蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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44話

ヒーロー仮免許取得試験当日。

 

結局トガちゃんは来るらしく、数日前から別の高校の人間になりすましているらしい。

現見ケミィって奴で、学ランの女らしいけど初見じゃ分からないので一旦放っておくことにした。

 

私達A組はバスで会場に到着し相澤先生から激励を受けている。

 

 

「頑張ってこい」

 

 

話が終わって、会場に入ろうとしたところ別の高校が絡んできた。

 

 

「東の雄英、西の士傑」

 

士傑高校という雄英に並ぶヒーロー科の学校の生徒。ぶっちゃけ興味は無いので無視していようと思っていたけど、その中の1人が私に視線を向けてウインクして来た。

 

学ランの女だ。

 

 

「…………はぁ、了解」

 

「あれ、睨美ちゃん。あの人こっち向いてウインクしてたよね。知り合い?」

 

「んー……まあ、知り合いといえば……知り合い?」

 

「なんで疑問形なん?」

 

 

どれがトガちゃんかは分かったけど大衆の面前でアクションを起こさないでほしかった。

まあそこがトガちゃんの個性だから否定はしないけどね。

 

その後傑物学園とかいうところにも絡まれたけど、私は『目を隠す』能力で話しかけられない様に影を薄くしてた。

めんどっちぃからね。戦意を滾らせながらこちらを見つめる目線って。

 

 

会場内の更衣室でコスチュームに着替え、試験の内容説明が行われる場所で男子と合流した。

 

 

「えー……では、仮免の奴を、やります。あ、僕、ヒーロー公安委員会の目良です。好きな睡眠はノンレム睡眠……よろしく。仕事が忙しくてろくに寝れない……人手が足りてない……眠たい!!

そんな信条のもと、説明させていただきます」

 

 

やる気のカケラも感じられない司会を視界に収めながら、私は辺りを見回す。

人、超多いな……さっき聞いた話じゃ今日の受験者、1500人超えてるって話だし。

 

説明によると、第一次試験を突破出来るのは100人。つまり倍率は15倍。面倒だなぁ。

 

【面倒なだけで余裕な癖によく言うぜェ】

 

別に。必要かは皆に委ねるけど、私は出来るなら人を助けずに私だけ試験に合格したっていい。私の使命はヒーローになること。その明確なルートの一つが目の前にある以上私は私を優先する。

 

ルールはシンプル。個人が体に付けた3つのターゲットに対してボールのぶつけ合い。自分の3つがぶつけられて点灯したら脱落、逆に3つぶつけたら合格だ。

そして会場が展開された。何をいってるのか分からないと思うけど文字通り、天井や壁が展開されて本当の会場全体が姿を現した。

雄英のUSJみたいな各エリアを再現したステージ。私の能力を活かすなら見晴らしのいい山岳エリアかな。

 

普通に考えれば、学校ごとに組んで全員合格を目指す。

分かっていたけど早々に爆豪が離脱、付いていくように切島と上鳴も離脱し轟は1人でどっか行った。まあアイツらなら問題は無いだろうけど。

 

 

「‥‥質問。楽して合格したい?落ちるリスクを取っても自分の力で合格したい?」

 

「陽炎?何を言っているんだ。そりゃ合格するに越したことはないけど」

 

「今から雄英が優先的に狙われる。それは分かってる?」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

 

なんで分かってないの?あんなに大々的にお披露目したのに。

 

 

「雄英体育祭は全国中継。個性も戦法も全部……知られてる」

 

「あ、そっか!!」

 

「やっべぇ。全然考えてなかった」

 

 

皆気づいてなかったのか、それぞれ考え込み始めている。時間がないので単刀直入に伝えてあげよう。

 

 

「開始直後に雄英狙いの人、全員石化してあげる。皆は余裕を持ってボールを当てればいい」

 

「陽炎頼む!!それやってくれよ!!」

 

「峰田ちゃん。それでいいの?」

 

「うちはちょっと……せっかく必殺技の訓練したし……」

 

「俺も反対だ。これは試験だが、訓練でもあるだろう。確かに陽炎がいれば合格は簡単だろうがそれでは俺たちの成長にならない」

 

「うんうん、楽しちゃ輝けないよね!!」

 

 

障子の言葉に、皆が賛同していく。まあそう言うだろうと思っていたけどね。

じゃあ遠慮なく。

 

 

「分かった……私は合格できればいい派だから10秒で終わらせてくる。あとは頑張ってね」

 

「え、ちょ、陽炎さん!?」

 

「えー!?陽炎行っちゃうの!!」

 

「乱戦で……私の石化に巻き込まれない自信があるの?」

 

「「ないです!!!!」」

 

「ん……じゃ。控え室で待ってるから」

 

 

私はそれだけ言って、場を離れる。

試験開始のカウントダウンを聞きつつ、私は『目を凝らす』能力で周囲の人間を探る。

 

……約20人。1クラス分か、コスチュームからじゃ個性が分からないけど,目隠しっぽいものを付けてるのがわかる。私がいる方向を見ながら作戦を立てているらしい。つまり私用に対策をしているということ。

 

ああ、いいね。どうやって私をメタって来るんだろう。全部、徒労に終わるのに。

 

そして試験が始まった。

 

 

「『震脚』、『我流捕縛布操術・天真爛漫』」

 

「「「「「「うわぁぁぁぁぁ!?!?!?」」」」」」

 

 

開始直後に『震脚』で地面を破壊し、私の新技で体勢の崩れた奴らに向けて袖と新アイテムから捕縛布を射出。背中と袖から相澤先生以上の数の捕縛布で一気に絡めとる。

動きを止めさせてから捕まえる、相澤先生に教えてもらって、エクトプラズム先生で練習して編み出した。

 

尚、授業中にハリネズミみたいとか言ってきたバカどもがいたのでそいつらも簀巻きにした。

切島と上鳴である。

 

 

「『目を奪う』『目を合わせる』……制圧完了」

 

 

目隠しをしている奴らも、『目を奪う』で()()()()()()()()()()()ようにした。彼らは自分から目隠しを外して私と目を合わせてしまった。それが運の尽き。

 

『目を奪う』能力。私か私が指定した対象に視線を釘付けにさせる能力だけど、その()()は別だ。

 

『限定的な洗脳』

 

私がメデューサとして覚醒した事でその本質……『目を奪う』蛇と仲良くなって教えてもらった応用。心操の個性から着想を得て、『目を奪う』という行動を自分なりに再解釈した結果の使い方。

 

『目を奪われる』 ニアイコール 『夢中にさせられる』

 

 

「かわいそうに……私が強いと分かっていて尚、勝てると思ってしまった傲慢。そのツケは……全員に払って貰うね。『目を奪う』……『目を合わせる』解除」

 

 

硬直した全員を1箇所に集め、さらに能力を使用する。最近は体術よりも能力の訓練に勤しむようになった。それからというものの、今日のように色んな使い方を思いつく。

 

【ぶっちゃけここまでエグい使い方になるとは思ってなかったけどなァ】

 

 

「ひぃ、嫌だ!!こんな事やっちゃいけないのに、どうしても……アイツの喜ぶ顔が見たい!!」

 

「体が勝手に!?陽炎睨美の個性は石化とパワーじゃなかったのかよ!!」

 

「ちくしょう!!ちくしょう!!3年だから後がねぇってのに!!」

 

「……ふふふ、ほら。潰しあえ」

 

 

体の自由が利くようになったのに、自分の思い通りに体が動かない。それどころか、彼らの脳内は今、『自分達が潰しあう事で見られるであろう私の笑顔を見る』事で一杯なのだから。

 

恐ろしい能力だね、『目を奪う』蛇。

ん?んーん、怖いとかじゃないよ、魅力的ですごくいいと思う。だから拗ねないで、貴女が今1番輝いているよ。もっと誇って。

 

あーあ、私って罪な女。そう思わない?相棒。

 

【そう思うならちったァ自重しろよォ】

 

 

「さて……皆ターゲットが後一つずつになったね。ありがとう」

 

 

私が『目を奪う蛇』と話してる間に敵は潰し合いを終えたらしい。

 

 

「ふふ、あはははははは!!久しぶりに……弱者を痛ぶるのは楽しいなぁ!!…………じゃ、さよなら」

 

 

弱者が強者に敵うと思って群れて、強者に屈して自滅する。

なんて惨たらしい!!なんて惨めだ!!なんて……楽しいなぁ!!!!

 

私は1人ずつボールを当て、合格ラインを超えても全員を退場させたのだった。

 

 

「はい合格……戦闘試験は温いね」

 

『通過者は控え室に移動してください』

 

 

【えげつねェ……アザミじゃ絶対に思いつかない使い方だろうよォ……】

 

言ったでしょ相棒。私はアザミじゃない、名前だけ使ってるだけ。私には私のやり方がある。

 

さてと、控え室で高みの見物と行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

「皆温いね……あの程度ならもうちょっと楽に勝てるはず」

 

「陽炎の基準がおかしいと思うぞ」

 

 

控室に戻ってから時間が経ち、合格した轟と合流した。モニターがあるわけでもないので時間の経過具合でなんとなく喋ってる。

 

 

「陽炎は次の試験、なんだと思う?」

 

「ん……さっきは戦闘能力だったから……次は救助とか?」

 

「なるほどな。ヒーローの必須事項を強いてくるってところか」

 

 

もしくは、その両方か。まあこれに関しては予測の範疇でしか話せないし考えるだけ時間の無駄だ。携帯の持ち込みが出来なかったからこうして轟と喋っているけど、早く試験終わらないかなーってことしか私の頭にはないよ。

 

 

「そういえば轟……さっき喧嘩売られてなかった?」

 

「俺、喧嘩売られてたのか?」

 

「知らないけど……」

 

 

轟がなんかテンションが高くてデカい坊主頭に人でも殺しそうな視線向けられてたんだよね。

『目を盗む』能力を使ってなかったからどんな話してたのか知らないし興味もないから無視してたけど。試験妨害なら他所でやってくれって話。

 

 

「よぉ!!お前ら早いな!!」

 

「上鳴……合格出来たんだ。よかったね」

 

「いやー大活躍だったんだぜ俺!!陽炎にも見せてやりたかったくらいだ!!」

 

「へー」

 

「全然興味ないじゃん!?」

 

 

冗談冗談。帰ってきたのは上鳴、切島、爆豪の3人。爆豪の納得いってなさそうな顔とか、切島から聞いたあらすじで上鳴が活躍したのは本当らしいとは思ってるよ。

 

その後着々とA組生徒が帰ってきて、ついに全員が合格することが出来た。

 

 

「陽炎〜!!やっぱお前がいてくれた方がこんなギリギリにならなかったかも〜!!」

 

「……合格出来たからよし」

 

「そうだけど〜!!」

 

 

泣きついて来た芦戸を適当にあしらって、私は緑谷に話しかける。

 

 

「緑谷、おつかれ」

 

「陽炎さんもお疲れ様。やっぱすごいね!!」

 

「痴女もしくは変な女いた?」

 

「え!?うーん……居たよ。知り合いだった?」

 

「いや、なんかチラッと見えただけ」

 

「あはは……大変だったよ……」

 

 

嘘、どうせトガちゃんがちょっかい掛けたかなって思って聞いてみただけ。緑谷が心底色々悲しそうな目をしているのでこれ以上の言及は止めておこう。本当はもっと厳しく言おうと思ってたけど、なんかすっごい遠い目をしててもはや哀れだった。

 

 

「で、でも!!全員が突破できて本当に良かったよ。次の試験も気張っていこう!!」

 

「ん」

 

 

『えー一次選考を通過した皆さん、これをご覧ください』

 

 

数分後、進行の目良さんがモニターを見るように指示を出した。そこに映っていたのは、さっきまで私たちがバトルしてたフィールド。

 

 

BOOOOOOOOOONNNN!!!!

 

「「「「「「なぜ!?」」」」」」

 

 

そのフィールドが突如として爆発。

……いや本当になんで?

 

 

『次の試験が最後になります。皆さんにはバイスタンダーとして、救助演習を行なってもらいます。一次選考を通過した皆さんは仮免許を取得していると()()し、どれだけ適切な救助を行えるか試させてもらいます』

 

 

なるほどね。で、救助対象は?ロボット?

 

 

「お、おいアレ!?」

 

 

砂藤が何かに気づいてモニターを指差した。

 

そこには、老若男女がボロボロの姿で瓦礫の中に入っていく様子。

あー……なんだっけ?要救助者をやる仕事が確かあったよね。

 

【HUCっつってたかァ?】

 

それだ。つまりは採点者である要救助者をどう救助するのか。

そして追加で今説明された事柄から考えるに……

 

 

「ヴィランによってテロ真っ最中の救助現場……神野の再現だね」

 

 

ふふふ……じゃあさ、別に救助するだけが採点じゃないよね。どこかにこの惨状を引き起こしたヴィランが居たっておかしくない。ヴィラン警戒のグループが必要……つまり。

 

 

「爆豪」

 

「あ?……んだよ」

 

「救助なんて温いことしないでさ……もっと楽しいことしない?」

 

「……あぁ?」

 

 

楽しく試験に合格するついでに、コイツも合格させてやろうかな。

コイツがこの試験で受かるとは到底思えないし。

 

 





2次試験までの休憩中


「……ねぇ。ちょっと表出ろ」

「いいよ〜?」

「……やりすぎ、バレても知らないからね?」

「えー!?睨美ちゃん酷いです!!ちょっとイズク君に会えてテンション上がっちゃっただけです!!」

「トガヒミコの『個性』を使うのは聞いてない……しかも脱いだんだって?」

「睨美ちゃんにもらった超超極薄インナースーツ着てたから見えてませんよ?」

「んー…………じゃあセーフか」

「あ、判断基準そこなんですね」

「この前言ったでしょ。体組織一つでもバレたらマズい……ていうか、本物は?」

「士傑高校のロッカールームで寝てますよ?えへへ!!これも睨美ちゃんの救援物資のお陰です!!」

「義蘭から買ったあの300倍希釈の睡眠薬か……はぁ……んじゃバレない程度に頑張ってね」

「はーい!!睨美ちゃん!!」

「……なに?」

「ありがとうございます!!大好き!!」

「……ん」
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