fate/little bitch ~煉鉄の小悪魔~   作:七草探偵事務所

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区切りの都合、本文がいつにも増して短いデス


不死鳥(ゴッド・フェニックス)

 「なんだよ、俺の最期はお前か」

 呻くように言って、カイニスは静かにその姿を見止めた。

 暗い帳は、既に降りている。白く冷たい月の光を背負った人影は、奇妙な華奢さで、地面に横たわったまま身動きすらできないカイニスを見下ろしていた。

 十字の大楯を持ったサーヴァントのなりそこない。月色の毛の奥で、不定の情動を滲ませた目が蠢いていた。

 「てっきり、ケイローンあたりが来ると思ってたんだけどな。人が居ないってか」

 キシキシ、とカイニスは笑う。盾のサーヴァントは何も答えず、ただ、苦し気に沈黙を飲み込んだ。

 あのケンタウロスらしい、忌々しい考えだな、と思った。

 伝承において。

 カイネウスの死因は、ケンタウロスによる撲殺だった。棍棒を使ったとも、埋めたともいわれるが、何にせよケンタウロスによる暴行によってカイネウスは死に、その魂は鳥となって天へと昇った。

 その理屈は不明だが、カイネウスが海神から授かった不死を破ったのは、ケンタウロス族による暴力だった。その事実があるならば、カイニスに付与された伝承防御を破るためにケイローンが立ちはだかるだろう、と思っていたのだが。

 いや、多分、その予定だったのだろう。何故なら、ケンタウロスによる攻撃に加え、打撃による暴力を再現するために、この盾の女がいたのだろう。

 なら、予定を狂わせたのはあの醜い家鴨のような神霊の女だろう。何の意図があったのかは不明だが、あの土壇場で宝具をぶつけてきた必然性は、よくわからない。あるいは海の権能の如き宝具であれば、カイニスの伝承防御を突破できると踏んだのだろうか、と考えたが、詮の無いことだと思った。

 何にせよ、ケイローンは自ら来なかった。ケンタウロスによる暴力の最期、という恐怖を僅かでも軽減させようと思ったのだろう。その割に、しっかり撲殺する用意はしているあたり、前提条件は忘れていないということか。直接会ったことはなかったが、イアソンやヘラクレス、カストロ、アスクレピオス。教えを受けた者が皆、口をそろえてケイローンを大なり小なりたたえていたものだ。少なからず、そんな人格者のような振舞は、カイニスにはできそうもない事柄だ。

 盾が、高く宙を衝く。カイニスはその光景を、ただただ、虚ろなほどに心地よい失望とともに諦観した。

 消滅することに対する頓着は、さしてなかった。この特異点に何か返すべき借りはなく、死ぬわけにいかない理由も特にない。意地を張る相手もいない、放縦な独り身だった。

 墜ちる盾。切っ先が首を捩じ切って、彼女は絶命した。

 視界が黒く轢断され、カイニスは独りさみしく、この特異点から死去した。




GW中、あと何話か更新予定です
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