蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
「あーうん……ごめん信濃。心配かけたね」
「よがっだ〜!!!!」
「よしよし」
「よぉ、元気そうだな。良かったよ、姉弟子が無事そうで」
「……ん?もしかして」
「ああ、俺も相澤先生に教わってんだ」
「へぇ……心操も。それは……楽しくなるね」
「絶対ヒーロー課に入ってやるから、待ってろよ」
「ん。いつでもおいで……来れるもんなら」
「なんかお前、雰囲気が柔らかくなったな」
41話
今日から始まるのは、今度に控えてる『仮免取得試験』のための授業。
仮免取得試験とは、名前の通りヒーロー仮免許を取得するための試験であり、それがあれば緊急時のヒーロー活動や個性使用が認められるという物。
つまりこの試験に合格すれば私たちは晴れて『半人前』になれるという事。そして私にとっては父さんからの使命を半分果たせるという大事な試験なので気合を入れて臨もうというわけ。
私はいつも通りにコスチュームに着替える。色々ありすぎて久しぶりに着る感覚だけど、今思えばどこか懐かしい感じもした。
そりゃそうだ。だってこの衣装は、アザミの私服だったんだから。
私は鏡の前に立ち自分の姿をまじまじと見つめる。背丈も、見た目もまんまアザミの生き写しのような立ち姿だ。今まではただの蛇目だった私の目だけど、正式に女王になった時に血のような真っ赤な目になってしまった。
つまり個性発動中だった私の赤い目が常態化しているという事。まあデメリットはない、どれだけ私が蛇の能力を使おうとそれがバレなくなったというだけ。蛇目に愛着はないのかと言われたらそりゃああるけど、真っ赤なだけで蛇目といえば蛇目に見える形はしてる。
「睨美ちゃんどしたん?早く行こ〜」
「ん……今行く」
おっとと、麗日から呼ばれたから早く行かなきゃ。よし、じゃあ始めよう。
私は今日からヒーロー『アザミ』。まあ面白そうだし、聞かれるまで黙っていよう。どうせそのうち日本中に轟く名前だ。
そしてやってきたのは体育館γ。通称『トレーニングの台所ランド』略して『TDL』。
どこからか甲高い笑い声が聞こえてきそうな名前だけど、今まで私と緑谷が訓練してたので今更突っ込むところでもない。
私達の今日の授業は『必殺技』の開発。これさえあれば勝てるという自身を代表するような技を作ることがこれからの課題だ。
代表例で言うと爆豪の『ハウザーインパクト』、飯田の『レシプロバースト』、緑谷の『スマッシュ』などがあるね。
私にもあるだろって?うん、沢山あるよ。今もエクトプラズム先生の分身体に風穴を開けたところ。
そしてまた私のところにやってくる分身体。身体能力や動き、思考まで完璧にトレース出来る良い個性だね。
「キミハ凄イナ。既ニコレダケノ型ヲ作ッテイルトハ」
「八極拳から派生する『肘撃・轟破天』『震脚』、
『無音拳』から派生する『豪殺居合拳』『七条大槍無音拳』、
のうりょ……個性由来の『石化』、
捕縛布で攻撃する『我流捕縛布操術・縦横無尽』
正直……十分」
そう、ぶっちゃけ私は必殺技と呼んでいいような技が多すぎる。今は出来ないけど、無音拳にはまだ上のステージがあるし、捕縛布の扱いもまだまだ相澤先生に認められてない。
「フム……デハ今日ハ捕縛布ノ上達ヲ目指ソウ。出来ル事ガ増エレバマタ新タナ技ヲ見出ス可能性ガアル」
「分かった」
つまり今日も訓練内容は変わらないと言う事。と言うわけで早速エクトプラズム先生相手に捕縛布を向けて射出するけど、命中率は5割、捕獲率は2割がいいところ。
「両手ノ袖カラ射出スル分軌道ガ読ヤスイ。相澤先生ノヨウニ首ニ巻キツケテハダメカ?」
「体のサイズの問題……色々足りない」
「腰ニ帯ノヨウニ巻ク、袖カラデハナク外付ケ出来ルサポートアイテムヲ作ッテモラウ等、マダ出来ル事アル。自分デ可能性ヲ閉ザスベキジャナイ」
「……なるほど。でも私の動きで壊れないサポートアイテムってあるの?」
「ウウム……難シイ問題ダナ。オールマイトレベルデハナイガ近イ身体能力ニ耐エレル物カ。パワーローダー先生ニ話を通シテオコウ。一度訪ネテミルトイイ」
「分かった」
サポートアイテム……サポートアイテムねぇ。帯としてコスチュームに巻くのはやってみる価値はあるけど、捕縛布を収納できるようなサポートアイテムとなるとかなり大型になりそうで嫌なんだけど……デトラネットか義蘭に聞いてみる?
でもまあせっかくサポート科の先生に取り次いでくれるんだし一度行ってみようかな。
と言うわけで、
授業が終わり、サポート科に行くことにした。捕縛布のプロな相澤先生じゃない人を相手にするというのもいい経験だったし、捕縛布を当てやすいように相手を誘導する、という事も少しずつ出来るようになってきた。なかなか実のある授業だったので大満足だった。
本当は緑谷をしばきに行こうと思ってたんだけど、アイツもサポート科に行くらしいから今日は無し。
「……お邪魔します」
「おお、いらっしゃい。陽炎さんだね、エクトプラズムから話は聞いてるよ」
「あれ!?睨美ちゃん!!お疲れ様〜」
「信濃……お疲れ」
サポート科の工房に入ると、パワーローダー先生と信濃が作業をしていたところだった。奥の方では緑谷、麗日、飯田と……発目だっけ?体育祭で無茶苦茶やってたやつが何やらわいわいしている。まあほっといていいや。
「確か……相澤先生と同じ捕縛布を使いやすくするサポートアイテムだったね。何か希望はあるかい?」
「私の動きで壊れない且つ動きを阻害しないよう大型にならない物。ゴテゴテしたものは嫌い」
「結構無理言うんだね!?」
「これくらいプロのサポートアイテム会社なら日常茶飯事だよ信濃。覚えておくといいさ」
「えぇ……わかりましたぁ」
「なんで信濃がここに?」
「ああ、信濃の個性『目利き』がすごく助かってるんだよ。目に見えない歪みや材料の品質がよく視える。正直どこのサポート会社でも引っ張りだこになるような人材だ」
「へぇ……優秀じゃん」
最初、入試で見た時は敵の弱点を瞬時に見つけれる戦闘向きの個性だと思ってたけどなるほど、こういう使い道が1番活かせられるとは思ってなかった。これでサポート科として知識をつけたらとんでもない大物が出来上がりそう。
「えへへ……睨美ちゃんのお陰だよ。入試の時に励ましてくれたから、個性の使い方を教えてくれたから今私はここに居る。ありがとう!!」
「んー………………ん。受け取る」
「あれ、照れてる?わぁ、こんな睨美ちゃん初めて見た!!」
「う、うるさいよ信濃」
ううむ……純粋な感謝ってどうにもむず痒い。ああもう、これも全部アザミ達の記憶のせいだ。嫌じゃないけど、まだ慣れない。
「はいよ、なんとなくだがこんなもんでどうだ」
「図面……今の時間……で?」
「絶対に満足するもんが完成するとは限らねぇが、急拵えにしては上出来ってところだ。まともな図面は時間かけて作るし製作もかなり難航するはずって代物だ」
「え……先生、これって、その。ここの設備じゃ無理じゃないですか?」
「マジで無理そうならサポート会社に依頼するよ」
私は図面の見方なんて分からないけど、勉強してる信濃には分かるらしい。信濃に教えてもらいながら図面を読む限り、帯のように腰につける物らしい。でも機能としてはベルトに近いらしく、腰の後ろにつけるポーチみたいな物の中に捕縛布を収納。状況に応じて空いてる射出口からいろんな角度に捕縛を打てる。機能としては発射するだけだから直接的な操作は私がやるんだって。
何とは言わないけど、これなんて『堕姫』……いや止めよう。
「射出口がこんなにあったら、耐久性……大丈夫?」
「よく分かってるじゃねえか。大きく吹き飛ばされて背中を打ちつけるなんて状況にならなきゃ問題ないようにはするさ。開発に当たって捕縛布を借りたいんだが、授業で使うなら新しい物を取り寄せるぜ。どうする?」
「ん……ん?それって、色……変えれる?」
「あ?まあ、言えば色くらい変えれるだろ。何色にしたいんだ?」
「んー、じゃあ……赤で」
「ケッケッケ!!そりゃあいい。そのコスチュームによく似合う。あいよ、採寸だけして今日は終わりだ。信濃、後はよろしく」
「はーい!!」
パワーローダー先生は信濃に後を任せて、工房の奥に引っ込んでいった。そして振り返ると、目を輝かせながら手をワキワキさせている信濃の姿。
うわ
「え!?なんで引くの!?ねぇ、ねぇってば!!ごめんって!!」
「その仕草は……やめた方がいい」
「えー!!せっかくヒーロー科のお手伝いが出来るからテンション上がっただけなのにぃ!!」
「あ、そっちか」
びっくりした。もしかしてそっちの趣味の方かと思った。もしかしてサポート科ってこういうテンションの上がり方をするんだろうか。うん、そうかも。そこでわちゃわちゃしてる発目もおんなじ様な感じだし。
「あ、そういえば睨美ちゃん」
「ん?」
「そのコスチューム、すっごく似合ってるよ!!」
「……うん、ありがとう」
その言葉が、今となっては結構嬉しいよ。ありがとう、信濃。
◆
数日後 夜
「見やすい。もう一度」
「お願いします!!」
今女子棟で行われている女子会に参加出来なかった私は、諸悪の根源である緑谷に稽古をつけていた。こいつが訓練付き合ってと言ってきたから仕方なく付き合ってやっている。
どうやら緑谷は、この前の林間合宿でヴィランと戦って腕があまりよろしくない状況らしく蹴りをメインにすることに決めたらしい。
でもまあ、覚えたての付け焼き刃。拳主体だった時でもまあ雑魚だったのが余計に雑魚に成り下がったわけで。
「腰の捻りが足りないから威力が出ない、足を振りかぶりすぎだからわかりやすい、蹴ることに意識を向けすぎだから上半身がおろそか」
「ッ、はい!!ってうわぁ!?」
手で足を弾き、以前と同じように足を払って転ばせる。
「片足でバランスを取ってるからこういうのに弱くなる。結局、動物の動きの元は足なんだから全ておろそかにしてはいけない」
「いてて……はい!!」
緑谷は爆速でノートにメモを取り始める。まあ、真面目だからまだ教え甲斐があるよね。いくら天敵だからって言っても、あまりに雑魚だと張り合いがないし……オールマイトに対する嫌がらせの一環として私が緑谷の実力を上げる『先生』になってやろう。うん、素晴らしい理由付けだね!!
「せっかく全身強化が出来るんだから、下半身を重点的に強化する意識を持って。一度本気で私の足を蹴り付けろ」
「え、でも」
「早くしろ」
「は、はいっ!!『(ワンフォーオール)5% スマッシュ』!!!!……なッ!?」
私の足に個性込みで蹴り付けた緑谷だったけど、私は微動だにしていない。当たり前だよね。体幹が違う。
「うん?………何この違和感……緑谷、本当に本気でやった?」
「え、ああ、うん。今できる全力でやったけど……なんで全くぶれてないの!?」
「…………」
嘘、じゃない……緑谷は本気で全力を出したと思ってる。でも、まだ余裕がある?……もしかして。
「緑谷、強化の上限上がった?」
「へっ……?いや、5%でやったけど」
「緑谷の一撃に余裕を感じた。多分もっと引き上げれる……けど、これ以上はまた次回。課題にしとくから出来そうなら覚えて」
「わ、っかりました……ありがとう陽炎さん!!おやすみ」
「ん、おやすみ」
オールマイトの5%、今の私には敵にすらならない。20倍の威力を想像すると……確かに、吹き飛ばされるかもしれない。けどダメージになるかは実際に受けてみないと分からないかな。
あー……一応、個性取れるかやってみればよかったな。今の私には別に必要のない個性だけど、持っていて損もない。でも緑谷と本当に殺し合わなくちゃいけないのは弔君だから、流石に私が全部持っていくのはダメだよね。父さんがなぜ『オールフォーワン』をくれたのか、その理由はまだよく分かっていないけれどちゃんと考えて理解しなくてはいけない。
女子会
芦戸「あれ、緑谷と陽炎が訓練してるー」
八百万「まあ……ですがあの程度ならグレーで済みますわね。あまり夜遅くまで体力を使うのは褒められた行為ではないですが」
蛙吹「ケロ。緑谷ちゃんも真面目だけど、律儀に付き合う睨美ちゃんも人が良いわよね」
耳郎「陽炎もあんなことがあったんだから少しは休めばいいのに。あれでいつもの調子なんだから動いやつだよね」
麗日「つきあう……」
葉隠「お茶子ちゃん?おーい、お茶子ちゃーん」
麗日「へっ!?」
葉隠「つきあうって単語をつぶやいた後に緑谷の方凝視してたよ?もしかしてー……陽炎ちゃんに嫉妬しちゃった!?」
麗日「そそそっそそそそそそそ、そんなこと!?」
芦戸「わぁ、浮いた」
蛙吹「陽炎ちゃんに限ってそれは無いと思うわお茶子ちゃん」
八百万「ええ……あれはどちらかといえば趣味の一環かと。あれで済んでいるのですからマシですが」
麗日「しゅみぃ……?あっ」
「「「「「「弱いものイジメ」」」」」」
芦戸「うーん、あれがなければ基本いい子なんだけどなぁ陽炎」
八百万「まあそこは育った環境もあるのでしょう……思えば、私たちは陽炎さんのことをあまり知らないですわね」
耳郎「陽炎って自分のことあんま喋らないもんなぁ」
葉隠「喋りたく無いこともあるんだよきっと。詮索良くない」
麗日「でも……うぅ……」
芦戸「恋、恋だね麗日ー!!」
麗日「そんなんじゃないよぉ〜!!」
葉隠「あ、そういえば部屋王の時に睨美ちゃんの部屋でマフラーあったじゃん。赤いやつ!!」
耳郎「あー、そういや誕生日プレゼントで貰ったって言ってたね。御影さんにもらったのかな?」
芦戸「御影さん?」
麗日「Iアイランドの時に出会ったの。確か……メイドさん?」
芦戸「え、陽炎ってお嬢様だったの!?」
八百万「陽炎さん自身も上流階級の嗜みを心得ているようでしたしそうかもしれませんわね」
「「「「「「謎が余計に広がる(ですわ)!!!!」」」」」」