インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
非常に短い内容なのが申し訳ないです。
「ここがIS学園ね」
夜の8時。IS学園の正面ゲート前に、小柄でまな板な身体に不釣合いなボストンバックを持った少女が立っていた。金色の留め金がよく似合う艶やかな黒髪は、春の夜風になびいていた。
「えっと、受付が……本校舎一階総合事務受付ってどこにあるのよ!」
上着のポケットからくしゃくしゃになった紙切れを取り出すものの、そこには『本校舎一階総合事務受付』としか書かれておらず、地図などは一切描かれていない。そのことを確認した後、再び紙切れをポケットにねじ込まれ、少女の大雑把な性格と適当な案内によってくしゃくしゃにされた。
「周りに誰も居ないし……自分で探せばいいんでしょ!探せば!」
ぶつくさ言いながらも、しっかりと行動している。思考よりも行動という、彼女の性格を現していた。良く言えば『実践主義』悪く言えば何も考えていない脳筋である。少女は日本人に似ているが良く観察してみると違う。鋭角的であり艶やかさを何処か感じさせるその瞳は、中国人のそれであった。
少女にとって日本は第二の故郷であり、思い出の地でもあり、因縁の場所でもある。誰か居ないかと人影を探すものの、そう簡単には見つからない。既にどの校舎も灯りは落ちており、生徒は全員寮にいる時間帯であった。
最悪ISを展開し空から探そうと考えるものの、ここに来るまでにあったことを思い出していた。
「なんで私がIS学園に入れないのよ!!」
「君が受験しなかったからでしょ、凰君」
目の前で喚き散らす少女を前に、小太りの男性が脂汗を出しながらも答える。男性も少女も軍服を身に着けている、少女の腕には星が縫われた腕章を身に着けている。男性の方は胸に胸章が付いている、章を見るに男性は三級士官のようである。
「受けるように言ったのに、無視したのは君だよ?」
「そのようで」
男性は過去に一度、少女に対してIS学園の受験を勧めたようだ。しかし彼女は全く興味を示さず受験を蹴り飛ばしたらしい。一度蹴り飛ばしてしまっているのであれば興味がないと思われても仕方がないだろう、そこにいきなり許可も無く編入させろなどわがままが過ぎるというものだ。
「そんな昔のことはどうでもいいの!なんとか私が入れるようにしなさいよ!」
何故か一度蹴り飛ばしたIS学園に入りたいと地団駄を踏んでいる。理由は何か知らないが彼女が、ここまで駄々をこねるのは初めてのことであり、そんな少女を見ている二人の男性はため息をついていた。
「軍にも予定があるしね……」
呆れた様子で首を振る男性、個人のわがままで編入できるほど社会は甘くない……ただしそれは既に過去のこと。
「お願いします、おじさま♡」
今は女尊男卑が当たり前、女性が全て優先されるというとんでもない時代である。
目の前には右腕にISを装着していた少女が、にこやかな笑顔で男性を見ていた。音がした方を向いてみると、そこには打撃痕が残っていた。にこやかにしているがその顔の裏には「次は無いよ」という意思が感じられる。
「わっ……わかった、できるだけ早い時期に転入手続きをしておこう」
そんな意思を感じ取れたのであろう男性は、冷や汗をかきながらも少女の要望を了承した。こうでもしなければ今度はあの衝撃をわが身に受けることになる、それだけは避けたかったのだろう。
「いつもありがと、話がわかるわね」
少女はISを解除して、にこやかな笑みを浮かべて去っていった。
そんな事を思い出しつつも、目的地を探しながら人影を探していく。しかしこんな時間帯に外を歩いている人物などめったに居ないだろう。
「うん?誰か居る?」
アリーナ付近に彷徨ったとき、物陰から誰かの声が聞こえてくる。少女は声のする方へと歩んで行った。
「111……112……」
そこには片手腕立て伏せをしている男性の姿があった。IS学園には男性が二名居るとは聞いていたが、彼は彼女が探していた織斑一夏では無さそうであった。
「ちょっといい?」
彼に近づき声をかける少女、その声に気がつき振り返る。彼女を見た男性は何処かの迷子が学園内に迷い込んだのかと、ゲートまで案内しようかと声をかけるが―――
「迷子じゃない!転校生よ!」
迷子と間違われたことにご立腹な凰は、彼に対して殴り掛かる。この少女も女尊男卑が当たり前だと思っているのだと考え、呆れた様子で少女の拳を受け止める。軽々と受け止められた自身の拳に戸惑いを隠せていない様子であった。
「あぁ転校生なのか、それは悪かったな。それで俺に何か用があるのか?」
「この紙に書かれてる場所に行きたいんだけど」
ポケットに無理やり詰め込んだ紙を見せる。クシャクシャじゃないかと男性が呟くが、彼女が睨みを効かせると押し黙る。
(こいつも黙り込むのね)
そんなことを思っていると、彼の口から言葉が漏れた。
「この時期に転校生なんて聞いたことは無いが……特例なのか?」
「まぁね~私中国の代表候補生だからね」
中国の代表候補生がこんなに小さく荒い性格をしていると思うと……代表操縦者の人は苦労しているのだろうかと思ってしまう。男性はため息をつき、何処か彼女を哀れに見るような表情を浮かべていた。
「ねぇ。織斑一夏って知ってる?」
「知ってるぞ、織斑千冬の弟だろ?」
「そうよ、どんな生活を送っているのか知ってる?」
「まぁ初めての男子生徒だしちやほやされてるんじゃないか?」
「……そう」
そんな事を話していると、目の前に事務受付と刻まれたプレートが見えてきた。
「ここが事務受付だ。それじゃあ俺はこの辺で……」
「ありがとうね、おっさん」
おっさん……その言葉が彼を傷つけたことを彼女は知らないまま、事務受付に入っていく。
「―――これで手続きは終わりです。IS学園にようこそ、
愛想のいい事務員の言葉を聞いてはいるものの、あまり頭には入っていない。鈴音はずっと頭の中でとある男の顔が思い浮かんでいた。
「織斑一夏って何組ですか?」
「噂の子?一組ですよ、凰さんは二組なので隣のクラスですね。あの子一組のクラス代表になったらしいよ、やっぱり織斑先生の弟さんなだけあるわね~」
噂好きは女性の性という言葉を体現したかのような事務員の姿を、冷ややかな目で見ながら鈴音は質問を続けようとしたがその言葉は事務員の言葉によって遮られた。
「一組といえば織斑先生の幼馴染の黒神さんもだったかな~あの人IS使ったこと無いのに候補生と相打ちまで持ち込んだみたいだし、噂では織斑一夏君も倒したらしいわよ」
一夏が黒神という人に負けた。そんな事があるのかと鈴音は驚くが、彼女がここに来た目的は強い人物と戦うためではない。
「二組のクラス代表って、もう決まってますか?」
「決まってるわよ」
「名前は?」
「えっと……聞いてどうするの?」
鈴音の態度に疑問を感じたのか、事務員は少し戸惑ったように聞き返した。
「お願いしようかと思って。代表を私に譲ってって」
にっこりとした笑顔には、一夏と会えるという喜びと、同じクラスではないという残念な気持ちと……
ちやほやされていると言うことにイラついているのか、血管を浮かび上がらせていた。
転校生と分かれた後、寮へと戻った千春。トレーニング後でぐったりしているが、追い討ちをかけたのは彼女が放った「おっさん」と言う言葉である。
「……戻ったぞ」
「あぁ、トレーニングは終わったか?」
相変わらず下着姿のまま缶ビールを飲んでいる千冬、彼女に羞恥心はないのだろうか?無かったわ。
「……終わったぞ」
「どうした?気分が沈んでいるように見えるが」
気分が沈んでいる彼の姿に少し驚きつつもビールを飲み、勧める。
「なぁ千冬、聞いても良いかな」
「なんだ?」
「俺っておっさんに見えるのかな……」
そんなくだらないことで落ち込んでいるのかと、呆れた口調で千冬は言っているが、俺にとってはかなり辛い言葉であったのには違いなかった。
「そんなことで落ち込むな。ほらこれ飲んでさっさと忘れろ」
そう言って冷蔵庫からキンキンに冷えたビールを取り出して千春に渡す。
「いや俺酒飲めない―――」
「いいから飲め!」
「モガッッ!」
翌日の朝。俺は千冬と仲良く裸で寝ていたこと、夜何をしたのか全く覚えていないことに恐怖を覚えながら、彼女の目覚めを待つことしか出来なかった。
「俺は一体何をしてしまったんだ…………?」
次回は千春は出てこないです。一年一組の代表決定パーティです。
千春は千冬にお酒を飲まされているので出て来ません、千春たちがしていたことは番外編の方に投稿していきます。
(大事なことなので二度言いました。)