蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
9話
「うお!?なんだこれ!!」
「…………尾白?」
黒霧さんのワープを抵抗なく受け入れた私は、尾白の声で目を開けた。
「陽炎さんも一緒だ……良かった、強い人で」
「……火災ゾーン。そして周りは」
辺りを見渡せば周りの建物全部が燃えている。市街地で火災が起きたときの想定らしいね。
「へへへ、チビだが可愛い嬢ちゃんじゃねえか」
「こいつら殺すだけでいいんだろ?楽な仕事だぜ」
「少しくらいあそんで行こうぜ」
「男の方は先に殺すけどなぁ!!」
私達を取り囲むように10人以上、異形型も含めたヴィランが立っている。
「か、陽炎さん……もしかしてこれ……戦う感じ?」
「まあそうなるね。尾白、何も言わずに目を瞑ってて」
「え、どうして?」
「いいから。『目を奪う』『目を合わせる』」
「「「「「「なっ……!?」」」」」」
個性を発動。全てのヴィランの視線を奪い正面180度までのヴィランの動きを止める。すぐに振り向いて反対側のヴィランも全て止める。制圧完了。
「……
「すごい……」
「……気絶させよう」
「分かった」
一人一人顎にアッパーを喰らわせて気絶させる。尾白は武術でも習っているのか、しっかりした型から鋭い正拳突きや蹴り、そして彼の特徴である大きな尻尾で次々にヴィランを締めていった。
「初めてのヴィラン退治がこんなので良かったのか俺……」
「……無事に終わったからいいでしょ」
「ま、それもそうか。ありがとう陽炎さん、君がいなかったら苦戦してた」
「(ホントは石化させればもっと早いし手間もないんだけど、殺しちゃうからねぇ……)
多分尾白一人でも勝てた。胴着といい構えといい、なんか習ってるの?」
「空手を少し。まだ尻尾の調整が出来なかった頃に体のバランスを取るのが難しくてさ、体術で補おうと思ったんだ。それに元々の武術に俺の尻尾を合わせたら戦いやすいんじゃないかと思って続けたらここまで来れたんだよね。今回は出番が無かったけど」
なるほど、そう言う意味だと異形型って難しいんだね。
「まあ例えば……」
「なめやがっt…がっ、ごはっ!?」
「こう言う感じかな?」
「おおー」
私が動きを止めていなかったのかそれともどこかに隠れていたのか、残っていたらしいヴィランの一人がナイフを持って尾白を刺そうとしていたけどそれに気づいた尾白が勢いの乗った回し蹴りをして、その勢いを使ったまましならせた尻尾で追撃。吹っ飛ぶ前のヴィランを地面へと叩きつけた。きれいに決まって思わず拍手しちゃったよ。
「私は
「ってことは使えるのか。どこの道場?」
「…………家庭教師もしてくれた育て親の知り合いで、バカしか食わないような超激辛麻婆が大好きな神父さん?だから道場じゃない」
「な、なかなかキャラが濃い人だね……」
しょうがないじゃん。『先生』と対等に話せる人だったし信用しないわけにはいかなかったんだから。まあ話してみると案外良い人だったよ?……まあ【他人の不幸は蜜の味】を体現する人だったね。
「……まあそのおかげで……ふっ!!」
「ごはぁッ!?」
「
「うわぁ……」
もう一人いたっぽい。腹に向けて弱目の肘撃を繰り出して吹き飛ばす。元々のフィジカルがおかしい私は全力でやるとバラバラにしちゃうからね。まあ私が学んだのは『効率的な人体破壊の仕方』を加えた八極拳だから正統派ではない。外道過ぎるから『マジカル⭐︎八極拳』って呼んでる。誰にも言ったことないけど。
【センスのかけらもねェよなァお前】
……う、うるさい相棒。
「ここを制圧したのは良いけど、戻るか?」
「……戻る。相澤先生が一人でヴィランを食い止めてるはずだから」
「了解」
嘘。早く戻って死柄木君の実力とやらを拝見したい。『先生』の後継者に相応しく無かったらすぐにでもハイジョしなきゃ………
「陽炎さん……?なんか目が怖いよ?」
「……なんでもない。早く戻ろう」
◆
「なっ……相澤せんs…むぐッ!?」
「大声上げないで。バレる」
「…………ぷはっ。ごめん陽炎さん」
「別に良い」
噴水広場を眺めることができる場所から中央の様子を眺めると、相澤先生が脳無に押さえつけられていた。割とボロボロで普通なら気絶くらいはしていそうだけどよく耐えてる。尾白はそんな彼の姿を見て大声を上げながら飛び出して行こうとしたので口を押さえて止めた。
「水辺の端っこ」
「………緑谷達だ」
水難ゾーン?の端、陸に1番近いところに緑谷、吹蛙、峰田の3人が隠れている。でもあんな位置からだとすぐにバレるだろう。
「……『目を凝らす』」
入り口付近、13号先生の背中が見るに耐えないくらいボロボロでそれを何人かが護衛している。周りにヴィランがいないとはいえ手が離せない。他の場所の生徒達も確認したけど……飯田がいない。黒霧さんのワープから逃げ切った?……と言うことは、そろそろ教師陣が来るかも。オールマイトも居るんだったら多勢に無勢、しかも一人一人が生半可じゃない実力を持っている。いくら脳無が居てもキツそう……さあ、死柄木君。どうする?
「すいません弔。一人外に出られました」
「………黒霧。お前がワープじゃ無かったら殺してるよ。はぁ……ゲームオーバーだ……帰ろっか」
…………は?
「こりゃダメだ……でもその前に平和の象徴の矜持を、少しでもへし折ろうか」
死柄木君はそう言って水辺の緑谷に手を向ける。多分手で触れることで発動する個性なんだろう。ふむふむ、なるほどね。
「ッッッッッッッッ!!!!」
「陽炎さん!?」
尾白が私を呼んだけど知ったことじゃない。なんだアレは、まるでダメじゃん。先生が私より優先して後継者に推すものだからどれほどのものだと思っていたら…………ただのガキか。
「死ね」
「なに………ッ!?」
全力で跳躍し死柄木君の頭に拳を振るう。位置エネルギーも乗った全力の一撃は、死柄木君の頭を潰すことなく地面を陥没させるだけに至る。へぇ……今の避けるんだ。
「女子生徒ッ……」
「陽炎さん!?」
「『黒霧さん……悪いけど、殺すね』」
「ッ!!(待ちなさい睨美!!それはまだ早計でしょう!?)」
『目をかける』と『目を盗む』の併用で喋らずに黒霧さんと会話をする。
「『大丈夫。先生には許可取ってるから。認められなかったら殺すって』」
「くっ……(睨美……なら仕方ありません。私も己の使命を果たすとしましょう。私の使命は死柄木弔を守ること!!)」
黒霧さんの決意も固まったみたい。死柄木君の個性がどんな効果なのか知らないけど、黒霧さんと連携されると面倒だね。
「『目を隠す』」
「ッ!!早速ですか……」
「なんだよあのガキ。いきなり消えた?」
「弔、気をつけてください。この短時間で他の者を倒してここに戻ってくるような者です」
消えてはない。存在を認知されにくくなっただけ。
「……これはどう?」
「ッ!!」
詰め寄って左ストレート。気づいていないはずなのに躱された。反射神経と勘、身体能力は優れている。
「防戦一方。個性使ったら?」
「ああ?……ウザいんだよガキ」
蹴りを避けられると同時に死柄木に左足を掴まれた。
「ダメだ陽炎さん!!ソイツに手で触られた部分は崩れてしまう!!相澤先生もさっきそれでやられたんだ!!」
「……へぇ?痛っ!?」
「陽炎さん!!」
皮膚が崩れるってこういう感じなんだ……
緑谷、そういうのはもっと早く言わないと。
「なにっ?くっ……」
「離せ」
「なっ、弔!!」
痛みを堪えながら足を振って黒霧さんの方へ飛ばす。黒霧さんは死柄木君をワープで隣に移動させると死柄木君を守るように前に立った。
「これ以上は……やらせない!!」
「………はぁ」
左足に太腿の皮膚がなくなって筋肉が丸見えだ。ってなると……死柄木君の個性は触った者を『崩壊』させることが出来るとみて間違いない。うん、強い。まあ……心がねぇ……
私が怪我をすると、患部から黒い蛇が這い出て患部を覆う。そしてそのあと蛇が居なくなったら治る、いや傷を負う前の状態に『造り変えられる』。
「ッ!!傷が、治って……!!」
「その油断が命取り」
「ぐぁ!?」
黒霧さんは体の部分が黒いモヤだから勘違いしやすいけどちゃんと実態がある。戦闘時はワープゲートになるモヤを全身に纏わせているから物理攻撃無効を装っているけど……わかりやすく首元に鎧を着てるからそこを攻めればいい。黒霧さんを蹴り飛ばし起き上がった死柄木君のもとまで向かう。
「ゲームオーバー……さよなら」
「クソ……脳無ッ!!」
手刀で死柄木君の心臓を貫こうとしたが、間一髪の所で相澤先生を捕まえたゴリゴリの脳無を呼ばれてしまい死柄木君の前に立ち塞がった。
「……面倒。でも」
最初の黒霧さんの宣言通りなら、この脳無がオールマイトを殺す手段。つまりオールマイト専用に仕上げてきているはず……『物理無効』くらいはあるかな?
「人っぽくないしいいよね」
「なんだと……脳無が、一撃?」
『目を合わせる』個性を全力で使い脳無を石化させる。脳無は足元から石になっていく自分の様子に驚きなんとかしようともがいて、何度か石化した部分を自分で壊してしまっている。『超再生』でももってるのか足がまた生えてきたけど、そのたびに石となる。遂に抵抗すら諦めたのか、そのまま脳無はピクリとも動かなくなった。まあ全身が石になってるんだから動かせないのは当たり前だけど……
「これで貴方を守るモノは無くなった」
「クソ、クソ、クソ!!なんなんだよお前……ガキのくせに!!」
ボリボリと首元を両手で掻き毟りながら子供のように癇癪を起こしている死柄木君。たしか……私より年上、っていうか成人しているはず。『先生』も人の教育に失敗するんだねぇ……いや、こいつが不良なだけ?あれ、でも『先生』もヴィランだから実質不良……つまりその生徒の私も不良?コイツと同列?
【アホかお前。いいからとっととやることやれよ】
そうだね相棒。どっち道死柄木君はここで終わりだし、『先生』に問題児なんていらない。
「……あのヴィランだってどうせ黒霧さんに集めてもらったんでしょ。可哀想に……大人の癖に1人になったらなぁんにも出来ないんだね」
「ふざけるな!!対オールマイト用の脳無だぞ!?それが、それがお前みたいなガキにッ!!脳無ッ!!さっさとコイツを殺せッ!!」
「だからアレはもう……ッ!?」
左半身に衝撃が走る。とっさに振り返れば、所々石化が解けている脳無が私を殴り飛ばしたらしい。そのまま少し吹っ飛ばされた私はすぐに起き上がって脳無を睨む。
「……マジ?もしかして個性因子は石化出来ないのかな。だとすれば……石化中でも個性を発動する程度の意識があればなんとかなるってことね」
【……あっちじゃあオレ達くらいしか居なかったからンなこと検証できるわけねェもんなァ……盲点だったぜェ】
死柄木君の命令を受けた脳無が走って迫ってくる。仕方がない、もう一度石化させて今度はちゃんと破壊しよう。
「目を合わs……『ドゴォォォンッ!!!!』……なに?」
個性を使おうとしたらUSJの入り口が吹き飛んだ。轟音を立てて煙が吹き荒れる。思わず、と言ったところかその場の全員がそちらを見る。そして煙が晴れ、中から人が現れる。
「……もう大丈夫。私が来た」
いつもテレビで見るようなだけ笑顔ではなく、憤怒の表情を浮かべたオールマイトの姿がそこにあった。
そして、平和の象徴オールマイトがスーツの上着を脱ぎ捨てた瞬間……彼の姿が消えた。
睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)
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アザミ
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クロハ
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カゲロウデイズ
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メデューサ
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ゴルゴン
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スネーク・アイ
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カンナ(永遠)
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サルビア(家族愛)
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エーデルワイス(大切な思い出)
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モミジ(大切な思い出)
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カエデ(大切な思い出)