インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
学園の地下五十メートル。そこにはレベル4権限を持つ関係者しか入れない。隠された空間であった。完全に破壊されたと思われたISはすぐさまそこに運び込まれ、解析が開始されていた。それから二時間ほど、千冬は何度もアリーナでの戦闘映像を繰り返し見ている。室内は薄暗くモニターの光で照らされた千冬の顔は、酷く恐ろしいものだった。
「織斑先生?」
モニターに割り込みでウインドが開く。ドアのカメラから送られてきたそれには、ブック型端末を持った真耶が映りこんでいた。
「どうぞ」
許可を貰ってドアが開くと、真耶はいつもとは違い幾分ときびきびした動作で入室した。
「あのISの解析結果が出ました」
「どうだった?」
「はい。あれは黒神さんが予想していた通り、無人機でした」
世界中で開発が進められるISの、未だに完成していない技術。
「どのような方法で動いていたなどは不明です。黒神さんの最後の攻撃で機能中枢などが完全に焼き切れていました。修復は……おそらく不可能かと」
「コアはどうだった?」
「それが……登録されていないコアでした」
「そうか」
やはりと言うべきか。心当たりのある千冬の発言に、真耶は
「何か心当たりがあるんですか?」
「いや、今はまだ無い―――今はな」
そう言って千冬はモニターの映像に視線を戻す。それは教員の顔ではなく、過去一人のIS操縦者だった時の、戦士としての顔であった。世界最高位の座にある伝説の操縦者。それを思わせる鋭い瞳は、ただただ映像を見つめ続けていた。
あれから俺はどれだけ眠っただろう?いまいち時間感覚がわからないが、ベットから体を起こし保健室から出て行く。ゆっくりと廊下を歩きながら、ポケットに入っている端末を起動させる。そこにはシステム稼働状態と、現在時刻が映し出されていた。現在時刻は夜の六時を回っていた。おそらく千冬は既に部屋に戻っているであろう時間帯だ、急いで戻らなければ心配させてしまう。
ゆっくりと学園を後にして、学生寮の方へと進んでいく。回りに人気はない。今回の騒動が原因で生徒全員は寮待機を余儀なくさせられたのだろう、あれがトラウマになってしまった生徒もいるかもしれないな……
「千春さん」
声のするほうへと振り向く。そこには生徒会長の楯無さんが立っていた、今回のことで自由に行動できるのはこの子くらいだろう。それだけ生徒会長という肩書きは大きいということかもしれない。
「楯無さんですか、どうかしましたか?」
「体調が万全そうでよかったです。生徒たちの避難誘導、ありがとうございました。けが人も無く皆安全に避難することができました」
「いえいえ、当たり前のことをしただけです。それに俺より若い子達を傷物にしたくはないしね。関係者の人とかも大丈夫でしたか?」
「問題ありません。全て黒神さんの迅速な対応と指示のお陰です。生徒会を代表してお礼いたします」
深々と頭を下げる楯無さん、そこまでしてもらうことは俺はしていない。過去の経験が生かされただけだ……俺は何もしていないに等しい。
「そんなことしなくていいよ。皆守れたからさ」
「そ、そうですか。では後日、生徒会室にいらして下さい。そちらのほうで少々お話しをしたいのですが」
「ここじゃ駄目なのか?」
「そうですね、今の状態では駄目ですね。ですので後日生徒会室に……」
これは断れなさそうだ、俺が折れるのを待っている……後日か、まぁそれなら時間もあるし大丈夫だろう。
「わかった。それじゃあ生徒会室に訪ねるよ、時間は―――放課後でいいか?」
「問題ありません、その時間にいらして下さい」
「それじゃあ明日、生徒会室で」
楯無さんはお辞儀をした後、その場を去って寮へと戻っていった。真面目な子だ、菓子折りでも持って伺うとしよう。
「遅い、何処を歩いていた?」
部屋に戻ると、少々イラだっている千冬の顔があった。こんな時間まで戻ってこなかったことを怒っているのだろうか?
「悪い、ちょっと楯無って子と話していたから―――」
「生徒会か、そういえばお前はよく簪と話していることが多かったな。簪つながりで生徒会の面々と知り合ったのか」
「簪ちゃんのお姉さんが楯無さんだったからな、専用機とかいろいろな問題もあるし。何かと繋がりがあるんだよ」
冷蔵庫からペットボトルを取り出し口に運ぶ、冷たい水が体の中に入っていくのを感じる。そのあいだ千冬はこちらをじっと見ていた、何かを察して欲しいようだ。まぁ大体はわかっている為行動するのは簡単だった。
端末を起動させ、連絡リストから篠ノ之束を選択する。すると束に連絡のコールが届き、こちらに反応してくれる……なかなか出てくれない
「………」
そんな怖い顔でこっちを見るな、その怒りはまだ抑えておくんだ千冬。まだそうと決まったわけではないんだ、まだな……
「もしもし~?くろちーどうしたの?」
束と通話が繋がる。俺と千冬が確認したいことの前に、まずは黒式についての話だ。今回のことで黒式は内部ダメージが溜まってしまった、これは修理して調整をしなおさなければならない。それに唯一のシールドである《ヴォイド》も大破してしまい、使用できる状態ではない。こちらも修理が必要だ。
「黒式についてなんだが―――」
「修理材が欲しいってこと?任せて~そっちに黒式の基礎データと修理材のデータをインプットしておくから」
データだけでどうしろというんだ!?データだけでは何も出来ないぞ?
「データを受け取ったら背部にあるスイッチを押してね、そうしたらデータを展開して取り出せるようになるから」
わー凄いテクノロジーだなー。そんなことありえていいのかよ……まぁ天災だし、それくらいありえるか。ありえるのか?
「話はそれだけ?」
「もう一つあるんだが……それは千冬から話してもらおうかな」
「ちーちゃんから?」
端末を千冬に渡す。千冬は鋭い目つきで束を見据える、束のほうはどこか余裕がありそうな表情だった。
「数時間前、謎のISがこのIS学園に墜ちてきた。そのISは無人機で何処にも登録されていないコアが使用されていた」
「へ~それは不思議だね~」
「各国でも開発途中である
「でも何処かの国は出来るんじゃない?」
「そう思っていたが……私が知る中でもっともISの技術に優れているのはお前だ」
「私が何かしたって言いたいのかな~?」
「その通りだ」
沈黙の時間が続く。最強と天災の異様な空気感は常人では耐えられそうにないだろう……俺でも押しつぶされそうになる。
「くろちーちょっと席外してもらえるかな?」
突然そんな事を言い出す束、だが正直ありがたい。こんな空気感は到底堪えられそうにないからな。
「じゃあ俺ちょっと出てるから、戻ってくるまでには終わらせてくれよ?」
「あぁ、終わらせてやる」
「それじゃあまたねくろち~」
そんな二人を置いて、俺は部屋から出て行く。重くのしかかる空気から開放された俺は、行く当ても無くのんびりと寮内を歩き回ることにした。
「それで二人だけにした理由はなんだ?ふざけた理由であれば殴り飛ばすぞ」
「まぁまぁ~落ち着いてよ~色々と私からも話したいことがあるしね」
そういって束が何かを弄り始める、こちらに何かのデータを送ろうとしているのだろうがそんな事はどうでも良い。私が聞きたいのはあのISを造り、こちらに送ってきたのはお前かと聞きたいだけだ。
「これはどういうことなのか聞きたくてね~?」
そう言って束が送ってきたものは、本来なら存在しないはずの動画データであった。私が彼―――千春とシャワー室で行為をしているところであった。
「どうやってこれを!」
「天災をなめちゃ駄目だよ~?それで私が言いたいのはね―――
ってことだよ。くろちーが憶えてないのをいいことに、くろちーの体を味わうのはやめなよ?」
「くっ……わかっている」
それは確かに相手の気持ちを考えていない行為だ、こんなことを知ってしまったら千春は立ち直れないのかもしれない。
「これ以上抜け駆けしたら、私も黙ってはいられないかな~例えばこの動画を全世界に流したりとかね?」
それだけは困る、あの映像が流されてしまっては私の立場と千春の立場がなくなってしまう。それだけはなんとか避けておきたいところだ。
「わかった、これからは相手の了承を得た上でする。だからそれだけはやめてくれ」
「わかればいいんだよわかればね……話はそれだけ。ちーちゃんから何か言いたいことはあるのかな~」
私から?言いたいことなど沢山ある!特に今回件に関しては問いただしたいところだ!
「あの無人機のことでしょ?あれは天災である束さんがつくったのだ!」
やはり束だったか、あの技術を両立できるのは束しか居ない。束があの無人機を乱入させた理由はだいたいは予想できる、黒式と白式のデータ取りの為に入れたのであろう。
「勿論そうだよ、特に黒式のほうは実験機だから沢山データを取らないといけないからね~」
「だが他にやり方はあっただろう、こんな騒動に学園を巻き込むな。わかったか」
「は~いすみませんでした~」
反省はしていないであろう、だが釘は刺した。あとは私から個人的な話をして終わるとしよう。
「束近くに定規は無いか?」
「定規?あるけどこれがどうかしたの?」
「それをお腹に当てろ、へそから大体一cm放す位でいい」
そういうと束は自身のお腹に定規を当てる、へそから局部まで真っ直ぐに定規がそっている。
「そこからだいたい――cmまでがあいつのモノの大きさだ」
「なっ!?」
束が何か言おうとしているが、私は瞬時に回線を切断する。いまごろあちらでは大変なことが起きているだろうがな。
「嘘でしょ……くろちーのってここまで成長してたの?だからちーちゃんもあんなに気持ち良さそうにしてたってこと?」
私は自身のお腹に当てた定規を見ながら、彼のモノが立派なものになっていることに驚きを隠せなかった。
「ぐぬぬ~なんか負けた気分がするよ~!なんなんだろうこの気持ちは!?」
私は頭をくしゃくしゃとしながら、複雑な心情に悩まされたのだった。
次回、最強の恋と天災の恋と無知の罪。
嘘です。