インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
「では両者試合を開始してください」
ピーッと鳴り響くブザー、それが切れた瞬間に俺と鈴は動いた。
瞬時に展開した『雪片弐型』が物理的な衝撃で弾き返される。千春達から習った
「初撃を防ぐくらいは出来るみたいね。だけど―――」
鈴が手にした異形の青龍刀―――というよりも両剣と言った方が伝わりやすいかもしれない、それを軽々と扱っている。刃に持ち手が付いているそれは、縦横斜めと鈴の手により自在に角度を変えながら斬り込んでくる。しかも高速回転している分、刃をぶつけて相殺することさえ厳しい。
このままじゃ消耗戦になるたけだ、一度距離をとって―――
「―――甘いっ!」
肩のアーマーがぱかっとスライドして開く。中心の球体が光を放った瞬間、俺は謎の衝撃に「殴り」飛ばされた。一瞬ぐらりと暗闇に傾きかけた意識を慌てて立て直す。しかし鈴が攻撃の手を緩めることは無い。
「今のは軽いジャブだからね?」
にやりと不敵な笑みを浮かべる。
「ぐあっ!!」
目に見えない拳に殴られて、俺は地面に叩き付けられる。ずきんっとした痛みがシールドバリアーを貫通して届いた。ダメージもかなり食らっている、これはかなりまずい。
「あれは『衝撃砲』か。空間自体に圧力をかけて砲身生成し、余剰で生じる衝撃自体が砲弾化して撃ち出される。砲弾だけではなく、砲身すら目に見えないのが特徴であり、セシリアのブルー・ティアーズと同じ第三世代兵器だ」
「詳しいですね。やっぱりIS開発に関わっていた知恵が多いんですね」
「その気になれば一人で装備も作れるよ。打鉄弐式の装備とかも俺が作ってたからね、計画からは外されちゃったけど……」
ただ装備を造るには素材がいる、素材を何処から入手・譲渡してもらうのかが問題だ。IS学園の整備室にならある程度の
「いつか私のISが来たら、専用装備とか作ってもらえますか?」
「勿論だ、全力で要望にこたえよう」
勿論素材があればの話だがな。
「クロさん、私達は~?」
「本音、そんな事出来るわけないでしょ?黒神さんを困らせないで?」
後ろの席から唐突に声がかけられた。振り向くとそこには本音に似た髪色で眼鏡をかけた生徒が座っており、その隣には生徒会会長である更識さんが席に座っていた。
「えっと……?」
「申遅れました。私、
「改めて自己紹介を、
本音に似た生徒は本音のお姉さんであった、生徒会で会計をしているということもありしっかり者というイメージが良く似合う生徒さんだ。そして楯無さんは簪の姉であり生徒会会長、このIS学園での会長は学園最強らしい。是非一度手合わせしたいものだ。
そう言えば更識と布仏って何処かで聞いたことがあるような……何処だったかな?確か何かの資料で見たことがある気がするんだよな。
「改めてまして、一年一組所属の黒神千春です。この学園に入学する前には倉持技研に勤務していました、楯無さんの妹さんである簪さんの専用機を開発を進めていました」
「簪ちゃんの……ありがとうございます」
楯無さんに深々とお辞儀されるが、そこまでされることを俺はしていない。むしろ外されてしまった。それだけがどうしようもなく申し訳ない。
「ただ今現在あの機体がどうなっているのかは分からずじまいで、未だに企業と上手くいっていない状態です。その為一度こちらの設備をお借りしたいのですが、構いませんか?」
「私のほうが整備科に所属しているので、こちらの方で確認を入れておきますので問題ありませんよ」
「ぜひ簪ちゃんのISを完成させてください、簪ちゃんもしっかりと手伝うのよ?」
「わかってる」
ぷいっと楯無さんから顔を背ける簪、姉妹の仲はあまり上手くいっていないのか?それともこれが普通なのか?俺には良くわからないな。
「妹さんと上手くいっていない感じですか?」
「色々ありまして……こんな関係に」
「大丈夫ですよ、姉妹なんです。いつかは分かりあえますよ」
「ありがとうございます」
姉妹というものは苦労するものなんだな、篠ノ之達もいつの日か分かり合えるときが来ればいいのだが……
「ねぇねぇ!クロさん~私達のISも整備して~」
「それは専用機が貰えたらだな……実践のときに訓練機を動かすことがあったり、故障したりすることがあれば付き合うよ。整備科にも仮はできたしそっちの方にも手伝えることがあれば、いつでも呼んでほしい」
「感謝します、黒神さん」
そんな談笑をしながらも俺達は目の前で起きている試合に再び視線を戻す。
「よくかわすじゃない。衝撃砲
確かに砲身も砲弾も見えない、見えないならまだしもこの衝撃砲は射角制限がほぼ無い状態で撃てるようだ。上下は勿論真後ろまでも展開して撃って来る。あくまでも射撃は直線状だが操縦者である鈴の能力がかなり高い、そのため無制限機動と全方位への軸反転など、基本の全てを熟知し習得しているようだ。よく一夏は対応できているといっても過言ではない。
なんとかハイパーセンサーに空間の歪みや大気の流れを探らせてはいるけど、それだけじゃあ避けることは難しい。撃たれた衝撃で理解しているようなものだ、早く先手を打たなければ―――思い出せ今までの訓練を!
「バリア無効化攻撃?それって千冬姉が使ってたISのやつか?」
そう聞き返すと、千春は小さく頷く。セシリア達との模擬戦をした後、俺はどうしてあの時の試合が敗北になったのかをふと考えていた。試合時の
「そうだ、そして織斑のISにも搭載されている雪片がそれだ。俺のとは若干違うがな。相手のバリアー残量に関係なく、それを切り裂いて本体に直接ダメージを与えることができる。そうなるとどうなる?セシリア」
「ISの『絶対防御』が発動して、大幅にSEを削ぐことができますわ」
「その通り。千冬が世界一位になったのも、この『雪片』の特殊能力によるところが大きい。だが織斑に搭載されているものは、攻撃性に特化しすぎていたこともあり。調整が入ったんだ」
さらっと言っているが千冬姉がしたことはものすごいことである。三年に一度行われるISの世界大会『モンド・グロッソ』、その第一回大会において優勝したのが千冬姉である。初代世界最強の姉を持つ弟の気持ちというのは、とても複雑で怪奇なことなのであると身をもって知ることができた。
「ってことは俺があの時、雪片を当てていれば勝てていた?」
「どうだろうな?セシリアはほとんど無傷で、お前はズタボロだったからな。もう一つ負けた要因があるんだが、何だと思う?」
「何でか知らないけどSEが急に減ったことか?」
「それは必然で起きた事だ。零落白夜は自身のSEを犠牲に攻撃力に転換している、つまるところ……言ってはいけないと思うがお前のISは欠陥機だろう」
「欠陥機!?」
でも千冬姉はこの装備でモンド・グロッソを優勝したんだ!ならこの機体も欠陥機なんかじゃないはずだ!となると問題は俺なのか?千冬姉に扱えても俺には扱えない代物なのか……?
「何故ここまで酷いのかは俺にもわからない、ただ他の機体よりも攻撃特化になっているだけだ。
「兄弟機の黒式はそんなに拡張領域があるのに……なんで俺のには……」
「まぁ素人向けのISかもな、量産機の打鉄やラファール・リヴァイヴとはまた違ったベクトルだけどな。それに射撃訓練ともなると、かなり学ぶことが多くなるが……今のお前では理解できないだろう?」
ぐうの音もでない。
「それにお前は剣道をしていたという経歴がある。それを極めた方が、今のお前には向いている。なにせお前は織斑千冬の弟なんだからな」
それからの訓練は全て千春が組み立てたトレーニングや座学、ISの操縦技術などに費やした。主に近接戦闘に対しての技能を磨いた、俺にできるのはそれしかなかった。後は箒との剣道訓練で『刀』の間合いと特性を再度把握するのに生かすことができた、セシリアからは遠距離に対する対策の仕方、接近方法を学ぶことができた。あとは気持ちで負けないということだけだ。
普通に考えればその実力差は一目瞭然である。しかも鈴はセシリアとは逆に戦闘になれば冷静になるタイプだ。こういった相手は基本的に強い。そんな相手との実力差を『なにか』で埋めるとするのであれば、それは心しかありえない。気持ちだけは何にも負けない、そんな意志があれば絶望的な戦いでも一筋の光明が差すはずだ。そう信じてやり通すだけだ。
「鈴、本気でいくからな」
真剣に見つめる。俺の気持ちが伝わったのか、鈴は曖昧な表情を浮かべた。
「そんなの当たり前のことじゃない、格の違いってやつを見せてあげるわよ!」
鈴はバトンのように両刃青竜刀を一回させて構えなおす。俺は衝撃砲が火を吹く前に距離を詰めて攻撃しようと加速態勢に入った。この一週間で身につけた技能である『
「いくぞおおおお!」
この奇襲は一度しか相手に通用しない。だからこそ『雪片弐型』のバリアー無効化能力を同時使用して放つ。これで半分以上は削れなければ、あの衝撃砲でじわじわとすり減らされ圧倒的大差で負けるのは目に見えている。
「織斑が仕掛けた、これはわからなくなるかもしれないな」
そんな事を呟いていると上空から謎の陰が現れたのを確認した。その物体はアリーナの遮断シールドを貫通し、アリーナの中心へと墜ちた。IDの展開準備をしておくとしよう。