fate/little bitch ~煉鉄の小悪魔~ 作:七草探偵事務所
「うお」
間抜けそうな声が耳朶を突いたのは、ちょうど視界と意識が啓いたのと同時だった。
「空間転移……?」
背後を振り向くリツカ。彼女の仕草につられて、パッションリップも、なるだけ身体を逸らさずに首の可動域だけで後ろを見てみる……。
「シャフ度か何か?」
「はい?」
「いえ」
何かリツカが言っているけれど、なんだかよくわからなかった。
それはともかく、背後を見てみれば、リツカが驚いた理由はよくわかる。背後には、さっきと同じように扉が一枚。開け放たれた扉の向こうは、ただただ真っ黒黒すけな空間がのっぺりと広がっている。間違いなく、さっきここを通ってきたはずなのだが、その記憶は特にない。
ちょっとリツカは思案した後、解放された扉の前に行くや、のっぺりした闇黒へと手を伸ばした。手を伸ばして闇黒に、触れた瞬間。
「お」
ぬる、とまるで吸い込まれるように彼女の手が吸い込まれていく。というより、まるで分解でもされているように暗黒に飲まれていく。ぎょっとしたパッションリップが面倒くさい姿勢制御をして、慌てて手を伸ばしかけて咄嗟に止めてあたふたしたりしている合間に、今度はリツカは闇黒に顔面を突っ込んだりしていた。
もうパッションリップは素っ頓狂な奇声をあげていた。リツカを引っ張り出さなきゃと思いつつ、
「おーすごいすごい」
……リツカはそんなパッションリップの恐慌など一切気にせず、平然と闇黒から手と顔を出していた。
「うーんこれはなんだろうな。空間転移でもないし。レイシフトに近いようにも見えるけどそうでもないしな。まぁいいか」
ぶおんぶおん、と闇黒に手を突っ込んでは引っ込む仕草を繰り返している。パッションリップは肝を冷やしに冷やしていたが、リツカは気にせず遊んでいる。
「大丈夫なんですか」
「まぁ見る限り大丈夫だし。腕足くらいなら大丈夫じゃなくても大丈夫だよ。頭はちょっとヤバかったかな、反省」
「はぁ」
ごめんごめん、と苦笑いしながら、リツカは肩を竦めた。ちょっと頬を膨らませるけれど、許してやることもやぶさかではないパッションリップである。人を心配させるのはよくないと思う。
「知らんけど。さっきの場所とは、多分物理的な繋がりには多分乏しい、のかな」
独語のように声を漏らすリツカ。鉱山排水の沈殿物みたいな色の髪の毛、その側頭部の一房を指先で捩じりながら、彼女は首を捻っている。考え事をしているんだ、と頷いて、パッションリップは口を閉ざすことにする。パッションリップは、“思考”という人間のおそらく本来的な能力が苦手だった。客観的にも、また主観的にも、だ。自分は魯鈍で大雑把。それがパッションリップの自己評価だった。
他方、彼女は考え事をすること自体は、そう嫌いでもなかった。ここで言う考え事、というのは、何か事物に対して数理的合理性をもった思考を重ねることではなく、ただ妄想みたいなもんである。
何故、を思案する。どうして、自分は此処にいるのか。あの闇黒の中で、確かに未来へと向かおうとして終わったことだけは覚えている。内海に寄せる淡く白い波のようなあの人の残影だけが、印象深く残っている。なのに、何故、パッションリップは自身が目の前の黙然とした女性に恋心を抱いているのだろう?
頭の中だけで腕を組んで……何せこの腕では腕組みするどころではないので……、むー、と頭を捻ってみる。一見思考めいているけれど、実のところ、考え事をし出すとこの論題しか頭に浮かんでこないのだ。妄執のように同じ思考がぐるぐるする感じを、彼女はそれなりに対自的に理解し始めていた。そうして、我がごとながらうんざりしつつ、かといってやめられないパッションリップである。
「うーん、じゃあ行こうか」
気が付くと、リツカは思考を終えていたらしい。さっと我に返ったパッションリップは、健気にも「はい」とすぐに応えた。
「まだわからないことだらけだ。そう急ぐ必要はないのかもしれないけど」
言いながら、リツカは耳朶のピアスに僅かに触れた。下垂するガーネットが揺れ、どこかから採光される光を反射していた。
「さっきまでの場所とそう変わらないようだし。同じように、慎重に進んでみようか」
「また、敵……と戦うんでしょうか」
ちょっとだけ、パッションリップは言い淀んだ。リツカは、パッションリップの素振りに特に拘泥する様子はなかった。少なからず、彼女にはそう見えた。
「多分、そうなるだろうね」ちょっとうんざりしたように言いつつ、リツカは肩を竦めた。「ごめんね」
「大丈夫です。私、それくらいしかできないから」
リツカの手が伸びる。くしゃ、とパッションリップの髪を手櫛するようにかき回すと、口元だけに笑みを浮かべながら頷いた。「よーし、行こうか」
颯爽と、それでいてのんびりした歩様で彼女は歩きだした。その背を追うように歩き出したパッションリップは、親ガモを追う子ガモのようだったか。重い腕を健気に引きずってついてくる彼女を、リツカは時々立ち止まったり振り返ったりしながら、妙な牢獄? というか洞窟の中を呑気に逍遥していく。古代ギリシャの哲学者、アリストテレスのように。
以前の通路に続いて、基本方針はほとんど変わらない。50mを歩いては立ち止まり、リツカが頭の中で構成するマップを暗示でパッションリップと共有する、という地味な作業。さっきまでのフロアと比較して絵的に全く変わらないため、一体いつまで続くのかというものぐさな感慨は、多分パッションリップでなくても覚えたところだっただろう。幾分かげんなりしたものを感じながらも、それでも完全に飽き性にならなかったのは、5割はリツカのお陰だった。
「また行き止まりだ。こっちの道じゃあなかったみたいだね。抜け道とかあるのかな?」
立ち止まって壁をなんとなく見回したり近づいたりして見ながら、リツカは頻りに喋っている。状況を延々と喋って説明している様は、パッションリップに喋りかけている、というよりは大体独り言に近しかっただろう。無駄に喋りかけられる不快はなく、さりとて終始無言の気まずさもないのは、気楽と言えば気楽だった。
もっと言うと、ものぐさなパッションリップ飽きさせないように、リツカなりに四苦八苦している……らしい、と彼女なりに自覚があったのである。要するに、広義で言えば人類の上位存在であるはずの“サーヴァント”にも関わらず、人間種でしかないリツカに気を使われていることに、パッションリップは、少しだけでも自覚していたのだ。ものぐささを発揮している場合ではない、という心構えが、今になって
そんなリツカの気遣いへの応答、が5割。そうして残りの5割は、この迷宮めいた巌窟そのものにあった。
「暇だねぇ」
ふわあ、と今日何度目かの溜息を吐いたリツカ。伸びをするように手を掲げた彼女の心情は、パッションリップにもよくわかる感慨だった。
単調なのだ。この無機質で代り映えのない迷路が延々と続く上に、何も現れないのだ。この空間には。さっきまでの通路では、あの鎧竜が思い出したように
そして、違和感は、もう一つ。
「あ」
それ、に気づいて、リツカが膝を曲げる。壁際の松明が照らす光源は、視野としては完全とは言い難い。ちょうどリツカとパッションリップの高さに設置された松明の灯は、足元は全然照らしてはくれないのだ。
「またあった」
ひょうい、と足元のそれを拾い上げる。何かの紙片、だろうか。紙片とは言え、いわゆる現代のそれとは異なるもっと古い……パピルス、という種の紙だ。主に古代エジプトで使用されていたものらしい。らしい、と伝聞推定なのは、リツカ曰く、という枕詞がつくからである。
「また、似たような話ですか」
リツカの肩越しに、パッションリップが彼女の手元を覗き込んでみる。リップより全体的に“細い”彼女を間近に感じる時、ちょっとだけ感じる緊張に胸の奥をきゅっとさせつつも、手元の紙をまじまじと見る……。
「『外なる神について……無貌にして千の貌を持つ魔神、■■■■■■■■■について
彼の者はその他人に無関心な外なる神どもと異なり、積極的に人に関わる傾向性をもつ。その理由は極めて単純であり、ただ“面白おかいものが見たい”という度し難い悦楽主義によるのだ。人の破滅を見て楽しみたい、というただそれだけのために、彼の神は夢幻境からやってくる。……」
茶褐色の文字はほとんど読むに堪えない汚さだったけれど、僅かに読み取れたのがこの文面だ。興味深いのは、この神?なるものを示す名、だろうか。奇妙な幾何学めいた文字で書かれた文字は、おおよそこの地球に存在する文字とは思えないほど稠密且つ複雑で、文字なのかすら不明だった。
“外なる神”。それが、この通路に来てからばら撒かれているパピルスに描かれた文字に一環して書かれている話だ。この星の神話体系のいずれにも属さない、宇宙の深淵に潜む異形の神々について。その神々について、持って回った繰り言のような言いまわしで延々と書き連ねる様は、はっきり言ってパッションリップには白痴の妄言としか思えない内容だった。
そう、こんな文面は白痴的だと思う。神、だなんて。私だって神サマ3柱も習合しているんだぞっ。
……場違い且つ若干恥知らずな対抗意識を抱きながら、パッションリップは頬を膨らませた。
リツカは、この文面にどう感じているのだろうか。それとなく脇目で彼女の横顔を盗み見ると、珍しく真剣で悩まし気な目をしている。
「小説か何か、なんですかね」思わず、パッションリップは早口に言っていた。 「頭が悪そうな話ばっかり書いてありますけど」
我ながら、勢い言ってしまった、と思った。唾とか飛んでないかな、とあたふたしつつも、リツカの様子を伺ってみる。彼女はちょっと驚いた様子だったけれど、多くは気にしていない、らしい。どうかな、と言いながら、リツカは古いらしい紙を無造作に畳むと、プリーツスカートのポケットに押し込んだ。
「世迷言だよ」汚いものに触った、とでも言うように手を叩いた。その仕草が、パッションリップには酷く苛立たし気に見えた。「本当に、忌々しい……」
「そうですよね、こんなの」
僅かに顔を覗かせたリツカの振舞に幾分か気圧されながら、パッションリップは諸手をあげて同意することにした。リツカが自分の憤懣に同意しているのが……というより、同調していることが、素朴に嬉しかったのだ。でも他方思うのは、彼女は自分と同じ嫌悪感を抱いたわけではないのではないか、ということだ。彼女が僅かに伺い見せたその情動……この妄言の羅列に対する端的な憎しみは、パッションリップが抱いた子供じみた嫌悪感などよりも、それこそもっと淵源に迫るほどに深いように思えた。立ち上がったリツカの佇まい、そして振り返った彼女のいつも通りの猫の
それに比べれば、本当に自分が抱いたものは、幼児の癇癪みたいなものだ、と思う……「他にはないかな」と足元を眺めまわすリツカの背に、パッションリップは肩を竦める。藤丸立華は藤丸立華であって、それ自体として存立する個体なのだ。彼女の所作、立ち振る舞い。わざと呑気そうに歩いてパッションリップに歩様を併せる素振り、手の振り方、周囲をきょろきょろ見回す慎重さ、そういった身振りのどれ一つとっても、パッションリップという人物像のそれとは乖離する。その乖離が、パッションリップにはどうしようもなく物悲しいことに思えた。そういう物悲しさを理解したつもりだったのだけれど……。
「どうしたの?」
あ、と顔を上げた。
5mほど先、立ち止まったリツカが待っている。考え事……というより悩んでいる間に立ち止まっていた、らしい。
「いいよ、走らなくても」
咄嗟、急いで走り出そうとして、素早く、かつ鋭く静止の声が飛んだ。言葉尻自体はやわらかかったけれど、ただ声だけで伝う強制力。令呪には及ばないが、心理的な圧迫感すら伴う“命令”は、リツカのマスターとしての能力の高さを否がおうもなく感じさせる。本来、人類種よりも高位の存在であるサーヴァントを従い得る能力……単純に1人で複数の縁を結べるだけの運命を身に備えている、という面や、コミュニケーションであったり、魔術的な素質であったりを駆使してサーヴァントに自分の命令を履行させる素質、という面。そういったあらゆる面を総合して勘案される「マスターとしての力量」という評価値において、リツカは優秀だ。元からパッションリップ自身が彼女にある程度の……というより割と肥大化した好意を寄せているが故の契約の繋がり自体の深さ、そしてそれに伴う命令の支配力の高さ、というのもあるのだろうが、それを抜きにしても評価できる……と、パッションリップは頑張って考えてみる。
コミュニケーションをとる力量。多分、そういうものもあるのだろう、と思う。彼女と過ごした時間はまだまだ短いけれど、リツカはなんというか、普通だ。実のところ、コミュニケーションで最も重要ですらある“普通”という雰囲気を意図的にせよ無自覚にせよ発揮できるのは、それだけで美質だろう。英雄の類であるならば、この普通なフラットさは、いい意味でドライな関係を築けそうだな、とか思う。
でも、多分、リツカにとってコミュニケーション能力、なんてものは本質でもなんでもないのだ。彼女の精強を形作るのは、もっと別な、冥いものだ。
それが何なのか、実のところパッションリップにはよくわからない。よくわからない……。
「ごめんなさい」のろのろ、とリツカの下へやっとたどり着いて、パッションリップは声も小さく漏らすように言った。「わたし、のろくて」
「いや、いいんだ」
「でも」
「1人がなんでもできちゃったら、私が居る意味がなくなっちゃうから」
私、と言う単語には、多分マスター、というルビが着く。何故かそんな考えが過って、おそるおそるパッションリップは畏縮した姿勢のまま、リツカを伺う。
「失敗が起きた時、管理側に問題があることがほとんどだから。客観的に、リップちゃんが悪いわけではないのだ」
首を傾げる。旨く伝わってないらしい、と理解したらしいリツカは一瞬だけ逡巡してから、
「部隊の失敗は指揮官の判断ミスなんだよ」
「でもさっき、私がぼーっとして」
「私がちゃんと歩様を併せてないから悪い」
まるで断ち切るように、パッションリップの声を遮るリツカ。
思わずパッションリップが肩を竦めると、リツカは不快そうに眉を寄せて、ごりごりと縛っていたはずの髪を掻きまわした。
「自分の無能を実感するのは、何度経験しても慣れないねえ」
「違います、私が」
「考え事してたんだよ、色々と」
やれやれ、と嘆息をつくリツカの表情は、もういつもの呑気そうなものに戻っていた。その様にパッションリップは幾分か安堵を覚えながら、気楽な安堵なんてものを覚えている自分にも嫌気が挿した。パッションリップの不出来さは、彼女自身も、よくわかっていることだ。
「今度もし今みたいになったら、とりあえずパスかなんかで呼んでくれればいいからね」
有無を言わさぬリツカの声に、思わずパッションリップは頷いていた。理性的に考えてそれがいい、と理解して、ちょっとだけ彼女は機嫌を損ねた。
「大丈夫?」
そんなことを聞いてくるリツカが、腹立たしい、と思う。何か言いかけるリツカに「大丈夫です」と勢い言いかぶせながら、パッションリップはずんずんと進んでいった。虚を突かれたように呆然と立ち尽くすリツカのことは敢えて気にしないところは、本来優し気な彼女らしからぬ思い切りのよさではあった。が、なるべく速足にならないようにするあたり、彼女の繊細さはありありと現れているわけだが。
その後、通路の最奥に達するまでは終始無言だった。結局前を歩いているリツカも少しだけ言葉少なになっていたし、パッションリップもリツカの話を意図的に無視していた。というより、最初無視を決め込んだものの、だんだん気まずさの方が勝り始め、今では喋るタイミングを逸していた。パッションリップは、最もオリジナルに近いだけあって、ある意味で強情で、ある意味でひ弱だった。
そんな有り様だったので、パッションリップは迷路の最奥に着いた時、兎にも角にもほっとした。いつまでタイミングを逸したまま沈黙が流れ続けるのか、気が気ではなかったのだ。
止まって、と前を歩くリツカが手で合図をする。立ち止まったパッションリップは、肩越しに、先に拡がる空間を目にした。
立ち止まるリツカの、大体10mほど先から一気に空間が開けている。先ごろ鎧竜を屠った空間と同じだ。高さはざっと20mはあろうか。広さは半径100mほど、陰鬱な迷路の中とは思えない広々とした空間だ。
その空間の中、巌のような何かが屹立している。鎮座している、という方が正しいだろうか。大きさにして5mほど、茶褐色の巨大な塊は、よくよく見れば、頭がある、ように見えた。
頭だけではない。手があり、足がある。身を屈めているせいで分かりにくいが、間違いなくこの巨体は、人の形をしていた。
即ち、この巨塊は───。
「うぉ、すご。巨人じゃん」
ホールの入口寸前まで近づいたリツカが、思わずというように感嘆の声を漏らしている。2000年代も既に10年を過ぎた時代にあって、巨人、などという太古の世界の幻想種はついぞ世界の表側から退いて久しい。魔術に関わる人間であるならば、大なり小なり感慨を抱くのはわからなくない……のかな、とパッションリップは思った。要するに、目の前に恐竜がいたら感動するみたいなもんだろう。
ではパッションリップはどうか、と言えば、何故かこの時抱いた感慨は、どちらかというと奇妙な不快さだった。あの巨人を目の前にして感じる、圧迫感とそれに対する反感。鬱勃と全身の神経細胞を励起させ膨れ上がった情動は、パッションリップ自身すら戸惑うものだった。確かにパッションリップは、神性が習合した存在者であって、幻想種に対する感慨みたいなものはない。さりとて、彼女は単純な時制に限ったとしても、もっと未来に産まれるはずのものなのだ。在り方としての巨人はともかく、種としての巨人なんてものは目にしたことすらないのだ。
じゃあ、何故。
己を構成する神性に思いを巡らせたところで、パッションリップは思考を止めた。目の前で、既に何某か思案を終わらせたらっしいリツカが振り返ったからだ。
「じゃあ、どうしたらいいか伝えてもいいかな」
はい、と応えた自分の声が、思わず張り切っている。もちろん自覚している。自覚しているが故に、ちょっとだけ気恥ずかしさが滲んでいた。そっちに関しては、無自覚だった。
「結論から言うと、まずは状況把握に努めてほしいかな」
「?」
「あれはそもそも生きてるのか。生きてるとして、前と同じように倒さなきゃいけないのか。そもそも、前と同じような仕掛けで出口にロックがかかってるのか。それらを調べてきてほしいな。
最優先事項は向こう側に出口があるか、ロックがかかってるのか、同じ方式で解除するのかどうかの確認。確認次第で開けられそうならそのまま突破だね。一旦戻ってきてもらおうかな。
前と同じような方式で解除する場合はあの巨人の様子を確認してほしいな。生きてるかどうかってのもあるし、例の花があるのかどうか。弱点らしいところはあるのか……そういうところを見て欲しいかな。確認が終わったら戻ってきてね。
改めて2つ。
出口の確認が1つめ。
その結果次第で追加が1つ。あの巨人の観察だね。
今言った2つが終わり次第、ここに戻ってきてね。倒せそう、と思っても一旦戻ってくること。
一応だけど、始まったら無線封鎖……パスの類で連絡を取り合うのはやめよう。万が一の場合は状況によって令呪で呼ぶから
なんかわからないこと、ある?」
さらさら、と当たり前のように言葉を並べるリツカに、とりあえずパッションリップは頷いた。正直あまりよく理解できてないのだが、とりあえず、見に行けばいいんだな、ということだけが理解した。なので、パッションリップは元気よく首を横に振った。何がわからないかもよくわからない、ということはとりあえずわかった。
リツカは一拍だけ沈黙した。訝るようにパッションリップを伺ったが、とりあえず納得したように頷いた。
「よーし、じゃあ行こう。慎ましくね」