インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
いやセーフではないですね
基本的なISの実践
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、黒神は前に出て来い。ISを展開して試しに飛んで見せろ」
四月も下旬となり遅咲きの桜の花びらがなくなった頃。一年一組は今日もこうして千冬の授業を真面目に受けていた。
「早くしろ、熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」
ISは一度フィッティングしたら、操縦者の身体にアクセサリーの形状に変化し待機状態となる。セシリアはピアスのようなもの、本人に聞いたところイヤーカフスと言うらしい。織斑一夏はガントレットと呼ばれるものだ、ガントレットはアクセサリーではなく防具である。ちなみに俺のIDは携帯端末である、完全にアクセサリーではない。だが実用性のある分優位性はあるかも知れない。
「集中しろ」
織斑は急かされているな、セシリアは既にISを展開し装備して浮かんでいる。ISを展開するときに1番簡単なのは意識を集中させISの展開をイメージすることである、しかし俺のIDはそんな事関係ないのでさっさと展開してしまおう。IDの展開は比較的簡単である、端末の中心部に設置されているボタンを押せば展開が完了する。ただし展開に二秒ほど掛かってしまう。
展開が終わりセシリアのブルー・ティアーズと横並びになってみると、圧倒的なサイズ差があるな……セシリアが浮かんでいるのに対して俺は地面に着地している状態だ、万が一バランスを崩して倒れこまないようにする為だ。
「よし飛べ」
俺とセシリアは勢いよく上空へ飛び立っていく、一夏は二人よりも少し遅れて飛び立ち急上昇していく。ISに乗りなれているセシリアには追いつけないが俺のはるか後ろにはバランスを崩しながらも追いつこうとしている織斑の姿が見えた。
「何をやっている、スペック上の出力では白式のほうが上だぞ」
通信回路からお叱りの声が聞こえてくる、何で全員に聞こえるようにした?まぁいいや。束が造った『白式』だ、スペックはそこら辺の量産機を越えている。代表生の機体を越えているのかは分からないが……スペック上ではセシリアのを越えているみたいだな。黒式?比べた事無いからわからん、後で調べておく。スペックでは上ということはそれを織斑は扱いきれていないということか、だが何時の日か扱えるようになるから大丈夫だろう。
「織斑、イメージは所詮イメージだ。自分がやりやすいように工夫し模索する事が大切だ」
イメージはかなり大切な部類になる、武装を展開するのにもイメージが必要になる。剣や刀、槍などの近接武装を展開するのにも武装をしっかりとイメージする必要がある。銃などの中遠距離武装もイメージが大切である。黒式に搭載されている武装については、俺も過去に触れたことのある類のものなので展開は容易に出来る。
「そう言われても……『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』ってよく分からないし……」
白式、黒式には翼状の突起が背中に二対あるが、飛行機と同じ理屈では飛んでいないだろう。翼の向き関係なく飛べているからな……まぁそれを説明すると色々あるわけだが、確かにこの説明は全く分からない。実際俺もわけが分からなかったので、鷹が飛んでいるのをイメージしている。え?それでも分からない?細けぇことは良いんだよ。
「そうか……ロボット系のアニメとか見たことあるか?」
「えっと、アイ○ンマンとかなら見たことはあるけど」
アイア○マンはロボットに入るのだろうか?まぁいい
「それが飛んでいる描写をイメージしろ、それがやりやすくなければ模索していくしかないな」
「説明しても構いませんが、話すと長いですわよ?反重力力翼と流動波干渉のはなしにもなりますから」
そんな事したら織斑の頭がパンクするので説明はしなくていいとセシリアに伝える。セシリアは楽しそうに「残念ですわ」と言いながら微笑んでいた。あの試合以降セシリアは織斑のコーチを買って出ている、その為ある程度の信頼関係は築くことが出来ているみたいだ。
「織斑さん、よろしければまた放課後に指導してあげましょうか?その時は黒神さんも一緒に―――」
「一夏っ!いつまでそんなところにいる!早く降りて来い!」
いきなり通信回線から怒鳴り声が響く。何事かと見てみると、地上では山田先生が手にしていたインカムを篠ノ之箒に奪われていた。山田先生がおたおたしているのが見えてくる。これもISに搭載されているハイパーセンサーによる補正である、地上二百メートルから千冬の表情がはっきりと見える。相変わらずキリッとしたつり目だな、睨まれたので笑顔で返しておく。
「ちなみにこれでも機能制限が掛かっているんでしてよ?元々ISは宇宙空間での稼動を想定してたもの。何万キロと離れた星の光で自分の位置を把握する為ですから、この程度の距離は見えて当たり前ですわ」
ちなみにIDはある程度の機能制限は解除してある、というか解除しなければISよりも視野範囲などがISの三割程度しかなかったからな。これも全部初期設定だったのが悪い。
「さすがは優等生だな、知識面も豊富だ。この調子なら代表にもなれるな」
「ありがとうございます黒神さん」
そんな会話をしていると通信回線から千冬の声が聞こえてくる。
「織斑、オルコット、急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ。千春はその場で待機していろ」
「えっ……」
織斑とセシリアは実践を、俺は何故か残された。何故!?笑顔で返したのが悪かったのか?そう思いながらも二人の後姿を眺めていた。
「了解です、では織斑さんお先に」
そう言って、すぐさまセシリアは地上に下降していく。少しずつ小さくなっていくセシリアの姿を眺めるしかなかった。
「うまいもんだな。織斑、地上に激突するなよ?グラウンドに穴が開くからな」
ただでさえ急下降は難しいのに、専用機を持っているからというだけで実践しろと言われたらたまったものではない。セシリアは完全停止も難なくクリア出来たらしい、流石候補生だな。
「よし……いくぞ!」
意識を集中させて急下降していく……早いな、いや早過ぎないか?それになんか焦っているような―――
ズドォォォォン!!!
地上には着いたみたいだな、停止できずに墜落したが……クラスメイトにはくすくす笑われていたり、ため息をつかれたりしている……身体はGや衝撃から守られているな。
「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った、グラウンドに穴を開けてどうする」
見事なクレーターがグラウンドに完成している。あれは後で埋めておかないと次のクラスが使えないな……
「本当に激突するとは思わなかった……あれは急下降じゃなくて墜落だよな」
「まぁいい、千春聞こえるか?」
一通り説教が終わった後、千冬から通信が入る。通信はクリーンであり、千冬の息遣いがしっかりと聞こえる。
「千春には二センチで止まってもらおうと思ってな」
おー……マジで言っているのか?俺も織斑とそこまで操縦技術は変わらないぞ?それでもやれと言うのかこの鬼教官は……
「期待しているぞ!」
俺の心の声がハッキリ聞こえているのか、こちらを満面の笑みで見てくる。初心者にそこまでやらせるのか?それとも嫌がらせか?後者だったらお酒の制限してやる。
「しょうがねぇ、やるか!」
意識を集中し、地上に墜ちていく。目標は地上から二センチでの停止である、はっきり言って初心者には無理難題過ぎる。地上から二百メートル、身を翻し着地の準備を行う。ここで速度を落とせなければ織斑のように墜落し激突、グラウンドにもう一つ穴を空ける事になる。それだけはなんとしても避けたい。バーニアスラスタの出力を最大にし姿勢の安定化、着陸態勢に入る……そして。
「砂煙を巻き起こしたな……」
「それくらい許せ、それに穴は開けてないからな。すこし凹んだ位だが」
無事着陸を成功させたものの、周囲に砂煙を巻き起こしてしまった。クラスメイトが咳き込んでいるのを見ると少し申し訳ないと感じる。織斑の方を見てみると、篠ノ之箒に介護されていた。一応大丈夫そうだな。
「織斑、武装を展開しろ。それくらいは自在に出来るようになっただろう」
「は、はぁ」
「返事は『はい』だ」
「はいっ!」
「よし、でははじめろ」
白式唯一の武装である雪片を展開する、刀などの鋭いもののイメージは人それぞれである。強く右腕を握り締めていると、手から光が放出される。この光が像を結び形として成立する、この光が収まる頃には武器が握られている。
「遅い、0.5秒で出せるようになれ」
相変わらず厳しい鬼教官だ、あれから一週間しか経っていないというのに……だが厳しいだけあって上級生の教え子はかなりレベルが高かった。二年の生徒が訓練していたのを眺めていた、一年の成長であれだけの実力を有しているとは思わなかった。そのことを千冬に話すと「それでも私からしてみれば中の下だ」との事だ。
「セシリア、武装を展開しろ」
「はい」
あいつとは違い、一瞬で展開を終わらせる。銃器には既にマガジンが接続されており、視線を送るだけでセーフティーが外れる。一秒と経たず展開から射撃可能までのプロセスを終わらせている、流石候補生だ。
「危ないな……」
ただし、銃口がこちらを向いていることを除いて……
「流石だな、代表候補生。―――だがそのポーズはやめろ。横に向かって銃身を展開させて、千春を撃つ気か?正面に展開出来るようにしろ」
おうサラッと「千春」呼びしたな、生徒の目の前では「黒神」と上の名で呼んでいたのに。それを忘れるほどのことか?
「で、ですがこれは私のイメージをまとめる為に必要な―――」
「そのイメージに縛られていると、後々大変だぞ?とっさに射撃も出来ないからな」
その状態での誤射が1番恐ろしい、それに取り回しが悪いライフルを片手持ちで展開するのも効率が悪い。
「わかりました」
「セシリア、近接用の武装を展開しろ」
「えっ……あ、はっはい」
ライフルを粒子に変換し
「どうしたセシリア、調子が悪いのか?」
「もう少しで……くっ、『インターセプター』!」
武器の名前をヤケクソ気味に叫ぶ。それによって粒子は一つにまとまり武器として構成される、しかしこの方法は初心者向きの手段である。それをしたと言うことはセシリアは近接武装の展開が苦手らしい。あのときの試合でも確か名前を叫んでたな。
「何秒掛かっている、お前は実戦でも相手に待ってもらうのか?」
近接戦闘での展開が遅かったのは、セシリアが近接武装の展開に慣れていなかったからなのか。
「前回の試合で千春に間合いに入られていたように見えたが?」
「あれは……その……」
「実践あるのみだ、何時かは言わなくても展開出来るようにしておく必要があるな」
「善処します」
その意気だ、国家代表になるには何事も完璧にこなしていかなければならないらしいからな。過去に代表操縦者の動きを見たことがあるのだが、人間が動かしているとは思えない動きを繰り返していた。そんなことを考えていると……
「千春、お前は全ての武装を二秒内に出し切れ」
鬼からとんでもないことを言われた。
「全てを!?」
「全てだ」
いや全てって!つい昨日武装を追加したばかりで展開のコツも掴めていないって言うのに……いや昨日隣で見てたな!見てたからこそ全部出せってことか……
「勘弁してくれよ千冬……」
「織斑先生だ」
畜生……しょうがねえな、コイツに逆らうことはあんまり出来ないからなしょうがない。
「―――これで全部だ」
「一秒の遅れだな、まぁいい」
黒式に搭載されていた武装、新たに追加した対ビーム用シールド『ヴォイド』、一応追加した『試作型バスターライフル』、カノンが弾切れした際に使う緊急用拳銃『コマンドー』計七つの装備を展開したんだ。少しは褒めてくれよ!褒めないからドイツの連中から鬼教官とか陰口叩かれたりしてるんだぞ……バカ!
「時間だな、今日の授業はここまでだ。織斑はグラウンドを片付けておけよ」
「黒神さん!手伝ってください!」
「いや穴を開けたのはお前の自業自得だから……頑張れ」
「はい……」
しょんぼりとしながらグラウンド整備をしていく、頑張れ織斑。
またIS学園で問題が起きる