蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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「ホッホッホ、してやられたのう。死柄木弔」

『ドクターか……わざわざ連絡なんてよこしやがって。今忙しいの知ってんだろ』

「知っておるとも。だが、聞きたい事があるんじゃろう?」

『チッ、お見通しかよ。陽炎睨美についてだ。先生とどういう関係だ』

「義理の娘じゃよ。ワシも孫のように大切にしておった」

『あぁ?どういう意味だ』

「お前さんと同じじゃよ。拾われて、育てられた。別口じゃがの」

『なんでだ』

「役割が違ったんじゃ。お前さんはヴィランの象徴として今成長中。そしてあの子はヒーローとなりお前さんに立ちはだかる壁として完璧に成長し切った。じゃがまあ、お前さんがあの子をヴィラン連合に引き入れられたら話は違ってくるわい。出来たらの話じゃがな!!」

『…………俺とアイツは、先生に向けた感情が違い過ぎた。その差はなんだ』

「ふぅむ……難しい事を聞くわ。そうじゃな、敢えて言うなら……『愛』じゃな」

『は?』

「ホッホッホ!!これ以上はあの子の口から直接聞いたほうがいいじゃろう。そうじゃ、せっかくじゃし面白い本をやろう。あの子を知りたいなら、きっと役に立つはずじゃよ?タイトルは……『アザミの日記』じゃ……ホッホッホ、ホッホッホ!!」




40話

 

 

雄英高校の敷地内、本校舎から徒歩5分、築3日の学生寮。ハイツアライアンス。

 

それが今日から私の住む家……うん、築3日ってなに?建物ってそんなに早く出来るもんなの?まあいいけどさ、引っ越しも滞りなく完了してるし。

 

 

「とりあえず1年A組、無事集まれたようで何よりだ」

 

「睨美ちゃ〜ん!!無事でよかったぁ!!」

 

「陽炎、陽炎!!」

 

「…………暑苦しい」

 

 

というわけで、今は相澤先生を含めたA組が全員寮の前に集まり説明を受けようとしてた、んだけど……

何故か号泣のクラスメイト達に群がられてる。私がここにきた時からずっと。

 

 

「おい陽炎。そいつら引き剥がせ」

 

「いつも通り脅したらいいじゃん」

 

「人聞き悪いこと言うな」

 

 

まあ実際本当に嫌だったら有無を言わさず引き剥がしてるわけで。飯田と口田(後から聞いた)と交換で私が人質になったと言うのはここの全員が知ってる話。心配してくれてるのは『目を盗む蛇』を使うまでもなく伝わってくるわけで、この善意の暴力に私が抗う術はなかった。

 

 

「皆、静粛に!!助けられた身として非常に気持ちはわかるが今は相澤先生が話されているんだ!!」

 

「飯田、お前人のこと言えねぇぞ」

 

 

飯田が助け舟を出してくれたけど、群がってきてる主要メンバーにはしっかり飯田も入ってきてる。

 

 

「はぁ……話なら後で聞くから……どいて」

 

 

私が鬱陶しそうにそう言えば、皆は物足りなさそうにどいてくれた。なんだこれ。

 

 

「さて、これから寮に入る前に一つ。切島、八百万、轟、緑谷、飯田。この5人はあの晩、あの場所へ爆豪、陽炎救出に赴いた」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

「色々棚上げして言うが、爆豪、陽炎、葉隠、耳郎以外……オールマイトの引退がなけりゃ除籍処分にしてるよ。行った5人はもちろん、把握しながら止められなかった12人についても俺達の信頼を裏切ったことには変わりはない。正規の手続きを踏み、正規の活躍で信頼を取り戻す事を期待している。さあ、話は終わりだ。中へ行くぞ」

 

「「「「「「いや……いけないです」」」」」」

 

 

なるほどね、うん。正論だ。ぶっちゃけ私はあの時アヤノとやり合ってたから全然知らないけど、どうやって爆豪が救出されたのかは警察から聞いた。底抜けのバカとしか思わなかったけど、実際父さんや弔君達を出し抜いて爆豪助けてるんだからそれなりに評価はできる。

私が置いてけぼりにされたのは気に食わないけど、なんかお爺ちゃんヒーローが助けてくれたらしいしまあ気にしてない。そんなどうでもいいことより、よっぽど大事なことしてたしね。

 

 

「あの、睨美ちゃん……」

 

「ん……何はともあれ、皆で集まれてよかった」

 

「陽炎がデレた!?」

 

「明日は個性の雨が降るぞ!!」

 

「……本当に降らしてやろうか……?」

 

 

コイツら、すぐ調子に乗りやがって。私が素直なこと言えないとでも思ってたのか?

 

【今までの態度を思い出してから言いやがれ】

 

うるさい相棒。

 

そんなこともありつつ、私達は相澤先生に続いて寮に入る。

 

 

「右が女子、左が男子で分かれてて一階は共同スペース。食事、風呂、洗濯はここで行う」

 

 

……えぇ、動きにくいなぁ。いや違うか、そういう意図で大人数を1箇所に集めてるのか。

 

 

「1人一部屋、エアコン、トイレ、冷蔵庫、クローゼット付きの贅沢空間だ」

 

 

ふぅん……私が住んでたマンションよりは狭いけど、思ってたより広さはある。まあこれならPC類も置けそうだね。

 

 

「部屋割りはこっちで決めた通りだ。今日はまあ各自部屋作ってろ。それじゃあ解散」

 

 

解散なので私はとっとと2階の自室に入る。ちなみに私は2階の角部屋で、2階には私だけ。横を気にしなくていいのは助かるよ。夜もずっと活動してるからうるさくなるかもだし。

 

そこから私はいそいそと荷解きに移った。

 

 

「……ん?これ、今日で終わる?」

 

 

普通の家具はすぐ終わる。てか大体終わった。でも問題はPC周り……やばい、回線がどのくらいかとか聞くの忘れてた。これ1回仮で起動して諸々設定してから全部繋いだほうがいい?

 

【引越しなら多少は知ってるから任せとけェ】

 

あ、相棒!!今日ほど頼りになると思った瞬間はないよ……!!

 

【テメェにはもう少し気遣いって単語の意味をよく教え込んだ方が良さそうだなァ……!!】

 

 

それから相棒にサポートしてもらいながら、設置や設定に時間を取られてなんとか夕方までに作業が終わった。作業のために体操服に着替えてたので、このまま食堂に降りると、大体もう皆集まっていた。

 

 

「おう、お疲れ陽炎。終わったのか?」

 

「……まあ一応。まだ少し調整しないとだけど」

 

「調整?」

 

「PC周りで買い足さないといけないものがある」

 

「へぇ……睨美ちゃんって結構拘ってたんだ」

 

「PCは……私の生命線」

 

「あ、そっか。夜もずっと起きてんだっけか。そりゃ使うよなぁ」

 

「いつもなにしてんだ?」

 

「ゲーム」

 

「ずっとか!?飽きねぇの!?」

 

「他人の二倍強くなれる……圧倒的な差で蹂躙……最高に楽しい……!!」

 

「「「そうだ、コイツこういうやつだった……」」」

 

 

それから皆で夕食を取り、お風呂も済ませて皆で少しくつろいだ。

 

 

「ねぇねぇ睨美ちゃん。他の部屋気にならない?」

 

「ん?………興味ある」

 

「だよね!!男子に提案して皆の部屋見に行こうぜっ!!」

 

「いいよ」

 

 

蛙吹は体調がすぐれないと言ってすぐ部屋に戻ったけど、残りの女子組で話している時に芦戸がそんな事を言ったので乗ってみた。そう言えば私、他人の部屋とか入った事ないしちょうどいい機会かもしれない。

 

そういうわけで始まりましたお部屋披露大会。

 

2F

緑谷……見渡す限りオールマイトグッズ。

常闇……サバトでもしてるんじゃないかっていうくらい厨二。

青山……眩しい、ただただ眩しい。

峰田……興味もない。死ね。

3F

尾白……なるほど、これが一般的な男子部屋……すごい。

飯田……本がいっぱい。今度借りよう。あとメガネ多すぎ。

上鳴……チャラい。けど結構いいかも。

口田……ウサギいた。わざわざ私の前に来て挨拶してくれた。ここは通う、決めました。

 

 

「男子だけ言われっぱなしはなんだかなぁ!!女子も部屋、見せろよなぁ!?」

 

(オイラだけが主張しても足蹴にされてただろう。だが自尊心を傷つけられた男どもの意思に乗じることで、オイラの主張は……民意という皮を被るのだ!!これで心置きなく女子部屋を物色できる……!!)

 

 

このカス野郎……どうせ碌なこと考えてないだろうと思ってはいたけど、予想より遥かにまともな言種で碌でもないこと考えてた。

 

【峰田……どうしてお前はエロになると頭の回転が速くなんだァ……?】

 

私も知りたい……いや、別に知りたくなかった。なまじ民意に沿ってるのがタチが悪い。別にみられて困るようなもの置いてないからいいけど。

 

 

「えっとじゃあ、誰がインテリアセンス1位かの部屋王を決めるってことで!!」

 

 

なんか変なのが始まってしまった。でもまあ今私の中でトップを走るのは口田だ。ウサギかわいい。

次は4F、爆豪はもう寝たらしいので割愛。

 

切島……暑苦しい。でもサンドバッグは羨ましい。あれはいいね。

障子……布団と机以外なにもない。ミニマリストらしい。

5F

瀬呂……すごいおしゃれだった。雰囲気いい部屋だね。結構いいと思う。

轟………和室だった…………和室!?土壁とか初めてみた。

 

そして砂藤、

 

「ああいっけね、シフォンケーキ焼いたの忘れてた。食うか?」

 

「「くうー!!」」

 

「……ん、美味しい」

 

 

調理道具が置いてある以外は尾白と似たような部屋だったけど、意外にもお菓子作りが趣味なのかシフォンケーキをご馳走になった。めっちゃ美味しい。

そう言えば私はお菓子作りはしたことなかったっけな。金も時間も手間もかかるから面倒だし御影が作ってくれるから興味なかった。個人でここまで作れるようになるならやってみてもいいかも。

 

次は女子。一番手は2階の私。

 

 

「あまり物には触らないで……精密機械多いから」

 

「「「「「「なにこの部屋!?すげぇ!!」」」」」」

 

 

私の部屋の家具としては、セミダブルベッド、タンス、炬燵机、座椅子、カーペット、PCデスク、ゲーミングチェア、そして9枚モニターのPC。これが1番苦労した。

 

 

「モ、モニター9枚って……使い切れるの?」

 

「ん、余裕」

 

「全くもって女子っぽくねぇけど、別方向にとんでもねぇ部屋だったわ」

 

「あれ、このフォトフレームなにも入ってないよ?」

 

「まだ……写真がない。誕生日プレゼントでもらった」

 

「え、誕生日だったの!?いつ!!」

 

「8月15日」

 

「それって……神野のあの日じゃん。大変な時に最悪の誕生日だったんだ」

 

 

最高だった、とは流石に言えないので言いたい衝動を抑え込む。おお、私もついにこういう我慢が出来るようになったんだね。

 

 

「てか陽炎、マフラーは流石に早くね?」

 

「あれも誕生日プレゼント。1番嬉しいプレゼントだったから、いつでも見れるようにかけてる」

 

((((((意外と乙女っぽいなぁ……普段はアレなのに))))))

 

 

ぶっ飛ばすぞ……そろそろ本気で。次の戦闘訓練じゃ容赦しない……!!

 

 

「やばいよ!?インパクトが強すぎて私達の部屋が霞んじゃう!!」

 

「陽炎を越えれる気しないんだけど……」

 

「インテリアセンスって話なら陽炎の部屋はアンバランスすぎてちょっと違くね?」

 

「「「「「た、確かに……!!」」」」」

 

「じゃ、じゃあ気を取り直して次は耳郎の部屋!!」

 

 

 

耳郎

 

「楽器……耳郎、今度貸して」

 

「陽炎弾けるの?」

 

「少しなら」

 

「マジで!!じゃあさ、今度教えるからセッションしようよ」

 

「ん……考えとく」

 

 

 

葉隠

 

 

「……これが、女子らしい部屋ってやつか」

 

「どういう意味かな睨美ちゃん!?」

 

「ただ純粋に褒めた」

 

 

 

芦戸

 

「……落ち着かない」

 

「あれ、陽炎苦手?」

 

「んー……慣れないだけ」

 

「じゃあ今度部屋に彩り加えよう!!」

 

「それはいいや」

 

「え!?」

 

 

八百万

 

「私も……本当はこのサイズのベッドの予定だった」

 

「あら、そうなのですか?」

 

「一応……部屋のサイズ聞いてたから」

 

「うぅ……私もちゃんと確認するべきでした……」

 

「ここをこう……アレをこっちにすれば、マシになる」

 

「なるほど、参考にさせていただきます。流石ですわね陽炎さん」

 

「……まあね」

 

 

これで参加者全員の部屋見学が終わった。芦戸が用意した紙に投票して集計してるらしい。いつの間にか細かいことしてたのはすごい。どこからそんな情熱が湧いてくるんだが。

 

そして選ばれたのは砂藤でした。ちなみに私以外の女子全員の投票だった。

 

贈賄かよ。

 

 

「陽炎は誰に入れたんだ?」

 

「口田……ウサギ、かわいい」

 

「……そうか。俺の部屋、結構自信作だったんだけどな」

 

「ん?良かったけど……ウサギが強すぎた」

 

「ウサギ……俺も、ウサギに……?」

 

「絶対何か勘違いしてるよね」

 

 

轟が寄ってきたので適当に会話したけど、ぶつくさと何か考え込んでしまった。轟の心の中はぶっちゃけ内容が理解出来ないのでほったらかしてるけど、今覗いたらさぞかし面白いこと考えていそうでちょっと気になる。

 

【絶対にやめとけよ!?絶対だぞ、絶対だからなァ!!】

 

……相棒?まあ、相棒がそこまでいうなら。

 

 

そしてお部屋披露大会が終わり解散になった。なんか麗日が何人か呼び止めてたみたいだけど私には関係のないことなので放っておく。

 

 

さーてと、早速ゲームに洒落込むとしますか。今夜も長くなるぞ……!!

 

 

 




翌日 早朝


「……ふっ、すぅーーー……はっ!!」

「あれ、陽炎さんおはよう、早いね?……訓練してるの?」

「ん?……緑谷。毎朝の日課……型稽古は、欠かさない。1日でも疎かにすると綻ぶ。師匠にそう教わった」

「へぇ!!そうなんだ!!僕も生活に慣れたらやってみようかな……」


(緑谷……羨ましいよ。何も知らないって、幸せなことなんだね。可哀想に)
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