ガタッガタッと電車に揺られながら、席に座ってすっかり暗くなった外を眺める。
九十九里浜を出た時は街頭もなく真っ暗だったが、徐々に住宅街の灯りが増えていき明るくなっていった。
電車には俺と吹雪、あと妖精達のみだ。
さっきまで幻想的な異世界に踏み込んだかのような感覚になり、電車もガラガラで外は真っ暗。
本当に異世界に来てしまったのでは、と思ったが住宅街が見えてくるにあたって安心するかのような、逆に残念に思っているような自分がいる。
深海棲艦を撃沈させた後、吹雪と合流し暫くはお互いに一言も話さずに砂浜に座って日が沈み行く様子を眺めていた。
日が沈みきって暗くなりそろそろ帰ろうかと考えていた頃、大井姉から心配の電話がきて急いで駅まで向かったわけだ。
3人には後で遅くなった理由を説明することにしている。
それはさておき、帰るまでにまずはやらなければならないことがある。
そう、吹雪が話すと言っていたものだ。
幸い、九十九里浜から家までは遠く時間がかかる。
封印されたはずの深海棲艦。
妖精という未知なる存在。
駆逐艦としての吹雪。
司令官という存在。
時間は十分ある。ゆっくり話そう、吹雪の方を見る。
すると吹雪もこちらを観ていたのか、ピタリと目が合う。
「…」
「…」
「…ふふっ」
「?なんだ?」
顔に変なものでもついているか、と顔をペタペタと触ってみるが、特になにもない。
…もしかして、遠回しに目のこと馬鹿にしてるのか?
吹雪はクスッと笑って続ける。
「いえ、考えることは同じですね」
「あぁ、そういう…」
「はい!」
何故か満足げに返事をする吹雪。
まあこいつは毒を一切吐かないからなー。それどころか心の内を暴露して自滅するタイプ。って思い出したら笑えてくる。
「ふっ」
「ふふっ。…それでは話しますね」
「おう」
なんとなく話がすれ違ってた気がするが、それはそれだ。
ここからは真面目な話。吹雪も真剣な顔で話を始める。
「最初に、八幡兄さんは深海棲艦が封印されていることは知っていますね?」
「おう」
「私はその封印の犠牲者です。厳密に言えば自分から申し出たので犠牲ではないんですが…。その人柱になった艦娘が解放されています」
「つまり、封印が解かれているということか…?そうすればさっきの深海棲艦の襲撃とも辻褄が合うな」
はい、と頷いて吹雪は続ける。
「少なくとも私はこうして人柱から解放されているので、封印は弱くなっていると思います。これから少しずつ深海棲艦が復活してくるかもしれません」
「なるほどな。一つ聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「はい、なんでしょう」
「そもそもの話、何故海軍は封印することを選択したんだ?」
封印することで深海棲艦の脅威から逃れることはできるが、それも一時的に過ぎない筈だ。
どの辺りまで有利になって封印を選択したのかはわからないが、封印で抑えられる程の力しか敵が持っていないのだとしたら殲滅した方が良かったのではないのだろうか?
「理由はいくつかありますが、表向きの理由としてはなるべく早く戦争を終わらせたかったからです」
「それは殲滅にはかなりの時間がかかるということか?」
「はい。海での戦いとはいえ、世界の各地にダメージがありました。皆さんの不安もそうですし、早く建て直しを行いたかったのです。戦争を続ければ深海棲艦は絶滅出来たかもしれませんが、経済などへのダメージはより深刻になっていたと思います」
「更に言えば敵の主力は潰しきったので、残っていたのは残存勢力のみです。封印することで弱体化させることもできて、メリットの方が多かったのだと思います」
「そういうことだったのか。確かに戦争が長引がなかったからこそ今ここまで復興しているわけだ」
「先程表向き、と言いましたが、もう一つ大きな理由があるんです」
「とすると裏向き、あまり話されてない内容ってことか」
「はい。八幡兄さんは深海棲艦についてあまり詳しくないと思いますが、彼女らの内強い個体は人間や艦娘と同じような姿になるんです。簡潔にいうと、深海棲艦と艦娘の元は同じということです」
「となると艦娘は自分達と同じ存在とずっと戦っていたのか…」
「はい。実際は髪や目など結構変わるので全てが一緒ではないですよ!とはいえ、深海棲艦を倒した跡から艦娘が生まれたりすることもあるので、これは間違いないです」
「逆に言えば、艦娘が轟沈すると深海棲艦になるということです。多少なら犠牲も妥協して殲滅するべきでしたが、残念なことに当時の海軍も腐っていました。私の鎮守府はそんなことはありませんでしたが、劣悪な環境のブラック鎮守府や未熟な司令官が指揮をして沢山の艦娘が命を落としたりなど倒して倒されての均衡状態が崩れなかった」
「だから封印することで強制的に戦いを終わらせたってことか」
「封印することでこちらも犠牲は抑えることはできますし、封印された彼女達の力も削ることができました。これが封印に至った経緯です」
そう言って吹雪は一息つく。
なるほど、深海棲艦と艦娘が同じというのはビックリだ。
艦娘は深海棲艦との戦いで得られるが逆も然りということか。
少しでも犠牲を少なくする為に自分を使う…。
それこそ『最善』だ。とても共感できる。
「だが、吹雪が解放されたことによって再び復活しているということか」
「はい。ここからが本題なのですが…」
そこで急に吹雪は俺を見ながら俺の手を取る。
え?急にどうしたの?ドキッとしちゃってるんですけど!
俺の手を取る吹雪はめっちゃ真面目な表情してるからツッコミ出来ないし…。
「八幡兄さんには艦娘を率いることのできる司令官の素質があります。私たち艦娘は司令官と共にいることで力を発揮できます」
「私が解放されたことで深海棲艦もこれから少しずつ現れてきます。それこそ戦時中のような戦いにはなりませんが、私だけでは厳しい部分もあります」
「まだ色々な場所に人柱となった艦娘が眠っています。今度こそみんなで確かな平和を掴みたいです」
「八幡兄さん、みんなを守る為に力を貸してください!」
真っ直ぐに俺の目を見つめながら強く話す吹雪をみて、さっきまで少しおちゃらけていた自分が馬鹿らしくなった。俺としては当然OKだ。
「おう、いいぞ」
「あ、あれ?結構アッサリ…?」
「そりゃ、俺は浜辺で吹雪の手を取った時に司令官になったと思っていたからな。そのせいでこの妖精達も見えるのかは知らんが。てっきり吹雪もそうだと思っていたんだが」
「た、たしかに」
うん、やっぱりこの子ちょっと抜けてるね。
憎めないアホさだからタチが悪いけど。
「それに俺らは家族だろ?」
「…はい!」
真面目な顔だったが途端に顔を綻ばせる。
北上姉から駆逐艦は子供っぽいとは聞かされていたが、こういうところなのかもしれないな。
「ところで吹雪」
そう言って吹雪の顔をしっかり見つめる。吹雪は顔を紅く染めて「え?…え?」とか言ってるが気にしない。
未だに吹雪に掴まれている手を目の前に持っていった。
「そろそろ手を離してもいいんじゃないかなーって」
「…」
「…吹雪?」
「あっ///ごめんなさい!!」
すみません!遅くなりましたぁ!!
なかなか納得いくものにできず時間が過ぎて行きました…。
小説って難しいなぁ
小説描き始めてから気づいたことなんですが、ハーメルンって機能が多いですね。
誤字報告って機能素晴らしい。報告してくださった方ありがとうございます。
しっかり読んで頂けているととらえるとモチベ上がりますね!今後も頑張ります!