fate/little bitch ~煉鉄の小悪魔~   作:七草探偵事務所

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Ⅱ-3

 ベテランズ街道南側 小教会前広場より──

 防風林の麓に、“私”はいた。

 

「もう少しこう、洒落っ気のあるものだと良いのだがな」

 

 隣で木に寄り掛かりながら、ネロは左手に巻いた時計を見やっている。時間を可視化する人間の機器、その現代……未来と言うべきか……モデル、というわけだ。デジタル表記を行うものもあるというが、カルデアから支給された時計は、あくまで針で時刻表機するタイプのものだ。

 “私”はそれなりにデザインも良いと思うのだが、ネロの琴線には触れてはいないらしい。というより、彼女の装いに合っていない、というべきだった。

 彼女の装いは、“私”とは異なる、黒を基調としたものだった。身の丈はあろうかという白い大剣を持っているが、とても白兵戦ができるとは傍目には見えない、豪奢な装いである。最もキャスターであるというのだから本領は後方支援なのだが、本人は殴り合いをする気満々、というのだから、心根はセイバーのつもりらしい。

 彼女曰く、花嫁衣裳とのことだが……女性のこういった華やかな装いは、どこか記憶の中に既視感があった。

 

 「そなたは男だったな」

 「ええ、そうですね。それは確かです」

 

 じっくりと“私”の顔を見ながら、何やら頷くネロ。頻りに頷いてから腕組みすると、「惜しいな」と呟いた。

 

 「は?」

 「余は可愛い男は好きだ」

 「は??」

 

 “私”はさぞ素っ頓狂な声をあげたことだろう。なにせ言葉の繋がりがわからないのである。果たして、この目の前で木陰に潜む純黒の乙女はなにを仰っているのか。

 そんな私の表情に、ネロは幾分か呆れた様子だった。そんなこともわからないのか、と言いたげに溜息をついてから、

 

 「そなたは結構顔の作りが可愛らしい。もし余が人の物でなければ、是非我が物としたかった。そう言ったのだが」

 「???」

 

 だが、ではない。あまりに行間が空きすぎていて、それを読み取れと言われても困るものである。

 どうやら、ネロ・クラウディウスは結構無茶苦茶なことを言う人物らしい。とりあえず、“私”は誉め言葉と好意的に解釈し、素直な謝意を口にした。本当に褒めてるのかこれは。“私”にも誰にもわからぬことである。

 それにしても、何か、妙な言い回しだな、と思った。“人の物でなければ”とはどういう意味なのだろう。

 

 「マスターのことですか」

 

 “私”は白い神弓を左手に握りながら、昨日今日で覚えた知識の中からなんとか会話を繋げようとしていた。“私”は素直な善人であるようだ。

 マスター……どれだけ強大な力を持とうが、召喚された地に何某かの契機によってつなぎ留められなければ存続し続けられない使い魔(サーヴァント)には、基本的に召喚者が必要不可欠だ。召喚者とは言え人間に限らないが、ともかく、サーヴァントには何某かの“(マスター)”がいる。リツカがこの場合、それだ。

 

 「うむ。余は主上(マスター)のもの。臣には臣のふるまいというものがあろう、そう思わぬか、弓取りよ」

 

 “私”の言葉が気に入ったらしい。満悦顔で頷くと、

 

 「しかし、よもや余が来たというのに肝心の本人が居ないとは思わなかったが……」

 「何と言えばいいのか」

 「いや、良い。聞けば、ただ寝込んでいるだけというではないか。せっかく呼ばれて来てやったのだ、少しくらいは待たされても文句はいうまい」

 

 気持ちよく言うネロの表情は、努めて明るい。無理して表情を作っているというのではない。彼女は心底、自分の楽天的な考えが真実だと信じているのだ。“私”は、彼女のその健気さに痛ましさを感じつつも、いじらしい感慨を覚えざるを得なかった。

 

 「それで、そのマスターとはどんな……」

 「待て」

 

 興味本位で話を続けようとする“私”を遮り、ネロは僅かに身体を浮かせた。左腕に巻いた時計の時間を一瞥してから、大剣を抱えるようにして立ち上がった。

 

 「1号標的群がC地点を通過する。アーチャー、見えるか」

 

 勢い私も立ち上がろうとして、咄嗟にネロが“私”の肩を抑えた。ソウルイーターは視力に劣るが、高い音感性能を誇る。不用意に音を出せば、それだけでこちらの存在を探知される可能性がある。じい、と見つめてその事実を伝えてくるネロに頷きで返すと、改めて、“私”は慎重に立ち上がった。

 “私”がいる教会からC地点……街道の合流地点は、なだらかな丘になっている。距離は半miほど離れているが、“私”の目には、街道を行く4体の獣の姿を捉えていた。

開けた街道をのしのしと歩く、四足歩行の獣。体表が黒いこともあって視認性は極めて低く、“私”の目でもやっとその姿を捉えられるほどだ。いや、むしろここで視界で補足できたのは、敵がこうも露骨に街道を歩いているからだ。

 

 「視野で補足。数は4、情報通りです」

 「エリセとオベロンはいい仕事をする。生半のアサシンより余程良い働きぶりだ」

 

 距離を鑑みれば、“私”の弓矢ならば狙撃で機先を制することもできる。射線を結ぶ形で陣取るシータと併せて挟撃を行えば、5秒とかからずあの4体を殲滅することもできよう。

 だが、そうはしない。逸る気持ちを抑え、“私”はのそのそと歩いて行く獣を見送った。ここであの獣を屠ることは易しい。だが、ただ敵を倒すだけが今回の目的ではない。如何にこちらの戦力を露呈させず、且つ後詰めの敵を含めて敵戦力を殲滅できるか……それが作戦の成否だ。戦いとは、ただ敵を倒せばいいわけではないのだ──。

 

 「やきもきするな」

 

 低く、ネロは声を漏らした。それがわざとなのだ、と自然と“私”は知れた。無線封鎖状態では、他のチームと連絡の取りようがない。タイムスケジュールが大まかな指標で、それ以外は、アーチャークラスの目が頼りだ。思うようにならない状況で戦地に放り出されるというのは、どう考えても精神衛生によろしくない……という状況を、ネロはよく理解している。というより、ナッシュビルに集うサーヴァントたちは常日頃こうした特殊な戦いに身を投じているのだろう。修羅場は慣れっこなのだ。少なくとも、ネロの声色はそれを感じさせた。今“私”が肩を並べるサーヴァントたちは、中でも歴戦の戦士たちというわけだ。

 

 「しかし大丈夫なのでしょうか」

 

 だが、あくまで精兵たるは、リツカの指揮するサーヴァントたちだ。南部の「アメリカ」に属するサーヴァントたちの強さは、また慮外の話だ。

 ンザンビと、ワルキューレ2騎。果たして強いのか。

 

 「そうか、まだそなたは『救世の七騎』については聞いていないのだな」

 「なんですか、それは」

 

 うむ、と応えたネロは、一度時計に瞥を置いた。微かに頷いて、ネロは続けた。

 

 「まだ余が召喚される以前……カルデアがレイシフトで介入してくる以前の話だな。

 南北戦争真っ只中のアメリカに突如召喚されたサーヴァントたちによって指揮される武装組織……同盟(ユニオン)によって北部のアメリカ合衆国首都、ワシントンD.Cは制圧。リッチモンドの悲劇……はまあここではよかろう、北部が南部に敗走し合流する中、殲滅せんと南下を始めたユニオン相手に、合衆国・連合国はサウスカロライナ州を絶対防衛線に定めて徹底抗戦の構えをとった、というのがまず前提になるのだが」

 

 “私”は一生懸命に頭の中でイメージを形作った。本来、サーヴァントは召喚された際に、召喚された年代・土地柄の一般常識等をある程度所持した形で召喚されるのだが、残念なことに“私”はそういった知識も欠如している。なんとかこの数時間で学んだことから話を理解することにした。

 

 「そんな時に突如召喚され、アメリカに加勢したのが『救世の七騎』、と呼ばれる七騎のサーヴァントたちというわけだな。

 ま、アメリカに味方してためちゃ強いサーヴァント、くらいに覚えておくと良い」

 「──ンザンビさんは、その内の1柱だと?」

 「そうだ」ネロは頷きで肯定した。「七騎の生き残りの内の、1騎だな」

 

 救世の七騎……“私”は自然、唾液を嚥下していた。

 ンザンビは、確かに大人物の気配がある。実際、彼女の出自を辿れば、一つの世界の至高神ですらある。“私”はその偉大さに畏怖すると同時に、まだ多くを聞いていない“敵”への恐怖を募らせた。

 ンザンビに比肩するサーヴァントたち7騎がかりで、ようやく互角まで持っていけた、という事実。“私”は、否が応もなく、これからの戦いの困難さを想起した。

 

 「……何か?」

 

 と。

 ネロの視線を感じて、“私”は努めて平静に振る舞った。

 いや、と応えたネロは、それ以上は何も言わずに、街道へと顎をしゃくった。

 無駄話はここまで、ということだろう。作戦行動中であることを改めて自覚して、“私”は息を潜めた。

 

 *

 

 

 「ブリューナク、ねぇ」

 

 ぼそり、呟く。そうよ、と自慢げなメイヴの顔も見慣れたもので、ンザンビも、緩い顔で彼女の持つ槍を眺めやる。

 

 「おじ様が慰めとしてくれたのよ、きっと。これを見てクーちゃんを思い出してね、って!」

 

 意気揚々、という風に、メイヴは自慢の槍を見せてくる。かの闇黒の太陽を撃ち落とした、光の神が振るったという神造りの魔槍を、そんな理由でくれるんだろうか。

 

 ちょっとの思案。「そういうこともあるか」とンザンビは独り納得する。神なんてみんな何を考えてるかわからん奴ばかりである。自ら神であるンザンビが言うんだから間違いない。人間なんて目じゃないくらいの素っ頓狂をしでかすのが神なので、そこに深謀を見出そうとするのは徒労になるのがオチだと思う──。

 

 「その得物は使えるのかい」

 「槍の使い方はクーちゃんに褒めてもらったわ」

 「そりゃスゴイ。クロエや、キミから見てはどうなんだい」

 「さぁ。凄いんじゃない」

 「テキトーだなァ」

 

 ……気の抜けた会話ばかりしていたし、実際3人とも、これから戦いが始まるという緊迫感とは無縁だった。サーヴァントでも手こずるであろう強敵、ソウルイーターとの攻防を前にしたとしても、だ。

 ──教会跡地にて。鷹の目を持つクロがソウルイーターの接近を伝えたのが、つい1分前。あと5分で街道に現れ、さらに5分遅れで機甲歩兵が後から進展する予定だ、というのは、しっかり頭に入っている。

 クロエ率いる部隊の基本行動はこうだ。まず囮のンザンビが街道に飛び出し、ソウルイーターを陽動。後方の機甲歩兵部隊がそれを察知し、A地点を通過すると同時に、後方待機するネロとヴリトラが結界を展開。広域通信妨害(ジャミング)を行うと同時、10秒以内に3か所の狙点から交差射撃を行い、敵戦力を漸減。残存兵力を白兵戦で速やかに撃破し、これを制圧する──口にすれば、それだけの作戦だ。だが、最も危険な役割を担うのは、ンザンビ自身である。何せソウルイーターを相手に単騎で引きつける必要がある。救世の七騎が単騎でいると知れれば、敵は遮二無二撃破しにかかるか、早々に撤退するかの、どちらかだろう。

 早々に撤退するなら、それはそれでいい。ンザンビがナッシュビルにいるという情報は、むしろ“敵”には知らせて良いからだ。だから彼女は率先して陽動を買って出、あまつさえ単騎でそれを為そうとしている。

 敵が攻める時間を稼ぐこと。それが、今ナッシュビルの為すべきことだった。

 

 「ヨシ、それじゃあ行こうかな」

 「気を付けて」

 「ホイホイ」

 

 虚脱気味のクロエに見送られ、ンザンビは軽い足取りで街道へと向かった。軽快にステップを踏むたびにケープが揺れ、ぶら下げた厄人の乾いた生首がふらふらと揺れる。

 サーヴァントとは、英霊とは窮屈なものだ。神霊として在る彼女からしてみれば、ダウンスケールして召喚された身はどうにも勝手が違う。とはいえ、そのもどかしさが却って善い。不如意とはこういうものか、と知るのは、至天に立つものとして必要な経験値だ。ぴょんぴょこと走る姿は、サバンナを駆けるガゼルのようでもあった。

 草っぱらを飛び越えて、ンザンビは街道に出た。わざと着地と同時に転がって見せたりして、見つけてくださいと言わんばかりの仕草である。ついでに、「オーイ」なんて声を上げて手を振ってみたりもする。

 さすがに露骨だったかな、と反省した。ソウルイーターたちそのものに高度な知性があるわけではないが、知覚共有を介して彼らを指揮しているのは、れっきとしたサーヴァントたちだ。あまりに見え透いた仕草は、陽動であることが露呈しかねない。

 ソウルイーターの慎重な素振りは、ンザンビの不安を増大させた。獰猛なソウルイーターはンザンビの姿を認めたものの、すぐには飛び掛からなかった。様子を伺う、というように二の足を踏みながら、じりじりと距離を積めてくる。勢い急襲する、という様子ではない。西部で戦う魔獣たちは、もっと野性的で粗忽だ。ンザンビが現れたと見るや、即座に襲い掛かってくる雑兵でしかない。

 良く鍛えられた精兵……それが、ンザンビの所感だった。個々の装甲歩兵や魔獣の練度は決して高くない同盟(ユニオン)の中で、幻想種をここまで兵士として調教する敵の部隊は数少ない。

 いくつか候補が頭に浮かんだ。その中でも最悪のケースを想定して、ンザンビはすぐに声を飛ばした。

 

 (ネロ・クラウディスウ)

 (どうした?)

 (アサシンは居ないんだな)

 (周辺にはおらぬな。余がいうのだから間違いない)

 

 自信満々な声が頭の中、聴覚野を刺激する。どこにその根拠があるのか、と思いつつも、ンザンビも納得した。幾度も暗殺し、暗殺されかけたネロはアサシンの適性すらある。高ランクの皇帝特権も含め、対アサシン性能に優れるキャスターの中でも図抜けているはずだ。

 ネロとの通信を終えて、ひとまず安堵する。真実、敵は威力偵察部隊以上のものではない、と確信した。あるいはネロの索敵範囲外に潜んでいる可能性はあるが、その場合は交戦距離から離れていると考えていい。畢竟、考慮するに値しない。

 ンザンビの沈思を感じたか、それとも別か。彼女の弛緩した空気を感じ取ったソウルイーター2頭が左から急襲をしかけた。ワンテンポ遅れ、1頭が右から挟撃を行った。

 巧い。ポンチョの裏に隠してあった刀剣を握っていた手は右腕。それを見越しての左からの攻めは、反撃のテンポを遅らせる有効手だ。と同時、別方向から攻撃をしかけることで、さらに反撃の判断を迷わせようという手であり、なおかつ片方を迎撃すれば片方ががら空きになる、という攻めだった。さらに後詰めを控えさせる万全の手。ただ野に狂う獣の手練手管ではない。

 ンザンビの返し手は、しかし、ただただ単純だった。ソウルイーターの剛爪が捉えよう、というぎりぎりの瞬間、彼女の体は颯々と宙に跳んだ。軽い身のこなしは、鳥というよりは猫のそれだ。

 眼下を一瞥し、ンザンビは、幾ばくか失望した。ギリギリのタイミングでの回避は、3頭を激突させるための策でもあったが、狙いは失敗した。獣どもは頭蓋を勝ち割る寸で踏ん張りを利かせ、立ち止まっていた。

 失望ばかりもしていられなかった。何せ、目の前には襲い掛かる最後の一頭がいる。左手に握り直した剣を掬い上げるように振り抜き、大口をあけた顎へと撃ち込みかかる。

 だが、それすらも防がれていた。歪な剣が顎を横一文字に切り裂く寸前、振るった爪が剣とぶつかる。鈍い音を立てて弾かれ、態勢を崩したンザンビは、ひやりと背筋を冷たくした。既にあの獣の大口が開いている。死に対しての恐怖は当然になかったが、落命することそのものが()()だという感覚はあった。

 それに、別に死の予感があったからとて、しょせんそれは予感に過ぎない。彼女は悠々と崩した態勢のまま身を翻し、魂喰らい(ソウルイーター)の下顎に右のハイキックを見舞った。ぎゃ、と悲鳴を上げる獣の脇腹めがけ、今度は身を捻って踵を捻じ込む。錐揉みしながら墜落する獣を後目に、蹴った反動を乗せて、ンザンビは空中にも関わらず軽々と背後に飛び退いていく。

 同時。背中に背負っていたものを抱えるなり、ひょうい、と放り投げる。生首と同じく貯蔵庫の1つだったが、こちらは人間一体丸々分に相当していた。湧き出たシャドウサーヴァントの内、子どもの姿をしていたサーヴァントは生首だけでは足りなかった、というだけの代物ではある。

 だが、そのおかげで便利だった。地面に転がるなり、のそりと起き上がった屍人は、緩慢な動作ながらもてくてくと歩き、あまつさえ奇声を上げ始めた。手に持った何か……本らしきものを読み上げている、らしい。

 戸惑ったのはソウルイーターである。突如発生した音と鬱勃と立ち昇る臭気が何なのか測りかねるばかりか、そのせいでンザンビの姿を捉え損ねた。結果、悠々とランディングして、彼女は改めて今の攻防に思いを馳せた。

 やはり、よく錬成された獣たちだ。東部・西部軍管区が最前線で戦う雑兵たちとは質が違う。

 織田信長が起こした内乱に苦しむ同盟(ユニオン)において、最精鋭の部隊は数少ない。その中でも即応部隊(QRF)はあの部隊しかない。

 ──つまるところ、近々あの神殺しどもとやり合う、というわけか。

 ンザンビに過った感慨は凄絶そのものだった。轡を並べてともに戦い、戦没した英霊……救国だか英傑だか、と持て囃され戦意高揚に利用されている同胞たちの姿を思い返していた。彼女は優しい神だった。ゾンビの原典だなんだ、というのは、しょせん後世の風聞に過ぎない。そして、その感慨はそれ故のものだった。来てよかった、と思った。あくまでポーズとしてナッシュビルに来てみたが、奴らと矛を見える機会に恵まれるとは思わなかった。

 

 影の国の主は、まだヘラクレスとの戦闘の傷は癒えていない。同じく鬼斬りの剣士もまだ全快ではないと聞く。ならば出てくるのは──。

 数勘定はそこまでだった。それを考えるべきは自分ではない、とよく理解している。その代わりにすべきことは、今目の前に転がっている。

 

 「よしよし」

 

 朗らか、と笑うアフリカの魔女。子どものような邪気のない笑みを見せながら、紅蓮の赤い目だけは、一切笑っていなかった。

 

 「オバサン頑張っちゃうぞー」

 

 ひたりと饐えた冷たい目は、食肉目の猛獣を思わせた。

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