インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
一組二組合同授業が終わり時刻は丁度昼時になっていた。
そんな時間帯だというのに俺はこの場所から動けないで居る。その理由は勿論俺がISを使いこなせていなかったから、三対一で負けたからという理由もある。
あれから時間はまだ少ししか立っていないがそれもいつしか大きなハンデになってしまう。特にこの右目は……な。
「そんなこと言ってられないか」
整備室に移動した俺はポケットから一つのUSBメモリーを取り出し、そのデータを表示させる。
個人で作成したISデータもあるがどれも実用性に乏しく実体化させることが出来ていないのが現状だが、それでもいつかは使えるように調整していくのが前の俺の仕事だった。
まぁそんなことはさて置き、今回使用するデータのファイル名は「Mark2」。試作品と言うこともあり実験段階で使用している物だ。
一つ前のMark1は何処にいった?と思う人がいるだろう、それは今俺の右目に移植されている。
Mark1に搭載された機能は右目を補う為の補助機能だけだ。正直それだけでも事足りているのだが、あくまでこれは試作用であるということを忘れてはいけない。
よし……これよりMark2、情報解析機能、視覚能力向上機能付与の実験を行う。
眼帯を外し右目に接続された義眼を外す。少しベタベタしてしまっているのには慣れないといけないな……
Mark1をベースに内部のデータをMark2に書き換える。簡単にアップデートができる様に設計したのは正解だった、でなければ試作機といって沢山の義眼をつくるハメになっていただろう。
「……ん?こんなデータあったか?」
アップデート内容に問題など無かったはずだが、余計なことまで付け加えてしまったようだ。
それでその余計なことなのだが――
(今日は千春さんに使ってもらえたよ!)
(どうだったの?負けてたみたいだけど)
(データは初期化されちゃったけど、三人じゃなかったら勝ってたと思うよ?)
なんか脳内に直接声が聞こえてくる……整備室には俺しかいないはずなのだが何故だ?
今一度周囲を確認してみる。確かにここにいるのは俺だけだった、あとは訓練機の打刀とリヴァイヴが数機置かれているだけだが……
(いやそんなわけない。そんなシステムを作った記憶はないんだが?)
仮に束がいたずらをしたとしよう、そんなシステムをつくってなんになる?意味など無いだろうに。
(ねぇ千春さんこっち見てない?)
((え?))
(こっち近づいてない?)
「…………」
本当にISの声が聞こえているのか定かでは無い。システムエラーで妄想が具現化しているだけかも知れない。
妄想だったら俺めっちゃ痛い人じゃ無い?それだけは避けたいんだけど……
「まさかそんなことが」
恐る恐る目の前に置かれているリヴァイヴに手を置く、金属のひんやりとした感覚が伝わってくる。
先ほどの声はただの空耳――(急に触ってきたけどどうしたんだろう?)ではなさそうだ。
「バグかぁ、一度データリセットして再アップしないと」
義眼を外して内部データを全て削除する。今までシステムのデータがバグり散らかしてきたときはバックアップから練り直しというのが俺のやり方だった、だが今回の場合はシステムの移行中に起きて閉まったバグであると考えられる。
それならば元からあったシステムには何も問題は無い。やり直せば良いだけだ。
「さて、これでバグは取り除けたか?」
もう一度システムを取り込んだ義眼をはめる。直っていなければもう諦めるしかないが……
(なにしてるんだろう?)
(そもそもなんで義眼をつけてるんだろうね?)
(極秘任務で負傷したって噂で聞いたよ~)
((極秘任務?))
あー完全に残ってるわ。取り除けないバグか。なんてこったい
「……ありがとうな、全力出せなかったけど」
ボロボロになってしまったリヴァイヴの装甲を優しく撫でていく、正直こいつの扱いには自信があった。だが結果はこのザマ。まぁ三対一だったからという言い訳は無しだよな。
俺もまだまだ負けられていられないよな。
(あはは~まぁ相手が第三世代だからね~性能差が出ちゃったね……)
「いやよく頑張ってくれたよ、あれだけ無茶苦茶な動きをよく再現できたよ」
(どういたしまして~)
(……ん?)
「戦闘データは消されちまうけどお前に乗れて良かったと思う。また機会があったらよろしく頼むぞ」
(うん!頑張るね!)
(……なんで会話出来てるの?)
まぁ疑問に思われても仕方がないよね。
「黒式が居ない今俺に出来ることは何もないな」
完全に無力になったな。最悪のID無しでも戦えるようにするか?確か折れた『葵』が何本かあったな――よし創るか。
使えなくなった武装をリサイクルするのは資源的にも良い、新造しなくても良いという一口で二度美味しいというやつだ。
ふと思ったんだがこれってISみたいに待機状態にして所持するのってありなのか?いやバレなければ問題無いか?
一本くらい良いんじゃないか?バレなければ犯罪じゃな――「ダメですよ?」
「や、山田先生」
「一つでも怪しい行動したら織斑先生に報告しますからね?」
「くっ……」
「福音との戦闘で千春さんの事はある程度分かっています。ですがもう少しあの子達を信じてあげてもいいんじゃないですか?今回の実践、本当はやる予定は無かったんですけど……あの子達がどうしてもというので」
俺に連携技術を見せるために?いや自分たちの実力が向上していることを見せたかったのか。
確かに機動力を潰して確実に相手を仕留めるのは良いだろう、セシリアも前回の教訓を活かしているあたり成長が見えた。それはいい。それはな。
「まぁ……そうですね。しばらく俺は失った目とどう共存するかを考えないといけないですし、大人しくしています」
(あれ?さっき義眼造ってなかった?)
(多分話してないんだよ、山ちゃん来る前に眼帯で隠してたから)
(でもなんで隠してるんだろうね?)
((知らない))
もうツッコミする気も無いな。でもこれって意外と使えるかもしれないな、使うときが来るか分からないけど。
「それで千春さんのIDの事なんですけど……分解してデータを得ようとしたところ、こちらのコンタクトを拒否しまして。どうしようもないので千春さんに戻します」
そう言ってすんなりとこちらに端末を渡してくる山田先生、結構重要な物をすんなりとこちらに渡してくる辺り本当にどうしようもなかったのか。
そもそも黒式って俺以外装着できるのかな?試したことないから全く分からないな。
「私としてはあまり千春さんには戦って欲しくないです、黒式の特性を理解してしまったからこそ……」
悲しそうな表情で俯いてしまう山田先生に何も言えなかった。
心配させないように戦うと言葉で言うのには簡単だが、実際にそれを守れるかと問われればそれは難しいだろう。
かの有名な赤い彗星は「当たらなければどうということはない!」と名言を残しているが、それを身につけることが出来るのは一握りの天才だけだ。
そして棒スーパーコーディネーターは機動性に特化した機体に乗っていたが、それを扱えるほどの技量は俺には無いのが現実だ。
凡人には凡人なりに頑張るしかないのだ。
「まぁ……しばらくは戦いませんよ、戦う必要も無いと思いますし。あいつらも俺の姿見て覚悟決めちゃった見たいですし」
俺が少しでも早く黒式の特性を教えた方が良かったのかもしらない、でも誰にも迷惑をかけたくないという思いで今まで隠し通していた。それが裏目に出てしまった結果がこれ。
「仮にですけど黒式に絶対防御を組み込むことが出来れば、全身装甲にすればこんなこともしなくて済むかもしれませんしね」
「まあそれは俺の技量次第なんですけどね」
といっても既にプランはいくつか作成してある、だけどそれを実現できるかと言われれば現状は無理だ。束に協力してもらえればなんとかなるか?って感じだ。
「ところで千春さん、お昼は既に取りましたか?」
「……あっ」
俺の昼飯お預けになっちゃった。