ゾイドワイルドZERO Pale Blue Dot   作:高杉祥一

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IMPRESSION

・対ゾイド火器
 機甲戦力であるゾイドに対抗する火器は当然強力な性能が求められる。装甲防御力に加え骨格をはじめとした機体構造部自体も頑強な上、総じて運動性も高いためである。
 そして単純な運動エネルギー弾によってゾイドを撃破しようと試みる場合、その口径ないし砲身長などの問題から火器を搭載するのに大型ゾイドを要する規模となりやすい。小型ゾイド及び歩兵が用いる上で利便性が高いのは、弾頭に機能を持った化学エネルギー弾――すなわち炸裂する砲弾である。
 数あるこの系統の武装の中でも多く運用されているのが対ゾイドシュツルムファウストだ。弾頭と推進装置、発射装置をコンパクトにまとめた結果歴史上の傑作火器と似た形状を持ち、名称も同じものとなった。このような装備が存在することで、小型ゾイドや歩兵によるジャイアントキリングも大いにあり得るのがゾイド戦の最前線である。


NEW EARTH ERA 31 10/15 18:30

新地球歴三一年 一〇月一五日 一八三〇時

ジオシティ 西部パワープラント・産業地区

 

 ジオシティ守備隊の西部エリア担当は、先んじて突入してきたララーシュタインらの迎撃に加わろうとしたところをリン達に側面から打撃される流れとなっていた。

 ダメージを受け、さらにララーシュタイン達までもが向かってくる状況で彼らは西部エリアの重要施設、すなわちパワープラントを守るべく後退と籠城の構えを見せる。

「くそう、もう少しで俺達の国が……」

「もう残り五時間台なんだ、このままこらえさせてもらうぜ」

 建造物とウォールゼーゲを盾にした防御陣地に立て籠もるのはラプトールを装備した守備隊。戦力としては心許ない規模しか残っていないが、対ゾイド火器は備えており接近してくる相手を迎え撃つことはできる。

 山中を踏破してきたオクトーバーフォースには曲射砲などを装備した重砲撃ゾイドはいない。厳密にはバズートルが数機いるが、パワープラントを包囲にかかっているのは直射武装を持ったキャノンブルが中心だ。姿をさらして攻撃しなければならない相手ならば、守備隊側にも反撃の手はあった。

 だが武装を構える彼らの前に、そのゾイドが姿を現す。

「……デスレックス!」

 キャノンブル達の前線を割って姿を現すのは、オクトーバーフォースの切り札デスレックス〈スカベンジャー〉。ロングレンジバスターキャノンの一方を失った姿だが、しかしその巨体は未だ圧倒的な存在感を放っている。

「奴に火力を集中させるんだ! もう一門しかないバスターキャノンはそうそう使ってこないはず。接近戦に持ち込ませなければあのゾイドの強みは発揮出来は……」

 しない、と守備隊の隊長が部下を奮い立たせようとした口にした途端、スカベンジャーが背負う巨砲は火を噴いた。砲弾が貫通したウォールゼーゲがくの字に折れて吹き飛び、そのまま一撃は防御陣地後方のパワープラント外壁にまで突き刺さる。

「撃ってきましたぁ!」

「クソッ! 向こうはここを正念場にするつもりか! こっちは生き残りしかいないってのに……!」

 慌てて反撃する守備隊に対し、スカベンジャーはロングレンジバスターキャノンの排莢をしながら接近してくる。中型クラスのゾイドが相手なら致命打になり得るパワーライフルの射撃がいくつも向けられているが、その足取りは揺るがないものだった。

「やはり規格外のゾイドだな……。だが負けるわけにはいかない!」

「俺達のデルポイ連邦を成立させるために!」

『――あー、あー。聞こえてるかぁお前達』

 互いに声を掛け合い奮起する守備隊。しかしそこに、接近してくるスカベンジャーから声が響く。当然それは、操縦するギャランの声だ。

『どうせよお、理想の国を作ろうとしているのに虐げられている僕ら、みたいな悲壮な感覚に酔ってるとこなんだろうけどよ。物パクったり脅しかけたりでお前らも相当ブラックだぜってことを理解しておけよ』

 射撃にさらされても小揺るぎもしないスカベンジャーから、うんざりしたようなギャランの声が響き渡る。そしてその内容に抗議するように、守備隊側からの射撃は密度を増した。

 だがギャランは止まらない。

『オクトーバーフォースの他の面々はお優しいから黙って戦っているけどよお、俺みたいなのは言っちゃうぜ。

 社会に不満があるんでこんなことしてるんだろうが、そんなお前らが他人に恐怖を振りまいて不幸を再生産してるんじゃあ世話ねえってな。それでいて自分たちを革命の戦士かなんかだと信じ込んでるなんてちゃんちゃらおかしいぜ。けっ』

 言い切るギャランに対し、一瞬砲撃が止んだ。それは守備隊の兵達の絶句の代わりであるかのようだ。

 そして次の瞬間、陣地の中から一機のラプトールが飛び出してスカベンジャーへ突進していく。その手には対ゾイドシュツルムファウストが一基握り締められていた。

「黙れ! 生まれたときから何も心配無かった側の人間のくせに!

 俺は、俺の民族は惑星Zi時代の出来事のせいで……」

『知らねンだよタコがあああああっ!』

 滑り込んで射撃姿勢を取ろうとするラプトールめがけ、スカベンジャーの足裏が横蹴りとしてかっ飛んできた。壁面に正面衝突したかのように折れ曲がり、ラプトールは宙へ吹き飛ばされる。

『自分達だけの不幸を解決しようってのにご大層に革命ぶりやがってよお。

 そういう詐欺野郎は俺達が叩きのめしてふん縛って本国の刑務所にぶち込んでやるぜ。

 あのシーガルのようにな! オラオラかかってこいよぉ!』

 蹴散らしたラプトールの後を追うように、スカベンジャーはいよいよ陣地に迫る。

「チクショウ……俺達は……そんな……」

「奴を許すな! 俺達の国はあんな奴らから独立するために作られたんだ!

 これ以上奴にジオシティの土を踏ませるんじゃない!」

 迎え撃つ守備隊では、ウォールゼーゲの側面砲までもが全て展開しスカベンジャーの鼻先に火力を集中する。だがその中を突き進んできた巨体が牙を剥き、ウォールゼーゲ一体の首元を捉える。

 振り回されるウォールゼーゲに、スカベンジャーに踏み砕かれるアスファルト。荒れ狂う最前線では後退する者と、彼らのために時間を稼ぐ者達が戦場に、スカベンジャーの周囲に対流した。

 だが暴君デスレックスの威力は圧倒的だ。立ち向かう守備隊の前で、その機体はわずかに装甲に煤や着弾痕を帯びただけで佇んでいる。対する守備隊は武装の残りも少なくなり、精も根も尽き果てる直前の様相を呈しつつあった。

「まだだ! みんな諦めるな! 奴を一秒でも長くここで食い止めるんだ!」

 味方を鼓舞するべく前に出たのはラプトール部隊の指揮を執る若い男。彼と愛機は対ゾイド用のメガランスを携えていた。

「俺達はデストロイヤー・ガンの発射を待つ側……一分一秒でも時間を稼げばそれが俺達の戦果なんだ!

 ここで勝てなくたっていい! もう一踏ん張りなんだ……!」

 叫びを上げ、ラプトールがスカベンジャーの横っ腹に突撃する。それはギャランの虚を突いたか、直前まで何の対応も取られず――、

 しかし次の瞬間、スカベンジャーの巨体に見合わない小さな腕が瞬発し、突き込まれるメガランスの穂先を掴んだ。わずかなスキール音と火花と共に突撃の勢いは失われ、ラプトールは空中に掲げられる。

『へっ、冷静ながらに熱い奴が残ってやがったな。

 だがそういう素質があるならもうちっと大局観って奴を養っておくべきだったな』

 勇敢な青年を晒し者にしながら、ギャランはせせら笑う。そしてその言葉に応じるように、不意の闇が戦域を包んだ。

 否、それはその場所だけではない。突然の闇はこの西部ブロックからジオシティ全域に広がり、そして各地で非常灯が点灯し始めたのだ。その光景はパワープラントが停止したことを意味するのだが、

「な……まだパワープラントは健在のはずだぞ! バスターキャノンの直撃でも核融合炉は破壊できなかったはず……」

『馬鹿だなあ。発電施設みたいに頑丈で有用なものを真正面からぶっ壊すアホがいるかよ。こっちには特殊工作部隊もいるんだぜ』

 そして守備隊の面々は見た。パワープラントのジオシティ側に突き出した建屋上に一体グソックが鎮座している様子を。

 スカベンジャーを前線に投入し、それを無視できない守備隊を釘付けにする。その隙にパワープラントに特殊部隊が突入し制圧する。あまりにも単純なその戦術が成立してしまった事実に、守備隊は半狂乱となった。

 スカベンジャーに突撃する者、パワープラントに身を翻す者。沸き立つ最前線に、今こそスカベンジャーはその全身を投げ打った。

『お前らがこの場に費やした一秒一秒全部が無駄だったなあ! お前らの革命とやらも同じなんだよ! くたばれクソッ!』

 迫る者、逃れる者全て区別無く蹂躙するデスレックス。その姿はデルポイ連邦が振りかざすセカンドイシューの暴威の似姿だった。

『こんなやり方で満足なのかよ、お前らはよ……。平和な国を作ろうってのによ』

 全てが潰え、燻る戦場に独り残るスカベンジャーからギャランは呟く。そして戦場たる西部ブロックからジオシティへと振り向いた。

『……メインのパワープラントを潰してもやっぱり各部で貯蓄や予備の発電施設が活きてやがるな。

 デストロイヤー・ガンも止まってないんだろうなあ』

 西部ブロックの守備隊に自ら与えたような虚無感を抱きながら、ギャランは非常灯が各地で煌めくジオシティを見渡していた。そしてその星明かりの空のような景色へ、スカベンジャーも咆哮を上げる。

 未来都市の光は消えた。だが戦闘は続いている。未来を賭けた戦いが――。

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