インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
「二人だとしても相変わらず広いな、まぁ元々考えられてないから当たり前か」
男子専用となっているロッカールームは二人で使うには広く、ただただ静かであまり落ち着かない。
俺はISスーツに着替えると、白式のコンソール呼び出して微調整を始めた。
元々白式はデメリットの大きい武装があるのにもかかわらず雪羅という高コスト火力が追加された、これに割いているエネルギーが多すぎるせいでさらに活動時間が短くなってしまった。これを抑えて活動時間を稼ぐ方法を考えないと……
「零落白夜も雪羅も使用しない戦法を考えた方が良いだろうな、まぁ白式にはイコライザー無いんだが」
シャワー室から千春が出てくる、午後の授業で黒式に搭乗していたから返却されたんだろう。相変わらず良い肉体美している。俺も負けてられないな(?)
「それが問題だよなぁ、どうにか出来ないのか?」
「出来るには出来るが……凄く扱いづらくなるぞ?」
「方法があるだけでも良い。で、その方法は?」
「白式の肩部、腕部そして脚部に装甲を増設する。装甲に実弾兵器をジョイントして置けば粒子化しなくて済む、その代わり持って行った弾薬の分しか撃てない。そして運動性が落ちる、これは装甲にスラスター追加すればある程度マシになると思うけどな」
追加装甲……そんな手があったのか!
「まぁ元々は
元々はIS一機当たりの攻撃力を莫大に引き上げる事を目的とし、これまでに開発されたISに合わせて増加ウェポン・システムを制作し、精鋭のみで編成される部隊による運用が予定されていた。プランは主に三種類にしぼられている。しかし結局の所機動性が落ちるので凍結された。
「でも千春の事だからある程度実用性あるんだろ?」
「俺は天才じゃない。FAは本来被弾するダメージを軽減する目的で計画されていた、だがISにはシールドバリアーがある。機体本体にダメージが入るわけではなくそのバリアが削られたら負けなのがISのルールだ、つまりFAはただ機体重くして装備増やしましたーってだけ。それだけしかメリットないから結局凍結された」
「それを発展させた計画とかはないのか?」
「あるにはある、まぁこればかりは実験しないと価値がないけどな。お前の白式を実験機にするわけにはいかないだろ?だから黒式に色々試してる所だ、実用性のありそうな物お前に使えそうな物が出来たら調整して渡すさ」
「期待して待ってる」
そんな事を話し合っていると、突然更衣室の扉が開いた。
「千春さん、生徒会の事でちょっと――っぁ!」
「だ、誰!?」
「――変態生徒会長だ、せめてノックしろ」
生徒会長だったらしい。
「それで?生徒会がなんだって?」
「あ、後にしておきます!」
走って行く音が聞こえたからもう居ないだろうなぁ……
「良いのか千春、その……丸見えだったんだが」
「ん?」
あぁ気がついていなかったんだな。
「ですからっ!実弾装備を送ってください!」
『その要求は受け入れられません。セシリア・オルコット。貴女のブルー・ティアーズはBT兵器の実働データをサンプリングすることが目的です。実弾装備のデータは対象外です』
「わかっています!わかっていますとも!ですが!エネルギー装備のみでは限界があります!」
六限目の実習授業が終わり、二クラス分の女子が詰め込まれたロッカールームは熱気とおしゃべりの声で賑わっていた。
集団から少し離れた一角で、セシリアは携帯端末を片手に本国イギリスのIS整備部門担当者に国際回線でしつこく交渉を続けていた。
「そもそも、どうして急に実弾装備が必要なのですか?BT兵器の二基はミサイルなので必要ないと思いますが?」
「うっ……」
理由は単純明快であった。しかしそれを素直に口にするのははばかられた。
BT兵器、ほぼエネルギー装備しか積んでいないISでは織斑一夏のIS「白式」に勝てないから、である。
(エネルギーを無効化する装備を貫通することができないから、どうあがいても私が負けますわ)
午後の実習で軽く空中制動訓練と言って対戦を行ったが、セシリアだけ一夏に負けてしまっていた。
あのクソ燃費の悪い白式第二形態に負けた後と言うこともあって、セシリアのプライドはかなり悲惨な状態であった。
「一夏の武装はエネルギーを無効化する、ブルーティアーズの天敵とも言えるな。逆に実弾や弾の見えない射撃装備は白式のエネルギーを削るには十分だろう。エネルギー系は火力こそ素晴らしいが、無効化されてしまっては意味が無い。実弾系は威力こそ劣るが連射制などに優れている。実体盾にはエネルギー、ビームには実弾って感じだな。一部にはこの二つの特徴を合わせ持った装備が開発されている、臨機応変に対応できる装備が一番良いのかも知れないな」
最初の模擬戦から分かっていたことだ、白式と自分のでは相性が非常に悪くこちらが劣勢を強いられることも。
(わたくしだけが、わたくしだけがっ!)
苦虫を潰したような表情で押し黙っていると、電話相手の担当官がため息を漏らした。
『セシリア・オルコット良いですか?BT兵器の実践データ収集が貴女の任務です。それに、先々月の新装備大破についてはこちらも非常に困っているのですが?』
「あれは!」
『言い訳は結構です。それでは』
ブツリと切られた電話からは、トーン音がむなしく響く。
「ああもうっ!」
衝動的に端末を投げ捨てそうになって、セシリアは右手を天に振り上げる。
「せ、セシリア?どうしたの?」
「なんでもありませんわ……」
声をかけてきたのはシャルロットだった。既にISスーツから制服へと着替え終えていて、髪の毛の汗を拭いている。
白式が第二形態になって一番影響が無かったのはシャルロットだった、彼女のIS装備のほぼ全てが実弾兵器であるためだったが、それを差し引いてもシャルロットは強い。
現段階の成績では上から順に千春、ラウラ、シャルロット、鈴、箒、一夏とセシリア。
ため息をつきながら呼び出したISデータを見る。『BT兵器稼働率37%』の数字に言いようのない気持ちの暗雲が立ちこめていた。
(最大稼働時はビーム自体も自在に操れるようになるとは聞いていますけど……)
本当なのだろうか?と思わずには居られない。
(過去に一度もその制御に成功していませんし……空論の産物ですわ)
そもそも、BT適正Aという存在が国家代表候補生の中でセシリアしか居ない。
無論、だからこそIS学園入学と専用機持ちという待遇だったが、思うようにデータが取れないのではそれもいつまで続くのかわからない。
千春の開発したBT兵器は自身の意思ではなく半自動的に行動する様に設計されているので、適性はあまり関係ない。つまりあてにならない。
「はぁ……」
「ねぇ、セシリア?この後学食カフェに行こうよ。気持ちが沈んだままだと嫌でしょ?」
「そうですわね……」
それでもまだ元気が戻らないセシリアを心配して、シャルロットは言葉を続ける。
「そうだ。一夏と千春さんも誘って皆で行こうよ。大勢だと楽しいし」
「……まぁ千春さんがいらっしゃるのでしたら。」
プライドの高いセシリアにとって一夏を呼ぶのは悪手だが、千春が緩和剤になることである程度マシになったらしい。
「シャルロットさんのお気遣い、ありがたく頂戴いたしますわ」
気持ちを切り替えて顔を上げると、セシリアは自分のロッカーへと向かう。
その足取りは普段通りに自信満々なものに見える、セシリアにはそれが似合っていた。