インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
休憩スペースに移動した俺たちは、丁度二人で座れそうな長椅子に腰を下ろした。その隣には自動販売機が並んでいる、軽く休む為のスペースだと言えるだろう。こんな時間にこんな場所に居るのは俺たち二人だけだがな……
「それで、あの場で何があった?」
涙目で俯いている問題児に問いかける、あの場で何が起きたのか俺は知らないからな。
「実は……」
暗い表情の少女は少しずつ重い口を開いていく。幼い小学生の頃に告白をしたこと、それを問いただしたところ全く違う約束として覚えられていたこと、織斑をぶん殴ってその場を後にしたことなど……なるほどな、まぁ変に覚えられているだけマシなんじゃないか?俺なんて最初は忘れられていたからな、千冬からの話でやっと思い出したくらい薄い存在だったらしいからな。俺一応織斑家に何度も入ってるからな?千冬が料理教えってほしいって言われたときとか、夏休みの課題勉強とか……いや~懐かしい思い出だな。
「微かに記憶していることが変に歪んだのか、まだマシだとは思うが告白を別の意味で覚えられているというのは悲しいものだな」
「えぇ……これじゃあ期待していたアタシが馬鹿みたいじゃない、一夏ならきっと覚えてくれると思っていたのに」
「約束した側にとっては辛いだろうが、織斑の性格は幼い頃からあの感じだ。変に捻った告白をしたお前にも非はあるが……まぁいい」
「毎日お味噌汁を作ってくれ」を「毎日酢豚を作ってあげる」に変えたのは確かに伝わりづらい、そもそも織斑はこの言葉を知っているのかすら怪しい。あいつは一般教養があまり得意ではないし、ニュースなどにも特に関心はしていない様子だった。だから今の世間がどうなっているかも最初はわからなかった。だが篠ノ之が剣道で優勝していたことは知っている辺り、新聞などは読んでいる可能性がある……それでも世間一般的には欠けている部分が多いか。
「それで?お前はこれからどうしたいんだ?そのまま引きずっておくのも嫌だろ?それだったらしっかりと気持ちを伝えた方がいい。そうだろ?後腐れなく終わったほうが気持ち的にも楽だからな」
「そうだけど……」
なんか複雑そうな表情だな、こいつは解決策がほしいってことか?恋をそこまで経験したことの無い俺には難しいぞ?それでも何とか解決策を模索してみるとしよう。こいつと織斑だけになれる場所やイベント、いやイベントでなくてもいいタイミングさえ出来ればそれでいいのだが。それさえあれば後は時間の問題だけだ。
「お前って二組のクラス代表だったな。五月になれば代表戦がある、その時に改めて自分の意思や気持ちをあいつにぶつければいい」
ただこれは初戦で織斑と当たれればの話だ。織斑が一勝出来る確立は低い、ただでさえ一組の生徒よりも覚えが悪く動きが悪い。なんとか教え込んではいるものの、まるで成長が見られない。そうなると結果的にこの子と織斑が対決するのには初戦しかない……確率としては低いが、俺やあいつのような存在の確率よりはやさしい方だろう。
「……そうしてみるわ」
ただしこれはお前と織斑が一回戦で当たったらの話だと、一応の注意は話しておいた。三分の一の確立なのだから問題は無いと思うがな。
「決まりだな、そんじゃあさっさとそれ飲んで自分の部屋にもどれ」
先に飲み終えていた俺は缶をゴミ箱にいれて去ろうとする。するとうつむいていた少女が顔を上げ俺に問いかけてきた。
「何でそこまでしてくれるの?アタシのことなんか放っておけばいいのに」
何でか……過去に色々あったからだな。そうとしか言いようが無い。多くは語れないが千冬や束がまだ小学生だった頃に、彼女たちは虐めにあっていた。千冬は両親が出張でほとんど家に居ることが無かった為、両親が亡くなっていたと思われていた。俺でも会った回数は三回も無いだろう。
今考えればそんな事はありえないのだが、当時小学生だった虐めグループはそんな事も考えられず虐めを続けていた。束の方は純粋な嫉妬心からなるものだった。束は考えが独特であったが天才的頭脳を持っていたため、小中と全てのテストでは一位を独占していた。ちなみに千冬も同点だった、俺はそこそこだった為二人に届くことは一度たりとも無かった。正直言って二人は天才だった、だからこそ嫉妬心に駆り立てられるのであろう。
俺はそんな二人を見逃せなかったからなるべく身近で付き合いを始めた。最初はうっとおしいと嫌がられたこともあるが、次第に距離が縮まっていき今の関係へとなっていた。二人には支えになれる人が誰もいなかったと思ったからこその関係だったが今では俺が二人に支えられているな。
「お前に似たような子を昔見たことがあるんだ、それで放って置けなかったんだよ」
「そうなのね……」
ある意味修羅の道を通っていると居ても過言ではないだろう。
「そういうことだ、それじゃあ俺は部屋に戻るぞ」
「わかったわ……そう言えばアンタの名前聞いてなかったわね」
「俺もお前の名前聞いた事無いな」
ここまで話しておいて、俺たちは相手の名も知らずに対談していた。自己紹介とかすっかり忘れていたな。うっかりが過ぎたな。
「私の名前は
凰 鈴音、中国の代表候補生であり織斑一夏の幼馴染か。性格的にはサバサバ系という言葉が似合うな、気性が激しい彼女にはピッタリだろう。候補生ということは専用機持ちか、どんな性能や装備を搭載しているのかが楽しみだな!
「
「えぇ、よろしく千春さん」
お互いに握手を済ませた後、ポツリと鈴にこう呟く。
「それじゃあ今回のことは千冬に報告するから」
すると鈴は青ざめた表情を浮かべていた。チャラになると思ったのか?それとこれでは別問題だ。
凰と別れた俺は千冬が待つ自室へと戻っていく、千冬は既に酒を飲んでいる為出来上がっているだろうな。
「戻ったぞ千冬」
付近に誰も居ないことを確認した後、ゆっくりと部屋の扉を開けて入っていく。
「あぁ、何があった?」
そこにはバスタオルで体を拭いていた千冬が立っていた、相変わらず羞恥が無い様だな……少し見えてるし。
「転校生の凰、篠ノ之と織斑が部屋の前で喧嘩してた」
「詳しく」
完全に酔いが覚めているのか、キリッとした眼つきでこちらを見てくる。だが全裸だ。
「彼女に織斑が何か言ったみたいでな、部屋を交換してくれとせがんでいたよ」
「馬鹿か、そんな事生徒の一任で出来るわけがないだろう」
ため息を尽きながら、ロックの掛かった棚をこじ開けようとする。シャワー浴びた後に酒飲むなよ……いや酒飲んだ後にシャワーも浴びるなよ!危険だぞ!
「だから千冬に頼めって言っておいた。そう言ったらIS展開して殴りかかってきた、対応という形でこちらもIDを展開させてもらった。あと篠ノ之が転校生相手に竹刀で殴りかかってたみたいだ」
「そうか、明日処罰を言い渡そう」
「軽めので頼むぞ?簡単に潰れないようにな」
「あぁわかっている、それに五月になれば『クラス対抗戦』が始まるからな」
「あぁそのことなんだけどさ、予選で一組と二組が当たるようにしておいてくれないか?」
凰と織斑が確実に出会うには初戦しかないと言った、それを簡単に解決できるとすれば千冬に懇願することくらいだろう。
「まぁ考えておこう、結局はくじ引きなのでな」
あぁ駄目だったのか、結局はくじ引きで決まるのであればどうしようもないな。
「構わないよ、それより千冬?」
「何だ?」
「いい加減に服を着てくれないか?目のやり場に困るんだが?」
「おっと、すまないな」
そう言うと千冬は俺のクローゼットからシャツを取り出し着替え始めた。違うそうじゃない。と言うかなんで俺のクローゼットからとった?千冬もあるよね?下着くらいつけろ!
「これで問題ないのだろう?」
「もうそれでいいよ……」
かすかに透けているが……もう何も言うまい、意識したら負けなんだろう。そう思いながら一つしかないベッドに入っていく、千冬も同じくベットに入ってくる。向かい合わせで寝ろと言われたので仕方なく向かい合わせで寝ているのだが、これに何か意味があるのだろうか?
「あぁおやすみ千春」
「おやすみ千冬」
何もわからないが、俺に残された選択肢は「寝る」だけであった。
ここから鈴と一夏の戦いが始まるんですね。