同盟上院議事録~あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争~   作:兵部省の小役人

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第6話帝冠の共和国~アルレスハイム王冠共和国にて~(上)

 さて、いわゆる【民主主義の縦深】に参加している同盟弁務官達の故国は大半が『銀河連邦サジタリウス準州』という開拓途上の植民惑星群を発端とするものが多い。つまりは幾らかの問題を抱えていたとしても『バーラト・エリート』よりも強固な帰属意識を国家へ抱く連中が多いのだ。

 だがアルレスハイム帝冠共和国は『異例』ともいえる国家である。同盟構成国の中でも最も新しく国家として承認された国である。

 そもそもはこの国は亡命者の収容施設であった。だがそれは亡命者の増大と『同盟化』した二世、三世の土着により自治区へと発展した。

 

 民主主義という概念を根付かせる為に同盟政府の直轄地として自治区ではあったが同盟政府の統制を受けていた。この構図が変わったのは「コルネリアス一世の大遠征」でアルレスハイムが一大激戦区となった事である。

 指導者も市民も帝国出身者か、さもなくば帝国にルーツを持っていたこともあり、皇帝がいくら恩赦を説こうとそれを信じなかった。

 それはまぁ当然といえば当然である。『真面目』な亡命者は文字通りのテロリストやその支援者であったし、そうでない連中は『宮廷中枢における高度に統治的な問題』や『経済的な国家に対する叛逆』に望むか望まぬかに関わらず携わっていた者を父祖に持つものが大半であったのだから。更に言えば同盟軍情報部に熱心に協力している者も多かった。

 然るべき教育を受けた統治層である彼らにとって帝国政府は『理由』があれば極度に分権化された帝国を名君が統治する為に膨大な費用が必要であることはわかりきっていた。

 故に彼らは惑星地上と小規模艦隊による連絡線破壊により徹底した抗戦を行い、同盟が幸運――あるいは帝国政府の統治体制が齎した必然的な結末――によって辛くも親征軍を退けるまで血みどろになって戦い抜いたのである。

 

 そして――彼らの悲愴な抵抗は政治的意識の急速な発達を齎した。従軍した将兵やその熾烈な総力戦を支えた労働者を中心に労働組合が結成され、傷痍軍人基金や社会保障の近代化、そして参政権を含めた諸権利の拡大を叫ぶようになった。

 彼らはこう吼えたのだ『我々は同盟市民である!』とその動きは疲弊した同盟社会に波及し、労働運動の高まりと労農連帯党が国政を担う大政党として膨れ上がるところまで行きつき、最後にはアルレスハイム制憲議会で『自由の旗』が高らかに唱和されることとなった。

 

「とはいえ、なぁ」

 エドヴァルド・フォン・リッツはその制憲議会が開かれたアルレスハイム国会議事堂がセナト――上院議場に座している。

 この国を代表する同盟弁務官の一人としてそうした感動的な歴史を誇りに思わないわけではない――が政治家としての彼はまた別に冷徹な達観を『玉座』に向けている。

 

 

 そこに座すのは20代後半から30代手前と言った若々しい女性である。渋面という単語を辞書で引けば出てくるであろう顏をした老人に対し、口を開く。

「リッカルド・ハンソン首相、此度の両院合同会議召集の理由を尋ねたい」

 

「うむ‥‥陛下、我らの同胞たる同盟弁務官エドヴァルド・フォン・リッツが帰郷いたしました。

同盟政府の施政情勢の経過と今後の同盟弁務官としての行動方針について両院議員と国民に対し報告したいとのことです」

 

 問答は首相のつけたマイクに拡大され、静まり返った議事堂に響き渡る

 『陛下』は形式に則り承知した、と頷き、立ち上がった。

 

「本日、セイム、セナトの両院合同会議に臨み、全国民を代表する名誉ある議員らと一堂に会することは、私の深く喜びとするところである。

諸賢らが国権の最高機関としてその使命を十分に果たし、国民の選出に基づきアルレスハイム全国民の代弁者として送り出した同盟弁務官の報告に対し、名誉をもって論じ、国民の信託に応えることを切に希望する」

 

 元老院議長であり右派政党『黄金の自由』の長老であるホールが朗々とした声を張り上げる。

「アルレスハイム王冠共和国統領(コンスル)にしてアルレスハイム王冠共和国の象徴たる尊厳者(アウグストゥス)共和国市民の(プリーンケプス)第一人者(キーウィターティス)

神聖不可侵なる銀河帝国の皇帝、天界を統べる秩序と法則の守護者、オリオン腕の全人類国家の主権者、その象徴たるゲルマニア王冠の守護者たるマリアンナ・フォン・ゴールデンバウム陛下万歳」

 そう、彼女の姓はゴールデンバウム――である。彼女の父祖はマンフレートニ世亡命帝にまで遡る。

 彼が暗殺された後、皇太子、マンフレート三世アルブレヒトが「帝国権標」の一つ『ゲルマニア王冠』(と主張する王冠)と側近達を引き連れアルレスハイムに腰を落ち着ける。

 彼を『アルレスハイム王冠共和国統領(コンスル)にしてアルレスハイム王冠共和国の象徴たる尊厳者(アウグストゥス)共和国市民の(プリーンケプス)第一人者(キーウィターティス)。神聖不可侵なる銀河帝国の皇帝、天界を統べる秩序と法則の守護者、オリオン腕の全人類国家の主権者、その象徴たるゲルマニア王冠の守護者』と長々しく権威を持った称号をもって現実政治より切り離した神輿とする改憲が行われ――現体制が確立したのである。

 そしてまた長々しい称号であるが‥‥‥政治的な詐術が含まれている。専制的な称号が王冠にかかるのか、或いは彼らの元首にかかるのか、敢えて濁しているのだ。

 ある意味ではアルレスハイム『王冠共和国』と名乗っている理由も同じである。

 

「 帝冠の守護者たる陛下万歳」

 

「アルレスハイム王冠共和国万歳」

 

「陛下と陛下の君臨する土地に栄えあれ、万歳」

 

「我らの祖の名誉と子孫の未来を守られますよう、万歳」

 

「全ての市民と共に陛下があらせますよう、万歳」

 

 議員達が唱和する【陛下】を称える声が響くにつれリッカルド・ハンソン首相――左派政党、連帯社会運動の最左翼である男の口に追加の苦虫がほうりこまれてゆく。

 両院合同会議の議長を務めるセイム議長のブラッテリは同志ハンソン首相の表情を見て苦笑すると本題に入るべく議事進行に取り掛かる。

「同盟弁務官、エドヴァルド・フォン・リッツ君」

 

 

 

「王冠の守護者陛下、元老院(セナト)議員、セイム議員の皆様、ゲストと、すべての皆様、このたびは上下両院合同会議に同盟弁務官として初めてお話する機会を与えられましたことを、光栄に存じます。両院議員のお招きに、感謝申し上げます。申し上げたいことはたくさんあります。ですが、ハイネセンではともかく、この場で「フィリバスター」をする意図は小職にはございません」

 会場に好意的な笑い声が響く、リッツもまた連帯社会運動出身であるが彼は公衆衛生学、特に労働安全衛生の第一人者として右派左派問わず一定の人気を得ている。

 

「さて、この国の情勢に関心を抱く諸国民の皆様は常にこのように問うておられるでしょう。『我々の友人たる諸国とともに運営される同盟政府は我々に何をしてくれるのか?』『こんなに税金を払っているのに!』」

 再び会場に笑い声がさざめいた。

 

「我々にとって、最も実感できる同盟政府が行うサービスはなんでしょうか?無論、私たちがまず第一に直面する脅威は恐るべき専制国家の侵略に他なりません。そしてそれに勇敢に立ち向かうのは同盟市民から徴募、あるいは志願した将兵であります。

我々は同盟政府の指揮下戦うその全ての将兵に敬意を抱き、戦没者達に心から哀悼せねばなりません。我らが同盟として結束した人民の力は専制国家の侵略とそれが及ぼす災いを乗り越える力を持っています。人民のために戦う人々よりも偉大で勇敢な者はいません」

 

「我々と共に軍服を着て、血を流す英雄たちの姿は示しているのは専制国家の侵略に抗する戦いにおいて、自由惑星同盟は全ての市民に堅固で意味のある関与を求めていることです。私たちがこの自由社会を築き上げているサジタリウス腕の同盟諸国と共有しているのは、最も普遍的で神聖不可侵たる人権を守り、そして参政権により諸国民により運営される民主主義に基づく同盟政府のリーダーシップを承認していることであります。」

 

「私たちは、この長き戦争の悲しみと負担に耐えている同盟市民達の絆を、そして黄金の自由を守り続けてきた自由惑星同盟を強く支持します!」

 議事堂全体から拍手が響き渡った。リッツはにこやかにそれが落ち着くのを待つ。 

 

「自由社会は国民の意志を表現するための最良の手段であり、民主主義国家とはそれを立法、行政、司法により保障するものです。アルレスハイムの国民達はすべての諸国民が自分たちのあるべき姿を描く権利を尊重しております、そして全ての国はまた同様にアルレスハイム国民が自分たちのあるべき姿を描く権利を尊重しなければなりません。だからこそ、私の仕事は同盟政府を代表することではありません。私の仕事はアルレスハイム国民の皆様を代表し、同盟政府の運営に参画することであります」

 再び議事堂全体から拍手が響く。即ち構成国の利益を代表してバーラトがハイネセンへと送り出す、ことこの点については党派を超えて共有されている事だ。

 同盟政府を頼りにしながらも同盟政府への集権化を拒むその在り方はバーラト・エリート達の批判の的である。批判に屈しない為に同盟弁務官が居るのだ。

「私たちは、我々の住まう地域に、そして我々よりも前線に近い地域に降りかかる戦災が少なければ少ないほど、同盟が良くなる事を知っています。私たちは過去に降りかかった悲劇から学ばなければならないのです。

私たちは、多くの隣人が住う土地にて荒廃し、多くの悲しみを産みだす戦争と略奪を見てきました。

これらの非人道的攻撃に対する唯一の長期的な解決策は、避難民が安全に家に帰り、再建のロードマップを描き、それを着実に進めるよう支援する事です」

 議員達の中の半数ほどがぼそぼそと会話を交わしているがリッツはそれを無視し、演説を続ける。

 

「そう、安全に、安全にです!つまり我々が求めているのは安全な生活であります。インフラが確立され、社会保障がいきわたり、全ての国民に平等に生活水準と安全が保障された社会を求めているのです」

 リッツは朗々と声を張り上げ、ハンソン首相はニコリ、と笑った。

「この長い戦いにおいて私たちが暮らす社会が患ってしまった病の治療法は、けして単純な物ではありません。ですが、これを乗り越えれば自由惑星同盟は人類世界に一つの偉大な節目をつくりだすことができるでしょう」

 徐々にざわめきが強くなる。騒いでいるのは右派の議員達であることはリッツにもわかっていた。

 

「皆さんもお分かりでしょう!戦災で親を亡くした子がいます。戦災で子を亡くした老人が額に汗を流し働いています!

戦災で住まう土地を失った者が居ます!広大な土地を開発する計画が滞り、来るべき未来が訪れず、わずかな人々が身を寄せて暮らしている星があります!」

 

「我々はなんのために戦っているのか、少なくとも今現在はこの自由惑星同盟という国家の枠組みの中で、子供たちが愛する家族と共に暮らし、平和に学校に通うために、それこそが自由の旗を掲げる行為であることを私は確信しております。

老いた人が生活の為に働くのではなく、若い人々が働き、新たな技術を学び、使いこなす為に。まばらで孤独を強制される生活ではなく持続可能な互いに助けあう共同体を作り上げる為に。そして全ての子供が健全な環境で自由な将来を選択する為に!

そう、我々は全ての国民に安全で文化的な生活を保障する為に、我々は戦っているのだと!

私、エドヴァルド・フォン・リッツはそう主張します。であるからこそ、我々は同盟市民が繁栄し成長する為に必要な仕事に迷わず取り掛かり、そして同盟政府が迅速にその職責を果たすようにはたらきかけなければなりません!」

 

 

「全国民の安全な生活を保障すること!そして社会の復興!このすべてが達成できれば、すべての構成国にとってより良き時代が訪れましょう。そして全ての国民が生活を改善し、自立した経済を構築する事で我々は専制国家に対する戦いに大いなる優位を勝ち取ることができるのであります。

これが私が皆様と共有するべきビジョンです。これが私が同盟弁務官として達成するべき使命であると確信しております」

 

「しかし、私たちは一緒にしかそこにたどり着くことができません。私たちは一人の人間であり、一人一人が自由意思に基づく決定権を持っています。私たちは皆が同じように血を流し、悲しみ、怒り、そして苦難に耐えています。私たちは皆、同じ普遍的な権利をもっており、それを護る為に戦っています。

そして、だからこそ私たちは皆、同じ偉大な同盟が掲げる自由の旗に敬意を表します」

 

「アルレスハイム国民の皆様に申し上げます。

私たちがこのビジョンを実現する為に、私たちが誰もが輝かしい黄金の自由を勝ち取る為に、私たちは戦わなければなりません。

私たちには連帯が必要です。これらのビジョンを遮る者こそが帝国軍であり、彼らを防ぐために同盟政府との連帯が必要であります。服従ではありません、連帯であります。

改めて私はセイム・元老院(セナト)、両院の議員諸賢とアルレスハイム国民に対し申し上げます。

自分の力を信じ、自分の未来を信じ、自らの意志をもって同盟政府と協力し、専制国家の侵略の手を打ち払いましょう。

大神オーディンは専制国家の貴族と彼らが恐怖により服従させている兵ではなく自由意思に基づく市民達が連帯し、専制に立ち向かう姿を祝福することでしょう」

 議事堂に響き渡る拍手にリッツは深々と頭を下げる。――アルレスハイム同盟弁務官はアスターテ後の国防方針について抜本的な方針の見直しを示した事はハイネセンの要路にも伝わるであろうことを確信しながら。

 演説が終わり、一通りの儀礼を済ませた第一野党『黄金の自由』は控室に集っている。

「‥‥‥リッツめやってくれるものだ」

 守旧派、あるいはマンフレーディスタ(王党派)と呼ばれているフォン・ハイデプラントが怒鳴り散らしている。

「奴は武勇で爵位を得たリッツ=シミグウィ一門の分家の者だろう!それが専守防衛を支持するだと!?」

 幾つもの企業の役員を兼務していた大物である。良くも悪くもアルレスハイム王冠共和国の大物であり『ハイネセンにお出ししてはいけない人』であると自他共に認めている――つまり本人も分かった上でそう振舞っている節がある――人物だ。

 

「緋色のシュラフタが振るう舌鋒は鋭く敵を切りさかん、か」

 セイム院内総務であるフォン・バークは苦笑するだけだ。彼は穏健派でありあまりに揉めている場合に『まぁ彼が居るのなら』と周囲を納得させる地位を確立させてきた調整の達人である。

 

 さて、余談であるがエドヴァルド・フォン・リッツ医師の実家リッツ家は亡命貴族をルーツとするれっきとしたシュラフタ――アルレスハイムにおける亡命爵位貴族・下級貴族と名士・地主・大商人階層が合流した階級というより文化グループとしての『上流階級』の一員である。

 一門の宗家リッツ=シミグウィ伯爵家は帝国軍人貴族の家系でルドルフが大統領であった頃に政治団体と結びついた軍閥に対して快速巡航艦隊を率い、巧みに要塞から部隊を引きはがし包囲殲滅した事で”シミグウィ”の異名を授けられたちょっとした英雄であった。

 亡命後もかつてのアルレスハイム自治区の十二人自治委員会の委員を出した最も由緒ある家系である

――といっても所詮は亡命者の国である、当時も今もアルレスハイム貴族は本家の貴族と比べれば慎ましい存在であるのだが――それでもこの国のアイデンティにおいては奇妙な称号である「緋色のシュラフタ」と呼ばれている。

 ――閑話休題――

 

 

「まぁしかしながらリッツ教授の言う事を鵜呑みにするのは論外だが、こちらとしても全否定するものではないでしょう。彼が予算を引っ張ってくるのであればそれに越したことはない」

 リベラル派のシュトレーゼマンが苦笑する。

 『黄金の自由』は中道右派政党と標榜しているがその実態は今少し複雑である。

亡命者と言ってもその実態は複雑である。例えば古参貴族であっても戦場で身包みはがされるも同然の目に遭い投降した者もいれば、直轄領のインテリゲチアや、貴族資本を切り盛りし行政や貴族自治領において富を独占していた名士・商人と呼ばれる帝国経済を切り盛りする特権階層(例えば家族経営の小商店などは商人とは呼ばれず市民・町人と呼ばれた)が利権抗争に敗れ、フェザーンの同業と結託して膨大な資産をばら撒きながら逃げ延びることもある。

 故にこそ『シュラフタ』という概念はゴールデンバウム朝の厳格な階層社会ともまた異なる、独特の概念として生まれたのである。

 形成するものが多様であれば、『保守主義』も同じように多様な意味を持つのが常であった。

「それこそ、あちらこちら苦しいのは皆さんも同じでは?」

 インテリ層の出身であるシュトレーゼマンがその多様さを見せるべく水面に石を投げた。

 

 議員の大半が頷いてみせる。

 

「そうそう教育援助を増やしてですな、我が国内の大学教育を充実させましょう、バーラトへの流出は問題でしてな」

 

「いやいやここは中小企業の運営を中間組織で統合できるように支援してですな、補助金を出して地域産業を‥‥」

 

「産業もいいが農業の方に補助を出してくれ!ただでさえ人手が不足しているのだ!

省人設備の拡大投資と技術指導員の確保をせんと安全な地域との値段競争においつけんわ!」

 

「待て待て、それもいいが文化財の保護に使うべきだ。同盟政府は我々の父祖が持ちだした由緒ある文化財に保護を出す事を嫌がるでなぁ

じゃが観光資源にもなるし亡命者文化への理解が広まれば――」

 

「何をバカなことを、減税して役人を減らして市場原理に任せるべきだろう。ルドルフもハイネセンも自由な競争という点では共通しているだろうが」

 

「は?なめた口を叩くと分派して『連帯』にうつってやるぞ貴様ァ!」

 

 ガヤガヤと賑やかな交渉が始まる。

 ‥‥‥本当に多様なのだ。

 

「話にならん!!リッツの与太話に貴様らまでのるか!」

 ハイデプラントが一喝し、控室の議員達が静まり返る。

「我々はどこにいる?【交戦地域】であるぞ!あの忌々しいイゼルローン要塞がなくならぬ限り我らはリッツの甘言を夢見ながら同盟政府の無能共に頭を下げてまわらねばならぬのだ!

それでもミュッケンベルガーに追い回されかねんことを忘れるな!

アスターテの醜態でトリューニヒトがとんでもないアホウな上にシトレもロボスも元帥の器でないことがわかったのだ!

『連帯』共の口車に乗る暇があればいざという時の危機管理体制構築の為に予算編成を急ぐことだ!」

 

 あぁ、まぁなどともごもごとする議員達に鼻を鳴らし、やれやれ、と肩をすくめるバークとシュトレーゼマンをジロリ、と睨みつける。

 

「手厳しい事で」

「ですがまぁオーディンの【陛下】の年齢を見ればそのイゼルローン問題解決の機会はそう遠くないかもしれませんよ」

 バークの言葉は間違いではないが帝国軍人上がりのハイデブラントは楽観的な言葉に対し冷ややかな声で答えた。

「どうだかな‥‥‥イゼルローン要塞、イゼルローン要塞。あの拠点がある限りは我々は喉元に刃を突き付けられるも同然よ。オーディンのバカ騒ぎとておおいかくすだろうさ!あの要塞が陥落でもせぬ限りは」

 

 はるか遠く、ハイネセンポリスで一人の若い少将がくしゃみをしたかどうかは定かではない。

 


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