インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
「もしもし!?織斑君聞いてます!?凰さんも!聞いてますか!?」
ISのプライベート・チャンネルは声に出す必要は全く無いのだが、そんなことを失念するほど真耶は焦っていた。周囲から見ると危ない人であることには変わりない。
「本人達がやると言っているのだから、やらせてみてもいいだろう」
「織斑先生!何をのんきなことを言っているんですか!?」
「落ち着け、今千春にも協力してもらうように指示を出した。それにあいつは既に生徒・関係者の避難誘導は終わったようだしな。糖分が足りないからイライラするんだ」
「……あの先生。それ塩ですけど?」
コーヒーに運んでいたスプーンを止め、白い粉を元の容器に戻す。
「何故ここに塩があるんだ」
「さぁ……?でも容器に大きく「塩」って書いてありますけど」
「…………」
「やっぱり弟さんのことが心配なんですね!?だからそんなミスを―――」
嫌な沈黙が続く。何かまずいことがおきる予感がした真耶は話を逸らそうと試みる。
「あのですね―――」
「山田先生、コーヒーをどうぞ」
「へ?でもそれって塩がはいっているものじゃあ……」
「どうぞ」
ずずいっと押し付けられるコーヒー(微塩)。真耶はそれを涙目で受け取るしかなかった。
「いただきます……」
「熱いので一気に飲むといい」
鬼がいた。
「先生!私にIS使用許可を!直ぐに出撃できますわ!」
「そうしたいのだが、これを見てみろ」
ブック型端末の画面を数回たたき、表示される情報を切り替える。その数値はこの第二アリーナのステータスチェックであった。
「遮断シールドがレベル4に設定……しかも扉は全てロックされている。あのISの仕業ですの!?」
観客席の扉は既に破壊しており避難誘導は完了しているが、ここからアリーナ内に入る扉はロックされており侵入することができない。遮断シールドも千春が入って直ぐにレベル4に設定された。
「一応避難は終わっている、あとはあのISを停止させるだけだが……」
「でしたら!緊急事態として政府に助勢を!」
「既にやっている!現在も三年の精鋭達がシステムクラックを実行中だ。遮断シールドを解除できれば、直ぐに部隊突入させる!」
言葉を続けながら、益々募る苛立ちに千冬の眉がぴくっと動く。それを危険信号と受け取ったセシリアは、頭を押えながらベンチに座った。
「結局ここで待っていることしかできないのですね……」
「どちらにしてもお前は突入部隊に入れないから安心しろ」
「なんですって!?」
「お前のIS装備は一対多向きだ。多対一ではむしろ邪魔になる」
「そんなことありませんわ!このわたくしが邪魔など―――」
「では連携訓練はしたか?そのときのお前の役割は?ビットをどういう風に扱う?味方の構成は?敵はどのレベルを想定している?連続稼働時間―――」
「連携訓練は千春さんとしか……そのときはビットを扱わずに千春さんが誘導している一夏さんの隙をついて狙い撃つだけですわ……」
「それだけでは不十分だ」
「そうですか……」
放っておいたらそれこそ一時間以上続きそうな千冬の指導を、セシリアは両手を揺らして止める。『降参』のポーズであった。
「言い返せない自分が悔しいですわ」
どっと疲れた気がして、漏れたため息はさっきよりも深かった。それからふと、あることに気がつく。
「篠ノ之さんは何処へ……」
周囲を見回しても篠ノ之の姿は無かった。千冬だけはさっきまでとは違う異様に鋭い視線をしていた。しかし現時点では誰も気がつかなかった。
「凰!織斑!無事か!?」
「なんとか!だけど……」
「くっ……」
織斑が一撃必殺の間合いで斬撃を放っているが、するりとかわされて反撃を貰っている。
「あれは何回目だ?」
「これで四回目よ……ちゃんと狙いなさいよ一夏!」
「狙ってるっつーの!」
織斑の攻撃は普通ならかわせるはずの無い攻撃速度と角度だ。けれど敵ISの全身に付いたスラスター出力が尋常ではないのだろう。ゼロ距離から離脱するのに一秒と掛からない、さらに彼女がどれだけ注意を引いても織斑の攻撃には必ず反応し回避行動をとっている。
「織斑、凰交代だ」
「何でだよ!俺はまだやれる!」
「お前のSEは後どれくらいある?」
そういわれた織斑はコントロールパネルをすぐさま開いて、自身のIS状態を確認する。そこには残り60という数値が表示されていた。
「あと60だ……」
「なら雪片を使えるのは後一回だな。それを無駄にしたくは無い、一度下がって相手の戦闘スタイルや隙を見極めろ!」
「だけど……」
「お前の能力だけが頼りなんだ、下手に動くなよ!」
織斑に釘を刺し、謎のISに特攻する。でたらめに腕を振り回して接近してくる。まるでベーゴマだ。かなりの高速回転だがその上にビーム砲撃までやってくあたりやっかいだな。それに俺の行動が予測できるのか、牽制砲撃まで行ってくる始末だ。これは一筋縄ではいかないな。
「こい!」
そう叫ぶと俺の手元には展開を完了した《カノン》と《黒龍》が握り締められている。カノンでの牽制が効くとは思えないが、ある程度まで時間を稼げればそれでいい。そして相手の欠点を見出せれば織斑の能力でぶった切る……上手くいけばの話だがな。
「来いよ不審者!俺が相手してやるぜ」
そう言うと、相手は一直線にこちらに向かってくる。どうやら引けたみたいだな。カノンでの射撃をするが、相手には全く効果が無いように見える。それとも微かなダメージはある程度無視してこちらに突撃してきているのかの二択だ。こうなってしまえばカノンよりも近接ブレードで殴る方がいいのかもしれないな。左手で握り締めていたカノンを収納し、黒龍一刀で正面から向かっていく。ビームは無理やりにでも砲身を曲げて阻止する、最悪の場合は……あの兵器に頼るしかない。
「せりゃあああああ!!!!」
ブレードを振り下ろし斬撃を浴びせるが、相手はそれを予測していたかのように軽々と避けこちらに砲身を向ける。だがこの距離ならば
「これならどうだ!」
瞬時に近づいた俺は相手の左腕をブレード切断しようと試みる。だが相手も手練れなのか、刃が半分と届かないうちに退避されてしまった……やっぱりこんな安直な考えじゃあ墜せないよな。
構え直して相手を見据える、ブレードには僅かながら斬ったという印であるオイルが付着している……瞬間加速を使っても相手に与えられたダメージはごく僅かでしかない。となれば高火力の装備で仕掛けるしかない。黒式には試作型荷電粒子砲と、雪片改の二種類がある。しかし一つは未だに試せていない装備であり威力は未知数である。雪片改で能力を発動させて斬り伏せるのも悪くないが……相手に通じるだろうか?ともあれやるしかない。俺に出来るのは織斑がトドメをさせるように仕向けること、できなければその後始末をつけるだけだ。それに色々と戦ってみてわかった。相手が腕を振り回しているときの砲撃は、射程距離が短くなる。乱れ撃ちという表現が近い。逆に腕を振り回していないときは狙いが精密になり有効射程距離が伸びる。
俺のSEは残り300、織斑は60、凰は織斑よりも被弾が少ないことを考えると150ほどは残っているはずだ。流石に厳しいがやるしかない。
「黒神さんも厳しいみたいね、現在の火力でアイツのシールドを突破して
「ゼロじゃなければいい」
「呆れた。確率が大きければ大きいほどいいに決まってるじゃない。アンタって良くわからないわね、それでどうするの?」
「逃げたければ逃げていいぜ」
「馬鹿にしないでくれる?あたしはこれでも代表候補生で、少なくともアンタよりは強いんだから。それにあたしより弱いやつを置いて退散なんて、笑い話にならないわ」
代表候補生の採用基準はきっとプライドなんだろうな、セシリアも似たようなことを言うしな。
とか考えているようだが、そんな訳が無い。代表候補生の採用基準は頭脳やISの操縦技術だろう、あとは愛国心か何かだと昔聞いたことがある。千冬は圧倒的操縦技術と戦闘スタイルで日本の代表になった経歴がある。っとそんな話をしている場合ではなかった、目の前の敵に集中しなければ!
『織斑、凰何か相手の動きを見て気がついたことはあるか』
プライベート・チャンネルを開く、俺は一つだけわかったことがあるが確証が持てない。だからこそ遠目で見ていた二人に通信を入れる。
「しいて言えば動きが若干カクついているような気がする」
「俺は……正直わからない」
まぁ織斑がわからないのは大体察していた、だが凰が言ったことはこちらの考えと合点が行く。この黒龍に付いたオイル、カクついた動き……
「もしかしたら無人機かもしれないな」
「無人機!?そんなことあるのか?」
「今のあいつを見てみろ、俺たちが攻めなければあいつもほとんど動かない。まるでこちらの会話を聞いているみたいにな。無人機ならばこの通信もジャックして聞くことくらいはできそうだしな?そして斬ってみてわかった、こいつは確実に無人機だってな」
「でも無人機なんてありえない。ISは人が乗らないと絶対に動かない。そういうものだもの」
確かにISは人が乗らないと絶対に動かない。だがある人物だけは無人のIS……いやISもどきは造る事ができるだろう。それにガワだけならば、不可能ではないはずだ。ISのコアも
「無人機だったら勝てるって言うの?」
「人が乗っていないのなら、最大出力で攻撃しても大丈夫だからな」
零落白夜は多少の調整が入ったが今でもその高火力は健在だ、ならばありったけをあいつにぶつければ機能停止に持ち込める。勿論当たればの話だ。
「でもその攻撃自体が当たらないじゃない」
「それを当てるように誘導するのが、俺たちの仕事だぞ凰」
「はぁ……やるしかないってことね。一夏、外したら許さないからね!」
「次は当てる!」
その意気だ織斑、あとは鳳と連携をとって隙を作らせるだけだ。
「千春さん」
「ん?」
「どうしたらいい?」
「簡単だ、俺たち二人で誘導する。織斑には合図を出して一気に突貫させる。主に衝撃砲での誘導にしてくれ、俺はこいつで誘導させる」
そう言って装備データから《試作型バスターライフル》を展開する。こいつの火力は未知数だが、カノンでは火力不足だ……今はこいつに頼るしかない。
「随分とゴツイ装備取り出したわね、名前はなんていうの?」
「名前……バスターライフル」
「なんかぱっとしないわね、私がつけてあげるわ。そうね―――装備の色が黒いから《ブラック・インパクト》なんてどう?」
「ブラック・インパクトね……もう少しこう~グッと来るものがいいな」
ブラック・インパクトってなんか別のものが頭によぎるんだよな、ディープイン―――いや気のせいだろう。そうなると……
「
「悪趣味だと思うわ」
いいだろ別に!俺が使う装備なんだからよ!ネーミングセンスがないのは1番理解している!それよりも無人機だ、こいつは必ず破壊する。そしてこれを造ったであろう人物に問い詰めてやる!
「いくぞ凰!」
「了解!」
俺と凰は無人機へ突撃していく、そのなかで俺はある人物に連絡を入れてとあるポジションで待機してもらうことにした。
正直デスペア・ブラストはダサいと思っている