fate/little bitch ~煉鉄の小悪魔~   作:七草探偵事務所

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短めです。話を切る区切りって難しいですね


始まりと終わりの洞

「こんなモンがありやがったのか」

感心するやらなにやら、キャスターは眼前に穿たれた洞穴をじろじろと眺めた。

円蔵山、その中腹。

正門である柳洞寺の山門ではなく、獣道を歩くこと1時間。大聖杯へと続く地下大空洞が、虚ろに口を開けていた。

「にしてもビビりすぎだろ、アンタ」

「うるさいわね、山登りなんて初体験なのよ!?」

「最近の若いもんはこれだからいけねぇ」

(まぁ時計塔の秀才だからねぇ。インドアもインドアだよね)

「ねぇ、トーマくん大丈夫?」

「あ、本当です! タチバナ先輩の顔色が!」

「ウン、マァダイジョウブ」

「あのくらいでへばりすぎ」

―――若干2名、山登りですっかり疲弊していた。

一歩踏み外せば滑落する山道を、しかも夜に歩く。その危険性たるや、先導するキャスターの姿が遠ざかればオルガマリーは悲鳴を上げて抗議していたし、トウマは顔面蒼白になりながらロボットみたいに身体を強張らせていた。

「おいおい、これから本番だぜ。大丈夫かよ」

「なんとか」

ふぅ、と深く息を吐く。続いて肺一杯に息を吸うと、トウマも、洞窟の口を見上げた。

原作のHFルートで登場する、大聖杯への入り口。凛とライダー、そして士郎の3人で向かった入口に、トウマも、立っていた。

奇しくもと言うべきか必然的と言うべきか。この洞窟の奥で待ち構える敵も、原作と同じだ。

呪われた聖杯に汚染された、漆黒の騎士王―――セイバー・オルタ。

そして大聖杯そのものも、この向こうに居るのだろう。ラスボスそのものと言わざるを得ないでしょ、とトウマは思う。原作のグランドフィナーレへと向かう、その直前のボス。こんなに早く相まみえて果たして大丈夫なのか、と不安だけが募る。

黒桜も居るのだろうか、それとも別な何かが居るのだろうか―――怖気を惹起させて洞窟の口を見つめたが、ただ黒いだけのが見つめ返してくるばかりだ。

「洞窟内のデータは?」

(ライブラリにはありません。冬木のセカンドオーナーから照会してみましたが、こちらもこの洞窟に関しては。天然の洞窟を流用したものだと思ったので日本の林野庁のデータベースにアクセスしてはみましたが、洞窟そのもののデータが見つかりませんね)

「んじゃあ、俺の番かね」

そう言うと、キャスターは空中に文字を書いた。

宙に書いた文字は2つ。書き終わるや否や、宙に浮かんだ文字が燃焼を始める。花火のように火花をまき散らし始めた炎塊がひと際大きく閃いた。

閃光が収まると、炎塊が既に消えていた。その代わり、炎で形成された雀のように小さな鳥が、すいすいと周囲を飛んでいた。

「綺麗、ですね」

小鳥がマシュの周囲を飛び始める。彼女の肩に乗ったフォウは、なんとなく面白くない顔で眺めていた。

「探索のルーン。洞窟用に特化した奴だな」

「もっと色々種類があるの?」

「用途別にな。よく使うのはまぁ広域索敵用のルーンだな、気配遮断持ち以外なら補足できる」

(結構反則じゃない、それ)

「キャスターなんて外れクラスなんだぜ? こんくらいできなきゃ割に合わねぇよ」

キャスターは心底げんなりした様子で声を吐くと、ふと、周囲を見回した。一瞬、訝るように目を細めた意味は、トウマにはよくわからなかった。

「それでは、洞窟に入ります。マシュ、キャスターは前に。アーチャー、後衛に」

オルガマリーの号令に、皆が頷きを返した。彼女はいつものような厳めしい顔で総意を確認すると、前を歩き始めたリツカのすぐ後ろについていった。

トウマも倣って歩き始めて、ふと気づいた。

クロは、佇立したままだった。

「どうしたの、アーチャー」

クロはその声に我に返ると、いつものように表情を緩めた。

「何でもないわ」

 

 

ただ、静謐だけが蜷局を撒いていた。

ごろりと、赤い外套のアーチャーの体躯が転がる。身体には目立った損傷はない。ただ唯一目立つ損壊と言えば、胴から首が千切れている点だった。

彼女は特に感慨も無く、塵のように消えるサーヴァントを見下ろした。完全に四散するまでじっくり眺めると、彼女は、眼下を睥睨した。

アーチから見下ろす大橋。乗り捨てられた自動車が、点々と転がっている。

その車両の内、1両が軽々と宙に浮いた。

ボックスタイプの赤の軽自動車。軽とは言え500kgを超える金属塊が、玩具のように宙を舞うと、真っ逆さまに河へと墜落していった。

何の奇術か、と思われた。だが、その空中浮遊は、ただ筋力だけで行使された放擲だった。

黒い、巨大な肉塊が大橋を踏みしめる。赤い単眼を煌めかせ、巨大な斧剣を引きずる狂気の肉塊。時に進路上の自動車を投げ飛ばし、斧剣で打ち飛ばしながら、着々と、黒い塊は古い町へと向かっていた。

彼女は、それに近づこうとはしなかった。言語の通じない狂戦士に、用は無かった。

彼女は、自分の背後で淀む影を見返した。黝い影はなんとなく退屈そうにしながらも、彼女の指示に従っている様子だった。

困ったなぁ、と思った。アーチの上で座り込んだ彼女は、腕組みした。

色々わからないことが多いが―――まずは、ここから降りないとなぁ、と思った。

 

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