蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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39話

 

 

ああ……体が重い。

 

さっき死ぬほど体が壊れ続けたせいなのか、それとも能力を酷使しすぎたせいなのか……

 

ううん、私が作り変えたのはアザミと全く同じ肉体。呼吸も重いし、腕上げるのにも疲れるし……アザミ、貧弱すぎない?何で『目を醒ます』使わなかったの?

 

『目を醒ます』…………あー、ほんっっっっっっとに動いてないのに疲れた。

いつもの肉体強度まで戻してようやく感覚が正常になった。

 

よし、じゃあさっさと体を起こそうっと。って、うーわ。周り血だらけだから体操服が真っ赤だ。これ洗い落とすの無理じゃない?流石にこれを洗わせるのは御影にも悪いしなぁ……

 

 

「んー……なんだか、生まれ変わったみたい」

 

【みたいじゃなく、本当に生まれ変わってんだよ】

 

「あれ?相棒……いつも通りだね」

 

【そりゃそうだろうがァ。まっ、いいじゃねェかァ】

 

「うん、そうだね」

 

 

「UNITED STATE OF……!!!!!」

 

 

そうだった、ここは今戦場なんだった。くっちゃべってる場合じゃない。たとえ本物のメデューサになっても、今の私に出来ることは何もない。何もしちゃいけない。

 

そうだよね、()()()()()

 

『絶望』ならもう何度も味わった。何もできない状況で……何度も、何度も、何十回も、何百回も父さんがここで負ける様子を……『目に焼き付ける蛇』で見て来た。

まさか私自身も何度もループした上で今この場に立っているとは思わなかったけど、そのおかげであの光景を見ても……冷静で居られる。

 

ねぇ、アヤノ。ごめん、やっぱり私の負けかも。もう何千回もやり直してるんだから……何千回もアヤノの言葉に負けてるね……うーん、でもまあやっぱり最後に勝ったのは私だしやっぱり私の勝ちでいいか。

 

うん、やっぱり私の勝ち。ザマァ見ろ。

 

【相変わらず情緒が不安定で安心するぜェ】

 

 

「SMAAAAAAAASH!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

ボロボロのオールマイトから最後の一撃が繰り出され、父さんがついに負けた。

 

…………見ていていい気分はしない。今すぐにでもあのオールマイトを殺したい!!本物の英雄みたいな扱いを受けるであろうあの男をこの場で八つ裂きにして、物言わぬ石像に変えてやりたい……

 

って、蛇達……流石に本気でするわけじゃないから能力発動しようとしないで?

 

 

「要救助者一名発見!!……て、雄英の子!?誘拐された陽炎睨美発見!!!!」

 

 

…………ああ、時間らしい。

 

ごめんなさい。

 

……ごめんなさい。

 

……不出来な娘でごめんなさい。、父さん。

 

…………ここで、お別れだね。今まで育ててくれて、ありがとうございました。

 

でも、いつか……迎えに行くから。そうしたらまたさ、いつもみたいに……黒霧さんと、おじいちゃんと……今度は弔君も、皆で食卓を囲って……ご飯食べたいね。

 

 

 

「ぶじでよk……無事じゃないな!?血だらけじゃないか!!担架、早く担架持って来て!!」

 

 

なんだか……気が抜けて来た。ああ、もう立ってなくてもいいや。

 

私はその場にへたり込んだ。見てられない、父さんが負けるだなんて……そんな所、見たくなかったなぁ……

 

 

「もう大丈夫だ!!あの凶悪ヴィランならオールマイトが倒してくれた!!さあ、早く帰ろう!!」

 

 

うるさい!!そんなことは見るまでもなく、知ってたんだ!!

 

 

「泣くほど怖かったんだね……」

 

「担架持って来たぞー!!」

 

 

泣く?私が……私、泣いてるの?……今日くらいいいでしょ。だって、もしかしたらもう2度と父親と会えないかもしれないんだ。

 

 

「……」

 

 

ふと、朝日が昇り始めたその時、オールマイトがカメラに向けて指を差した。

 

 

「次は……君だ」

 

「おおお、す、凄いな。流石はオールマイトだ!!あんな体になってまで……まだヴィランに宣戦布告するなんて」

 

 

違う。あれは宣戦布告なんかじゃない。

次へと託した者への……激励だ。

 

ああ、そうだ。次……そうだよ。次がいる。『ワンフォーオール』が次代に託されている……でも、分かっちゃうなぁ。

この体、()()()()()

 

緑谷出久……あんなのが、次の『ワンフォーオール』継承者なんだね。知りたくなかったなぁ。そういえばワンフォーオールがどうとか、緑谷言ってたっけ。

 

……うん、どうしてやろうかな。

今すぐ殺してやろうかな。別にアイツに愛着は………………あるか。はぁ、ダメだ。アザミの記憶まで見てからだと、無駄に人情ってのが込み上げてくる。

惚れた男と結婚して、娘どころか孫まで居たなんて……しかも『目をかける蛇』や『目に焼き付ける蛇』を通してアザミの抱いていた感情まで知ってしまった。

クラスメイトや、今まで知り合った人たちに対しての友情ってやつも、知ってしまった。

この感情を無視することは簡単だけど……なんか、したくないな。

 

よし、保留にしよう。いつでも殺せる奴なんて放っておくに限る。アイツが私の地雷を踏み抜いて来なければだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

病院での検査や入院、警察による事情聴取が終わり、まさかの御影が迎えに来て、私は家に戻ってすでに数日が過ぎた。

 

あんな事があったのが嘘だと言うくらいに、私の環境はいつも通りだった。

 

 

「お嬢様、雄英から送られて来たプリントは目を通されていますか?」

 

「あー……あれでしょ?家庭訪問」

 

「そうですわ。アレ、今日ですわよ?」

 

「ん、知ってる」

 

 

入院してる時に、相澤先生がお見舞いに来てくれたけど、ピンピンしてる私を見て一言、

 

『流石にあれを見せられた時は死んだと思った……いくらお前が強いと知っていても……悪かった、守ってやれなくて。そしてありがとな、生徒達を守ってくれて』

 

と言って来た。ぶっちゃけ、私はとても気まずい思いをした。だって効率的にヴィラン連合の下に行くのがあの手段だったし。なんか逆に申し訳無くなったよね。今までだったらどうでもよかったんだけど、流石に私も下手なこと言えなかった。だけど、1番伝えたいことだけは伝えられた。

 

『先生、私のヒーローネーム……アザミで登録しておいて』

 

『ッ!!お前……まだ、ヒーローを目指すのか?……ああ、分かった。アザミ、だな。処理しとくよ』

 

 

相澤先生にはこれでいい。でも、あんなふうに言い切った後にすぐ家庭訪問とかさ……超気まずいよねって話!!

 

 

ピンポーン

 

 

「はーい、今行きますわ〜」

 

「…………もう来ちゃった、か」

 

 

そんなことは言ってもやって来た時はもう巻き戻せない。いや、頑張れば戻せるけどね?こんな事で使うとかアザミに呪い殺されてもおかしくない。覚悟を決めよう。

 

 

「失礼します」

 

「……ん?」

 

 

玄関先から聞こえて来たのは、オールマイトの声?そういえば1-Aの副担任だったっけ。もしかしてオールマイト1人で来たの?

 

ふーん……そっか。じゃあ、それはとても嬉しい事だ。

 

 

「やぁ、陽炎少女。元気そうで何よりだよ」

 

「ん……オールマイトも、動いてていいの?」

 

「ハハハ、私は教師だからね。これくらいなんてことはないさ」

 

 

本当にやって来たのはオールマイト1人。でもその姿は痛々しいもので、全身包帯だらけで右腕に至っては折れてるのか吊っている。

 

 

「ん、座って。御影、お茶」

 

「かしこまりました、お嬢様」

 

「いやいや、そんなお構いなく」

 

「いいえ、オールマイト様。我が家にやって来たお客様ならもてなすのがお嬢様の従者としてのプライド!!すぐ用意いたしますわ〜!!」

 

「気にしないで、いつもあれだから」

 

「……いやはや、随分と愉快な人だ。ご両親は……っと!!すまない、確か君は」

 

「生みの親ならもう死んでるよ。別に、どうでもいいこと」

 

 

私が引いた椅子に大人しく座ったオールマイトは、失言に頭を下げる。うーん、なんかいじめる気にもならないな。

 

 

「本題に入ろう。寮についてなのだが……」

 

「ん……どうせ私1人だから、構わない。でも……御影を連れてっちゃダメ?」

 

「流石に、出来ないなぁ」

 

「まあ……わかってたし、言ってみただけ。でも、アレは持っていっていいの?」

 

 

私は開けっぱなしの自室を指差す。アレとは、普段使いしてるPC……驚異の9枚モニターでおじいちゃんの最高傑作レベルの超高性能PCだ。私のゲーム用である。

 

 

「陽炎少女、もしかして意外とインドアなのかい?ハハハッ、構わないとも。自分が過ごしやすいように部屋を改造してくれ」

 

「ん。じゃあいいや。そう言えば、緑谷の家には行った?」

 

「あ、ああ……先ほど家庭訪問を終えて来たばかりだが……どうして?」

 

「愛弟子に何を言ってきたのか気になるから」

 

「ッ、何を言っているのかな陽炎少女!!確かに私が緑谷少年を気にかけているのは事実だが愛弟子とまで言われるようなことは……「ワンフォーオール」……!!」

 

 

さあ、もっとお話ししよう?オールマイト。逃がさないよ。ようこそ、我が家へ……我が胎内とも言うべき城へ。

 

 

「ワンフォーオールの次代継承者は緑谷……分かってるから、取り繕う必要もない」

 

「陽炎少女……一体なぜ!?……まさか、オールフォーワンに与えられた個性の影響で……!!」

 

「……半分正解、半分違う。少し触れるよ」

 

 

私がそう言って近づくと、オールマイトは反射で腰を上げた。

 

 

「……そう、その反応が正しい。『ワンフォーオール』は……いつだって、『オールフォーワン』の敵だから」

 

「何を……まさか、まさかッッ!!」

 

 

オールマイトが驚きの声を上げた隙に一気に近づき、その額に触れる。

 

 

「…………やっぱり、もう個性持ってないみたいだね。せっかく、『ワンフォーオール』が奪えると思っていたのに」

 

 

そう、私が父さんにもらった誕生日プレゼントは『オールフォーワン』。

 

まさか父さんを象徴する個性を貰えるなんて思ってもいなかった。でもそうしたら父さんの『オールフォーワン』は?って思ったけど、そう言えば『オールフォーワン』は複製できたみたいだし3つ目があってもおかしくない。それに適合できるようなのは、世界でももう私だけだろうね。

実質私のためだけの『個性』、本当に最高の誕生日プレゼントだった。

 

 

「陽炎……少女……その力を、どうするつもりだ」

 

「ん?んー……ヒーローとして捕まえたヴィラン全員から奪っていこうかな?そうすれば……少しは平和になると思わない?元、平和の象徴さん?」

 

「ッッ!?」

 

「あっはは!!……冗談だよ。でもまぁ、こないだは本当に悲しかった。思わず泣いてしまうくらい」

 

「何をッ」

 

「これでもう、家族には会えなくなるんだなって……『父さん』が目の前で倒されるなんて、思っても見なかった」

 

「とう……さん?一体誰のことを……そんな、そんな事が!?」

 

「……安心して、この学校に入った時から、私は何も父さんに情報を漏らしたりしてなかったんだから。もし私の仕事が……スパイだったら、ちゃんと皆死んでたかもね」

 

「陽炎少女が……オールフォーワンの娘だと……!?」

 

 

 

くくく……あっははははははは!!良い、良いよオールマイト!!最高の表情だ!!父さんにも見せてやりたい!!

 

 

「私は拾い子だから実の娘じゃない……でもまあ、私がヒーローになりたいのは本当だよ?だって父さんに言われてるからね、『ヒーローになりなさい』って。だから私は真面目に頑張るんだ……ヒーローになるために!!」

 

「あの男の手先だったのか!!しかし、なぜ私にそんな情報を話す!?一体何が目的だ!!」

 

「特に何も」

 

「……なに?」

 

「ただの会話じゃん……それともオールマイトは、私がオールフォーワンの娘だから警察に突き出す?こんなにヒーローを目指してるのに?」

 

「それは……!!」

 

 

『目を盗む』

 

 

(馬鹿な、そんな馬鹿な事が……当たり前だろうオールマイト!!ヤツの関係者ならすぐに捕らえて情報を引き出すべきだ……!!だが、だが!!死柄木弔のように……なにか、あるのかもしれない!!いいや、迷うべき状況じゃないだろう!?)

 

 

あー、悩んでるなぁ……オールマイト。

良い感情だね。最高だよ、もっと私を楽しませてくれないかなぁ?

 

 

「ヴィランの娘は……ヴィラン?」

 

「違う!!そんなわけが……ッ」

 

 

オールマイトが衝動的に言った一言に自分で口を押さえる。

 

【よく言うぜェ、もうとっくに何人も殺してるくせによォ】

 

それとこれとは話が違くない?

 

 

「もしバラされたりしたら……私、悲しくてつい……雲隠れしちゃうかも。雄英に赤い華を咲かせた後で……賢い『先生』ならそれがどう言う意味か、よく分かるよね」

 

「ッ……ああ、君は確かに、ヤツの娘だ。私の嫌がることをよく分かっている……!!」

 

「嬉しいよ、オールマイト。でも……唯一無二の『父さん』ともう会えない私の苦しみも……分かってね?だってオールマイト……貴方は私の父さんの仇なんだから」

 

「……分かった。ただし条件がある!!」

 

「……ん?」

 

「君が、無意味に他者を傷つけ、少しでもヒーローらしからぬと判断すれば……私は情報を公開する!!」

 

「…………まあ、いいよ。私はヒーローになる、ならなくちゃいけない。だって……大切な、大切な、()()()()()()になるかもしれないんだから」

 

「ぐッ……謝罪はしない」

 

「要らないよ。父さんが帰ってくるわけでもない」

 

「……失礼する」

 

「ん、じゃあまた。学校で」

 

 

オールマイトは唇を噛み締めながら、後悔を抱きながら玄関口に向かう。

 

 

「あら、お帰りですか?せっかくお茶を淹れましたのに」

 

「すまないね。少々気分が優れないし、要件も済んだのでお暇させていただくよ」

 

「あらあら……それは残念ですわぁ」

 

 

御影が脳無だなんて夢にも思わないオールマイトは、普通に御影に挨拶をして家を出て行った。

 

 

「うふふ、お嬢様。少々いじめすぎではないですか?」

 

「聞いてたの?……やけにタイミングがいいと思ったら……」

 

「だってこのお茶、私のですもの。お茶に致しましょう、お嬢様」

 

「いい性格になったね。一体誰に似たのやら」

 

 

【何をどう考えても、お前だろうがァ……】

 

 

 

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