蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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42話

 

今日は休日で特にやる事もないからいつも通りゲームに明け暮れようとしてたんだけど、朝からなんだかクラスの様子が変だった。

 

 

「かかか陽炎さん、今日はお日柄もよく……じゃ、じゃあ!!」

 

「え……あの……え?」

 

 

緑谷は始めみたいに挙動不審。

 

 

「よぉ陽炎。あーその、なんだ?今日の予定は?ゲーム?おいおいおい!!今日みたいな天気の良い日なんだから外でよ、外!!お前ずっとゲームしてたら体に悪いぞ!?うん、それが良い!!」

 

「上鳴は私の母親かなんかなの?」

 

 

上鳴は急に外出しろとうるさいし。

 

 

「陽炎さん?……えと、えーと……その……あっ!!今日、結(ゆわい ※口田のペットのウサギの名前)を外に連れていくんだけど……一緒に行かない、かな?結も陽炎さんに懐いてたし……ど、どう?」

 

 

口田はなぜかウサギを外に出そうとしてるし。ウサギ外に出していいの?ストレスとか大丈夫?

 

 

「陽炎ちゃん。どうしても理由は言えないのだけれど、今日は寮を離れてくれないかしら。理由は夜にちゃんと話すわ」

 

「まあ……そこまで言うなら」

 

 

蛙吹はもうなんか直球に外に出て欲しいと言ってくるし。

 

 

「ねぇ……どう思う?」

 

「俺からは言えねぇ」

 

「だろうね」

 

 

別に外に用事は無い。それで仕方なく外に出たはいいもののすることが無いので彷徨いていたら偶々出会った私服の轟に遊びに行こうと言われたので付き合ってやってる。

 

【(これをデートと思わないお前の鈍感さが1番怖ェよ)】

 

さっき挙げた人達以外も今日は出会ったけどみんな揃って外に出ろと言ってきた。

 

だから『目を盗む』能力で聞いちゃったんだよね。もう遅い。皆おんなじ事考えてた。

 

 

((((((陽炎のサプライズ誕生日会……本人にだけはバレないようにしないと!!!!))))))

 

 

やってしまった。

 

普通にそう思った。私がこんな能力を持っているとは夢にも思わないだろうし、そもそも本人にバレた時点でサプライズの意味がない。蛙吹とか皆がひっきりなしに外に出ろといったのは一階の準備をするため。

あの爆豪でさえ、言い方は悪かったけど外出しろと言ってきた。

 

 

「そういえば……遊びに行くって、どこ行くの?」

 

「……考えてなかった」

 

「は?」

 

 

コイツ……とんでもないすまし顔で何も考えてなかったとか言ってんの本気?隠す気ある?

 

 

「わりぃ。よく考えたら、あんまり遊びに行くとかしてこなかったから、どうすればいいのかわからねぇ」

 

「…………はぁ」

 

「ちょっと待ってろ。誰か他のやつに連絡して代わってもらう」

 

「いいから……行くよ」

 

「……?行くって、どこにだ」

 

「ゲーセン」

 

「ゲーセン?」

 

「遊び方、教えてあげる」

 

「ッ!!……あぁ、助かる」

 

 

仕方ない。本当に仕方がない奴。どうせ意地でも私を寮に帰す気はないだろうし、もう知っちゃったからどんな顔して帰ればいいのかも分からない。

 

だったらもう遊び倒すしかないよね。なんで私の誘導役にこんな状態の轟が選ばれたのかは知らないけど、今から人を変える方が都合が悪いんでしょ?もう私が私のためのサプライズに協力するっていう意味の分からない状態になるけど、

 

ここまで来たら()()()()の気持ちを無下にしたくない。

 

なーんて、また……アザミ達に影響されている。Iアイランドの時に気持ちを入れ替えたはずなのに、無駄になっちゃったね。もう私には皆を殺せない。ヴィランとして敵対することはあるかもだけど……殺すことはもう、出来ないなぁ。

 

 

「ゲーセン行ったことないの?」

 

「ねぇ。あんまり興味なかった」

 

「……じゃあ、面白くないかもね」

 

「いや、陽炎がやるならやってみたい。教えてくれ」

 

「ふふっ……なにそれ」

 

 

「ねぇねぇねぇ、今陽炎笑ったよね?」

 

「やっぱりクラス1のイケメンの純粋な言動には鉄仮面の睨美ちゃんにも効果あるんだ!!」

 

 

「………」

 

 

若干2名、ゲスな勘ぐりをしている芦戸、葉隠が着いてきてはいるが轟は気づいていない様子。しかもカメラまで構えているあたり、本当にゲスもゲスなこと考えてるんだろうね。峰田かよ。

 

てか誕生日会の準備はいいのかよ。いや、私が開いてもらう側だから上からなこと言えないけどさ。まあ、えーと……18人?は残って作業してるって考えたらまあ全然余裕か。まあ別にいいか、やましいことがあるわけでもない。

 

 

あとさ相棒。

 

【あん?】

 

別に気づいてないわけじゃないよ?

 

【ッ……お前……!!】

 

愛だの恋だの、理解しようと思わないし私には必要ないけどさ……誰の記憶を受け継いだと思ってるの?

アザミだよ?

自分に一目惚れした人間と過ごして、結婚して、子供ができて、孫までできて……ずっと一緒にいたいからカゲロウデイズまで作ったその感情。理解したくなくても……強く、感じてしまうんだよ。そんな気持ちを伝えたいから『目をかける』能力を作った。

 

尊いと思う、凄いことだと思う。でもそこまでの激情を知ってしまうとさ、

 

ああ……私には無理だなぁって、そう思うわけ。

 

だから私は誰にも伝えない。伝える必要がない。伝えたい相手には……目が無いから届かない。もう会えないかもしれない。

 

これ以上、私は私を鈍らせはさせない。

 

 

「ほら、行くよ轟」

 

「あ、ああ……陽炎、なんか最近柔らかくなったか?」

 

「……轟……お前の事だから、変な意味だとは思わない。けど……女子相手にそれ、『太った?』と同じ意味に聞こえる」

 

「ッッッ!?!?……わりぃ!!そんなつもりはっ……」

 

「……ふふふ、あっははは!!ははははは………ははっ!!」

 

「ッ!!」

 

「ははは……はぁ、笑い死ぬかと思った。良い、良いね。こういうの、こういうのが……普通に楽しいって言うんだろうね」

 

「陽炎……?」

 

 

………………うん、やっぱ無理。あーあー、どうしよっかなぁ。弔君にも一定の情があるし、雄英にも情ができた。

 

どっちの味方にもなりたいし、どっちの敵にもなりたくない。

 

 

 

ああ、わかったよ父さん。私を雄英に入れた理由。()()()()()()()()()()()してくれたんだね。酷い事してくれるなぁ

 

『目をかける』蛇が私に伝えてくる。

私が貰った『オールフォーワン』から送られてくる感情がどんな時でも訴えてくる。

 

『好きなように生きなさい。それが出来るように、育ててきた』

 

バカな人。私なんか他の人と同じように使い捨てたらよかったのに。

 

『そんな事、僕がするわけないだろ?』

 

するよ。私が知ってるオールフォーワンなら。そうしてこそのオールフォーワン、そうしてこそ……私の父さん。

 

『おいおい、反抗期かい?僕も娘にそんな事を言われるようになってしまったか。年をとってみるものだねぇ』

 

ふふっ、だったらちゃんと最後まで私の中で私を見ててね。父さん。

 

『ああ……悔いのないよう、好きに生きなさい。僕はちゃんと見ているよ。愛しい娘』

 

 

 

「デートしよっか、轟。今日だけはエスコートしてあげる……次はちゃんと、エスコートしてよ」

 

「ッ……ああ!!それと言い忘れてた。今日の服装、似合ってる」

 

 

…………部屋着のパーカーなんだけど。もうちょっと、言うタイミングとか、センスとか磨いた方がいいよ?言わないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「陽炎、誕生日おめでとう〜!!!!」」」」」」

 

 

夕方、先に寮に戻った轟の後を追うように私も帰宅し一階の扉を開けると、皆からクラッカーでお出迎えされた。

 

 

「ありがとう」

 

「アレ!?なんか反応薄くね!!」

 

「ん?気づいてたし」

 

「「「「「「ええ〜!?!?!?」」」」」」

 

「だから言っただろうが!!このクソ蛇女に小細工しても無駄だってなァ?」

 

 

やっぱり私が今日のことに気づいていたことは皆にバレていなかったらしい。少し反応が薄くなっちゃったけどまあ仕方ないよね。

 

 

「まさか轟、バラしたのか!?」

 

「違う……けど流石に皆分かりやすすぎる」

 

「じゃあなんで轟はあんな隅で蹲ってんの?」

 

「……まあ、色々あった」

 

「やらしいことしたのか!?……アッハイ、ナンデモアリマセン……」

 

 

上鳴が部屋の隅で陰の空気を放ちながら体操座りで蹲っている轟を指差す。余計なこと言った峰田は視線で黙らせた。

 

 

「……俺の事は放っておいてくれ……俺は……ゲームの才能が……無かった……!!」

 

「本当にどうしたの轟君!?」

 

 

うん……ゲーセンにあんなに適性がない人初めて見たよ。バスケのシュートする奴以外壊滅的だったからね。なんか見てて本当に哀れだった。そりゃ何も知らない緑谷も叫ぶよ。

 

 

「それと……今日尾けてきた2人……ああ、自首しなくていい。聞くだけでいいよ」

 

「「」」

 

「今日録画してたデータ、消去しろとは言わない……でももし、外部に流出するようなことがあったら……ふふ、今度新技の的になってもらおうかな」

 

「「私達は何も見ていませんし聞いていません!!」」

 

「よろしい」

 

 

自首しなくていいと言ったのに自ら土下座する勢いで出てきた芦戸と葉隠。よし、とりあえず一通り終わった。

 

 

「でもなんで……今更?」

 

「ほらさ、こないだ林間合宿の時に誕生日だったって言ってたじゃん?流石に可哀想っていうか……」

 

「うむ!!せっかくなので皆で陽炎君の誕生日を祝おうということになったんだ」

 

 

ふーん、なるほどね。

確かに何も知らない皆からしたらとんでもない誕生日に見えるか。私からしたらこれ以上ないくらい良い日だったんだけど、まあせっかく祝ってくれるならいっか。

 

 

「ん……じゃあほら、祝って」

 

「なんという不遜な態度!?だがしかし……」

 

「ふっ……陽炎らしい」

 

「よっしゃ、じゃあ早速行くぜー!!プレゼントだぁ!!」

 

「……プレゼント?」

 

 

三者三様の反応を見ていると、切島が音頭をとった。

 

 

「いやー、本当はうちらが1人ずつ渡す予定だったんやけどねー」

 

「部屋のサイズにも限りがあるからな。皆で一つのプレゼントを渡すことにしたんだ」

 

「ふぅん……で、今2人がかりで運ばれてきてるそれ?」

 

 

デカい。体格のいい砂藤、障子が運んでくるようなプレゼントボックスには一体何が入っているんだろうか。

 

 

「ふぅ、陽炎開けていいぞ」

 

「うん」

 

 

障子から声をかけられて、私は目の前に置かれたデカいプレゼントボックスの封を開けていく。

中から出てきたのは……猫の……ぬいぐるみ?

 

 

「おおー……ん?んんぅー……良き……」

 

「ああ、陽炎が猫の腹に喰われた!?」

 

「あんなにだらしない顔は見たことねぇ!?」

 

「あれは……喜んでるの……かな?」

 

「た、多分……?」

 

 

私の身長よりデカい猫のぬいぐるみ、一度触ってわかった。これは……思わず体ごと埋めたくなる触り心地の良さ!!

 

 

「うむぅ…………良き、良きかな……」

 

「陽炎ちゃんのお部屋は彩りが足りないって意見になって、一つくらいこういうのがあってもいいんじゃないかってなったのよ」

 

「梅雨ちゃん、多分陽炎聞こえてないぞ」

 

 

なんで猫好きを知ってるかは別として……これは嬉しい。見た目も良ければクッションにもなるという実用性……素晴らしいセンスですな。

 

【キャラ崩れてんぞ】

 

 

「くるしゅうない……ちこうよれ」

 

「「「「「「ははぁ……!!」」」」」」

 

「よは……まんぞくじゃ……ぐぅ……」

 

「「「「「「ひ、姫様ぁ!!」」」」」」

 

 

ノリのいい奴らが良い感じに乗ってくれた。うん、もうこれでいいや、伝われ。

 

 

「いや陽炎、寝ないんだから」

 

「精一杯のノリなんじゃないかな?」

 

「ん……正解。でも満足なのは本当」

 

「よかったぁ!!偶々爆豪君が、睨美ちゃんと猫が戯れてるの見てたから猫のぬいぐるみにしたんだ」

 

「オイコラ余計なこと言ってんじゃねぇ!!」 

 

「ふぅん、爆豪ありがとう。気に入った」

 

 

「「「「「「陽炎が爆豪にお礼を言っただと!?!?!?」」」」」」

 

「前から思ってたけど……私に対する認識をわからせたほうがいいよね」

 

 

やっぱりコイツら私のこと舐めてるだろ。

 

 

「ま、まあ!!陽炎も喜んでくれたってことで!!次は陽炎お待ちかね、ご飯ターイム!!」

 

「……ご飯!!」

 

「食いつき良すぎだろ」

 

「そういや轟、今日の昼飯は陽炎と何食ったんだ?」

 

「蕎麦」

 

「蕎麦食ってまだ食いつきいいの食欲の化身かよ」

 

 

蕎麦は確かに美味しかった。かしわ天とイカ天という素晴らしい組み合わせも頼んで充実した昼飯だったと言える。だが足りない!!

 

 

「今日は砂藤君特製、鶏肉料理祭りでーす!!」

 

「今日は自信作だぜ?」

 

「天才じゃったか……!!」

 

「ネタが古いよ、睨美ちゃん!!」

 

 

知ってる葉隠も十分すごいよ?

 

最高だ、今日はとても良い日だ!!

 

 

「それでは僭越ながら委員長である俺が音頭を取らせていただく!!陽炎君、遅くなったが誕生日おめでとう、乾杯!!」

 

「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」

 

 

やっぱ楽しいな、このクラス。




翌日


「…………まさか、フォトフレームに入れるような写真を撮るなんてね」


ワイワイガヤガヤと夕食をとって、皆で遊んだ私の誕生日会の翌日。私はプレゼントでもらった猫ぬいの前足をにぎにぎしながらデスクのフォトフレームを眺める。

黒霧さんが手作りしてくれた、ちょっと不器用さが見えるフォトフレーム。

その中には、私を中心としてクラスの皆が写った写真が収まっている。

大体皆ニッコニコだけど、こういうのに慣れてなくてどういう表情をしたらいいのか分からなそうな轟。
いつも通り不機嫌そうだけど、いつもよりはマシな顔の爆豪。
麗日が隣で緊張しまくってる緑谷。
写真だと流石に姿は見えない葉隠など、

一人一人感想を述べていきたいところだけど、まあ無粋だよね。


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