「うん、一旦休憩にしましょうか」
「でもいい感じだねー。大井っちと一緒に教えてるから、最強だよね!」
「だぁーー、終わったー!」
「八幡兄さんお疲れ様です」
「お兄ちゃん、ここ外だからあんまり目立つことして欲しくないかなーって」
あーマジで疲れた。疲れすぎて夏休み始まるまで寝れる。
期末試験はどうするって?知るかそんなもん。
今日は期末試験一週間前である。
当然一週間前になれば学校から勉強に集中しろとのことで、一般的な部活は部活動休止期間に入る。勿論奉仕部も例外でない。
普段なら家で勉強するが、愛する妹小町が折角だし外で勉強したいと申し出た為、比企谷家5人でサイゼに来ているわけだ。
サイゼ最強。でも混雑時は食事を終えたら次の人に譲ろうね。
小町は小町で中学の試験勉強。
俺と吹雪は姉から数学を教えてもらっている、といっても吹雪は数学の成績もいいので、俺がメインな訳だ。
とはいえ数週間前では一切わからなかった数字や記号、公式がようやく理解、応用までこぎつけたのでかなりの進歩と言えよう。俺すごい。
「じゃあちょっと飲み物淹れてくるねー」
「あっ!北上さん、私もいくわ!」
そう言ってドリンクバーに向かう北上姉とその腕に抱き付く大井姉。って百合百合すんじゃねぇ。
とはいえあの光景は今では見慣れたものだ。流石に外でやるとは思ってなかったけど。
雪ノ下と由比ヶ浜の友情のあるある意味じゃれあいとは異なり、姉たちのものはもっと深いものに感じるから変に口出せないんだよなぁ。
勿論由比ヶ浜と雪ノ下に口が出せる訳じゃないぞ?罵倒が返ってくるってわかってるからな。
罵倒がくるってわかっているのに口出しするほど俺はMじゃない。
…そういえば吹雪は同じ所属だったから何か理由を知ってたりするんじゃないか?
「なあ吹雪」
「?、なんでしょうか、八幡兄さん」
「あの二人って艦娘の時からあんな感じなのか?」
「あーそれ小町も気になります!あんなに堂々とやるものだから言うにも言えなくて」
「あーっとですね…」
「?」
吹雪が口ごもる。何か言いづらいことなのか?
よしっ、と気合いを入れた吹雪。え?何、そこまでしなきゃいけない感じなの??
「実はあの二人、同時に配属された訳ではなく大井先輩が先に、その1年後に北上先輩だったんですよ」
「「あー」」
小町とハモる。いや、だって、ねぇ?
「何かもう続き聞かなくてもわかるわ。どうせ大井姉が寂しさで最初からデレデレしてるから、北上姉も疑問に思わずここまで来ちゃった的な」
「まあ、そんな感じです」
小町と顔を見合わせてため息をつく。やはり兄妹だからかこういうところは息がピッタリだ。これは考えていることも同じだろう。多分。
((大井姉……))
あ、でもと吹雪が話を続ける。
「今の大井先輩は前ほど北上先輩にベッタリではないですよ?」
「え、アレで前よりマシなの?どんだけだったんだよ大井姉…」
「前は身近な人が北上先輩だけだったので。他にも姉妹艦は存在しますが、私たちの鎮守府には配属されなかったので…」
「なるほどなぁ。どうしたものか、毎回毎回ハグやらやられるこっちの身にもなってほしいが、そういう理由があるなら何もいえないしな」
「……多分それだけじゃないと思うんですけど」
「ん?なんか言ったか?」
「いえ、何でもありませんよ」
吹雪がなんか言っていたが聞こえなかったが、小町がにししーって笑ってたから大したことではないんだろう。あ、小町はチョップな。
「あいたっ!」
そんなことをしてるうちに2人が戻ってきた。
相変わらず百合百合な2人を見て安心してしまった俺も俺だが。
北上姉が席に座るなり、あ、そうそう、と俺に話しかける。
「そういえば、2人とも部活入っていたんだよね。最近どう?」
どうやら奉仕部についてのことのようだ。
そういえば部活については入った、と言った程度で詳しく話はしていなかったな。というよりわざわざ話すような出来事もなかったわけだが。
「どう、と言われてもなぁ」
「そう、ですね」
「何何?言いづらい事でもあったの?」
「事と場合によってはその部員の方に痛い目を見て貰う可能性があるわね」
こええよ!なんで何かやらかした前提になっていんだ!
吹雪なんかビクビクしてるぞ!
「いや、本当になにもないんだよ。な、吹雪」
「は、はい!やるとしても紅茶飲んだりお話ししたりとかですかね」
「へー、なんだー」
「興味なくしすぎだろ北上姉」
「あはは…って、八幡兄さんアレ…」
「ん?…げっ」
冷めてしまった北上姉に呆れていたら、吹雪が出入り口の方を指差す。
ってあれ雪ノ下と由比ヶ浜じゃねぇか!
ヤバイ、こんなところ見られたら終わるっ!
小町も吹雪も俺が何に怯えているのか分かってないだろうが、もう俺への罵倒と大井姉が出会うと碌なことにならないんだよ!
「あら?」
「あ、ヒッキーと吹雪ちゃんじゃん」
あちら側からも休憩している俺らのことに気がついたのか、こちらに近づいてくる。
ああ、南無三…。
「あら?こんなところで奇遇ね。比企谷君」
「お、おう。そうだな雪ノ下…」
「それに、吹雪さんと小町さんも一緒にいたのね」
「こんにちは、雪乃さん、結衣さん」
「お二人ともやっはろーです!!」
「やっはろー」
由比ヶ浜と小町の謎の挨拶は置いておき、ここまではまだ問題ない。
これからである。雪ノ下が俺らの向かい側を見る。
「あら、こちらは三年生の北上先輩と大井先輩ですか?」
「おっ、私たちのこと知っているんだー。雪ノ下さん」
「2人とも有名なんですよ!二年生でも人気高いです!」
「あら、そうなのね」
…今のところは至って普通だ。俺の考えすぎか?
というか2人が人気なのはまあ、当然だな。あのルックスと成績の良さがあるから自然と人が集まってもおかしくないレベル。
「それでおふたりはどうしてここに?」
「ん?普通に八幡達と勉強してるんだー」
「ねぇ比企谷くん」
「んだよ」
「いくら先輩達が美人だからって脅してまですることはないと思うのだけれど」
「…」
ほら始まったよ!!頭を抱えたくなるのを抑え、今すぐ帰りたい気持ちをグッと堪える。
…そういえば、小町と吹雪はどうしたのかと横を見る。
吹雪はこの後の流れを察したのか、ダラダラと冷や汗をかいている。
小町はいない。ハッと思いメールを見る。受信一件。差出人は小町。
『ごめーん!小町ちょぉっと用事思い出したので先抜けるねっ!☆』
小町ぃぃぃぃ!!!!!!
もう終わりだぁ…。
「ちょっといいかしら?」
「大井先輩、なんでしょうか」
「脅すって、八幡がそんなことをすると思っているのかしら?」
「そうですね。彼のような犯罪者のような眼をした人と学校でも美人で有名な先輩方がいればそのように思うのは当然だと思いますが」
マズい。遂に恐れていたことが起きてしまった。
それこそ、
『ブラコンVS毒舌(対八幡)』
雪ノ下と出会って数ヶ月経った今ではあの罵倒も少しは慣れてくるものだ。決してMではないが、俺と雪ノ下の関係を感じるには最もなものであり、心地よく感じる時もある。
もう一度言うが決してMではない。
そして雪ノ下は自分を偽らない。だから他の人がいるこの状況でもいつも通り接してきた。仮面を被らないのは彼女の強さでもあり弱さでもあるって今話すことでないな。
兎にも角にも彼女はあくまでいつも通り接してきたわけだ。
それに対する我らが姉、大井姉である。
こちらは説明は不要だ。
ブラコン。これだけでわかる。言葉って素晴らしい。
この2つがぶつかるとどうなるか。
「…それを本人の姉の前で言う意味、分かっているんでしょうね?」
百聞は一見に如かず、とこの場で使うのも楽観的かもしれないけど、概ねそんな感じ。
実際大井姉は言葉からもう戦闘態勢っていうのがわかる。
「姉…?詳しくはわかりませんが、私と比企谷君はいつもこのような感じなので口出ししないで頂きたいのですが」
「…」
「…」
「はいはい、そこまでだよー。大井っちも雪乃っちも」
……危なかったぁ。北上姉いなかったら今頃戦場になっていたぞ。
俺?俺はもちろんビクビクしてたよ。ついでに吹雪もビクビクしてたからお互いに寄り添っていた。というか死を覚悟してたまである。
後に吹雪はこう語ったという。
「深海棲艦との戦い以上に怖い戦いってあったんですね」
☆☆☆☆
「じゃあヒッキーって今5人で暮らしてるんだ!」
「大井先輩と北上先輩が比企谷君のちゃんとした姉だったとは…。流石に失礼だったわ」
「血は繋がってないから、厳密には義姉だけどねー。それでも3年は一緒にいたから、こういうの聞いちゃうと思うところが大井っちにはあったんだろうねー」
「ゆきのん、素直じゃないからすぐ罵倒になっちゃうんです」
「あーわかるよ、その気持ち。大井っちも素直じゃないからさー」
「「ちょっと?!」」
あの後自己紹介を含めた事情説明をしたらしい。
つーか変わり身早いな。さっきまでバチバチの冷戦状態だったじゃないか。
俺と吹雪はのそのそと勉強を再開している。だからあいつらが何話しているかはしっかり聞いてないからわからん。
それにしても吹雪のこと、最初は真面目だし努力家だから物語の主人公かって思っていたが、こういう状況で目立たずに隅で勉強してるあたりなかなかやるじゃねえか。
うん!君ヒッキーの素質あるね!
「でも大井っちは私と八幡には素直なんだよねー」
「えっ、そうなんですか?」
「そうだよ。家だと八幡にベッタリだから。ね、大井っち」
「当たり前じゃない。私と北上さんの八幡なんだから」
「「えっ?!」」
「私たち八幡のこと大好きだからねー。ねー八幡?」
「お?」
なにかしら、今ちょうど難しいところやってるんだから話しかけないでほしいのだけれど(雪ノ下風)
「あーはいはいあいしてるぞ〜」
「「えぇぇっ!!」」
「ほ、ほら私たち相思相愛だからさー。困っちゃうよねー、なんて」
「は、はちまんわたしのことあいしてる…?」
「お、大井っち?!しっかりして!」
「ゆきのん…」
「ええ…。非常にまずいわね…」
「なぁ吹雪、ここってどうやるんだ?」
「ああ、この問題私も苦戦したんですよね。ここはですね………」
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