インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
凰が無人機に対して衝撃砲を撃っているのに対して、俺は無人機の回避行動を予測してその退路を潰していくという作戦だ。徹底的に追い詰めた後、織斑の雪片で切断し破壊する。これは織斑が雪片を当てやすいように、無人機の回避行動を徹底的に潰す。最悪の場合はワイヤーで拘束する。
「千春さん!そっちに逃げたわ!」
「了解!」
無人機に向けてライフルを構える、砲身にエネルギーを圧縮させる。時間としては2秒程度だ。これは速射も連射も出来ないな……使いどころが肝心というやつか。圧縮したエネルギーは紫色に輝き出す、圧縮完了の通知が表示される。これでやっと撃てるようになる、体感時間としてはかなり長く感じる。
「これでも喰らえ!」
砲身からビームが放たれる、反動が強く軽く吹き飛ばされるかと思うほどだ。ビームは無人機の腕をを掠め、地面に着弾する。腕を掠めた程度だったはずなのだが、見事に歪んでいる。そして着弾跡には紫の稲妻がはしっていた、これはおそらく放ったビームの残留エネルギーだろう……これ人に向け撃って大丈夫なのか?大丈夫なように設計されているのか?
「なによそれ!?そんな高威力見た事無いわよ!あの無人機に搭載されているのより強いんじゃないの!?」
「そうかもしれないな、だが今考えている暇は無い。徹底的に追い詰める」
このアリーナで注意するべき点は千冬達がいる管理室に誘導しないことだ、それ以外であれば何処に追い詰めてもいい。既に無観客状態だ、そう簡単に計画が狂うわけが―――
そう考え引き続き無人機を追い詰めていこうとした最中、アリーナのスピーカーから大声が響いた。
「一夏ぁっ!」
ハウリングが響く中、声の主を確認する。
「箒!?なにしてるんだお前……」
中継室の方を見ると無人であることをいいことに、現在の状況を作り出したようだ。本当に何やってるんだあいつは!?
「男なら……そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」
ハウリングが起きるほどの大声で叫ぶ。ハイパーセンサーで数倍に拡大して確認すると、どこか焦っているような、怒っている様に見える。だがこの状況では最悪だ。敵は今の館内放送に興味を示したらしい、俺たちから視線を外し篠ノ之の方をじっと見ていた。このままでは篠ノ之が危ない、もはや作戦など実行している状況ではなくなってしまった。
「鈴!織斑に衝撃砲を最大火力で放て!織斑はその衝撃と瞬間加速を利用して一気に突っ込んであいつをぶった斬れ!」
そう言って瞬時に動き出す、敵が篠ノ之に向けて腕を伸ばしている。確実に砲身が向けられている状態だ、あのビームは人に向けていいものではない。装備データから対ビーム用シールド《ヴォイド》を取り出し、瞬間加速を利用した加速力で射線上に向かって篠ノ之の盾になる。この盾が耐えられるかどうかわからないが、やるしかない。
「そんなことしたら俺のSEがゼロになるだろ!」
織斑から反論が入る。確かに普通に考えればそうだ、しかし瞬間加速は後部スラスターからのエネルギーを放出し取り込む。そのエネルギーを圧縮し再放出する。その際に生まれるエネルギーを利用して、爆発的な加速力を手に入れる。これはつまり外部のエネルギーからでもいいと言うことだ、そして瞬間加速の速度は利用するエネルギー量によって変化する。
「いいからやれ!」
「どうなっても知らないわよ!」
織斑が衝撃砲の射線上に入る、鈴は最大火力で衝撃砲を放つ為に補助用の力場展開翼を後部に広げている。収縮したエネルギーを一気に放つ。ドンッ!と織斑の背中に巨大なエネルギーの塊がぶつかる。みしみしと体から音が鳴ると同時に瞬間加速を利用する。
「オオオオッ!!!」
右手に握られた《雪片弐型》が強い光を放っているのが確認できる、それと同時に敵の砲身にも強い光が集まっているのが確認できる。これは間に合うか……?
俺のパネルには『零落白夜』使用可能。エネルギー転換率90%オーバーと表示されていた。その情報は聞くのではなく理解していた。俺がISに初めて触ったときに感じたあの一体感、全てを把握できそうなほどクリアな五感。集中力が何倍にも跳ね上がったような意識。そして何より全身から力を感じる。
俺は……千冬姉や箒、鈴を、関わってくれる人全員を―――守る!
必殺の一撃は敵ISの左腕を切り落とした。しかしその腕は千春が半壊させた腕であり、箒にむいている腕は右腕であった。俺が左腕を切り落とした瞬間、敵ISが箒に向かってビームを撃ちだした―――箒!
何で左腕を斬ったんだよ!無人機だって知ってるだろ!ぶった切れば良いってもんじゃないんだぞ!間に合ってくれよ!
黒式が出せるであろう最高速度をたたき出し、篠ノ之の目の前まで移動する。目の前までビームが迫ってきている、《ヴォイド》を前に突き出し篠ノ之をビームから守る。パキパキと盾から音が鳴る、ビームの威力が強すぎて弾かれそうになる―――ビームが収まった頃には、盾は大破しておりまともに使える状態ではなかった。
「くっ……だがいいポジションだな」
中途半端だが一筋の弾道を作り出すことには成功した、あとは彼女に援護射撃をして貰うだけだ。
『狙いは?』
『完璧ですわ!』
破壊したドアからセシリアがISを展開している姿が見受けられる、一つは完全に破壊しておいて正解だった。こうすればセシリアとも協力できる!
ビットは使うことが出来ないが、彼女の正確な狙撃能力が発揮される。それにあわせるように俺は刀を手に相手を翻弄していく、だがこの無人機無駄に硬い。おそらく装甲は最新のものを使われているのだろう。織斑の一撃で破壊できてよかった。
「この……いい加減にぶっ壊れろ!」
黒式に搭載されている特殊能力を発動させる為に《雪片改》を展開する。こいつの能力は『
「でりゃあああ!!!」
雪片片手に相手に突き進む。その刹那、黒式が一瞬輝き出す。これが不具合だとしたのなら最悪のタイミングだ。相手はこちらに対してビームを連発しているが全て雪片で切り伏せる。雪片を相手腹部に突き刺した後、上空に投げ飛ばす。
『合わせろセシリア!』
『はい!』
「最大火力だ……消し飛べ!」
セシリアと圧縮が完了しているライフルで、標的をロックする。『危険』という表示が出ているが気にせず撃ち出す。最大火力ということもあり、反動に耐えられず地面に叩き付けられる。だがその分威力は絶大だ、紫の稲妻は無人機を包み込み装甲を溶かしていく。こんな威力の攻撃、無人機でなければ出来ないな、もしやるとするのであれば憎しみが強い相手だけだろう。セシリアも良くやってくれた、あとで感謝しておかなくては……
「ははっ、やったぜ……」
反動をもろに受けてしまった俺は、敵が爆散したのを確認した後……意識が堕ちていくのを実感しながら眠りについた。
『も……ーし?………ーい?』
誰だろうか、何処かからか声が聞こえる。聞いたことの無い声だった、声の主を確認する為に俺はゆっくりと目を開ける。
「なんだ……ここは」
目を開けるとそこには透き通った世界が広がっていた。青空に雲が浮かんでいることで現実世界のような気分になるが、地面を見てみるとまるで鏡のように反射している。それだけしかない世界で声の主を探さなくてはいけないのかと思うと、憂鬱になりそうだ。
『あっ起きましたね』
直ぐ近くで声がしたと思い振り向くと、そこには黒髪ショートカット・無地の黒のワンピースを着ている少女が立っていた。何故こんな世界でたった一人少女がいるのか理解できない……そもそもここは何処なんだ?現実世界で無いとしたのならここは死後の世界なのかもしれない、だがあんなことで死んだとなると笑いものになりそうだ。
『大丈夫ですよ、死んでませんから』
俺の心が読めるのか少女はそう言葉を続けた、なんと都合のいいことだろう。となればここはおそらく精神世界になるのかもしれない。一度だけ千冬から体験談を聞いたことがあるが、まさか俺自身も経験することになるとは思わなかった。
『はい、確かにここは精神世界です。それで私はあなたに伝えたいことがあって、この世界に呼び出しました。慌ててしまわないか不安でしたが、なんとか状況を飲み込めてくれたようで』
「まぁ誰だって信じないとは思うが、俺は経験談を聞いたことがあるからな。それで話ってのは何だ?」
それが本題だろ?と少女に問いただす。少女はそうでしたと呟き言葉を続ける。
『あのですね、黒式の装甲が光ったときがあると思うんですけど、それは危険信号でもなんでもないです。あれは今出せる限界状態で発生する特殊な防護壁です』
防護壁……だがあの光は10秒も持たなかった、一瞬の防護壁など意味があるのだろうか?
『それは篠ノ之博士がつけた特殊能力の恩恵ですね、相手に突っ込むときに被弾して肉体的ダメージを追わないようにする為です』
零落黒月を発動しているときだけの副作用ってやつか、それはそれでありがたい。
『ですけど使用には十分注意してくださいね?壊れちゃうかと思ったんですから』
「それはどういう―――」
どういう意味か聞き出そうとした瞬間、世界に亀裂が入る。精神世界が壊れようとしているということか!
『時間みたいですね、大丈夫ですよ。貴方は現実世界で目を覚ますだけですから』
そう言って目の前の少女が霧に包まれる。霧が晴れた頃には既に少女の姿は無かった。そして今立っている地面に亀裂が入り、俺は谷底に落ちていった。
「戻り方ってもんがあるだろう!?」
そんな嘆きも空しく、俺は深く堕ちていった……
「うう……なんとか戻ってこれたのか?」
全身が痛むがなんとか体を起こし、周囲の状況を確認する。どうやら俺はあの後保健室に運ばれたらしい。カーテンで仕切られた空間は狭いが安堵感を与えてくれる。そういえばあの後どうなったんだ?
「気がついたか、馬鹿者め……」
カーテンが勢いよく引かれる。確認する前に行動する性格と声でわかる、これは千冬だ。
「体に致命的な損傷はない、だが全身に軽い打撲がある。数日は地獄だろうがまぁ頑張れ」
「これしき大丈夫だ……イテッ!」
「無理をするな、それであの後のことだが―――」
あれからの千冬の対処は早かった。まず無人機を足止めした織斑と鳳は撤退命令を無視したため反省文一枚の処理が行われた。反省文は書かせなくてもいいと思うんだがな。次に中継室に入り無人機の注意を引いた篠ノ之、彼女は反省文十枚の処分が言い渡された。まぁそうだろうな……危険な状態を引き起こしたのであればそれなりは……な。そして大本命である無人機だが、最大火力のビームで溶かしきったことで跡形も無く消えたらしい。これについては怒られた。機能停止させればいいものの、俺は全てを消し去ってしまった為相手のデータを何一つ得ることが出来なかったということだ。本当に申し訳ない。
「まぁ何にせよ、お前が無事でよかった。心配したのだぞ?」
そう言って抱きしめてくる、不安だった心境が伝わってくるように抱きしめる力が強くなって―――イダダダダダ!!!!
「千冬!痛い!痛いから!」
「うるさい、甘んじて受け入れろ。」
「……心配かけてごめんな」
頭をやさしく撫でると、ある程度力を抜いてくれる。
「お前はそう簡単には死なないさ。私達の大切な人なのだからな
「……そう思ってくれるのであれば嬉しいよ」
「なっ……聞こえていたか!」
抱き着かれた状態だったら聞こえるに決まっている。恥ずかしかったのか、千冬の頬が赤く染まっている。そしてより一層腕の力が強くなったのを感じた。
数分ほど時間が過ぎた後、千冬は俺から離れて立ち上がる。
「私は後片付けがあるので仕事に戻る。すこし休んだら部屋に戻っていてくれ」
そう言い残すと、千冬はすたすたと保健室を出て行った。仕事に真面目だな、俺もあの姿勢だけは見習わないと。するとまた保健室の扉が開く音が聞こえる、誰が来たんだ?そう思いカーテンを開ける。するとそこには凰とセシリアの姿があった。
「凰か、反省文は終わったか?」
「ええ、しっかりと終わらせてきたわ。一夏の方はまだ掛かりそうだけど」
今回の無人機の件で対抗戦は中止となり、デザート無料権もなくなった。ということは彼女が織斑に想いを伝える時間も失ってしまった。だが織斑と話す機会は沢山つくれる、その時に伝えられればいい。
「セシリアもありがとう、よくあの状況で期待に応えてくれた」
「あのまま見ていられなかったので、お役に立ててなによりですわ」
少しくらい表情の凰に視線を合わせる、彼女はゆっくりと
「あたしね、一夏に想いを伝えるの……もう少し考えることにしたわ」
「どうして?」
「一夏が馬鹿なのは前から知っていたけど、あそこまで馬鹿だとは思わなかったから。一旦様子を見ることにしたの」
それなら気持ちの整理もつけやすいか、一度遠くから見てみるのも手段の一つかもしれないな。それに昔の約束を思い出させるよりも、今の状態でならばしっかりと記憶に残るだろう。あいつもそこまで馬鹿じゃないはずだ。
「凰、それでもある程度のふれあいはしておけよ。人間ふれあい絆を深めていく事が大切なんだ、広く深くな」
「黒神さんが言うんだったらそうなのかもね……わかったわ、一夏とは休日に買い物とかしてくる」
「あぁ、頑張ってな」
ありがとう。そう言って凰とセシリアは保健室を去って行く。彼女の恋の行き先がどうか幸せなものになりますように。
俺は再びベットに身を委ねて眠りについた。
これにて謎のISは終わりです。
千春と鈴の絡みはあまりない無いです。
途中で出てきた謎の少女は誰なんですかね?