ゾイドワイルドZERO Pale Blue Dot 作:高杉祥一
・NEW EARTH ERA 28『理由無き翼』
『ゾイドワイルドZERO NEARLY EQUAL』第四話。
本編の二年前、共和国軍は帝国軍の最新鋭航空ゾイドスナイプテラの脅威に対抗すべく自国独自の戦闘ゾイド・ソニックバードの開発を進めていた。
三チームによるコンペ形式の開発レースの中、若き女性技術者リチャーダ・フォークトが率いる〈エトピリカ〉チームは難題に突き当たる。自分達の設計理念への自信はあるのだが、肝心のソニックバード〈エトピリカ〉が飛ばないのだ。
エトピリカチームのテストライダーである第一世代のベテラン、ジャック・カノー少佐は持ち前の経験から自体を楽観視していたが、懸命なリチャーダの横顔と彼女らの拠点であるキティホーク航空基地に迫るスナイプテラの脅威を目にして動き始める。
果たして赤きソニックバードは地に伏したままなのか、高空の支配者となるのか。空に因縁を持つキティホークの地に爆撃の時が迫る。
新地球歴三一年 九月二二日 一四四六時
東京エリア 八王子
反乱軍討伐部隊の東京進出に際し、主戦力として招聘されたララーシュタインらセプテントリオン戦闘団は東京の南端戦域に展開し反乱軍の動きを警戒していた。
しかしそこに襲来したのは航空戦力。陸戦主体のセプテントリオン戦闘団は簡易ながら強固な陣地を敷いていたが、その上を敵に通過されてはたまらない。
「ブルーダー少尉! 対空戦闘は君の得意分野だろう! 頼んだぞ!」
「ソニックバード型の相手をするのは初めてなんですが……まあ頑張ります」
敵の突撃を受け止めるはずだった火力陣地の奥、指揮所脇にその主ララーシュタインと客員ブルーダー二人のゾイドの姿がある。そしてブルーダーの愛機ハンターウルフ〈エコー〉は、展開した背部レゾカウルと共に長大な対空砲を展開していた。
ブルーダーが生まれ育った雪山を縦横に駆け巡りながら、対空砲で帝国軍の越境を封じていたのがこの一人と一体のペアだ。ララーシュタインが彼を招聘したのも、立ち会った一戦で見せたこのペアの実力に起因する。
「確かに速いし、この辺は気流が穏やかだから向こうの選択肢も多い。
とはいえ、飛行原理が近いならスナイプテラ相手と変わらないか……?」
独り言を呟くのは孤独な対空狙撃を繰り返してきたからか。廃墟の陰に伏したハンターウルフは対照的に静かでありつつも、レゾカウルを立ち上げたワイルドブラストの態勢だ。
静かなる狙撃手の一射は、周囲の陣地から吹き上がる対空防御射撃に紛れて飛んだ。対空榴弾が炸裂する頃には、狙われたソニックバードは周囲に気を取られ全く気付いていない。
炸裂が片翼を飲み込み、被弾したソニックバードは悔しげに対地装備を投棄して反転していく。しかし残る機体――七機は健在であり、すでにブルーダーの頭上の空域を通過しきろうとしていた。
「ええい突破されてしまうぞ! ブルーダー少尉!」
「ヤスリの尾根でだってこの数は一度には仕留められませんよ、ララーシュタイン少佐。
しかし迎撃火器が集中している前線を突破していくということは、連中の狙いは高い確度で定まっているということでは?」
ファングタイガー〈ノイエ・ローゼンティーゲル〉に通過していく敵への対空射撃をさせるララーシュタインへ、ブルーダーは冷静な意見を述べた。
単に戦いをするということなら、ここにいる自分達に対地攻撃をするのが筋というものだろう。だがソニックバード達は対空砲火を回避しつつ、この東京南端の地域からさらに北へ、東京の中央へ向けて突き進んでいこうとしている。そこに今いる者と言えば、
「兵団長の命……あるいはネガシルエットへの対抗手段であるアカツキライガーを潰しに来たか?」
「共和国系の部隊みたいですし、それを手土産に合流とか考えているかもしれませんね。
ともあれこのまま飛んで行かれたら、アハトバウム少将にせよアカツキライガーにせよ、確実に捉えられます」
淡々と所見を述べるブルーダー。渋い顔でそれを聞き果たしたララーシュタインは、頷くと手振りと共に周囲の部下に命令を下す。
「高速部隊を追撃に出す。アハトバウム少将らとも連絡を取り合流しよう。機甲部隊は引き続きこの場を維持しつつ、ソニックバード部隊が撤退に移る際反転し対空攻撃を試みるように。
では行こうか、ブルーダー少尉」
ブルーダーを従え、ララーシュタインは愛機が収まる掩蔽壕へ踵を返した。しかしそこへ、伝令の兵が一人駆け寄ってくる。
「報告! 未確認部隊のソニックバードに対し迎撃機が上がりました。同じくソニックバードの部隊です」
「早いな。共和国側でも反乱部隊と認めたということか」
「しかし直近の航空拠点はイルマだかヒャクリだか……ハネダだかナリタでしたか。ここからさらに前進している富士の部隊に比べると、後方待機ということもあって練度が低いのでは」
ブルーダーの懸念。しかしそれに対し、ララーシュタインは今度は彼の肩を叩いて言葉を返した。
「ならば、我々が要るということだよ。
急ごうではないか!」
新地球歴三一年 九月二二日 一四五二時
東京エリア 立川
空襲警報が続く立川では、研究班の護衛部隊が対空戦闘に備えていた。
対空レーザーを持つバズートル部隊をスティレイザーが統括する形態で、研究班と施設への突入を阻止するように布陣がなされている。そして同時に、簡易な施設が多い中急造された分厚いコンクリートの掩体に、科学スタッフの軍属達が避難していく。
その流れの最後尾には、ゾイドの姿もある。輸送トレーラーに乗せられたワイルドライガーブレードと、それを引くキャタルガ。そしてその隣には護衛に付いたアカツキライガーだ。
『未確認部隊はこのエリアの航空統括からの呼びかけにも応じなかったため、正式に反乱部隊に認定する。各員存分に戦ってくれ』
最高指揮官であるグロースがこの場にいるため、判断は早い。しかし航空ゾイドの優位を相手に、その意思を通すことができるか。
「……来た!」
トレーラー上で再びうずくまるワイルドライガーブレードを見守っていたリンは、護衛部隊の一角でレーザーが大気を灼く響きが上がり即座に振り向く。
閃光は空の彼方へ次々と撃ち込まれていく。そして止まず、さらにレーザーの発射音を掻き消すようにジェット噴射の轟音が轟いてくる。
対空射撃は本来狙って当てるものではない。レーザーを装備するスティレイザーとバズートルであっても、基本は弾幕を張り敵の機動を制限するのが精一杯だ。それでもこの場合は十分なはずだが、
「速いし……運動性も高い!」
ソニックバードのドッグファイト性能はスナイプテラ以上だとリンは聞いたことがある。そしてそれを証明するように、七機のソニックバードは対空砲火の領域とその外の境界を舐めるように旋回し、さらに上空へ逃れていく。
「トップアタックだ! 航空爆弾が直撃したら掩体も危ない!」
それに加えて傍らのワイルドライガーブレードも。その周囲にはまだ避難し切れていない人もいる。リンは逆光のソニックバード達を見上げた。
「対空防御――!」
叫びを上げ、リンは上空へとトリガーを引く。アカツキライガーも空を見上げ、新たに装備した武装ユニットの機関砲を構えていた。
放たれる連射。汎用性を重視したそれは対空射撃としても有効だ。急降下に転じたソニックバードの前にばらまかれた弾幕は、その突入を食い止め周囲に散開させた。
「よし……!」
咄嗟の行動だったが、上手くいったようだ。そして周囲にエンジン音が散っていく一方で、新たな響きが北から接近してきている。
『迎撃部隊が空域に到着した。同士討ちに注意せよ』
グロースの声にリンが見れば、北からは灰色のロービジ塗装の編隊が向かってきている。数は一二機、反乱部隊より優勢だ。
「今のうちです! 避難を急いで――」
周囲に呼びかけるリンの頭上で空中戦が始まる。ジェット噴射に加え機銃の唸りに、甲高い咆哮。降りしきる音と共に、翼が宙を引っ掻いて刻むヴェイパートレイルが幾重にも空を結んでいく。
地上から見上げる入り乱れはどちらが優勢かは判断が難しい。リンはワイルドライガーブレードが格納されるのを見届け、さらに残る避難者達に道を譲るしかない。そしてそれが終わる頃には、一機が撃墜される黒煙が頭上を横切っていった。
墜落していくのは――ロービジカラー。迎撃部隊だ。素人考えだが、空中で動きが活発なのは反乱部隊だとリンには見える。
頭上の爆発は連続する。さらに反乱部隊のソニックバードの中にはエヴォブラストを発動して迎撃部隊機の背後につくものもいた。
「敵の方が上手……!? このままじゃ!」
『――その声はリン准尉か? こちらララーシュタイン。立川の状況を伝え給え。聞こえているか?』
割り込んでくる通信に、リンは頭上から意識を引き戻された。大湊の軍港で問いを放ってきたララーシュタインの声にリンはびくりと肩を震わせるが、しかし眉を立て、
「立川は現在反乱部隊と迎撃部隊の空中戦が繰り広げられています。それも反乱部隊が優勢です! 現在迎撃部隊の損失が――四!」
『ふぅーむ、なんたる……』
二つの隊の差はもはや一機。そしてこのペースで撃墜されているということは、反乱部隊の優位は堅い。
『私が高速部隊を率いて急行しているが、対空火力には限界がある。アハトバウム少将には脱出の準備を――』
『ララーシュタイン卿、レーダーが新たな機影を捉えたようですが』
ララーシュタインに同行しているブルーダーの声が割り込んでくる。彼らの側でも何か動きがあったようだ。
『反乱軍の増援か?』
『いえ、方位は北から。迎撃部隊が使用したルートをなぞって……三機』
『三機? コールサインは?』
『全てバラバラですが、同一部隊だそうです。共和国航空技術実験団所属……』
報告を読み上げるブルーダー。それを聞きながらリンは北の空へ視線を巡らせる。
確かにその方角から三つの影が、白と黒と――赤の翼が接近しつつある。
『〈ワイルドバロン〉、〈ストラトスフィア〉……〈エトピリカ〉だそうです』
『航空実験団? それは確か、ソニックバードの開発を行っていた組織では』
二カ国の関係がまだ穏やかではなかった時期のことだ。ララーシュタインは戦略的な情報として聞いていたのだろう。
『だとすれば、ソニックバードの生産が始まるよりも前から関わっていたパイロット達では?』
ララーシュタインの指摘に、リンはハッと上空の情勢を見上げた。また一機の迎撃部隊機が被弾し宙から転げ落ちていくが、
「流れを……変えて……!」
そう絞り出しながら、リンは周囲を見渡した。自分にも、自分とアカツキライガーにも何かできないか。
周囲は廃墟の街だが……そこにリンは見た。空に近い位置が一つ。
接近する新手を脇に見つつ、リンはアカツキライガーを飛び出させる。手をこまねいているだけでは耐えられぬが故に。
そして上空では、空戦に乱入する機影が三つ。
新地球歴三一年 九月二二日 一五〇六時
東京エリア 立川 上空
「いかんなあ。こっちの部隊は運動性の高さを活かせていない。相手の出方を窺ってしまうのはまだルーキー意識が残っているからか」
三機編隊の先頭を行く赤いソニックバードの操縦席で、一人の男が呟く。
階級章は少佐。さらに航空技術実験団や、技術実験基地の所属を表わすワッペンが取り付けられた耐Bスーツが特徴的だ。そして何より、ゾイドライダーとしては不利になる呼吸器を身につけながらも先陣を切っている。
ジャック・カノー。北米開拓時代、新地球歴一〇年代から航空ゾイドに関わってきたベテランだ。そして共和国の航空戦闘ゾイドソニックバードの開発に関わり、現在の仕様を決定づけたこの機体――〈エトピリカ〉を初飛行させた男でもある。
それ以来各種実験、そしてソニックバード運用のための戦技開発を続けてきた彼と開発チームは、今やソニックバード運用部隊の教練役として文字通り世界を飛び回っている。この日本列島に居合わせたのも、そのためだった。
「相手は富士の部隊か。先に教練した時は含みがある様子も見せなかったが……反乱は見逃せないな。
リンドバーグ! リッケンバッカー! お灸を据えてやろう」
『おうさジャック』
『了解! カノー少佐!』
長い付き合いになった僚機のパイロット二人が返事を寄越してくる。彼と彼女のワイルドバロン、ストラトスフィアは当初の仕様とは様変わりしたが、二人の陽気さは変わらない。
「航空技術実験団エクスペリメント51部隊――〈ライトフライヤーズ〉! アタック!」
カノーが声を上げた瞬間、三機のソニックバードはそれぞれの方向に散った。
カノーとエトピリカは空戦領域の上空へ、さらに殴りかかるような急降下に転じた先には、反乱部隊のソニックバードが一機。
「敵を追うことに没頭しすぎる。なんのためにゾイドとライダー二つの目があるのか、と」
機銃掃射が眼下へ降り注がれる。四門の機関砲が生む火力は敵ソニックバードを真上から打ち据え、その背面にあるエンジンを爆発炎上させた。
「きちんと脱出して反省するように」
黒煙と交錯し、カノーはエトピリカを引き起こす。そして墜落していく相手を見るために振り向いていた視線が、こちらの軌道を追ってくる一機を捉えた。
「残り六機、ね」
強烈なGを感じながら引き起こしをかけつつ、カノーはエトピリカの体を回らせた。ロールを打てば背後に見えていた敵の姿は真正面。さらに機関砲を旋回させれば攻撃力も相対する。
遠心力が逆Gとなり、耐Bスーツが体を締め付けてカノーの血流をコントロールする。それでも頭に集まる血が視界を赤くするが、カノーは敵から視線を外さない。
「こっちは気付いてるぜ」
迎撃の弾幕をぶちまけられ、しかし敵はその中をくぐり抜けてくる。エヴォブラストの刃が展開し、腹を見せるエトピリカへと迫った。
だがカノーは、カノー達はこんな状況でソニックバードをどう扱うべきかも研究したことがある身だ。カノーがスロットルをひっぱたくと同時に、エトピリカ自身も翼を大気に叩きつける。
羽ばたきと脚部スラスターの威力で、エトピリカはほぼその場で一回転する。そうして縮まった体躯の下を、敵のウイングソードが空振りしていった。
そしてその回転の中から、カノーとエトピリカはオーバーシュートしていく敵の姿を捉え続けている。
「取ったぞ真後ろ!」
翼を広げて回転に楔を打ち、エンジンに点火してエトピリカは敵を追う。エヴォブラストを続けて加速する敵はさらに左右の揺さぶりもかけてくるが、エトピリカの軌道は背後から一直線にその背後に食らいついていく。
「こっちを振り切ろうってのが見え見えなんだから旋回に付き合うわけないだろってな」
カノーはGの負担を吐息一つで脱し、悠々と敵の背後に。しかしそこに、後方から視界をよぎって飛んでいく機銃の射線があった。
「おっ、カバーか! そういう風に気が利くのはいいぞ」
反乱部隊側のソニックバードがもう一機、エトピリカの背後に占有している。その存在を見たカノーはすぐさま操縦レバーを押し込み、エトピリカのエヴォブラストを発動した。
ウイングソードの展開と、マグネッサーウイングの唸り。エトピリカはまるで炎のような軌跡を残して追い立てる敵に迫った。
すでにエヴォブラストのピークを過ぎた相手に背後から斬りかかり――エンジンに一撃を与えると同時にエトピリカは柔軟に身を翻す。切りつけた相手を盾にしつつ、追跡の相手に向き合う姿勢だ。
その中からエトピリカは蹴りを放つ。エンジンを失い倒れ込むように高度を下げていた相手はその蹴りに直撃し、背後へ。カノー達を追う僚機の方へと吹き飛ばされる。
突然の接近と、破損したエンジンが上げる煙がカノーの姿を追跡者から掻き消す。その間に、カノーはエトピリカの機首を下に向けていた。
降下と加速。それは格闘戦で失った運動エネルギーを得るために重力に手を引かれる軌道だ。水面から水をすくい上げるように、エトピリカは速度を取り戻す。
そうして振り向けば、破損した味方を振り切りながら追跡の敵ソニックバードがエンジンを振り絞って猛追してきている。
「速度は近いのにそっちは随分余裕が無さそうだな」
楽しげに振り向くカノー。エトピリカはエヴォブラストを中断し、まだまだ余裕だ。
さらに降下した際に、一瞬面白いものが見えた。この戦いに一撃を撃ち込もうとするものが。
カノーは楽しい。人とゾイドの命がかかった戦場だが、自分とエトピリカが全力を発揮していい広大な空間。自分が地上にいるままでは手に入らなかった空が、全てのフライトでカノーが飛ぶ空だ。
「ついてこい!」
ロールと降下、即座の引き起こし、左右に鞭打つような揺さぶり。余力を駆使し、カノーは背後の敵を引きずり回す。その激しい機動の中で、敵はエヴォブラストを起動し、さらにもう一機が追随してくる。
「いいぜ、こっちだ!」
届かずとも呼びかけ、カノーはエトピリカの軌道をねじ曲げた。さらに降下する赤い機影は、安全高度を切って廃墟の都市の合間に沈み込んでいく。
かつての街道に沿い、翼を畳み、エトピリカは砂埃を巻き上げ突っ切った。だがそれは街道に軌道を制限されるルート。二機のソニックバードが上空から機銃掃射の構えを見せてくる。
が、エトピリカが沈み込めるほどの街道があるそこは、地上の拠点の近くだ。横様に、二機の敵めがけ対空砲火がほとばしる。
泡を食って身を躱す二体。そしてその一方めがけ、急降下の速度を得たエトピリカが襲いかかる。
「Right Stuffは俺達だぜ……!」
ウイングソードの一閃が敵の翼を根元から断ち切る。マグネッサーウイングの各セグメントと火花が羽毛のように宙に散る中を、エトピリカは急上昇していった。
そして反乱部隊のもう一機は回避運動で姿勢を崩しながらも、こちらに食らいつこうと旋回してくる。その軌道は廃墟の中でも一際大きなかつての駅舎ビル周辺をかすめ、
『うおおおっ!』
そこに咆哮が被さる。廃墟に風雨が穿った穴を伝って、何者かがビル内を突き抜け高度を確保していくのだ。
瓦礫を突き抜け宙に飛び上がるのは、白と朱の機影。その頭上に鋭い一筋のブレードを展開するのは、リンのアカツキライガーだ。
「例のゾイド因子増強機体か……!」
噂は聞き及んでいる。そしてかつて試作機を操縦していたカノーとしては、どことなく親近感の湧く相手でもあった。
そして宙に飛び、反転する敵のソニックバードに躍りかかっていくその機影は橙色の輝きを放っている。
『アカツキベイオネット!』
ガンブレードから放たれる射撃がソニックバードを空中に縫い止める。その姿を放物線軌道の先に見たアカツキライガーは、さらにガンブレードを突き出し、
『アカツキペネトレイタァ――――!』
大地ごとソニックバードを撃ち抜く一撃。それは敵の胸郭に突き刺さって翼を繋ぐ肩へ抜けた。
そして落下の中でガンブレードの背後に控えるシリンダーが巡り、撃発の響きが空を打つ。その瞬間、敵の翼は断ち切られて宙に舞った。
「ああいう必死さは、いつ見てもすがすがしいもんだな」
三年前のエトピリカ開発の現場で抱いた感慨を、ふとカノーは思い出した。
そして空を見れば、まだ反乱部隊の姿は空中に残っている。
あの時のように……この空に覇を唱えよう。
「残りの連中も片付けるぞ! エトピリカ!」
鋭い咆哮と共に、エヴォブラストの閃光を曳いてエトピリカは敵へ襲いかかっていく。その背後に白と黒の機影を引き連れ。
立川空中戦において反乱部隊が壊滅させられるまでに、そう時間はかからなかった。