蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
私はただ見ているだけだった。
父さんのすぐ横で、父さんがたくさんのヒーローに……両腕を失うほどの傷を負って大敗した。
私はその光景を呆然と見て、理解したと同時に……
『#¥*%#¥』と、衝動的に叫んでいた。
それは2回目の記憶。
また私は見ているだけだった。
父さんのすぐ横で、父さんがオールマイトに、手も足も出ずに負けた。
私はその光景を呆然と見て、理解したと同時に……
『#¥*%#¥』と、衝動的に叫んでいた。
それは50回目の記憶。
私は父さんの顔面にオールマイトの拳が届きそうな瞬間に手を伸ばすしか出来なくて
そのまま吹き飛んでいく父さんの姿を見るしかなかった。
私はその光景を呆然と見て、理解したと同時に……
『#¥*%#¥』と、衝動的に叫んでいた。
それは286回目の記憶。
私は覚醒した力で、この場にいるありとあらゆるヒーローを物言わぬ石像へと変えた。
父さんを助けることができたその喜びを伝えたくて、父さんに振り返った瞬間
父さんの全力の攻撃に全身をバラバラにされた。
ひどく苦しかった。顔もわからないくらいバラバラにされたから声も出せなかったけど、私の
私はその光景を呆然と見て、理解したと同時に……
『#¥*%#¥』と、衝動的に叫んでいた。
それはn回目の記憶
あれ、記憶だっけ。ううん、違うね……これは今の記憶。だから今から記憶にするんだ。
私と父さんにとって、最良の選択を叶える。
待っててね、父さん。
今度こそ。
今回こそは、父さんのために……力を使うから……
8月15日 夜
「ッ…………あれ、私今……寝てた?いや、そんなはずは……」
【お前が寝るわけねェだろ】
「そう、だよね。はぁ……気疲れでもした?夢だとしても最悪だ……」
コンコン
「どうぞ」
「よぉ、元気そうだな。爆豪君はダメそうだ。今やってる雄英の謝罪会見を聞いてから気を取り直したらしい。憧れたのはオールマイト、だから俺のオリジンはオールマイトだってよ」
「ふーん……そっか。つまらないね」
「ああ、本当につまんねぇ」
入って来たのは弔君、今回はちゃんとノックしてから入って来たらしいね。うん、ちゃんと成長してる。20も超えてノックもできないのは普通にヤバいけどね。
「ここからの予定は?」
「あー……あの人数じゃこのバーも手狭だからな。もう少し広いアジトが欲しい。あと、そろそろお前を爆豪に会わせようと思ってな。一回縛るぞ」
「分かった」
私は弔君の言う通りに数人がかりで拘束具をつけられて、バーの部屋に移動させられた。
「ッ、陽炎!!」
「……爆豪」
流石の爆豪でも、私が縛られて無抵抗な状態でいるのを見て反抗の意思が弱くなったらしい。
「よぉ、爆豪君。実際に見るまで信じねぇとか言ってたが、信じてもらえたかな?」
「チッ……おい陽炎、テメェ何勝手に捕まってやがんだよ……!!」
「……仕方なかった。クラスメイト2人人質に取られた」
「アァ!?テメェならどうにか出来ただろうが!!ナマ言ってんじゃねぇ!!」
「えぇ……これ私が悪いの?」
「嬢ちゃんと俺の名誉のために言っとくけど、アレは仕方ねぇだろ」
だよねコンプレスさん。普通にあの状況で私どうにも出来ないよ?コンプレスさん仮面しててすぐに石化できないし、そもそも個性でビー玉にされてるのに石化したら解除させられないじゃん。
「まあまあ、喧嘩するなよ。それより2人とも考え直したか?俺達はただのヴィラン組織じゃねぇ、事情は違えど、人に、ルールに、ヒーローに縛られて来た者たちの集まりだ。我々はこのヒーロー社会に正しく考え直させるため、人手が欲しい。君たちにもあるだろう?何かに抑圧され、なし得なかったことが。
ヴィラン連合に、入らないか?」
「「断る」」
ある、あるよ弔君。私はルールと化した慣習に縛られた腐れ外道どもにしこたま迫害されたからね。もうやり終わった復讐でも、私の中でずっと燻ってる。
でもまぁ爆豪の前だし、ちゃんと
「言っとくけど俺はまだ戦闘許可解けてねぇからなぁ!!」
「え、なにそれ」
「アァ!?マンダレイから戦闘許可出てただろうが!!」
「あー、おじさんがそれ出る前に捕まえちゃったから嬢ちゃんには出てないぜ?」
「……何もテレパスされてない」
「なっ……(おいおいマジかよ……このクソチビに戦闘許可が出てねぇってなると俺1人でこいつら全員……いや、さっきの白仮面まで相手にすんのか……拷問されてるとか抜かしてたが、ワンチャン瀕死の陽炎もいる状態で……クソがっ、無理ゲーすぎんだろ)」
可哀想だねぇ爆豪。頼りにしてた戦力がまさかの使えないどころか、拷問後で守らないといけない方になってるとか普通思わないよね。戦闘許可とかそう言う話は本当に今初めて聞いたけどさ。
「…………先生、力を貸せ。黒霧、コンプレス、両方縛って眠らせとけ」
あーあ、つまらない。ほんとうにつまらないなぁ。何か起こらないかなぁ
『どうも、ピザーラ神野店です〜』
え、わあ嬉しい。誰かピザ頼んだの?私の分もあるといいんだけど……なーんて、さあ面白いこと、始まるよー。
『SMAAAAAAAASH!!!!』
その掛け声と共に、バーの壁がオールマイトによってぶち抜かれた。
そのまま他のヒーローたちの圧倒的な連携によってヴィラン連合達が捕縛され、黒霧さんや荼毘が意識を失った。
わぁ、凄い手早いね。
「2人とも無事でよかった。怖かっただろうに、よく耐えた!!ごめんな、もう大丈夫だ少年少女!!」
「怖くねえよ!!余裕だクソ!!」
「…………」
爆豪の涙目、いいね。いつか私の手でそうしてやりたい。
爆豪は縛られてないけど、私はまだ縛られてるし、一応拷問後って設定だから相槌だけ打って大人しくしておく。
「せっかく色々こねくり回したのに、何そっちから来てくれてんだよラスボス……黒霧!!脳無全部もってこい!!」
「ッッッ、すいません死柄木弔、所定の位置にあるはずの脳無が……ない!?」
へぇ……脳無格納庫の方まで制圧したんだ。2拠点同時制圧、戦力の分散は悪手だけど今のヴィラン連合程度じゃねぇ?余裕だよねぇ……
ヒーローの皆様方がごちゃごちゃなんか言ってるけど……まあいいや。
だって今から!!最高に素晴らしい!!父さんが!!きっと、混沌をもたらしてくれる!!
「「「「「「ゴポッ……!?」」」」」」
うぇ、くさ……きもちわる!?
いや……これは、父さんの『転送』……キタキタきたァァァァァァァァ!!!!
「Nooooooooo!!!!」
ああ、オールマイト……いい悲鳴だよ。さいっこう。
「げほっ……けほ……」
目の前が真っ暗になったとおもえば、別の場所が視界に映った。どうやらヴィラン連合の皆も転送されていたらしく、爆豪の姿もあった。
あとは倒れ伏しているヒーロー達。まあコイツらはいいや。
そして何より私たちの前には……そう!!父さんがいる!!
「やぁ、久しいね」
「…………!!」
「ああ、拘束されて、可哀想に……解いてあげよう」
バキン、と私の拘束具が外され私は父さんの前に立つ。
「今年最後の誕生日プレゼントを送るよ。来なさい」
「ッ!!うん……」
「おい陽炎、なにやって……ッ!!」
「誕生日おめでとう、睨美」
そういって父さんは私の頭に手を当てて、撫でてくれた。嬉しいなぁ、今日はいい誕生日だ。人生で1番いい誕生日♪
「ありがとう……とうさッ……ぐぎっ……あああ、ああぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?!?!?」
痛い痛い痛いいたいいたい!!!!!!!!
体が……!?弾けそう……!!!!
…………あっ
プシュ!!!!
「陽炎!?」
な、にが…………あれ、これ私の……体が……ひび割れて……?
なおさ……ないと……目を……醒ます
プシュ!!!!
ギリギリ意識が保ててるうちに体を直す、またひび割れる、直す、ひび割れる、を繰り返しているうちに、痛みが私の許容量を超えたのか、脳が強制的に私の意識をシャットダウンした。
ああ……父さんの晴れ舞台……見たかったなぁ……
◆
side オールフォーワン (3人称視点)
「……やはり、来てるな」
「全てを返してもらうぞ!!オールフォーワン!!」
「また僕を殺すか、オールマイト」
刹那、飛んできたオールマイトとオールフォーワンが衝突し、オールフォーワンが競り勝った。
「随分遅かったじゃないか。僕が脳無を送ってからゆうに30秒は経過している。衰えたねぇ、オールマイト。おかげで僕の目的が果たせたよ」
「貴様こそ何だその工業地帯のようなマスクは?だいぶ無理してるんじゃないのか?」
「6年前と同じ過ちは犯さない!!爆豪少年と陽炎少女を取り返し貴様を刑務所にぶち込む!!」
「それはやることが多くて堪らないね、お互いに。でもいいのかい?その取り返したい少女はそこで倒れてるよ?」
「なに?……!!陽炎少女!?」
オールフォーワンの向けた視線の先では全身から血を流し、血溜まりに沈む睨美の姿。
「油断大敵、だよオールマイト」
「しまっ!?」
「『空気を押し出す』+『筋骨バネ化』+『瞬発力×4』+『膂力増強×3』……この組み合わせは楽しいな。彼女のおかげで許容量にも余裕ができた。もっと色々試したいな」
オールマイトが睨美に気を取られている隙に個性の組み合わせでオールマイトを吹き飛ばした。
「黒霧、皆を逃すんだ。『個性強制発動』さあ行け弔。常に考えろ弔、君はまだまだ成長できるんだ」
吹き飛ばしたはずのオールマイトが戻って来て、オールフォーワンに拳を打ち付けようとし、上手く躱される。
「弔、陽炎睨美は捨て置きなさい。恐らく……今は使い物にならないだろうからね」
「なんだと?……チッ、分かった。爆豪だけ持って帰るぞ」
「死柄木、だが彼女は……!?」
「あの距離まで荷物取りに行く方が厳しい。それに……大丈夫だろ、先生ならな」
「仕方ねぇ、駒持って逃げるぞ!!」
オールフォーワンはヴィラン連合が爆豪と戦闘を始めたのを見ると、再びオールマイトに目を向けた。
「どうやら陽炎睨美は今日が誕生日のようでね、せっかくだから
「まさか、『個性』を……なんということをッ!!オールフォーワン!!許さんぞ!!」
「僕も君が許せないよ、オールマイト」
再びの爆風、2人の衝突全てが周りの瓦礫を吹き飛ばすような衝撃を放っている。
「これで僕も……
「何を訳のわからないことを!!」
BOOOOoOoN!!
「ん?」
「なっ!?」
突然の破砕音にその場にいた全員が音の発生源を見ると、緑谷、飯田、切島が空を飛んでいた。
「来い!!!!」
その声と共に、爆豪が個性で飛び、切島の手を取って逃げ出した。
「してやられたね。でも……彼女のことは放っておいてよかったのかな?……なに?」
「問題ないさ!!ここに来る途中あの馬鹿どもを見つけた!!無駄に理に適った作戦伝えられたからガキどもに賭けた!!この嬢ちゃんの回収がワシの役目だとなぁ!!」
「グラントリノ!?」
オールフォーワンが笑いながら、睨美を置いていった少年達を横目に睨美の姿を見ると、ようやく追いついて来たらしいグラントリノが睨美を抱えて遠方に寝かせていた。
「なるほど、志村の友人か。これで綺麗に返されたね。弔、ここは引きなさい。めげてはいけないよ?人間誰しも失敗するさ。『個性強制発動 磁力』」
マグネの個性を発動させ、M極であるトガヒミコに、S極である他全ての男性達を引き寄せそのままワープゲートに押し込んだ。
「弔、君は戦い続けろ。きっと睨美も助けになってくれるはずだ」
本人には聞こえていないだろうが呟くように言うと、改めてオールマイトとグラントリノに向き直る。
「これでお互いに気にするものがなくなったなぁ。いや、君たちにはまだあるか……じゃあここからは僕も本気で行かせてもらうよ。なに、今この場ではカッコ悪いところは見せられないからね
行くよオールマイト」
◆
side睨美
……気絶するのなんて、いつぶりだろうな。
【さぁ?私を使っているんだから覚えてるんじゃない?】
だれ?相棒じゃない……
【ふふ、誰でしょう。でも……知っているはずだよ】
…………分からない。知らない。私の女の知り合いはいないはず。
【まあ仕方ないかぁ。条件がようやく揃ったのに、まだ
条件?覚醒?なんのこと?
【ねぇ、全部やり直したいって思ったこと、ない?】
やり直したい?…………ないかな。思い返せば生まれ方も育ち方も最悪だったけど、アレがあったから父さんに出会えた。父さんに出会えたから、今の私がいる。そして今日も、最高の誕生日だった。最後のはちょっと分からないけれど、何か『個性』をくれたんだと思う。だから、今この瞬間をやり直すなんて……出来ない。
【ふぅん……そっか。でもさ、もし自分がもう何度も何度もやり直した上で今ここに立っているのだとしたら……どんな気分?】
本当になんの話?うーん……じゃあ、いい結果に辿り着けて良かったね、でいいんじゃない?
【なるほどなるほど】
なんか面接されてる?
【いやいやまさか、お気になさらず】
てかさ、そろそろ姿くらい見せたら?目を合わせて会話しましょうって習わなかったの?
【ええ……碌に学校行ってなかったくせによく言うよ。まあいいけどね、ハイっと】
ッッッ!?
「ここ、は?」
「ここは私の心象風景を再現した学校の教室だよ」
「ッ!!……さっきの声の奴」
気がついたら、私が私の姿を自覚できる。ひび割れていたはずの体も元通り……あれ、服が体操服じゃなくて、ヒーローコスチュームなんだけど、なんで?
そして声に振り返ると、黒が基調の制服に、赤いマフラーをした高校生の女が机に座っている。行儀が悪い。
「楯山文乃っていうの。アヤノって呼んで、よろしくね」
「……陽炎睨美」
「うん、知ってる。ずっと見てたから」
「ずっと……まさか、相棒と同じ?」
「うーん、合ってるような、間違ってるような……?まあいいや、大体合ってるよ」
何この煮え切らない感じ。でも相棒と同じって言うなら……『個性』のうちのどれかってことかな。
「『個性』……ね。私、びっくりしてるんだ。まさかこの世界が知らないうちに漫画みたいな能力者の世界になっちゃっててさ。そういうの、私達だけかと思ってたのに」
「?」
「別の私達が何度も何度も繰り返して世界を『目が冴える』蛇から救ってくれたのに、いつのまにか私達みたいな蛇の能力者みたいなのでいっぱいになって、平和なのかなって思ったら今度はヴィランとかヒーローとかさ、訳がわかんないよ。シンタローなら、妹達ならきっとスゲーって喜ぶだろうけどね」
「何を、言って」
「あーごめんね。私こういう説明みたいなの、下手なんだ。本当は直接見てもらった方が早いんだけど……私は『目に焼き付ける』蛇であって、『目をかける』蛇のアヤノじゃないからなぁ……あっ、そうだ。この世界にいても能力は使えるでしょ?『目を盗む』能力で私に『焼き付けた』記憶を覗いてみてよ。できるでしょ」
「…………分かった」
アヤノの言ってることが何一つ理解できない。でも、今はアヤノの言葉通りにやった方が情報が手に入る。この場から抜け出して早く父さんのところに戻りたいし、今は従ってみるしかない……か。
「『目を盗む』…………ッッッッッッッッッッッッッッ!?!?!?」
『ごっしゅじーん!!』
『うるせーよエネ!?いい加減にしろ!!』
『それじゃあ行くよー『オツキミリサイタル』!!』
『ほら、合図だ。クールに行こう』
『殺してやる』
『いい天気っすね〜』
『ざまぁみろよ』
『友達だから』
『またダメだったよ』
『目を合わせないで!!』
誰だ、知らない!!こんな人たち!!会った事も、みた事も……!!
違う、これは私の記憶じゃない!?じゃあ誰の……
『筋書きにないことすんじゃねぇよ、テメェ……!!』
この声は知ってる……相棒の声……
『ここで全て終わらせてやる』
……私?……違う、私みたいな見た目だけど私じゃない。誰?
『来い、カゲロウデイズ!!』
ドクンッ!!!!
心臓が跳ねた気がした。
知っている?私は、この言葉を知っている?でも聞いた事ない言葉。
「はぁ……はぁ……アヤノ、これは……なに?」
「記憶だよ。私が、私達が見て聞いてきた今までの記憶。でも浅いとこしか見れてないね。もっと、ちゃんと深いところまで……ほら、
「……チッ、やるしかないか」
それから見たものは、信じられないものの連続だった。
まだ個性も何もなかった時代、それもスマホが普及し始めた時代。
曰く、私の11の個性は、アザミという本物のメデューサが作った、個性に由来しない『能力』であるということ。
曰く、『目が冴える』蛇……今の私の相棒がアザミの願いを叶える事で『カゲロウデイズ』という事象を作り終わらない世界を作ったという事。
曰く、相棒は願いを叶えると消滅してしまうらしく消滅の阻止のため何度も同じ世界をループさせ自身の延命を図っていた事。
曰く、アザミの能力は『カゲロウデイズ』により8月15日に2人同時に死亡した際にのみその2人を飲み込み片方に能力を受け継がせる形で生き返らせる事。
曰く、相棒の計画を止めるため蛇の能力を受け継いだ『メカクシ団』?とかいう連中が色々やってたらしい事。
曰く、何度も何度も同じ世界をやり直し、最良の結果を得るために邁進していたという事。
曰く、私の目の前にいるアヤノはアザミの孫のマリーに頼んで自分を『目に焼き付ける』蛇に変えてもらいそれをシンタロー?に受け継がせたという事。
「…………なるほど。大体理解した。理解はしたよ、これらがアヤノに宿った記憶だということは……ね」
「そっか。よかった、理解してもらえて」
「だけど……納得できない。私のこれらは全部『個性』だ!!個性であるべきなんだ!!じゃないと私と父さんの絆はどうなるんだよ!!」
イライラする。私と父さんの出会いを否定されたようで。
「……知らないよそんな事」
「そんなこと……だって?」
「そんな事だよ。見たでしょ?私達の記憶。それを踏まえてもう一度言うよ。そんな事、知らないよ」
「ッ……」
確かに、アヤノ達の経験して来たことは時間のループという物理法則もクソもないような世界丸ごとを書き換えるような事象だ。だけど……
「だけど……それは私に関係ない」
「……あるよ。だって貴女にはあの『目が冴える』蛇が憑いてる」
「相棒が……だったら問題はないでしょ、相棒が私に出会った時に私が願ったのは自身の生存。私が生き続ける限り、相棒の願いは叶い続ける!!それでいいじゃないか!!」
「ダメだよ。アイツは私たちの悲劇の元凶……アイツの願いが叶う?そんなの……耐えられない!!」
「死人がまだそんな事で……っ!!お前達の物語はとうの昔に終わってるじゃん!?今更死人が今を生きる私達の前にしゃしゃり出ないでよ」
自分で無茶なこと言っているのは理解している。だって今の私の言い方じゃあ相棒のことまで否定している。そう、相棒も、アヤノも、蛇の能力のことも、
「…………」
アヤノが能面の様な無感情な表情で私を見る。
「何が……したいの?今更出て来て……」
「立場が逆になった、ただそれだけだよ」
「立場?」
「アイツが未来を望むなら、私はそれを否定する。アイツに未来なんて与えない。だから私は、この世界をループさせ続けて、アイツの望む未来になんて辿り着かせない!!」
「なん……それに、何の意味が……」
「意味?意味を私に求めるの?じゃあ『目が冴える』蛇にも聞いてみてよ。生き続けることになんの意味があるの?って」
狂っている。私だって自分がまともだとは思っていないけれど。アヤノは何か常軌を逸している。記憶で見たアヤノはこんな苛烈な性格じゃなかったはず……だとしたら何が……ッ!!
分かった。このアヤノは、2回目のアヤノ……マリーを殺すという決断をした、1番思考が尖っていたループのアヤノ……だからか。
「私はあの悔しさを忘れない!!忘れないために、『目に焼き付ける』蛇になって……全部記憶して来た!!」
「最終的に……相棒は、『目が冴える』蛇はヒヨリ?とかいう奴の命の代わりになって、その願いを叶えた。叶えた後……消滅せずに生き続けたから私に宿った。じゃあもう相棒の罪の清算は終わってるでしょ」
「終わってなんかない、終わらせない!!」
「それで誰が幸せになるの?」
「ッ!?……そ、それは……」
「別に……お前のことを理解しようとは思わない。でも、お前のその相棒を苦しめたいという思いが、今を生きる私達に悪影響を及ぼすなら……私は『目に焼き付ける』蛇なんて要らない」
「ぐっ……ふふ、ふふふ……いいよ、どのみち私はもうただの能力。宿主様で支配権のある『目を合体せる』能力を持つ貴女に反抗できるなんて思ってない。
でも……これだけは覚えていてね。貴女は絶対に……もう一度やり直したくなる。目も当てられない様な『絶望』を前に……絶対に、絶対に!!」
それだけ言うと、アヤノは私の前から姿を消した。それと同時に、アヤノの心象風景と言っていたこの教室も崩れていく。
「……相棒、私は相棒がいてくれて良かったと思ってる。ううん、相棒がいてくれたから今の私があるし、そういう意味では父さんよりもずっと昔から感謝してる。だから……私は相棒を諦めないよ」
※カゲプロの各ループによるルート分岐の話が登場しました。私自身も完璧に理解しているわけではないですが今回はアヤノの人格がかなり原作とかけ離れていたので補足説明をします。
アヤノファンには解釈違いが起こっていたと思います。すいませんでした。
飛ばしていただいても問題なくこの先も読んでいただけます。
アヤノ=『目に焼き付ける』蛇が登場しました。
これは原作漫画第二ルートと呼ばれるループ回のアヤノです。
蛇達の能力やそれらが取り巻く環境から妹達も共に解放されるには、元凶である元祖の能力者の家系であるマリーを殺すしかないと明言するほど覚悟を決めたアヤノでした。
紆余曲折あり、『目が冴える』蛇を倒すことには成功しましたが、
生き残ったのは
アヤノ
シンタロー(アヤノの親友)
マリー(メデューサであるアザミの孫、蛇達の『女王』)
の3人です。それ以外の全ての関係者(アヤノの兄弟を含む)は死亡してしまいました。
そしてマリーの『皆と未来を進みたかった』という思いに賛同し次のループへと進むことを決意します。
その際アヤノは、この悔しさを忘れないために自分を『目に焼き付ける蛇(見たことを記憶する能力)』に変え、シンタローに宿らせた状態で次のループへと進めます。
以上が漫画版第二ルートです。
続いて今回登場したアヤノですが、限りなく最後のループに近いルート。原作で言うアニメ版ルート後、ヒヨリという少女の命の代わりになる、という願いを聞き入れてしまった『目が冴える蛇』は姿を消します。
ここからが本作オリジナル要素
その後、ヒヨリが天寿を全うした事で願いがない状態となった『目が冴える蛇』は自我を取り戻し、長い時間を過ごし、死にかけの睨美と出会う事で『睨美の生きたい』という願いを叶えるために『目が冴える蛇』が睨美に宿ります。
そしてその後オールフォーワンと出会い、『個性』となった『目に焼き付ける蛇』を含む全ての蛇が睨美に宿ります。
それからは本作の通り。しかしその道筋は『目に焼き付ける蛇』にとっては見ていられないものでした。自分たちの幸せを奪った『目が冴える蛇』がまるで幸せそうに過ごしている様子に耐えられなかった『目に焼き付ける蛇』は、今回の様な言動をしました。