fate/little bitch ~煉鉄の小悪魔~   作:七草探偵事務所

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Ⅰ-3

 「それは構わないわ。尊敬は別にしないけど、私が最適と考えてくれたことは有りがたく受け取ります。形ばかりの王女でだったけど。伝承の存在者であるあなたに認められるのは、素直に善いことと受け取ります。

 今回はまだ見に回るのでしょう。かの国の王はまだ出方をうかがっているようだし。

 本当、厄介ね。別な理で動くものというのは──了解。じゃあまた」

 

 

 知らない天井だった。

 いや、本当に。

 藤丸立華にとって、天井どころか周囲の光景の何もかもが知らない光景だった。

 彼女の貧困な語彙では判然としないが、とりあえず古式ゆかしい豪奢な部屋だとはわかる。天井からぶら下がるシャンデリアなんか、現代日本でもそうそう見ないだろう。天蓋つきのベッドなんて、おとぎ話とかでしか見ないと思う。ふかふかの布団は羽毛かだろうか。よくわからないが、快眠であったことは間違いない。

 奇怪な事態に陥りながらも──その事実は彼女自身、自覚している──全く以て呑気な様子である。周囲を観察する視線には、胡乱さも伺う仕草も含まれていない。ただ、カメラのような視線が周囲を写し取るかのような無機質さがあった。金属質でもなく鉱物的でもない―――いわば無脊椎動物の情動だけが、リツカの内面性に横溢しているかのように見える。

 ──監獄。

 リツカが最終的に直観づけたのは、その言葉だった。

 一見、控えめに言ってゲストルームか何かだろうと思える。煌びやかな室内は言わずもがな、部屋の中央テーブルに聳えるケーキスタンドには、マカロンやら何やらが並んでいる。三段式のスタンド最下段にはサンドイッチすらある。アフタヌーンティーを愉しんでくれ、と言わんばかりだ。スリッパはあるし、なんならこの部屋に不似合いな冷蔵庫すらある。液晶テレビすらある。なんで? まぁともかく、とりあえずこの部屋の主は、現在この部屋に滞在する人物をある種もてなそうとしていることは間違いない。

だが、まず最初に感づいたのは一点──窓がないのだ。天井からぶら下がるシャンデリアから墜落する光だけが、部屋の中を淡く照らしている。光量は十分でないのか、部屋の隅には陰気な影が小さく身を竦めてこちらを伺うように身を潜めている。

歓待と排他。相反するような、それでいて秘密めいたホスピタリティで結ばれた言葉が犇めく部屋。そこに監獄という言葉を当てはめるのは、奇抜だが無理なことではない。特にあれだ。あの椅子にむんずと座るドール。こちらをギラギラと睨みつける拷問器具のような人形は、如何にも悪趣味ではないか。

 「誰が人形よ誰が!」

 不意に、その二本角の人形が喚き散らした。うお、と間抜けた声をあげながら、リツカはまじまじとその姿を眺めた。

 血色の果実を絞ったかのような髪色に、病的な白い肌の痩せっぽち。屹立する双角は美麗さより醜悪さの方が印象深い。

 エリザベート・バートリィ。第一特異点オルレアンで相まみえたサーヴァントと同位の英霊だ。もちろん同一個体―――真の意味で同一個体でないはずなので、厳密には別人、なのだろうが。

 違う点と言えば、身に着けている意匠だろうか。オルレアンでは何故かパンクな装いだったが、今はもっと質素である。薄汚れた白い衣は、鼠色に近いほどだ。

 向けられる視線は鋭い。刺すような、という比喩があるが、確かにエリザベートの鋭利な眼差しは何かを抉るようだ。だが、そこには敵意的なものは潜んでいないようだった。

 「なんでそんな落ち着いてるのよ、貴女」

 不満げなようで、それでいて困惑している口ぶりである。じろじろと観察するようなエリザベートの無思慮な視線も構わず、リツカはやはり呑気に延びなんかをする。

 「慌てて何かメリットがあるなら慌てるけれども」

 のそのそ、とベッドから這い出す。いつの間にか着替えさせられたらしく、ふかふかのパジャマ姿で抜け出すと、スリッパは履かずに冷蔵庫へと足を向ける。

 「そういう問題じゃない」

 「いや、本当は慌ててるよ。ここどこ、みたいに思ってるって」

 怒ったようなエリザベートに、リツカは特に抑揚もなく応える。冷蔵庫のドアをあけると、リツカはほうほう、と目を輝かせた。

 ワンドア式の小さな冷蔵庫に、ぎっちり詰まったペットボトル。その中に一本、黒いあんちくしょうが光ってる。黒光りする威容。きらきらした目で取り出せば、もちろんそれは彼女の大好物、エナドリである。

 「まぁでもパニくったからっていいことないし。こういう時、慌てた方が負けなのよね……ってシデンさんも言ってるじゃん」

 「誰それ」

 「カイ」

 「だから誰よ」

 至って平静に言って、リツカは缶のプルタブを開けた。ぺきゅ、という小気味のいい音とともに、黄金色の炭酸飲料が飛び散る。小躍りするように噴きでたジュースを舌で掬う様は、なんだか中年のオッサンか、それとも無邪気な少年かのどちらかである。

 「クァー!」

 まぁおおよそはオッサンだろう。会心の笑顔すら浮かべるリツカに、エリザベートはただただ胡乱気な視線を向けるだけだった。

 「飲む?」

 「要らない。それ、美味しくない」

 「そう、残念」リツカは酷くショックを受けたような、悲しげな顔をした。「じゃあ水飲む?」

 エリザベートは小さく頷いた。ひょいとリツカが投げたペットボトルをしっかりキャッチングすると、長い爪先で器用にボトルの蓋を回し始めた。

 そんな姿を眺めながら、リツカも椅子へと腰かける。ケーキスタンドのサンドイッチを一掴みして、リツカは口へと頬張った。

 「BLTサンド」一口で半分も食って、リツカは断面図を眺める。「レタスとトマトが多め。健康的」

 「早食いすぎない」

 「お腹空いてた」2口で全部を食い散らかすと、矢継ぎ早に2つ目へと手を伸ばす。「今度はサラダチキンとゆで卵のサンドイッチだ」

 ちんまり、とマカロンを爪で摘まむエリザベートに対し、リツカは遠慮なく3つ目のサンドイッチ──最後のサンドイッチへと手を伸ばした。

 「本当はハンバーグとかがいいんだけど」これも数口で平らげると、リツカは不服そうに指を舐める。「てりやきハンバーガー」

 「ニホン限定のバーガー? 食べなさいよこれも」

 「そうそう」物欲しそうな顔で菓子を眺めるリツカに、エリザベートが言う。「旨いよねあれ」

 「まぁ」

 ぽつりと言いつつ、エリザベートはちんまりとマカロンを齧っている。元から痩せぎすで不健康そうな体つきだが、今日はなおのこと血色が悪い。なんというか、蒼い。不健康さが増しているようだ。食欲、という欲求は今は無縁らしい。最も、サーヴァントに食欲がそもそも備わっているか不明だが。ダ・ヴィンチちゃんやクロは食糧事情もあってか、カルデアにおいては全く食べ物を口にしていない。

 そうこうしている間に、まったり30分。あまりにも呑気な時間をたっぷり消費してから、「それでここどこ」とあまりに情緒無くリツカは言った。

 「固有結界」言われた方も言われた方である。わずか30分でこの呑気な空気に文字通り呑まれたエリザベートは、イチゴ大福を貪りながらの返答をした。

 「固有結界。え、マジで?」

 渋々飲んでいたペットボトルのミネラルウォーターを若干口から吹いてしまう。げほげほとむせりを発生させるリツカに対し、エリザベートは「咳エチケット守りなさいよ」とにべもない。

 「いや固有結界って。とんでもねえもんの中にいますやんか」

 「そんな大したものじゃないでしょ」

 「いやまぁサーヴァントなんてトンデモの方がよっぽどですけども」

 当たり前のようにペットボトルの水を飲むエリザベート。ごく自然に椅子に座って爪に突き刺したイチゴ大福を食べているが、彼女はれっきとしたサーヴァント──よりリツカになじみ深い言語で表現するなら、ゴーストライナーなのだ。

 とは言え、やはり彼女も一応魔術師の家系に産まれ、育てられた人物である。ろくすっぽ魔術の研究になど興味はないが、それでもどんな魔術が凄いのか、くらいは知っているものだ。

 固有結界。リアリティ・マーブルと呼ばれる魔術を日本語訳した言葉だが、なるほどうまく訳せている。術者の心象風景をそのままこの世界に現す、という魔術。外部から切り離された自己の内面性は、定義によっては結界と言えよう。最も、リツカからすれば、そんな魔術を使う人間の気が知れない、というのが正直な感想だった。人間の内面性など、どうせ大したことはない不気味なものでしかないのだから。そんなものを開陳しようとは、悪趣味が極まっていると思う。まぁ。そもそも、固有結界。元は真性悪魔や第六架空要素──悪魔たちが司っていた、世界そのものの行使であるという。悪趣味も悪趣味というわけだ。

 ともあれ、要するに固有結界なんてものはそうそうお目にかかれない産物なのだ。それこそ、一般的に生きる魔術師が、魔法使いと実際に顔を合わせるくらいの珍事である。どちらかと言えば外様のリツカならば、なおのことビックリ事象だ。

 「なるほどなるほど」不服そうに水を摂りながら、リツカは周囲をきょろきょろと見回した。「英霊マリー・アントワネットの固有結界、というわけか」

 何気なく、リツカはそれを口にした。

 ぎろり、と鋭い視線がリツカを射抜く。視線の主──エリザベートの視線の苛烈さは、しかし瞋恚というよりは奇怪なものを覗き込んだ──畏怖、のようにも見えた。

 サーヴァント、という上位存在からの抉るような視線。恐らく高位の魔術師ですら竦み上がるそれを前に、リツカは平然としていた。あるいは内面では恐怖を感じていたのかもしれないが、少なからず外見上、それを見せることなどしなかった。

 それどころか意に介することすらせず──もしくはほぼ無視すらして、リツカはぼけーっと虚空を眺め始めた。ついでにケーキスタンドからおはぎをもぎ取りながら。

 「『泥の監獄に死の救済あれ(ラ・グロース・トゥール)』―――貴女の思ったとおりよ、リツカ・フジマル」

 だから、不意に肩を叩いた声に、リツカは妙に身体をびくつかせた。あまつさえひっくりかえるように転倒しかけたリツカを、背後からの手が寸で抑えた。

 ふぁさり、と黒い髪がリツカの面前にカーテンとなって揺れる。艶のいい、黒々とした髪だった。

 「かの王妃が死の前に過ごした牢獄が形を成したもの、裁きを前にした無限の滞留。それがこの監獄よ」

 身を翻す深紅。目の覚めるような、凛とした鮮烈が舞った。

 波打つ長髪を二つ結びにした、大人びた女性の苔色の目がさらりとリツカを撫でた。

 「初めまして、フジマル・リツカ」

 颯爽、という言葉が脳裏を過る。品よく静かに差し出された手だったが、その身のこなしはどこか軽やかだ。

 「私はそうね、リン、とでもお呼びになってくださいな」

 思わず立ち上がってしまいながら、リツカも手を伸ばした。

 迷うことなく、手を握り返す。柔らかない手だな、と思った。女性的、という生物的な緩和さではない。もっと洗練された柔和さだ。凛とした佇まい、とでも言おうか。なるほど、名前の通りの印象の、妙齢の女性だった。

 「あ、どうも」

 「オジギ、ニホンの挨拶ね。私もしていい?」

 言って、リンと名乗った女性はへこりと頭を下げた。営業が成功したサラリーマンのへこへこお辞儀だ。なんとも似合っているのだが、動作はちょっとぎこちない。本人は満足な様子で、「変なの」と笑っていた。

 リン、は品の善いくすくす笑いを零しながら、ごく自然に椅子へと腰かけた。ちょい、とマカロンを一つまみ。ひょい、と口に放り投げると、悪くないわね、と独り言ちた。

 全く以て、自然な佇まいだ。すくなからずアジア系の人間ではあろうか。つん、と筋の通った目鼻立ちが、大人びた風采の裡に、静かな溌剌の存在を証明していた。

 「一個訂正。ここは、厳密には固有結界と呼ばれる魔術とは別種のものよ。確かに、復讐者として顕現したマリー・アントワネットの宝具は固有結界を展開するものだけれど──ここは、それとは違うもの。そこの駄竜にはわからないでしょうけどね?」

 じろり、とリンの視線がエリザベートを刺す。居心地悪そうに肩を竦めながらも、覗き込むように返す彼女の視線は酷く敵意的だ。隙あらば喉元に食らいつく、と言わんばかりである。そうしない理由は不明だが──飛び掛かっても種々無駄、ということだろう。

 「コイツの言うことは信じちゃ駄目よ、ハト女。偉そうにしてるけど、ここの看守なんだから」

 代わりに、エリザベートは毒舌を吐くことにしたらしい。と言っても、毒舌と言うには細やかだろう。特になんとも思っていないらしいリンは、「実際偉いもの」と鼻を鳴らしただけだった。

 それにしても、ハトとは自分のことだろうか。ぽかん、としながらリツカは考えてみる。確かに、他人から見ればその時のリツカの無思考な表情は山鳩のような顔ではあった。

 「マリア、の手先ということなのかな」

 「どうかしら」一瞬、リンは逡巡をしたようだった。「そうかもしれないわね」

 そう、とリツカはそれ以上踏み込まなかった。リツカもリツカで、いつもの無思考な顔で、こちらを観察している風のリンの視線を受け流していた。

 「《《看守さま》にこんなことを聞くのは変な気もするけれど」リツカは何の気無しに言う。「監獄、って言うには、随分のほほんとしている部屋だねぇ」

 ぱくり、シュトーレンの切れ端を口にする。ミネラルウォーターを併せて飲み込み、リツカは相変わらずの表情で部屋を見回した。

 察するに、この一室の“主だった”調度品はマリー・アントワネットが生きていた時代のものの再現なのだろう。

 やはり、印象は変わらない。明るいながらも何故か張り付いた陰鬱な印象は、この一室が間違いなく監獄であることを惹起させる。だが、その印象とは別に、対自的な理解としてはあくまでここは豪奢なゲストルームだ。

 「でもここは監獄。裁きを受けるべき罪人が幽閉される塔。それが何を意味してるのか、貴女はよくわかってるのではなくて?」

 「うーん」リツカは少し、顔を曇らせた。「あのギロチンで首を落とされるのは厭だなァ」

 「ちょっと待ちなさいよ!」

 劈くような濁声が破裂した。

 勢い椅子を倒して立ち上がったエリザベートは、凄まじい形相でリンを睨みつけた。視線だけで射殺すほどの凄み。臨戦態勢に入ったサーヴァントが放つ殺意は物理的な魔力の漏出となって滲み始めた。

 「私が罰を受けるのは構わないわ! でもがなんだってコイツが死ななきゃならないのよ」

 「さぁ、それは私には与り知らぬこと。私ではなく、あのマリー・アントワネットが決めることよ」

 常人なら、その場にいるだけでショック死しかねないほどの殺意。志向性を諸に受けたリンは、全く意に介していないように鼻を鳴らすばかりだった。

 「貴女の鳥頭にこれを言うのはもう4度目。私はただの看守。この監獄を見守るだけのもの。私の国ならいざ知らず、ここで起きることの倫理的価値について口を挟む気はさらさらないの」

 穏やかでありながら、しっかり芯の通った声だ。凛然とした声色は、知悉と温厚を含みながらも明確な拒絶を突き付けている。取り付く島もない、突き放す素振りだ。

 「まぁすぐ、ということはないでしょうから。あの方も罪人の処刑に忙しいご様子ですし、貴女のスケジュールも狂ったようですし。そうね、1週間後くらいに処刑が執り行われるのではないかしら」

 淡々と、当たり前みたいにリンが言う。業務命令というほどに冷たくも無機質でもないが、比喩でも何でもない死刑宣告を突き付けるにしてはなんとも味気の無い言葉だ。

 飛び掛からんばかりのエリザベートも、泰然とするリンを前にただただ二の足を踏むばかりだ。

 理由は至極単純だ。エリザベート・バートリーは、このリンと名乗る麗しい女性に全く以て手が出ないのだ。窮鼠がどれほど殺気立とうと、猛虎には歯が立たない、というわけだ。これは後にリツカの知るところだが……エリザベートが暴れようとした時、リンはなんらかの格闘術を以て一撃で制圧したらしい。なんらかの魔術をした形跡もなく。

 畢竟、ここでエリザベートが何か行動を起こしたとしても無意味ということだ。漠然とそんな事情を察知して、リツカも取り立てて何かをしようとは思わなかった。とりあえずは、現状を飲み込むほかない。そんな風に、リツカは思案する。

リツカの仕草に満足したのだろうか。少なからず、エリザベートを足蹴にすることへの感慨はないだろう。ふふん、と鼻を鳴らすと、リンは品よく立ち上がった。

 「それではごきげんよう、カルデアのマスター。この世にあって最新の人類」

 黒いロングのプリーツスカートの裾を軽く摘まむ。カーテシーの仕草は、なんとなく不格好だった。

 にこやかな、それは微笑だった。溌剌と身を翻すと、リンはこの部屋唯一の扉に手をかけた。

 「じゃあね。罪人さん」

 開いた扉の奥は不鮮明だった。ただ、昏い果てが眼前性を以てすぐそこに沈殿していた。

 リンの身体が、闇へと溶けていく。赤い燃えるような装いは、消える最後まで闇の中で瞬いていた。

 「どうしたもんですかねぇ」

 独り、言ちる。左側頭部で一つ結びにした髪をかき回して、リツカはただただ途方に暮れた仕草をしていた。

 果たして、この時彼女が灰色の脳細胞を駆使して猛烈な思考を始めていたのかどうかは、誰にも与り知らぬことである。ただ判然としていることは、殺気を持て余して憤然とするエリザベートの目には、呑気そうに水を飲む様だけが映っていた、ということだけだ。

 「私が、助けるわ」

 勢い、エリザベートは身を乗り出した。勇み足である自覚はエリザベート自身にもあったが、そう口にした。

 だが、無感動に見返してきたリツカの目にたじろいでしまった。池沼そのものだ。水底に膨大な金属質の沈殿物をため込んだ、黒い沼。全てを飲み込むようで、それでいて何物もよせつけないかのような絶対的受容と絶対的拒絶が混濁した、眼球がそこに埋まっていた。それでも、エリザベートは口を結んで、その異様な視線に対峙した。ぐっと睨み返すと、その視線は不意に霧散した。

 「そうだねえ」

 リツカは居心地悪そうに、けれど気恥ずかしそうに笑みを零した。

 「なんとか頑張ろうか」

 さて、とリツカは立ち上がった。決然とした、という形容詞は全く感じられないが、それでも何事かを決意したかのように見える。逸るようにその姿を見つめるエリザベートに、リツカはドヤった表情を作り──。

眠い。もう寝る(Je vais dormir)!」

 トそれはそれは綺麗に掛布団とマットレスの隙間を強襲する。唖然とするエリザベートを他所に、リツカは素早く睡眠活動を開始した。

 「……なんでさ?」

 

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