの。かなり考えてるみたいだぜ?過去は消えない、いいフレーズだった。俺も使うわ」
「どうぞ」
どかっと椅子に座り込み背もたれに腕を回しながら私にそう告げてくる。なんか楽しそうだな。
「なぁ、睨美。お前ウチに入れ。名前だけでもいいし、普段の行動まで制限しねぇよ。本当に俺達がヤバい時だけさっきの姿で力を貸してくれたらいい」
「……随分と、私に条件がいい」
「そりゃそうもなるぜ。あんなもん見せられたらなぁ……思わず俺も震えちまったよ。まっ、急がねえし考えといてくれや」
「……分かった」
ひらひらと手を振って弔君は部屋を後にした。なんかやけに機嫌がいいね。それにしても名前だけでも、ねぇ……ふぅん。まあまだ返事は出来ないけど、もし本当にヴィラン連合に入るようなことがあった時のために……名前だけでも入れるように、ちゃんとヴィランネーム考えとかないとね。
「入ったら入ったで、楽しそうなのが……なんとも……悪くないなぁ」
???
【ふふふ……ダメだよ。貴女は……これから何度でも、やり直さなくちゃいけないんだから】
【今回で終わりにはさせない。私達がどれだけ苦労してあの日に辿り着いたのか……ちゃんと、ちゃーんと。あのクソ野郎と一緒に味わってもらうんだから】