インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新凍結) 作:灰崎 快人
遅れてすいませんでした!
千春の右手に展開された黒式のもう一つの近接ブレード「雪片」を見て織斑は驚愕の表情を表した、何故手元にある雪片が相手である俺の手元にあるのか理解できていないようだった。俺の持つ雪片はあいつの手にしている物よりも小型化されている。そのため扱いやすい。
「何でお前が雪片を持っているんだと思ってるんだろ?単純なことだ、お前のIS「白式」と俺の機体「黒式」は兄弟機の可能性があるからだ。どちらも篠ノ之博士の手が入っているからな……あくまで同時期に造られた機体だという可能性だがな」
(まさかここまで絶対防御が大切な機能だとは思わなかったな、いや大切だわマジで!絶対いつか死ぬもんな!これ終わったら束に盾造ってもらって送ってもらおう)
白式と黒式が兄弟機だと織斑に伝えるが彼にはそんな事どうでも良いらしい、問題なのは俺が雪片を手にしているということ。それがどうも気に入らないらしく嫌悪感丸出しである。
「そこまで気に入らないか?」
「あぁ、気に入らねぇな……」
「そうかい、それなら向かってくるがいい。そして奪ってみせればいい……奪えたらの話だがな!」
白と黒が再びぶつかり合う……武器は同じ「雪片」違うのは武器とどの程度扱えるかの技量の差である。二週間身体を鍛え続けた俺と二週間剣道を続けた織斑、一見すると剣道を続けた一夏が上回ると思えるが全体的に戦術を思考し実行できる千春の方が技量は上である。
「どうした?こんなものなのか?」
「まだまだぁ!ここからだ!」
鍔迫り合いから何度も弾いたり弾かれたりを繰り返す。篠ノ之流剣術を使う織斑に対し、俺は篠ノ之流剣術と我流を合わせた剣戟で襲い掛かる。ある程度織斑流を理解している俺に分があるだろう、少しずつではあるものの織斑が苦悶の表情を浮かべ始めていた。
(クソッ!こいつ千冬姉と同じ篠ノ之流を使ってくる!幼馴染ってのは聞いてたけど、まさか流派も知ってるのか!)
(やっぱり千冬と比べてしまうと剣筋が歪んでいるな、それに振り下ろすのも遅い……あいつと比べてはいけないか)
先の戦いで怪我を負っている身体に無理はさせられない、俺はこいつを弾き飛ばして呼吸を整える。雪片を両手でしっかりと持ち『霞』の型を構える。
「悪いが一気にケリをつけさせてもらう。『零落黒月、起動』」
俺の持つ雪片が黒く光りだす、それに対抗するように織斑も自身のISに搭載されている単一仕様能力の出力を上げる。雪片の刀身がより一層白い輝きを放ちはじめる、おそらく出力を最大まで上げたのだろう。白式のSEの消費スピードが異常なほど加速している、この一撃で勝負が決まりそうだな。それならばこちらにも策がある。
「そっちがその気ならこっちだって!」
「織斑先生!あれ大丈夫なんですか!?」
「はっきり言って大丈夫ではない!あんなもの素人が持ってしまってはただの凶器にしかならん!山田先生、今すぐにブザーを―――」
『邪魔するなよ千冬、直ぐに終わらせる』
突然プライベート・チャンネルから通信が入る、彼はこの試合を邪魔するなとだけ伝えてきた。なにが目的なのか私には理解が出来ない。このまま継続しても良いと思うが、あの雪片を見てしまっては止めたくなってしまう。過去に一度私はあの光りを見ている、そして相手を傷つけてしまった過去もある。
「……死ぬなよ?」
千春の意見を尊重した私は、一言だけ彼に忠告した後チャンネルを切断した。私は彼が無事にこの場に戻ってくることだけを願い、スクリーンに表示されている映像を眺めることしか出来なかった。
「篠ノ之流剣術……円月!」
「無月!」
白黒の機体がすれ違う、一振りの剣戟によって衝撃波が生まれる。衝撃波は砂煙を起こしアリーナのシールドを揺るがす程激しい衝撃だった。少しの沈黙があった後、ゆっくりと砂煙が静まっていく……
「勝ったのはどちらでしょう……」
「直ぐにわかるさ」
砂煙が収まるとそこにはズタボロになった黒い機体が一機立っていた。その背後では白式を纏った一夏が地面に倒れていた。
「俺の……勝ちだ」(いやマジで死ぬかと思った、装甲がチョコのように溶けていったからな……)
「白式SE残量0、試合終了。最終試合勝者黒神千春」
生徒からの歓声が聞こえるが、今の俺はそれ所ではないので颯爽とアリーナから退場した。
(しんどい、ここまで疲れるとは思わなかった……たった二試合した程度でここまで持ってかれるとは)
「お疲れのようだな千春、肩を貸そうか?」
顔を上げるとそこには幼馴染の千冬が手を差し伸べていた。
「あぁ、疲れたよ……もう寝たい」
「もう試合は無い部屋に戻ってていいぞ」
「そうするわ~」
ISを待機状態にして寮に戻っていく千春の背中を見ながら一呼吸おく、そして問題児である弟の下へと移動する。
「さてと……織斑、お前は先の試合で何をした?」
一夏が試合に負けたことなどどうでもいいのだが、零落白夜の仕様を理解している千冬だからこそ気が付いた点がある。
「何って……ただ雪片の出力を上げただけ―――」
「ほう?直接相手にダメージを与える攻撃力を持つ雪片の出力を「ただ上げただけ」とはな……」
「何がいけないんだよ?」
「―――もういい、とりあえずお前はISを解除してこちらに渡せ。多少の調節を私がしてやる」
「千冬姉が?……わかった、それなら渡しておく」
納得していないような雰囲気を出しながらも素直にISを渡す、姉弟だからある程度の信用を得ているのだろう。
「確かに受け取った、お前はさっさと寮に戻れ」
これにてクラス代表決定戦はセシリアと千春の一勝一分、一夏の二敗となった。翌日の模擬戦で勝利した者が代表者となると、山田先生との話し合いで決定した。千冬は溜息をつきながら重い足取りで自室へと戻った。
「おかえり……なんか嫌な顔しているな?」
自室に戻ると半裸になっている千春が居た、身体を良く見てみると脇腹から血が滲んでいる。手にはフィブラストスプレーが握られており、机の上にはガーゼと包帯が置いてある。
「怪我は大丈夫か?それで治るのか?」
「知らん……ビームが脇腹を掠めていく事なんて経験した事無いからな」
「まぁそうだろうな、弾丸が掠めていくことはあったんじゃないか?」
千春は過去に一度ドイツで銃撃戦を経験してしまっており、尚且つ被弾した経験がある。ちなみにその場面には千冬も同行していた。
「遭ったけど!それとはレベルが違う……」
軽い被弾だった為大事には至らなかったものの、後日談曰く痛くて死ぬかと思ったとの事だった。
「それで?その白式はどうするんだ?調整するのか?それともロックをかけて制限をするのか?
「あぁ、私と同じ零落白夜なのはわかっていたが……まさかここまで攻撃特化になっているとは。これは下方調整しておかなければ、いずれ誰か死ぬ羽目になる……」
「俺のやつは大丈夫なのか?」
黒式も同じように雪片が搭載されている。単一仕様能力名は零落黒月という名であるが、簡単に言ってしまえば千冬が使用していた零落白夜を低性能にしたものになる。
「お前の零落黒月は私と同じ能力だ、多少の調整はされているみたいだからな」
「確かにデータを見ればかなり抑制させているな、知らないロックが掛かってる。パスワードも三百桁ある……簡単には解除できないだろうな。」
実験段階だったのかかなりのロックが掛かっている、レベルが5まであるとしたらおそらく現在の雪片のレベルは1にも満たないだろう。良くこれで戦えたな……機体は一次移行しているが肝心の雪片は初期状態、どうすれば上限が開放されるのか束に聞いてみるとするか。
「白式もそうして欲しかったがな……全く束のやつ、どういうつもりなんだか」
「今は良いや……とりあえず怪我の処置だけしておくがな」
「貸せ私が処置してやる」
「えっ……」
「何だその顔は、大丈夫だ今度は失敗しない!」
「それが怖いんだよ!ちょ……おい馬鹿やめろ!」
わき腹など血が滲んでいる場所など、様々なところを治療されていく。もちろんというか千冬の治療は下手くそであったため、各部に激痛が走る。あの時と同様に死ぬほど痛い気分を味わうことになるとは思わなかった……
次回は何時になるかわかりません。