同盟上院議事録~あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争~   作:兵部省の小役人

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「官僚稼業という者は概して楽ではない。この稼業に就く者は、畢竟つまらない人間だと評される。しかし、そもそもこんな仕事を続けられる人間がつまらないわけがない。仕事の話を多少なりとも解するようになるとわかるが、この地域で長く暮らす者たちは、”変な”人間ばかりである。」「『同盟公務員必読!~構成邦間の行政形態の違い~』(オリベイラ教授著)のグランド・シヴィックセンターの歩き方の項より抜粋」


第29話 夜回りの準備

宇宙歴796年7月1日ハイネセンポリス標準時間21:30

ハイネセンポリス グラン・シヴィック・センター

地下街 ベーカリー・レストラン ブーランジェリー・ヒョーゴ

 

 さて、これは一月ほど時を巻き戻し、法案可決前の話である。

 ハイネセンポリスの官庁街 グラン・シヴィック・センターの地下街はこの時間でも活気がある。ベーカリーレストランでは30手前の若手官僚たちが会話している。

 

「‥‥‥で、軍事予算の縮小のめどは立ったわけだ」

 

「軍部内での予算組み替えがあるみたいだから幅はわからんがな」

 財務委員会の官僚はぐったりとサンドイッチを口に運ぶ。

「補正予算を早期に組む必要がある。ウチの委員長(レベロのこと)が”低金利国債で財源を補充する分には前年度並みの規模で問題ない”と最高評議会で述べたからな」

 

「同盟政府が提出する予算案は総額はほぼ前年並みでいいのか?」

 

「そうガチガチに決めるわけではないがな。国防委員会の予備費をいきなり削減するわけにもいかないだろう。それに人と資金の流れを軍需から民需に移す作業が必要だ。あの星間流通復興法は渡りに船だ」

 経済開発委員会の官僚が補足する。

「今回はこれまでよりは、やりたいことができるんじゃないか?ま、今回は情報交通さんが一番得したんじゃないか?」

 

「得というより……崩壊直近のところで一息ってところだな、宇宙軍だって実際の運用の手足となる兵下士官の即成栽培には星間流通業が一番頼りになる人材のプールだった。だがそれは『星間国家の政治・経済・国民の実感』を支える能力でもある。それが決壊する寸前でどうにか支えられそうだ、というところだ。こればっかりは他の部局の政策実施を支えているのは変わらんはずだぞ。交戦星域の復興プロジェクトに星間流通基盤支援機構の組織はこちらでロードマップを示す必要があるのだけど‥‥カナマル先生もよりによってこんな時に‥‥」

 【得をした】と名指しされた情報交通委員会の官僚は、頭を抱えてい?。

 根っからの地方党人派で国会対策と上院のコントロールに長ける大ベテランのカナマル【元】情報交通委員長は安全基準緩和に関する施行規則の恣意的な運用と「ルンビーニ輸送船団遭難事件」を引き起こした企業(当然ながら法令のグレーゾーンの安全管理体制であった)から献金を受けていたことで辞任し、副委員長が現在職務を代行している。

 

「ルンビーニの宇宙港に大損害だ。アイランズ弁務官が落選したら、トリューニヒト国防委員長のメンツだって丸つぶれだからな」

 アイランズはトリューニヒト派の幹部だ。優先度の低いフェザーン航路に本来必要のない防衛施設を引き寄せる利益誘導政治家と言われている。実際、航路保安や海賊対策が大義名分であるが、優先順位の問題で国防予算抑制のため、激しい闘争領域で汚職のやり玉にあげられる。

 しかしながら、上院安全保障委員会委員長として上院のトリューニヒト閥の支持層固めに活動しているほか、フェザーンとの綱引きで同盟資本を擁護しているため、国民共和党への影響力は非常に強い。

 

「しかしねえ、そこは最高議長閣下の手腕に頼るしかないのだから‥‥。なんにせよ航宙教育機構と宇宙港湾整備事業団を統合して流通業界団体からさらなる出捐を勝ち取れる政治家が必要だ」

 人的資源委員会の労働畑の官僚は、ラズベリーパイにメープルシロップをかけている。

 

 周囲の人間がややヒいた表情でその【調理】を見ているのを気にせずパイをほおばる。

「それもおかしな話じゃないか、流通業界はいま人材不足で生産性がいよいよ落ち込んでいるんだぜ?いっそ経済産業円卓会議に声をかけて幅広い企業から引っ張ってきてもいいんじゃないか?業界問わずボトルネックだろうに」

 

 まあそれは一理あるが、と官僚たちはうなずく。彼らにとって資金調達は常に異業の上司(議会政治家)から忌み嫌われるものであり、喉から手が出る程欲しいものだ。他人が出すのならそれに越したことはないと考えている。

 

「そこら辺は政治家先生に任せるよ,後任はオタクのウィンザー副委員長だろ?」

 

「議会の承認も通りそうだからな、まあそう悪くはないだろう。口は上手いし、あれで経営者とも保守系労組とも交流は学者時代からある」

 経済開発委員会の官僚はぐったりとしている。

「継戦路線を明確に打ち出しながら民生を維持するって方針を示すにはいい選択じゃないかね?」

 

 その時、国防委員会の同期に連れられ、軍服を着た青年が店に入ってきた。

「やあ、お疲れさん。アンドリュー・フォーク准将閣下もご一緒か」

 

「ああ、お疲れ。【民主主義の縦深】の提出法案の調整で艦隊総司令部と国防委員会戦略部、統合作戦本部の三者面談もひと段落だ」

 艦隊総司令部作戦課の第三席である彼は渉外を押し付けられている。統合作戦本部だけではなく、【現場の声】として戦力の維持すべき水準や運用について説明をする役だ。

「お疲れさん、まあまとまりそうだからいいんじゃないか?」

 

「あぁ、もう手は離れたよ。あとは国防委員会の背広組が主導、制服組は統合作戦本部がカウンターパートさ、おかげで久々に3連休を堪能できそうだよ、任官以来かもな」

 

「というわけで、会議も済んだし上がらせてもらう。君たちは上がれそうか?」

 

「そうしたいところだけど、仕事が増えたからな、そちらもそうだろうけど」

 文官たちが飲んでいるのは炭酸飲料で酒ではない。

「文句をつけているわけではないぞ、大手柄じゃないか軍部は」

 文官の一人が手を振る。

 フォーク准将はわかってるさ、と神経質そうにビールを口に含んだ。

 こいつにビールはびっくりするほどに合わんな、と誰かが口の中でつぶやいた。

 

「法秩序さんや財務さんは随分と元気に動き回っているようだね」

 

「軍はその後だろ?」

 

「同盟政府の明日を担う諸君らともあろうものが、こんなところで情報を漏洩させるつもりかね?」

 

 もったりとした口調でけん制する人的資源委員会の役人に皆が首をすくめる。薬物対策の情報管理の厳しさは有名だ。

 

 

「小官は知らんよ。情報部は国防委員会の所管だからな」

 惚けているのはわかっている。統合作戦本部情報部と合わせて一体運用されている。

 

「どちらかといえば、人事面での再編の方が気になっているな。士官学校の『院課程』を大幅に強化するそうだ。それに加えて『幕僚研究課程』を現任の若い将官と高級佐官を選抜して送り込むそうだ」

 前線参謀としての幕僚教育は当然、受けている。だがとにかく効率重視で、赴任先で通信教育のような形で一部の課程を受講させられることもある。

 

「ワーオ」

 そろって指を指されたフォーク准将閣下26歳は苦笑して片手をあげる。

 

「助けてくれ、だ。しばらくは、軍も経済も、傷をいやすことに専念するという指針が出たならそれで十分だ。当分は准将の階級章で過ごすだろうさ」

 

「おや?”野心家”ぶりはどうした?」

 

「小官は民主主義者だよ、政府が指針を示したならそれに従うまでさ。それに現状は悪くない。しばらくは組織の再編と人事の整理が仕事だ。死人が出て上に上がるよりはよほどいいだろう?」

 ――帝国がフェザーンから大規模侵攻などと無茶をしない限りは、だが。

ビールの泡の中にを潜ませる。

 

 官僚たちはうん、と伸びをする。

「明日からは法案審議に合わせてたたき台を作っていかねばならんな」

 

「夜の国会巡りが始まるなぁ」

 国会だけではない、政党本部や議員会館,場合によっては構成邦行政機関からも問い合わせが来る。

 どこもかしこも大変だ、とフォークはビールを味わい、そしてカレーパンをほおばった。

スパイスの香りとアルコールが脳の変な部分を刺激したのか、じんわりと涙がにじんだ‥‥。

「あぁ、今、生きてると実感が‥‥‥」

 

「大変だね、将官」

「飯食っても味しないもんな‥‥」

 

 生ぬるい視線を向けてグダグダしている連中の一人が立ち上がった。

「さあ、さあ、夜回りの準備をしようぜ」

 

宇宙歴796年7月2日エル・ファシル標準時間20:30

エル・ファシル共和国ヴェストラ州カテガット宇宙港近郊

オイニスン=クワネッガ水産(株)カデガット加工工場

 

「畜生め、せめて外で殺されてくれよ」

 ヴェストラ州警察本部刑事部捜査一課が、カテガット港近くの缶詰工場にて、他殺死体が発見されたとの通報を受け取ったのは深夜のことであった。

 州警察本部捜査一課が送り込む第一陣の現場責任者であるステントルム警部補は、手慣れた殺人事件捜査官としての予測と、私的な期待を通報を抱いていた。

ステントルム警部補のような州警察の中堅捜査官にとって、宇宙港に近い埠頭での殺人事件はよくあることだ。今回もファイアザード産の薬物の取引にしくじった密輸屋あたりが報復として殺害されたといったところだろうとステントルム班長は予想していた。

 ついでに言えば、昨日まで検察官相手に書類業務で大忙しだったこともあり、初夏の夜の潮風を楽しみにしていた。

 しかし、初動捜査を行った機動捜査隊の顔見知りからの報告は、その予想と期待を真っ向から否定した。指紋もなく、凶器もなければ、押し入られた形跡もない。さらに、死体は2トンほどのニシンを詰め込まれた発酵樽の中に遺棄されていた。発酵鰊の缶詰といえば猛烈な臭気で宇宙船内での開封は固く禁じられているほどのものだ。

 爽やかな潮風どころか香しきエル・ファシルの迷物の臭いが付いた服で帰ることになるかもしれないとしったステントルム警部補の眉間には深い皴ができていた。

 すでに機動捜査隊と鑑識班が展開している。港の診療所に勤める医師は蒼白な顔をして検視官の隣に立っていた。別の事件(この話とは無関係の轢き逃げ事件である)の検視を終えて帰宅するはずだった検視官は不機嫌そうに、ステントルムをじろりと見る。

 

「酷い状況だよ、見てみな」

 

 死体の顔は識別不能なほどに切り刻まれており、死体の傷跡も、歯も指もレーザーで焼かれている。そこに発酵で強烈な悪臭を放つニシンの臭いが染み付いているている。

 ステントルムの胸は重くなっていった。一目見ただけで、これは冷酷で計画的な殺人であると直感した。

 

「臭いがひどいのはニシンのせいだ、俺たちの発見が遅れたからではないよ」

 検視官は死体を検分しながらうめいた。

「下手人を逮捕したら俺に悪臭を嗅がせた暴行罪でも逮捕できないかね?」

 

「その手がかりはありますかね?」

 

「そうだな、これほど多くの傷を受けながら被害者に抵抗した形跡がほとんど見受けられないのが特徴だろう」

 

 ステントルムは素早く尋ねる。

「打撲痕は?」

 

「ないね。手首や足首に擦過傷もない」

 

「侵入の痕跡がないと言うことですが?」

 

「発見されたのは偶然、塩分の濃度管理センサーが異常を探知したことに気がついた技術者が樽を開けたからだ、それも残業してたからだ。勤務時間中は異常がなかった」

 

「探知した理由は」

 

「おそらくこれだ」

 血みどろのタオルが差し出されるが――

 

「魚の血なのか人間の血なのかわからんな」

 

「人間の血だよ、傷口が焼かれている。止血も兼ねているんが、こうして――」

 検視官はピンセットで傷口をつつき何か摘まみ上げた。

 ステントルムは自分の皮膚がムズムズと不快になり、ぬぐう。子どもの頃から蛆虫が生理的に苦手だった。

 

「繊維が残っている。つまり、レーザーで傷を【刺した】のは意図的な【意図的な死体の損壊】だ。そして殺害してからタオルで念入りに止血を施し、死体を捨てたわけだ」

 

「身元をここまでして隠したい理由は何ぞや、だな。死体を国立ヴェストラ医科大学へ運びましょう。後は解剖を待つ、それで構いませんね?」

 検視官とステントルムは視線をかわし、頷きあった。ここで調べられるのはここまでだ。

「遺体は運び出すぞ。これでは死亡推定時刻も正確には出せない。しかしこれは服を脱がせるのも苦労しそうだな…」

 

 マスクと手袋をつけた3人の鑑識員が、死体を慎重に床からストレッチャーに乗せようとした。しかし、その時、検視官は奇妙なことに気づいた。背広の背中が膨らんだのである。

「降ろせ!!ペンライトを!」

 素早く検視官は死体を僅かに持ち上げ、ライトをあてる。そして検視官は腐臭に負けず息を吸い、短く叫んだ。

「全員外に出ろ!!!!爆発物処理班を呼べ!!」

宇宙歴796年7月3日エル・ファシル標準時間06:15

エル・ファシル共和国ヴェストラ州カテガット宇宙港郊外

州営集合住宅地区、公務員官舎

 

 

 ステントルムはじっとカテガット就航住宅前のバス停に並んでいる。

 集合住宅はなくならない。いや、それこそ地球時代の者とは異なるのだろうが、いずれにせよこの集合住宅地区は宇宙港の供給する雇用の恩恵にあずかる者たちの集合住宅がいくつもあつまっている。

 ステントルムはその中で特に急な呼出に答える必要があるために作られた公務員宿舎を眺めている。

 

「――来たな」

 

 爆発物処理班の仕事は爆弾を解除することである。然るに、遺体の証拠を保全することよりも、爆発物を冷却するために死体の一部と衣服が凍結され、滅茶苦茶にされることをステントルムは悲嘆に暮れながらも受け入れるしかなかった。

 しかし、それが効を奏した。爆破物が発見されたことで事件を共有することになったエル・ファシル警察国家公安部テロ対策班は、死体から取り出した部品を精査することで、死体から取り出した爆弾の複数のパーツが接続する部分から指紋を発見した。

 

「ブレイビク、か」

 犯罪者のデータバンクには該当するものがなかった。より対象範囲を広げて検索をするために課長から早朝に承認をもらいった権限を行使すると、密輸事件の参考資料(捜査関係者の指紋)のデータにエル・ファシル宇宙港税関に勤務するブレイビクという若い男の名前が浮上した。

 ならばすぐに任意同行を求めればよいのかもしれないが、当直の職員に確認を取ったところ、ブレイビクは連休の翌日に有給休暇を取得し、4日間の連休をとっているとのことであった。

 周囲の人間には友人たちとバーラトに旅行に行く、と教えていたそうだ。

 ステントルムは即座に尾行を行うと決定した。この犯罪は組織的な物であるからには現場の調査を別の班に任せ、自分たちは一日、張り付くことに決めたのだ。

 

 ブレイビクはのんびりとした様子でリュックサックを背負い、到着したバスに乗り込んだ。

 バスは省人化のため、自動運転となっている。料金をICで支払うと運よく中ほどの席に座れた。ブレイビクはその前の席に座っているので問題はない。

 一番後ろの席には飲み会帰りなのか並んでうとうととしている会社員らしい集団がいる。

「逃がす前に確保できればいいが――」

 部下たちはバスを覆面警察車両で追跡している。万が一、バスから離脱してタクシーや協力者が用意した車両に飛び乗った場合は、彼らが追跡し、取り押さえる手はずだ。

 だがもうすぐ終点だ、問題ないだろう。終点は宇宙港へ向かうシャトルの洋上プラットフォームだ。そこで任意同行を求めるべきだろう。

 その手前の停留所でバスが止まった。ホテルを中心とした複合観光施設だ。

 後ろからどやどやと客が下りようと動くが、ステントルムは視界からブレイビクを外さないように注意深く視線を動かし、窓の外を見るふりをした。

「おっと失礼」

 バランスを崩した客が影になる。

 一瞬、背中に焼け付くような痛みが走る。

 息苦しく、咳き込もうとした。焦げ臭い臭いが鼻をつく。

 誰かが鞄を拾って胸の上に乗せてくれた‥‥?

 ひどく眠かった。ステントルムは目をつぶり、【何故吐く息が焦げ臭いのだろう】と思いながら、眠りについた。

 

 そして彼が目を覚ますことはなかった。

 

 

宇宙歴796年7月5日エル・ファシル標準時間10:30

エル・ファシル共和国首都エル・ファシル 内務省第1小会議室

 

 パン、とメガネをかけた女性が手を叩くと、ステントルム警部補殺害事件のデータが画面から消える。

「はぁい、これが先日起きた起きた、一連の事件の記録ですぅ。こっから先の捜査は同盟捜査局(ABI)さんの主導となりますのでぇ」

 長く伸びた髪は跳ねており、とても(構成邦とはいえ)中央省庁の官僚には見えない。

「先輩のオリエンテーション、懐かしいですね」

 法秩序委員会・同盟捜査局のベック特別捜査官が唇を歪める。

 

「統計データがないのであれば、純粋に懐かしさを楽しめる」

 相方のラーソン捜査官が腕を組んで皮肉を飛ばす。

 

「今の私はABIではなくエル・ファシル内務長官の治安行政担当秘書官ですよぉ」

 アンナ・アルフベン秘書官はニコリと笑い、甘ったるい声を出した。

 彼女は数学者であり統計と暗号の分析に才能を発揮している。現在はビョークルンド内務長官の警察分野における代理人として活動している。

 

「左様ですか」

 それは秘書官の分掌ではあるまいに、と内心思う。要するに特命的に捜査情報を手に入れるための立ち位置だろう。

 

「下手人はどうなったのですか」

 

「逃走中ですねぇ、あのまま、ショッピングモールの中に紛れて逃走。ブレイビク含めてトイレかどこかで着替えたのでしょうねぇ」

 

「計画的な犯行ですか」

 

「魚と漬けこまれたガイシャの身元は?」

 

「不明ですが、服の製造元からルンビーニ出身か渡航歴があるはずですねぇ」

 

「ルンビーニはフェザーン航路の構成邦だ。アイランズ同盟弁務官の選挙区だな」

 うめき声が上がる。

「あそこは地域ごとにフェザーンとバーラトとガラティエの同盟資本でくっきり分かれている。支持政党がほぼ固定化されて同盟懐疑主義派と同盟派の間で政治暴力も起きているところだな」

 同盟捜査局としてもイゼルローン要塞陥落を受け【より注目して】いる構成邦だ。

 

「面倒だな‥‥」

 

「いずれにせよ、当たる必要があるな」 

 

「交戦星域からバーラト、フェザーン航路まで、か大仕事だな」

 

「おそらく【夜警の帰還】作戦の柱の一つになるかもしれんな」

 

「大変ですねぇ」

 ”先輩”はのんびりと紅茶を舐めている。

 

「なぁに、先輩から引き継ぐ案件な上に大物です、やりがいはあるでしょうよ」

 手帳と拳銃を装備し、宇宙船に乗り込む。あちらこちらで話を聞いて情報を収集し、つなぎ合わせる。銃撃戦やカーチェイスなどはしない。構成邦の警官には頭でっかちの能無しかスーパー・エリートか、ああ素晴らしきかな【Gメン】!

 だがなんにせよ、星から星へ構成邦を渡り、犯罪者共を追う、その実態を知ってもなお能書きに惹かれてしまう、どうしようもない【同盟の夜警】こそが我々だ。

 相方のラーソンは闘争心をむき出しにして殺されたステントルム警部補の写真を見ている。彼とは幾度か仕事をしたことがある、ラーソンはそれを思いだしているのだろう。

 語気が荒く、皮肉屋だがこの気質は絵にかいたような【退役軍人の捜査官】だ。そしてベックに欠けているものだ。

 

 だが一つだけ細やかなごまかしがあった。彼らの身分を示す手帳は犯罪捜査部のものである。だが彼らは出張する直前まで【国家安全保障部】に所属していた。そして彼らを監督する犯罪捜査部の統括捜査官は、同盟保安局へに情報を共有することを承認していた。 

「さあ、同盟の夜警が戻ってきたのだ、夜回りを始めよう」

 

 

 

 




捜査官たちの元ネタがわかった人はわちきと握手
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