インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
学年別トーナメントと金銀転校生
翌日。現在時刻は丁度六時だ、俺は食堂へと移動し朝食を取る。いつもの事ながら、思春期真っ最中の女子で埋め尽くされている食堂だ。
「ねえ、聞いた?」
「聞いた聞いた!」
「なんの話?」
「だから、あの織斑君と黒神さんの話よ」
「いい話?悪い話?」
「最上級にいい話」
「聞く!」
「まあまあ落ち着きなさい。いい?絶対これは織斑君と黒神さんには教えちゃだめよ?女の子だけの話なんだから」
話を聞く少女はゆっくりとうなずく。
「実はね、今月の学年別トーナメントで―――」
のんびりと席を探していると、奥のほうで十数人がスクラムを組んでいる一団を見つけた。
凄い人だかりだと思いその場を離れようとしたところ、後ろから声をかけられた。誰かと思い振り返る。そこには先ほどの一団の中にいた簪と本音が立っていた、他の面々は少しはなれたところからこちらを見ている。
「どうした?」
「すみません、少し気になったことがあって」
「気になったこと……あぁ打鉄弐式のことか?それなら大丈夫だ、少し時間は掛かるが必ず完成させることを誓おう」
「ありがとうございます、でも今回はそのことじゃないんです」
ふむ……他に何かあっただろうか?そう思い頭の中を駆け巡るが、何一つ思い浮かぶことが無い。もしかして無自覚のうちに何かとんでもないことをしてしまったのだろうか?
「実は今月行われる学年別トーナメントで優勝した人は『織斑一夏または黒神千春と交際できる』といううわさが流れているんです。それが本当なのか確かめたくって」
「クロさんはまずこの噂話は知ってた?」
なんだその馬鹿みたいな噂は、どこの誰が流したかは知らないが……こんな噂流してなんになるというんだ?彼女たちを見るにやる気を上げることはできているみたいだな。さてどう返したものか……
「やっぱり知らなかった?」
「知らなかったな、だからこそ驚いている」
「ということは黒神さんはデマだったみたいですね」
「そうだな、少なくとも俺は何も言っていない。織斑のほうは知らないけどな」
「それが聞けてよかったです」
それは良かったが、いいのだろうか?あの子達は秘密だといっていたことを簡単に話してしまって……確証が持てなかったから俺に聞いてきたって事か、それにしても厄介な噂だ。俺は迷惑かけられるのはごめんだ。
「確認はそれだけでいいか?」
「はい、ありがとうございました」
「何か参考になったのなら、何よりだ」
そうして食事を取る為に席に着く。簪たちは一団の元に戻り今回のことを伝えたようだ、残念そうな声や「まだ希望はある!」などの声が聞こえるが……そんなに付き合いたいと思うのか?仮に俺と交際したとしても楽しいことなど何一つ無いのだが……まぁ織斑となら同年齢ということもあるだろうし楽しい交際が送れそうだな。苦労はするだろうが。
食事を終え辺りを見回す。すると一部の生徒が何かのカタログを手にあれやこれやと意見を交換している。
「やっぱりハズキ社製のがいいな~」
「そう?ハズキのってデザインだけって感じしない?」
「そのデザインがいいの!」
「私は性能的に見て、ミューレイのがいいかな。特にスムーズモデル」
「あれね~モノはいいけど高いじゃん」
どうやらISスーツのことを話し込んでいるようだった、女の子はそういった所もこだわったりするものなんだな。
「そう言えば黒神さんのISスーツってどこのメーカーなんですか?見た事無い型ですけど」
のんびりとコーヒータイムに浸っている俺の元にクラスメイトが近づいてくる、だが俺は彼女が期待しているような答えは持ち合わせていないなぜなら―――
「俺か?そもそもISスーツは着ていない」
そう、俺はISスーツを着ていないのである。そもそも男性用ISスーツが開発されていないのだから当然である。
「着てないんですか!?じゃああの服装は一体……」
「俺はISスーツの変わりに黒色のビジネススーツを着ているんだ」
「そうだったんですね」
俺がISスーツを着ていないことを知ると、暇そうに上辺を見ている織斑に視線が映る。
「織斑君のISスーツは何処製のやつなの~?」
「えっ?あぁ、特注品だって。男のスーツが無いから、どっかのラボが作ったらしい。確か……イングリッド社のストレートアームモデルだって聞いてる」
よく覚えている。最近勉強面にも力を入れてよかった、しっかりとその成果が出ているな。
ISスーツというものはIS展開時に体に着ている特殊なフィットスーツである。このスーツを着なくともISは展開が可能である。しかし反応速度が鈍るという欠点がある。ISスーツは肌表面上の微弱な電位差を検地することで、操縦者の動きをダイレクトに各部へと伝達しISが必要な動きを行う。また耐久性にも優れており、一般的な小口拳銃の弾丸程度であれば完全に受け止めることが出来る、ただし……激痛が走る。
「―――ということです」
気がつくと山田先生が立っており、先のことをすべて説明していた。
「山ちゃん詳しい!」
「一応先生ですから。……って、山ちゃん?」
「山ぴー見直した!」
「今日が皆さんのスーツ申し込み日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです。……山ぴー?」
入学からおおよそ二ヶ月、山田先生は8つくらいの愛称がついていた。慕われている証拠ではあるが、年上の人にはあまりあだ名をつけるのはよろしくない。威厳がなくなってしまうからな。
「あれ?マヤマヤのほうが良かった?」
「それもちょっと……」
「じゃあ前のヤマヤに戻す?」
「あれだけはやめてください!」
ヤマヤに何かトラウマでもあるのだろうか、山田先生は拒絶の意志を示す。酒のヤマヤかな?
「とにかくですね!ちゃんと先生をつけてください。わかりましたか?わかりましたね?」
はーいと答えているが、内心は言っているだけで何も考えていないのだろう。今後も山田先生はあだ名が増えていくことだろう。
朝食が終わり俺は走って教室に戻っていく。何故走っているのか答えは簡単だ、食堂でのんびりし過ぎて時間管理をしっかりと行っていなかったからな。
流石に参ったな今日は千冬の授業だ、遅れたらなんていわれるかわかったものじゃない。急いで教室に向かっていく。すると千冬と山田先生、金色の髪の生徒と銀色の髪の生徒が見えた。どちらも見たこと無いはずなのに既視感があった、一体どこで見たのだろう……特に金髪の生徒に関しては男子生徒の制服を着ている。だが三人目の男性操縦者のニュースなどは未だに確認されていない。となるとスカートが苦手、もしくは嫌いな生徒の可能性があるな。銀髪の子に関しては間違いなくあいつだろう、まさか千冬を追いかけにここまでくるとは思わなかった。
「黒神、何をしている。早く席に着け」
「ハァハァ……悪い、時間見てなくて」
「全くお前というやつは、しかしお前が遅れてくるとは珍しいな。」
「久々にやらかしたよ……っで?この二人は?」
千冬の後ろにいる生徒二人のことを聞き出す。
「いいから教室に入れ、それから説明する」
「了解」
そう言って山田先生と教室に入っていく、生徒は既に着席しており授業の準備が終わっている状態だった。
「皆さん!HRを始めます……とその前に!転校生を紹介したいと思います!」
転校生というのはさっきの二人のことだろう、しかし何故こんな時期に転校生が?また織斑狙いで国から飛んできたのか?全く罪深い男だな織斑は……いやそれは今回無いか。金髪の子はわからないが、銀髪の子は間違いなく千冬目的だろう。
「じゃあ入ってきてください~」
教室のドアが開き、千冬と二人の生徒が入ってくる。
「失礼します」
「…………」
クラスに入ってきた二人の転校生を見て、ざわめきが止まる。それもそうだろう、なにせ一人は男子用制服を来ているのだから。
二人の顔を見ようと視線を移動させる。
「えっ……なんで……」
俺の口からポロリと言葉が漏れる。
「静かにしろ。自己紹介は簡潔に頼むぞ」
はいと答え金髪の生徒が一歩前に出る。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことが多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします。」
転校生の一人、デュノアはにこやかな笑顔でそう告げて一礼する。あっけにとられたのは俺を含めてクラス全員であった。
「男……?」
誰かがそう呟く
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて、本国より転入を―――」
人なつっこそうな顔。礼儀正しい立ち振る舞いに中性的に整った顔立ち。髪は濃い金髪。黄金色の髪を首の後ろで束ねている。スマートな体格にしゅっと伸びた脚が格好いい。
印象としては貴公子っといった感じで、特に嫌味ない笑顔がまぶしい。そして俺はこの笑顔を知っている。
「きゃ……」
「はい?」
やばい、このままでは女子たちのソニックウェーブが引き起こされる。俺と織斑はアイコンタクトをとり、すっと耳栓をつける。
「きゃああああああああ―――っ!」
ソニックウェーブを喰らったデュノアは驚いているのがわかるくらいの表情を見せる、というか少し引いているように見える。
「男子!三人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形!守ってあげたくなる系の!」
「地球に生まれてよかった~!」
相変わらず元気な女子生徒である。他のクラスの生徒がドアの隙間から覗き混んでいないのはおそらく、教員の皆さんが頑張って食い止めているのだろう。お疲れ様です、うちの生徒が迷惑かけます。
「騒ぐな、静かにしろ」
面倒くさそうに千冬がぼやく。仕事というよりこういった反応が鬱陶しいのだろう。学生のときも千冬はあまり他の女子生徒とつるんでいなかったからな。
「みなさんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんからね」
勿論忘れては居ない、もう一人の転校生は見た目からしてかなり異端だろう。輝くような銀髪、白に近いそれを腰近くまで長くおろしている。綺麗ではあるものの整えているようには見えない、おそらくそのまま伸ばしっぱなしということだろう。そして左目に眼帯。医療用のものではなく、しっかりとした黒眼帯。そして眼帯をしていない方の右目は赤色を宿しているが、温度は限りなくゼロに近いだろう。
印象は言うまでも無く軍人。身長はデュノアと比べて明らかに小さい。しかしその全体から放つ冷たく鋭い気配は、まるで同じ背丈であるかのように見るものに感じさせる。
デュノアは男性としては小柄な方だ、もう一人の転校生は女子の中でも若干背が低い部類だろう。
当の本人は未だ口を開かずに腕組みをした状態で教室の女子たちを下らなさそうに見ている、しかしそれもわずかなことで、今はもう千冬にだけ視線を向けていた。
「……ラウラ、挨拶をしろ」
「はい、教官」
いきなり佇まいを直して素直に返事をする転校生―――ラウラに俺以外生徒がぽかんとする。それに対して異国の敬礼を向けられた千冬は、さきほどとはまた違う面倒くさそうな顔をしていた。
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」
「了解しました」
そう答えるラウラはぴっと伸ばした手を体の横につけ、足をかかとで合わせて背筋を伸ばしている。相変わらず千冬の指示を第一に動いているな。千冬を『教官』っと呼んでいるのには理由がある。
実はとある事情で千冬は一年ほど軍に所属していた経歴がある。その時に無理やり連れて行かれたからな。その後はどうしたか知らないが、一年空けてからIS学園の教員になった。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
クラスメイトの沈黙。続く言葉を待っているのだが、名前を口にしたらまた口を閉ざしてしまった。必要の無い情報は話さないということだろう。
「それだけか?ラウラ」
いたたまれない空気を感じた俺はラウラに向けてそう呟く。こちらに気がついたラウラの表情は驚きで染まっていた、そこまでビックリすることだろうか。するとこちらに近づいてくる。なんだ?何かまずい事でもしたか?
「お久しぶりです、副教官」
「副教官は辞めろ。千冬と同じだ、もう俺は副教官ではない」
ラウラの言葉に、クラス全員が再び驚愕する。これはまた面倒なことになりそうだな。
修羅になるのか?ならないのか?それは誰にもわからない