インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
九月三日。二学期初の実戦訓練は、一組二組合同ではじまった。
「逃がさないわよ一夏!」
「くっ……」
クラス代表者同士ということではじまったバトルは、最初こそ一夏が押していたものの次第に鈴が巻き返し始める。
この原因は勿論経験の差と言うこともあるのだが、セカンドシフトした白式が大きな原因になっている。ただでさえ燃費が悪かったのにもかかわらずそれが改善されること無く悪化している。
「最初にシールドを使いすぎたわね!」
「まだまだぁっ!」
そう言って刀を振るう一夏だが、雪平弐型は既に光を失ってしまっている状態だった。
距離が開けば左腕の多能式武装腕《雪羅》による荷電粒子砲を放てるはずだったが、今ではそれを放つエネルギーすら残っていなかった。
「無駄無駄ァ!この甲龍は燃費と安定性を第一に設計された実戦型モデルなんだから!――衝撃砲!」
連射性が高く目に見えない衝撃砲、それを近距離で受けて距離が開く。
そしてその瞬間を見逃さないよう、鈴は連結状態の《双天牙月》を投擲した。
「ぐあっ!」
重い斬撃を受けきったものの、視界内から鈴を見失ってしまった。
すぐにISハイパーセンサーの位置情報補足がやってくるが、それでは遅すぎた。
「てりゃああっ!」
一夏の真下、足首を掴んだ鈴はそのまま力任せに地面へと一夏を投げ飛ばす。
眩しい陽光に一瞬目を細める一夏。その視界に影が落ちた。
「もらった!」
逆さまの格好のまま、鈴は衝撃砲の連射を浴びせた。
それが十二発ほど直撃したところで、試合終了を告げるアラームが鳴り響いた。
言うまでも無く鈴の勝利、一夏の敗北である。
「……やっぱり燃費か」
白式のスペックを見たときから異常なほど燃費が悪いのは分かっていたが、ここまで悪いとは流石に思わなかった。
一夏の戦い方では十五分ほどしか稼働できないだろう、紅椿の支援を使用して戦闘を行うスタイルを考えられていた見たいがが……一対一では相性が悪すぎる。
「調整できれば良いんだが出来るかどうか、そもそも調整したら今の火力も落ちるだろうし」
前半戦でも後半戦でも一夏の敗北だった実戦訓練。セシリアやシャルロットの戦術やセンスを見れるのはありがたかったが、参加したかったというのが実のところだ。
相変わらず黒式は帰ってこない、だからそれに変わるような機体を作ろうと思った。すぐにバレた。
「なぁ千冬――」
「ダメだ」
俺のことは全部バレてる。だから彼女も俺には絶対に渡さないだろう。
束は束で何か作って送ろうとしているらしいが、正直黒式より使い勝手が良くてもって感じなのだ。
そもそも某光の国では新兵器を開発したら敵とかそう言うポジションに奪われるジンクスが――
「なんの話をしている?」
「いやなんでもない、というかこの場に俺がいる意味あるか?実戦訓練なのに……」
「問題無い、今から戦って貰うからな」
ん?黒式は返さないんじゃなかったのか?それなのに戦うのか?え?もしかして生身で戦えって言ってるのか?
「打刀とリヴァイヴどちらか選べ」
「訓練機で戦えって事か……相手は?」
「セシリア、シャルロット、ラウラだ」
「多くない?そこは山田先生とかじゃないのか?」
「山田君は二組との合同で忙しいんだ、だから無理だ」
いやそうだとしても相手は1人にしてくれよ。なんで三体一!?
「時間は限られてる、さっさと選べ」
あーもうやるしかないパターンね。仕方ないやれるだけやりますか、リヴァイヴならある程度操作慣れしてるから問題無いだろう。後は武装をちょっと変更して――よし。
「準備できたか?」
「まぁそれなりにね。さてと行きますかね!」
上空で待機している三人をこれ以上待たせるわけにはいかないからな、そういえばISの当たり判定ってどこまであったんだっけ?
「お手柔らかに」
「手加減はしないよ!」
「全力で参りますわ!」
「倒す」
一人だけ覇気が違う……
「リヴァイヴにはこんな動きも出来るんだよな!」
(僕より使いこなしてる!?)
(ちょっと手を出でるだけで化ける性能を出せるのは知ってるからな!)
「そこ!」
「ビームの刃相手に実体ナイフは無理だよな……黒式なら――いや言い訳は出来ないな」
(地味に連携がとれている、なにか変わったな?)
「ブルーティアーズ!」
「それはもう見切った!」
「それはどうでしょう?」
(本体が移動しているのにもかかわらず、ビットが少し動き続けてる?)
「成長か……ぐっ!?」
(感心してる場合じゃ無かった)
「ちょっと待て!弾幕が!」
「逃げられると思わないでくださいよ!」
「アンカー射出!」
「ちょ!」
(長所の機動力が!)
「終わりですわ!」
「…………」
結論から言おうと思う。ボコボコにされた。
前半ではセシリアを封じながらラウラ、シャルロットの弾幕を避けていたが。セシリアの精密射撃でライフルを二丁破壊され、ラウラのアンカーで左足を封じられ、シャルロットの弾幕でエネルギーを七割持って行かれた時点で俺は正常な判断が出来ないくらい焦っていた。
そしてブルーティアーズとアンカーで完全に行動不能にさせられた俺は、彼女達による射撃でゲームセットになった。
実戦訓練の片付けを終えて俺たちいつもの面々は学食にやって来ていた。
一夏は鈴の調子に振り回されながらも、負けの悔しさを認めながら昼ご飯を食べる。
ちなみにメニューは鯖の味噌煮定食。白味噌のこざっぱりした味とサバの歯ごたえが抜群に良い。うん。今日もIS学園学食のおばちゃんは良い仕事をしている。
そんな一夏とは裏腹に千春は何か考えるように一人でアリーナに残っていた、千春が負けて悔しいと思うことはあまりないと思うのだが……その表情は何故か不安になった。
「ラウラ、それ美味しい?」
「ああ。本国以外でここまで旨いシュニッツェルが食べられるとは思わなかった」
相変わらずシャルロットと仲良しなラウラは、その皿に盛られたドイツ料理のシュニッツェル(仔牛肉のカツレツで他にもイスラエルなどで食べられている)を一切れ切り分ける。
「食べるか?」
「いいの?」
「うむ」
「じゃあいただきます。食べてみたかったんだ、これ~」
ラウラから分けて貰ったシュニッツェルを頬張って、シャルロットは幸せそうな顔をする。
「おいしいね!これ。ドイツってお肉料理が美味しくていいよね~」
「まあな。ジャガイモ料理もおすすめだぞ」
自国のことを褒められて嬉しいのか、ラウラの頬は少し赤かった。
そんな様子を見ていると他の女子も加わりたくなったらしく、早速料理談義に花が咲いていた。
「ドイツって何気に美味しいお菓子多いわよね~バームクーヘンとか。中国にはあまりああいうの無いから羨ましいって言えば羨ましいかも」
「そうか。では今度部隊の者に言ってフランクフルーラークランツを送って貰うとしよう」
フランクフルーラークランツはドイツのお菓子で王冠の形をしたバターケーキになっている、回りはクルミを混ぜたキャラメルで覆われている為とても甘いものに仕上がっている。
バームクーヘン同様中央に穴が開いているのが特徴だ。
「ドイツのお菓子でしたらわたくしはアレが好きですわね、ベルリーナー・プファンクーヘン」
ベルリーナー・プファンクーヘンは甘いイースト入りのパン生地を油で上げ、中にマーマレードやジャムのフィリングを詰めたパン菓子になっている。
アイシング、粉砂糖がかかっている物の他に、チョコレートやシャンパン、モカ、アドヴォカートなど種類もある。
ちなみにカロリーは結構高い。
「それって結構カロリー凄いと思うけど、セシリアはアレが好きなの?」
「わ、わたくしはちゃんとカロリ-計算をするから大丈夫なのですわ!そう、ベルリーナーを食べるときはその日その他に何も口にしない覚悟で……」
そんなに覚悟が必要なお菓子では無いはずなのだが?
「ジャム入り揚げパンか、確かに旨そうだ」
揚げパンは確かに美味しかった、特に給食で出てきたきな粉揚げパンは別格だった。
「私は日本の菓子が好きだな、あれこそ風流というものだろう?」
ラウラは夏休み中に皆で行った抹茶カフェで食べた水菓子が異様に気に入ったらしく、その後もちょくちょく足を運んでいるらしい。
本国の仲間にそのことを話したら、凄く羨ましがられたと同時に生八つ橋を要求されたとか。なんというかざっくばらんな軍隊だな。
「春は砂糖菓子、夏は水菓子とくれば秋はまんじゅうだな」
「冬は?」
「煎餅だ」
流石箒だ。日本の心を分かっている。
こうして昼食の時間はあっという間に過ぎていった。千春の姿は無かった。