インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
「さて、今のあいだに……デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみろ」
「あっ、はい。山田先生の使用されているISはデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。第二世代開発の最後期の機体ですが―――」
下の方ではデュノアによるラファール・リヴァイヴの解説が行われていた。一方こちらの方では上手い具合にセシリアと鈴が翻弄されぶつかり、山田先生からグレネードが投擲される。爆発が起きる前に二人の機体にワイヤーを引っ掛け、何とか直撃を回避させる。これは自身の力のみでは勝てないな、二人とうまく連携して何とか追い込んでいかなければ……
「大丈夫か二人とも」
「余計なことを……」
「お前らは連携が取れていない、それを利用されているんだ。しっかりと相手の動きを見ること、何を考えているかが大切なんだぞ」
「わかってるわよ!」
凰はそう言って山田先生に突っ込んでいく。頭に血が上っていて何も話を聞いていないな……セシリアは落ち着きを取り戻したのか、俺の話を聞いてくれている。セシリアだけでもいい、連携が取れれば十分だ。
「タイミングが合えばの話だが……俺は凰を一旦後退させる。セシリアはビットを使わずにライフルで狙撃してくれ、射線が被らない上空からの狙撃を頼んだ。」
「了解しました!」
山田先生とやり合っている凰に加勢する。彼女は頭が沸騰している状態だ、頭を冷やさなければ冷静な判断が出来なくなってしまう。今も衝撃砲を何度も撃ちこんではいるものの、全て避けられている。あのままでは直ぐにSE切れが起きる、悪いけど彼女には一旦引いてもらうとしよう。
「凰!避けろ!」
デスペア・ブラストを展開し、最低出力で撃ち込む。あの戦闘後こいつに出力制限をかけておいた、あんな威力のものは人に向けてはいけない……俺なら死ぬ。
「何するのよ!あぶないじゃない!」
「お前のほうが危ない、周りを良く見ろ。上手いこと誘導されてるし、衝撃砲をバカスカ撃ってるし……とりあえず下がってろ、そして頭を冷やしておけ」
「なんでよ!まだ私はやれる!」
「やれるとか、そういう問題じゃない。とにかく下がれ。セシリアといったん体勢を立て直して連携を組むんだ!」
頭に血が上っていれば相手の思う壺だ。だでさえこっちが不利な状況なんだ、冷静になってもらわないと……俺一人でどこまで押さえ込めるか、正直ここまで早く二人を下がらせることになるとは思わなかった。だがその分戦いやすくなったな。俺には集団戦闘が向いていない。
「覚悟してくださいね黒神さん」
いつものおっとりとした山田先生ではない。確実に相手を倒す為に狙いを定めている目をしている、これは千冬よりも辛いだろうな。
「ははっ……お手柔らかに」
さてどうしたものか、正直勝てる見込みはない。実力やIS稼働時間からしても山田先生が上、俺に出来ることは最低限の回避行動とわずかな攻撃のみだ。だが回避先も読まなければならない、あの二人は回避先が簡単に読まれていたり、自身の特徴である衝撃砲やビットを撃っていれば当然エネルギー切れを起こす。そうなれば使えるのは実弾と実刀、エネルギー系統は余計なエネルギーを使うだけだ。
「そこです!」
山田先生がこちらに撃ってくる。だがこれは威嚇射撃、そうわかれば近づくだけだ。《黒龍》を展開し懐に突っ込む、だがおそらくこれも読まれているだろう。一気に距離を離される。だがそれは予想範囲内だ、展開していた《カノン》で装甲を狙い撃つ。これは予想外だったのか、なんとか二発程度は当たる。だがそれ以外は全て回避されまた距離を置かれる、決定打がない状態だからこそ難しいものだ。
「流石……元代表候補生、IS操縦はお手の物か」
「昔の話ですよ、それに候補生止まりでしたから」
「それでも候補生だ、実力は間違いない」
山田先生は過去に日本の代表候補生として選ばれていたことがある。確か使用していた機体は今使っているリヴァイヴだったはずだ、千冬が見ていた候補生のデータを少し見せてもらったことがある。使い慣れている機体だからこそここまでの実力を引き出せていると言えるのだろう。三対一という状況で専用機を簡単に後退させる実力を持っているだけ優秀である、全く厄介な実演を組まされたものだな。あとで千冬のお酒を半分に制限しておくとしよう。
突然上空からレーザーが放たれ、山田先生は回避するままもなく被弾してしまう。上を見上げればそこにはセシリアがライフルを構え、こちらの動きを探っていた。
「会話も一つの作戦ですよ?山田先生?」
「っ……そうですね、油断していました」
正直やり方としては褒められたものではないだろう。だがこちらが不利な分、ある程度卑劣な作戦も考えなければ勝てない。
「今度はこっちから行くぞ!」
再び黒龍を構え山田先生を見据える。さてどうしたものか。IS技術は明らかに劣っている、更に言えば俺よりも射撃技術は上……対近接戦闘用の訓練のしっかりとされている分、攻め込むのが困難だ。流石『
『いいな凰、落ち着いたら戻って来い』
『えぇ、千春さんの実力見せてもらうわ』
実力を見せれるかどうかは別問題だ。何せ実力は月とスッポン、唯一勝っているところがあるとすればそれは非道な作戦を考えられる頭脳だ。
「―――っ!」
瞬間加速で一気に山田先生に近づく、彼女も一瞬驚きをみせるがすぐさま反応し対応する。間合いに入った瞬間黒龍を振り下ろしダメージを与える、追撃としてカノンを構える。だがその瞬間、目の前に小さな筒が飛んでくる。グレネードだ。山田先生は既に後退し、爆発に巻き込まれないようにしていた。
「間に合わなっ―――」
目の前でグレネードが爆発し煙に包まれる。
「焦りました……ですけどこれで同等ですね!」
煙の中からゆっくりと影が落ちてくるのが見える、しかも黒神さんは真っ直ぐに落下してくる。おそらく意識が無い危険な状態なのだろう、山田先生が急いで加速し黒神さんの腕を掴もうとする。
「「黒神さんっ!」」
凰とセシリアが落下していく千春の名を叫ぶ、だが千春は微動だにせず地面に落ちていく。下の方でも悲鳴が聞こえるが、千冬とラウラは何もいわず。じっと千春を凝視していた。
山田先生が直撃は避けようとこちらに手を伸ばした瞬間、山田先生は謎のダメージに襲われる。何処からのダメージか確認する、それは背後に刺さっている《影縫》であった、ワイヤーが射出されているのに気がつかなかった山田先生はまんまと黒神の罠に引っかかってしまったのだ。
「山田先生……まだ終わってませんよ!」
気を失っていたフリをしていた千春が目を覚まし、ワイヤーを一気に回収し山田先生と密着する。
「やっぱりな」
「副教官らしいですね、教官」
どこか既視感があったのだろう、ラウラと千冬がそんな会話をしている。まぁ過去に対峙したときに俺が見せた戦法でもあるからな。
「これなら避けられませんね」
そう言って一気に地面に堕ちて行く。俺がやろうとしていることは墜落に近い、最大限まで落下し一気に影縫を引き抜く。先生には悪いけど、地面に叩き付けられてもらう。
「えっ!?待ってください!?」
「もう待てませんね!」
そう言って山田先生だけを地面に叩き付ける、衝撃で砂煙が巻き起こり先生の姿が確認できなくなる。おれ自身はなんとか回避できたものの、体力の限界でほとんど動けずその場で膝をついてしまう。これである程度は削れたはずだ、あとはカノンで―――
煙がはれて姿が見えてくるはずだった、だがその中に山田先生の姿は無い。激突痕はあるもののどこにも先生の姿は無かった。まさかと思いゆっくりと振り返る、そこにはこちらに銃口を向けた山田先生が立っていた。
「ははっ……上手くいったと思ったんだけどな」
「ギリギリでしたよ、まさかあんな無茶なことをするとは思いませんでした」
「どうやって後ろに?確実に仕留めたと思ったんだけどな」
「スモークグレネードで砂煙を巻き起こし、様子を伺っていたんです。丁度体力切れだったみたいですね」
なんてことだ、ここまで簡単に裏を取られてしまうとは……だが俺一人で戦っているわけではないんだ。
山田先生の頭上から四本のレーザーが降り注いでくる、セシリアのビットだ。何とか作戦会議は終わったみたいだな、凰も近接装備片手にこちらに向かってきている。ここは二人に任せて俺はいったん身を引くとしよう。
『任せたぞ二人とも!』
『了解!』ですわ!』
この後セシリアと鈴のペアで山田先生と対峙したものの、上手く追い込まれた際にグレネードランチャーでまとめて墜とされてしまった。やっぱり即席での連携は欠陥だらけだったな。こればかりは仕方が無い。
「あとは黒神さんだけですよ?」
こちらに銃口を突きつけながら、山田先生はにこやかな笑みでそういってくる。いやはやまさかここまでだとは思わなかった、だが仕方が無い。最後まで抗って見せるか。
そんな事を考えていると千冬から個人通信が入ってくる、『もう終わったもいいぞ。』との事だった。最初は山田先生にも連絡しこれを終わらせようとしたのだが、彼女はこちらに弾丸を放ってきた。つまりこちらを早めに墜として終わらせようとしていると言うことだ。
「しょうがない……『雪片』『ブラスト』!」
そう叫ぶと俺の手には黒式の禁じ手(俺が勝手にしている)が形成される、どちらとも高火力の装備であるため扱いが難しい。黒式の能力を使えばSEは削られていく、しかし使わなければブラストの反動に耐えれない。まさに肉を切らせて骨を断つということだ。
「いくぜ……」
俺の口調が変わったことに山田先生は少し驚いた表情を見せるが、すぐさま臨戦態勢を取り戻す。
「ここで決める感じだな、口調が変わるのもあいつらしい」
千冬先生が彼を見上げながらそんなことを呟く、伊達に幼馴染をしていると言うわけではないらしい。
「黒神さんの雰囲気が変わりましたわね、かなり集中なされている感じですわ」
「そうね。かなりの高火力装備を取り出したあたり、終わらせにきてるわね」
セシリアと鈴も上空の二人に視線を移し、戦闘状態をうかがっていた。
山田先生は的確に俺の考えを先読みし進路を潰してくる、だがそんな事お構いなしに俺はライフルからレーザーの銃弾を発射する。レーザーに飲み込まれた実弾は跡形も無く溶けていき、俺に届くものは一発も無かった。そして彼女のライフルからカチッと弾切れを告げるむなしい音が響いたとき、俺は一気に彼女へと接近し雪片による会心の一撃を叩き込んだ。
「早い……!」
何とか俺から距離を取ろうと、スラスターを逆噴射する。しかしそう簡単に逃がすわけが無い。腕部に内蔵されているワイヤーで山田先生の腕を掴みこれ以上の距離を離されるのは面倒だからな。
「往生際が悪いですよ!」
そういって近距離でライフルを放つ、勿論出力はSEバリアが破られない程度に抑えてある。それでも威力は絶大であり、山田先生は苦悶の表情を浮かべていた。
「チェックメイトだ」
俺は山田先生の腹部に銃口を当て、そう宣言する。これで相手も降参を選んでくれるはずだ。そう思っていたが案外そうでもないらしい。彼女はにやりと笑うと口をゆっくりとあける。
「黒神さんは強いですね、流石織斑先生が鍛えただけあります」
「……まぁこれだけされて負けるのはいやなんでね、千冬に泥塗らないためでもありますけどね」
理由は他にも沢山あるが、今いえるのはこれくらいだろう。山田先生はそうですかと呟く
「話は変わりますが黒神さん、これなんだと思います?」
そういって彼女が取り出したのはグレネードだった、しかも通常のものとは違い威力の高いクラスター型であった。
「クラスター型グレネード!」
俺は急いで彼女から離れようとする、既にグレネードはピンが抜かれている状態だ。一刻も早くこの状態を解除しなければならなかった。しかし、俺の体は動かず山田先生に拘束されている状態であった。原因は俺の腕から射出されていたワイヤー、気がつかないうちに俺と山田先生が密着するように巻きついていたようだ。
「まさか……わざと被弾して!」
「敵の装備を利用するのも戦略の一つですから、それに―――会話も作戦の一つですからね」
彼女がにこやかにそう呟くと、グレネードが大爆発し俺と山田先生は爆発に飲み込まれていく。身体に激痛が走っていくのが伝わる、黒式の能力が無ければ俺の体には無数の風穴が開いていただろう。しかし反動は防げないものだったのか、俺の体には衝撃が幾度と無く叩き込まれていく。これは流石に不味い……な
グレネードの爆発が発生し二人が飲み込まれていった、煙の中では何が起きているかわからないがおそらく大惨事だろう。煙が少しずつ引いていき二人の姿がハッキリと確認できるようになる、しかし片方はISを纏っておらずそのまま落下していく。間違いなくあれは千春だ、このままでは地面に直撃する。急いでセシリア達を向かわる―――まえに一つの影が颯爽と飛び出していった。オレンジ色の機体色をしたリヴァイヴ、あんな機体は見たことが無い。
機体はなんとか千春を受け止めたようで、こちらに問題はないとジェスチャーを送ってくれた。搭乗者を良く見るとシャルル・デュノアであった、判断力といい行動力がずば抜けていることがいやでも良くわかるな。
「大丈夫かね山田くん?」
ゆっくりとこちらに向かってくる山田先生に状態確認をする、見た感じでは彼女のアイデンティティーであるメガネにヒビが入っているあたり、爆発の威力が壮絶なものであったことが確認できる。
「なんとか大丈夫でした、SEが一桁になったときは焦りましたけど」
「そうか、千春のほうは?」
「なんと言えばいいのでしょうか……激痛に頑張って耐えている表情や、苦痛の叫びを何とかこらえようとしていましたね。心がやられそうでした」
だろうな、私もそんな表情を近くで見ていたのであれば彼女と同じ心境になるだろう。
「悪い……心配かけたな。」
俺は少し気を失っていたらしく、デュノアに抱きかかえられている状態だ。起き上がろうとすると体に激痛が走る、流石にあれを受けて無事はすまなかったな。
「大丈夫ですか!?何処か痛いとか―――」
「少し身体は痛むが大丈夫だ」
「それなら良かったです!じゃああっちに連れて行きますね」
そういって俺はデュノアに抱きかかえられたまま、千冬たちの元へと届けられる。流石に恥ずかしかったが体があまり動かない状態であったためどうしようもなかった。
「まったく、間に合わないかと思ったんですからね。心臓に悪いですよ」
確かに人が無防備な姿で落ちてきたのなら誰でもはらはらするだろうな、こればかりはデュノアに感謝してもしきれないな。
その後千冬から心配をかけるなとお叱りを受けたのは言うまでもない。