fate/little bitch ~煉鉄の小悪魔~   作:七草探偵事務所

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Álmodozás a határon……

 「そうね、終わったわ。フジマルリツカはこの世界を終わらせた。さあどうでしょう。でもどうでもいいことだと思うわ。この世界がそもそも短命で、あの子が何かしなくてもこの世界は終わってた、なんて情報。きっとあの子には本質的じゃあないわ。うーんどうでしょう。向こうもまだ様子見のようですし。あなたたち冠位の存在は露見していない、と思うわ。そのための私でしょう。骨のお爺様は? そう、向こうもまだ。ええ、次のロンドンでは尻尾を掴んで見せるわ。メソポタミアには私でも中々だもの。はいはい、それじゃあその千里眼で精々モニターしていてくださいな」

 

 ※

 

 司馬懿仲達こと、ライネス・エルメロイ・アーチゾルテは、ライブラリルームから気だるげに退出した。自動式のドアを手動で開ける、という珍奇な作業も、元々古式ゆかしい生活をしていたライネスにとっては慣れたものではあるのだが。数時間ぶっ続けで情報収集する、というのは骨が折れる。トリムマウがいれば、また話は別なのだが。生憎トリムマウはマシュと霊基レベルで融合してしまっている現状、ライネスの自由にはできないのだ。どちらかと言えば人を使うことの方が多かった彼女にとって、自分の手で何かを行うことは不得手とは言わずとも、得手ではないのである。

 いづこかの電気鼠みたいなしわしわ顔になりながら、ライネスは漫然と混濁する情報を整理する。別に、何というわけではない情報だ。所長代理をちょこっと(※あくまでライネスの感覚)詰問し、なんだかんだで入手したパスを使ってライブラリにアクセスし、カルデアのスタッフについて調べていたのだ。といっても所長代理のような倫理的義務感から、ではなく。ライネスが関心を持っていたのは、ただ一人だ。

この世界は、多分、ライネスが生きた世界とはやや異なる発展遂げた別な可能性の系統樹。であるならライネスがそこに過度な干渉を持とうとは思っていないし、彼女が良く知る人物がいたとしても、それは極めて近似的な他人、というに過ぎない。

 と、とりあえず彼女は理性的に理解している。彼女の認識レベルの、あくまで半分の領域において。

 「私も甘い」

 やれやれ、とライネスは苦笑いの嘆息を吐く。割とシビアな感覚で生きているつもりだったのだが、割り切れないことは割り切れないらしい。むしろシビアだからこそなのかもしれないが、やはりそれが余分な──義兄上(あにうえ)の生徒風に言うなら、心の贅肉のような、気はする。

 と、ライネスは足を止めた。ぐるぐるしていた思考も途端に凪いで、ただ空色の眼球だけが彼女の生命活動の中で励起しているようだった。

 赤銅色の髪の女。深い池沼の底を思わせる眼差しが、はたとライネスを捉えた。

 やあ、と手を挙げる彼女。フランクな彼女の挨拶に対し、ライネスは品よく手を挙げる。

 「なんだか元気そうじゃないか」

 照れたように、リツカは肩を竦めた。19歳という年相応のはにかみに、何故か、ライネスの知る彼女の生真面目そうな顔が重なった。

 「元気、貰ったから」

 会話はそれだけだった。通路の先を往くリツカの後ろ姿を見送ったライネスは、今さらに「あ」と思った。

 後頭部で緩く結んだ一つ結び。

 「似合ってるじゃん」

 髪型、変わってた。

 

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