インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
「千春」
「着いてきていたのはお前だったか……」
振り向くとそこには居ないと思っていた人物が立っていた。
「それで?何か訊きたいことがあるのか?」
「千冬姉の過去をもっと知りたいんだ、他のアルバムも見せて欲しい」
千冬の過去を?もしかしてアルバムとか一切見せてないのか?
確かに俺たちの過去は酷いものもあったがそこまで隠し通していたとは思わなかった、だがな――――
「それはダメだ、俺が見せたことを知ったら俺が怒られるからな?それを知られないようにすれば良いと思っているようなのであれば、それは無理だというのが俺の答えだ」
「どうして?」
「後ろに居るからな」
ガバッ!と後ろを振り向く一夏。当然誰も着いてきていない。
「騙したな!」
「そう簡単に人を信じるな。これから先疑っていくことを知っていけ?」
「そう簡単に騙してくる人居ないだろ?」
「どうだかな?」
少なくとも俺の人生で騙されたことは何回もある。
主にあの二人関連で騙されたことがあったが、結果的に騙していった人物は悲惨な目に遭っていったな……
特に酷かったのは何だっただろうか?ここ最近が忙しすぎて忘れてしまったかな。
「とりあえずお前は戻ってろ、あと少ししたら昼飯食べてIS学園に戻るからな」
「――――わかったよ」
とりあえずアルバム戻しに部屋に入るか、なんかさっきから広間の方が騒がしいけど大丈夫かな?
場所は分かってキッチン。そこでは
「くっ、このじゃがいも切りにくい!」
鈴がざっくりとジャガイモの皮を身ごとそぎ落としていく、食べられるところがどんどん減っていく。
その横では、ハッシュドビーフを作っているかも知れないセシリアが、ケチャップを鍋に流し込んでいた。ちなみにハッシュドビーフにケチャップは使わないはずである。確かそう、きっとそう。
「おかしいですわね、写真と色が違います。もっと赤くしないと」
「おい!そんな大量に!ちょっ火が強すぎる!」
「ご心配なく箒さん。私の料理は最後には挽回できるので」
「料理は格闘や勝負事では無いはずなのだが……」
ため息を漏らす箒はしっかりと和エプロンを着ていて、料理自体もしっかりと作っていた。メニューはカレイの煮付けである。
「シャルロットは何を作っているのだ?焼き鳥か?チキンか?」
「違うよ。これは唐揚げ。少し前に千春さんが好きだって言ってたから作ってみようと思って」
「教官が……そうか」
言いながら、ラウラは大根のかつらむきを見事に行っている。その手つきは慣れたもので、プロも褒めるレベルだろう。使っているのが包丁では無くサバイバルナイフなのを除けば。
「ラウラ、なんか凄いね。そういうの何処で憶えたの?」
「教官がリンゴ剥いてたのを見た。それを見よう見まねで真似してみた」
「真似しただけでそんなに綺麗に出来る物なのかな……」
「ナイフの扱いには慣れてるからな。ジャングルでは木を加工しなければトラップ一つすら作れない」
「そうなんだ。それはともかくラウラはなにを作ってるの?」
「おでんだ」
…………ん?
「おでんだ」
「二回も言わなくて良いからね?おでんって冬の料理じゃなかった?」
「夏には食べてはいけないという決まりはない」
「それはそうだけど……あ、大根余ったら分けてくれるかな?前に千春さんがおろしポン酢で食べるのが好きって言ってたから」
「そうなのか……私の知らない事をさらっと言いやがって」
「ラウラ?」
一瞬口が悪くなた気がしたが気のせいだろう。
「……お前は作らなくて良いのか?」
「織斑先生こそ」
「五人以上は流石に狭くなるだろう?それならば私は大人しく待つだけだ」
「そうですよね」
のんびりと料理風景を見ている二人がだ、とにかく気になってしまう様子で一夏は何度もキッチンの方を振り向いていた。
テレビを見てのんびりしていろと言われたものの、ちゃんとした料理が出てくるのか心配で仕方が無い。
ちんみにこの場合で一番被害を受けるのは一夏の胃袋と何も知らない千春の胃袋である。
(大丈夫だよな?食える物が出てくる……よな?)
一番心配なのは過去の凄惨な実績を持つセシリアだったが、こうしてみるとラウラも警戒ラインに入っているような気がしてならない。
「ん~♪ふふん~♪」
やっとこさ野菜を切り終えた鈴が、楽しげな鼻歌とともにそれらを炒めていく。
しかし皮と一緒に切り落とされた実がもったいない気がしてならない、一夏はそれも気になっていた。
ここで、とある海の向こうの小説家がこんな言葉を残している。
『時間のいいところを教えてあげよう。必ず過ぎていくことだ』
そしてもう一つ
「時間の悪いところを教えてやろう。必ず訪れることだ」
「そうそう――って脳内読むな!?」
「そんなことどうでも良いから、はいこれ胃薬」
「胃薬?なんで?」
「言っただろう?必ず訪れるって」
振り向いてテーブルを見てみると、五人五色の手料理が並んでいた。その中でひときわ異彩を放つのは、やはりと言うべきかどうしてもと言うべきか……セシリアとラウラの料理だった。
「どうですか二人とも。こう言ってはなんですが、自信作でしてよ」
見た目『だけ』は完璧なハッシュドビーフなのだが、さっきから匂いが妙に辛いような気がする。
(タバスコか!?まさか赤い色を足すためだけに、それをやったのかセシリア!?)
(これは……食べれるのか?)
そしてラウラの方はというと――
「おでんと言うのは中々に珍妙だな。バーベキューによく似ている」
大根、卵。ちくわ、こんにゃくを一本の長い串に刺しているだけでも普通では無いのだが?
そして煮込んだはずのそれに何故焼き色がついているのか理解できない、こんがりきつね色……何故だ?
「ラウラ、これは何か見て作ってみようと思ったのか?」
「クラリッサから借りた漫画にあったので」
なるほどね~なるほどね……
どういう風に作ったのかあまり想像したくないな~
隣に置いてある鈴の料理を見る。
「どう、あたしの肉じゃが。最高に美味しそうでしょ?」
本人は自信満々の様子だが、ジャガイモは小さくブロック状になっている。ビーフよりも小さい、これは煮くずれしたわけではない……な。
(い、いや見た目はともかく味は絶対大丈夫だ。鈴の料理は見た目があれなだけだ!)
そう心を奮い立たせ、二人は安心ゾーンの料理へと視線を移す。
そこにはシャルロットの作った唐揚げと、箒の作ったカレイの煮付けが並んでいる。
(そもそもなんで料理作ってるんだ?)
(ガキ共が良いところ見せたかったみたいでな、一人一品ずつ作ってもらった)
(あーそうなのね、家の冷蔵庫見たくないな……)
さらっと脳内で会話しているが普通ではあり得ないことだ。
一夏もこのことを知っていたらしく、凄い後悔しているようだった。
(うむ。二人ともうまそうだ。シャルロットは食べやすいように一口サイズで、俺が好きなおろしポン酢だ。箒に関してはシンプルに料理がうまいな。これだけ食べたい)
とはいえ結果が散々であろうと悲惨であろうと、作ってくれた事には本当に嬉しいしありがたい。
そう思えば、頑張って作ってくれた料理を『まずい』とは言えないのが、一夏の弱点だった。
「とりあえず昼飯にするか」
「千春さん小皿はどこですか?取ってきますよ」
「では私は飲み物を出してきましょう」
「こうやってお互いに作った料理を食べるというのは、何というか不思議な気分だ。――しかし、悪くは無いな」
「そういうときは、楽しいって言うんだぞ。ラウラ」
そう、楽しい。それは皆も同じだった。
二人の為に料理を作っていた時も楽しくはあったが、それとはまた別の楽しさがあった。そしてそれは、喜びや嬉しさといった感情に近い。
「簪、無理しないで良いからな。キツくなったら飲み物渡すから」
「分かりました」
「千春、私の分もくれ」
「分かってるって、じゃあ食べるとするか!」
食事の準備か終わり全員が席に着いたところで、千春はまず先に言った。
「いただきます」
料理の味よりも、こうして全員で食べるということに、暖かな気持ちを抱きながら、昼は過ぎていく。