fate/little bitch ~煉鉄の小悪魔~   作:七草探偵事務所

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プライベートが急に忙しくなって遅れましたスンマセン

しかも短いです、重ねてスンマセン




蠱毒のアマリリスⅤ

カイニス、カイニス。

可哀そうなひと。

貴女は捨てられた女の子、か弱い女の子。穢され、捨てられた女の子。

それはきっと当たり前のこと、強さの前に、弱さなんて不要なものだから。

でも、それは捨ててはいけないものだったのに。ひとがひとで在る限り、弱さは捨ててはいけないはずのものなのに。

それを捨ててしまったら。貴女は、一体誰が番ってくれるのでしょう?

カイニス、カイニス

なんて、可哀そうなひと。

なんて、孤独な、

 

 

 メルトリリスが敗北を悟ったのは、互いの宝具発動から実に10秒後のことだった。

 彼女が苦し紛れに──あるいは、()()()()()()意地で発動した宝具『大海嘯七罪悲歌(リヴァイアサン・メルトパージ)』は、本来であれば海そのものを志向する権能に匹敵する。ハイ・サーヴァントであるメルトリリスであるからこその宝具だが、それでも現在の彼女の霊基では発動できないものだ。3柱の中、レヴィアタンの側面をより強く発現させた霊基でようやく手が届き得るそれを、令呪で無理やりに発動しているせいか、その威力は本来のそれに比してあまりに乏しい。その上、1秒ごとに霊基が拉げ、霊核が軋むほどの反動は、メルトリリスとて耐え得るものではなかった。

 まぁ、そんななので。敗北は元から必然で、彼女自身、十分に承知している。カイニスの宝具に圧し負けることは、百も承知している。

 とどのつまりは、この行為は余分なのだ。心の贅肉とでも言うべき、不毛さ。あるいはそれを倫理性と呼ぶのだろう、善き生への営みに対する配慮こそは、この悲しむべき女の子に対する倫理性の発露だった。

 だが、それが同時に己の魂への配慮であることも、もう、思い出していた。

 ここではないずっと遠くの過去(未来)の果て、どれだけ手を伸ばしても届かない世界の果てで淡く崩れた愚劣さに対する、それは自分自身による8割ほどの呆れと1割だけの労わり、そうして残り1割の雑多な気持ちを綯い交ぜにした情動。雨に打たれ地に落ちて土の滲んだ桜の花びらのような情動の、それは発露だった。

 この身体には、余分さなど不要だった。だが、それならこの心にほんのわずかな贅肉があっても、別に構いはしない。

 餞。そう、それは餞なのだ。自分より情けない女に対して、同じくらい馬鹿らしい生を選んだ自分からの、容赦もなければ呵責もない、今出し得る全力全開を。そうして負けたのだから、悔いはない。

 何度目かの交錯、激突する炎に焼き散らされた激流が一挙に水蒸気となって巻き上がる。水の柱からはじき出されたメルトリリスに迫る鳥の形をした焔。

 「この戦いはアナタの勝ち」

 瞋恚そのものと化して突進する様を見、メルトリリスは厭わし気に、けれど牢乎としたものを肺胞に溜め込んだ。

 「でもごめんなさい?」

 両手を広げるメルトリリス。

 「この戦いは、私の勝ちよ」

 瞬間、彼女の体躯が一挙に舞い上がる。爆発的な水蒸気を揚力にして天に登る様 は、可憐でありながら、どこか野卑さが消えない野鳥の品格だった。

 「さあ、見せなさいマシュ・キリエライト。意地があるってね、女の子には!」

 疾走する本能(理性)

 凝固する理性(本能)

メルトリリスの敏捷にすら匹敵する、それは神速だった。巻き上がる水蒸気から発生する揚力、地面を蹴り上げる脚力、さらには蹴り上げる脚力を強化する魔力。さらには魔力放出。全てを推力に転換したマシュは、荒れ狂う猪の蛮勇で以て、炎の鳥に対峙した。

 「威力減退確認、伝承防御突破可能性、クリア、フィールド制御、クリア。宝具展開、今!」

 振り上げる十字の大楯、具現する幻想。構築されたその巨大な盾を、地に杭打つように一閃した。

「──『疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』!」

 乾坤一擲、火の禽の頸を織る。




区切りを考えたにしても、今回超短いです

短すぎるので、火曜日までにもう1話投稿予定です
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