インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了)   作:灰崎 快人

30 / 108
千春にとっては懐かしい場所になった倉持技研、そこで出会ったものは―――



倉持技研 託されたもの

六月冒頭、日曜日。

俺は久々にIS学園の外―――というか倉持技研にいた。理由は勿論簪の専用機である打鉄弐式(うちがねにしき)を受け取りに来た、電話しても話しにならないので俺が来たということだ。

 

「神童さんはいますか?」

 

「黒神さん!神童さんですね!案内いたしますのでこちらへどうぞ」

 

受付に案内されエレベーターに乗りこむ、よく作業場やデスクに移動する為にこのエレベーターを使ったものだ。通路を通っていくと、見慣れた顔の人たちがこちらを見てくる。同僚や後輩がこちらに気づいて挨拶を交わしてくれる、短い期間であったがそれでも覚えてくれている人がいるというだけでうれしいものだな。

 

過去に使っていたデスクを通り過ぎると上司たちが居座る部署に辿りついた、まだあの上司がいると考えると過去を思い出しイラッとしてしまう。そう思いながらも案内された席にたどり着くとそこには見知った後姿があった。

 

「神童さん、お客様をお連れしました」

 

「あぁ、ありがとう」

 

お辞儀をして受付の人はその場を後にする。見知った背中をした人はゆっくりとこちらに振り返る、そこにはかつての先輩であった神童 颯(しんどう はやて)さんがそこに立っていた。懐かしい先輩だ、俺にISの整備などを徹底的に叩き込んでくれた俺の師匠でもある。ただ俺はある程度の前知識があった為、一年目で打鉄弐式の設計、開発リーダーを務めることが出来た。もちろん先輩や同僚の力を借りていた、借りなければ出来なかったことも多くある。

 

「お久しぶりです、神童さん」

 

「あぁ久しぶりだな黒神……さん付けしたほうがいいか?」

 

「いいですよ、昔のままで構わないです」

 

「そうか、それで何の用でここに?あの上司は既にここを去った後だぞ?」

 

「はい、それはですね―――あの人いなくなったんですか!?」

 

そんな事は初耳だ、まぁ解雇されてからの情報は何一つ入ってこなかったからな……知らなくてもおかしくないのか。

 

「そうか、お前は知らなかったんだな。あの上司がしてきたことを社長や倉持技研の関係者に全て流したんだ、それであの上司は一発解雇になったってことだ」

 

「そうだったんですね……それは神童さんが?」

 

「それもあるが、お前が過去に集めていた情報や同僚からの証言が沢山集まってな。まぁあいつはかなり悪評高い奴だったからな、まえから目をつけて見張ってたんだ。あの飲み会では社長が来ていたんだ、勿論変装してな」

 

初耳だった。まさかそこまで計画されていたとは思わなかった、しかもあの場に社長が来ていたことに驚きを隠せない。おれ自身も社長とは一度しか会っていない、あの中に社長がいたといわれても俺にはわからなかっただろう……神童さんがそこまで力のある人だとは知らなかったが、これで少しは職場が明るくなるだろう。

 

「それでもう一つ、お前に隠していたことがあるんだ。俺はこの部署の人間じゃなくて、本社の人間なんだ。俺は打鉄弐式のサポートとして本社から派遣されて、お前に協力した。最初こそはこの雰囲気にも戸惑ったが、話を聞いていくに連れてあの上司が原因だと知り、本社に報告したんだ」

 

「そうだったんですね……自分も最初はどこか雰囲気が違う人だとは思いましたけど、まさか本社の人間だったとは―――」

 

「すまない。だが君には感謝しているんだ、もちろんこの会社にいる人間全員な」

 

そういわれると少し恥ずかしくなる。おれ自身がしたことなのだが、当の本人がそのことを一切覚えていない。お酒を無理やり飲まされたということだけはしっかり覚えている

 

「それで、今回は何をしに来たんだ?」

 

「実はここで造られている打鉄弐式をIS学園に移動させたいんです、どうも人員が割かれて開発が全く追いついていないようなので……」

 

「あぁ、そのことか。それなんだが実は問題が起きてしまったんだ」

 

問題?何かあっただろうか?システムは未完成だったり装備に関しては何も出来ていない状態だが……そうなると問題が起きたのは打鉄弐式本体?

 

「打鉄弐式は本来打鉄の最高品質の部品で造られていたはずなのだが、嫌がらせなのか知らないがあのクソのせいで最低品質の部品で造られていたんだ」

 

「そんな!部品は自分が選び抜いたものを使っていたはずです!どうしてそんなことが……」

 

「あいつは腐っても上司だ。マスターキーさえあればどこにでも入れる、これを利用して全てのパーツを最低品質のものにすり替えていたんだ!」

 

なんということだ、それが本当なのであれば俺は同僚や後輩に余計な労力を与えてしまったのでは……申し訳ないという気持ちでいっぱいだ。

 

「それでIS学園に輸送する話だったな。こちらは白式に人材を割り切ってしまっている分、完成までにはかなり時間が掛かってしまう。もし許されるのであれば、打鉄弐式に使用する部品類をそっちに送りIS学園内で組み立てる。そういった方法をとってもらえないだろうか?」

 

神童さん達が忙しいのも良くわかっている、だが俺一人で全てを完成させられるだろうか……いやいけるかもしれないな、彼女たちの協力を得られればの話だが。

 

「それで構いませんよ、ただ部品類は先に決めておきます。打鉄弐式は打鉄の発展型、最高の素材で完成させてあげたいですからね」

 

そう言うと神童さんはデスクから一つの鍵を取り出し、こちらへ渡してくれた。

 

「部品倉庫の鍵だ、じっくり選び抜いてくれ」

 

「ありがとうございます!」

 

そう言ってすぐさま倉庫に向かう、本当に神童先輩には感謝しかない。これで全ての部品が手に入る、さっそく選別だ!

 


 

よし大体は揃った、これを全てデータ化して持ち帰ろう。部分的に区別しておけばある程度の整理・効率上昇は狙える。

開発リストに載っている部品類を全てデータ化し端末に入れる。あとは過去に創っていたシステムを完成させないとな、あれが無ければ打鉄弐式は完成しない。また簪が所望する装備がどんなものかわからないからな、そこも随時聞いていこう。

 

「先輩、ありがとうございました」

 

倉庫の鍵を神童さんに渡す、にこやかに受け取ってくれた先輩はそのまま世間話を始める。時間的に余裕のある俺はそれに付き合うのであった―――

 

「そうだ、お前に持って行ってほしい装備がある。まぁこれは倉持技研のスポンサーまがいな感じだけどな」

 

そう言ってまた倉庫に連れられる、二度手間だなとふと思ってしまったがそんな事を人前で言ってはいけない。倉庫の奥に進んでいくと黒い布が被されているものが見えてくる、もしかしてこれが渡したかったものなのだろうか?

 

「そうだ、こいつだ」

 

「声に出てましたか、それにしてもこれは一体?」」

 

「ベースは焔備だが俺が改良した、名前は『焔摩(えんま)』」

 

「焔摩ですか……凄い倉持技研の刻印が強調されてますね」

 

「まあな。それでこいつをお前に持って行って使って欲しい」

 

「いいんですか?」

 

「あぁ持っていけ」

 

神童さんから託された装備『焔摩』をデータ化して収納する。この機能本当に便利だな!

 

「すみません。何か何まで……」

 

「いや良いさ。それに俺らの方も打鉄弐式を完成させられなかった……その罪滅ぼしさ。」

 

暗い表情を見せる。こころからそう思っていたんだな……

 

「それじゃあ神童先輩、またいつか。」

 

「あぁ。IS学園(あっち)でも元気でな」

 

俺は神童さんと手を交わした後倉持技研を去り、IS学園へと戻っていく。空を見上げれば既に夕日が沈みかけていた。さぁ明日から忙しくなるな!




倉持技研はもうしばらく出て来ません
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。