インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
デュノアとラウラが転校してきてから五日がたった、今日は土曜日だ。IS学園では土曜日の午前は理論学習、午後は自由時間となっている。とはいえ土曜日はアリーナが全開放されている為ほとんどの生徒が実習に使う。それは織斑たちも同じで、今日はデュノアを混ぜた手合わせをした後、ISの戦闘に関するレクチャーを受けているようだった。俺は少し離れた格納庫にて打鉄弐式を組み上げていた、一人でやっていることもあり苦戦することもしばしばある。だが約束したのだからしっかりと組み上げてやら無いとな……ちなみに簪ちゃんは今回本音に連れて行かれたためこの場にはいない。
「ご苦労様です、千春さん」
「どうも、楯無さん。妹さんとの関係は良くなりましたか?」
更識楯無さんが様子を見に来たようだ、相変わらず凛々しい人だ。月曜に贈ったメールの反応からするに、既に彼女もデュノアには気が付いていたらしい。さすが生徒会長ということもあるのだろう、一体何処からその情報が手に入るんだろうか?それとも本能的に違いが分かるのか?
「私が簪ちゃんとの関係気にしているの知っていて言うんですね?あれからは何もありません、私も簪ちゃんもお互いに避けてしまっている形なので……」
「どうすればそこまで拗れるんですか……」
本当に姉妹というものは厄介な関係を築き上げるものだ、どちらかが劣等感を見出すときりが無い。俺は彼女達がここまでこじれてしまった原因を知らない、だから下手に手を打つことはしない。それにこれは彼女達自身で解決したほうが成長につながるだろう。
「それで、シャルロット・デュノアの件はどうなってるんですか?」
「今はまだ様子見ですが、アルベール・デュノアからの確信が得られれば実行する予定です。千冬に協力して貰っています」
「どうするか伺っても?」
「まず俺はフランスに飛びアルベール・デュノアと直接会います、そして問題を取り除き帰国する。その後デュノアは本国から呼び戻され妹のシャルロットが来たということにします。色々と不備などはあるでしょうが……そこは後々ってことで」
それまでにデュノアが女とばれなければいいんだが……そうなると俺が監視しなくちゃいけなくなるな、また一つ苦労するな。俺がフランスに行っている時には彼女達の力を借りるとしよう、そのためにも彼女には信頼してもらわないといけないな。それか彼女の秘密ごとでも取引に使ってみるか。
「万が一失敗した場合は、私のほうで処分を言い渡します。いいですね?」
「千冬にも同じ事を言われましたよ、まぁ失敗する気なんてさらさら無いんですけどね」
そうしてデュノアたちのほうを見ていると、なにやら様子がおかしい。アリーナ内がざわめきにつつまれる、みんなの視線から注目の的を探る。
「ちょっとあれ……」
「ウソッ、ドイツの第三世代型だ」
ドイツの第三世代型だと?そんなバカな、未だに量産の目処が立ってもいないし機体の安定化も図れていないのにか……しかしそんな事不可思議なことではない、セシリアという前例がある。おそらく彼女も機体の稼動データを取りに来たと言うことだろう。
「まだ本国でのトライアル段階だって聞いたけど……」
その通りまだトライアル段階のものだ、しかし動かせないと言うことではない。試作物は動かしてデータを取ってこそ意味がある。しかし何故急に彼女はこの場に現れたのか、それが分からない。クラスでもほとんどの生徒と話をせず、千冬としか話をしているところを見たことが無い。そんな彼女がここで何をするのだろうか?
「ラウラ……?あいつ何してるんだ?」
「ドイツの代表候補生よね?いきなり現れるなんて、びっくりだわ」
「何を仕出かすか分からない、こうなれば向かうのみだ」
万が一であるが問題を引き起こされた困る、転校五日目で問題を起こされてはドイツも溜まったものじゃないだろう。まったく!この学園問題児多すぎ!
転校生のボーデヴィッヒから突然ISの
「なんだよ」
俺が返事をすると、ふわりと飛翔してくる。何が目的なんだ?俺に出来ることなんて限られてるぞ?
「貴様も専用機持ちだそうだな?ならば話が早い。私と戦え」
いきなり何を言っているんだこいつは、戦うのが大好きなのか?戦闘狂かよ、生憎だが俺にはそんな趣味は無い。是非他をあたってほしいところだ。
「嫌だ、戦う理由がない」
「貴様に無くとも私にはある」
そうだろうな。ドイツ、千冬姉と来たら思いつくのは一つしかない、第二回IS学園世界大会『モンド・グロッソ』の決勝戦での出来事だ。俺としてはかなり思い出したくない記憶だが、それと同じくらい忘れられない記憶でもある。
はっきりいってしまえば俺は決勝の日に誘拐された。謎の組織によって。実際のところ俺を誘拐した組織は何処の組織かわかっていない、だから謎の組織といっている。何の目的があったのかわからないが、俺は暗い部屋の中で拘束され閉じ込められた。時間の感覚が全くわからなかったが、突然部屋の外から悲鳴を上げる声や、大きな音が何度も響いてきた。
ゆっくりと部屋の扉が開いた、きっと千冬姉が助けに来てくれたのだと思った。だがそこに現れたのは黒神千春だった。千冬姉の変わりに俺を助けに来たらしい、だけど俺は千冬姉に助けてもらいたかった。今思えば俺はわがままだった、命があるだけありがたいと感じてしまう。
もちろん決勝戦は千冬姉の勝利となり、大会二連覇を果たした。誰しもが千冬姉の優勝を確信していたこともあり、大会二連覇は大きな話題となった。
俺の誘拐事件に関しては世間一般的には公表されなかったのだが、独自の情報網から俺の監禁場所に関する情報を入手していたドイツ軍関係者は全容を把握している。そして千春と千冬姉はそのドイツ軍からの情報によって俺を助けたと言う『借り』があった為、大会終了後に一年ちょっとドイツ軍IS部隊で教官をしていたことがある。
そこから少し足取りがつかめなくなり、いきなりの現役引退。そして現在IS学園教師という仕事に就くことになる。千春のほうは就職していたと言うことすら知らなかった。
「貴様は教官の弟だそうだな、ならばそれ相応の実力があると見込む」
どうやら千冬姉の教え子と言うこともあり、その強さにほれ込んでいるのだろう。だが俺には千冬姉ほどの実力は無い、さらに言えば千春にも負けでしまう程度だ。そんな俺を求めて何になるというんだろうか?
「また今度な」
「ほう、逃げるのか。随分と弱気なのだな、だから副教官と比べられるのだ」
確かに女子達の中で見定められている、現時点で言えば千春の方が人気だ。前までは弟の俺に人が集まっていたが、クラスの代表を決める戦いや先月の対抗戦で俺の実力が皆に知られた。そして千冬姉と束さんの幼馴染と言うことで注目が集まり、それなりに実力もあるということで俺よりも千春の方が人気となっている。
羨ましいことは無いが、それなりのスペックを持っている千春が人気なのはわかる。だが俺は千春と比べられるのが1番嫌なことなんだ!スターと地点は同じはずだったのに気がつけばここまで差が広がってしまっている、自分自身の不甲斐なさもあるだろう。しかしそれでもあいつと比べられるのだけは嫌なんだ!
「はぁ……いいぜ、やってやるよ」
「織斑君!?」
「シャルル下がっていてくれ、こいつは俺が―――」
言葉を続けようとしたとき、ラウラはその漆黒のISを戦闘状態へとシフトさせる。刹那、左肩に装備された大型の実弾砲が火を噴いた。
「―――っ!」
「こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツの人は随分と沸点が低いんだね。ビールだけでなく頭もホットなのかな?」
「貴様……」
横合いから割り込んできたシャルルがシールドで実弾を弾き、同時に右腕に六一口径アサルトカノン《ガルム》を展開してラウラに向けている。
「フランスの
「未だに量産型の目処が立たないドイツの
お互いに涼しい顔をした睨み合いが続く。俺はシャルルが割って入ってきたことに驚いたが、それ以上に装備の
通常1~2秒ほど掛かる量子構成をほとんど一瞬で、それも照準を合わせるのと同時に行っていた。なるほど、これが出来るからこその大容量
シャルルが代表候補生であること、その専用機が量産機のカスタム機であること、その両方の理由に納得がいった。
「黙れ!」
一気に腕を振りかぶり、シャルルを殴り飛ばそうとしている。手首からプラズマが起き手刀のようになっている。狙いは間違いなく頭部、そうはさせるものかと《雪片》を起動しようとする。しかしそんなことをするまでも無く、ラウラの腕は何者かの銃弾を受け横に流れた。銃弾が向かっていた方向を見ると―――
「そこまでだラウラ、デュノアも臨戦態勢を解け」
「副教官……」
そこには《カノン》を持った千春の姿があった。ISの基本装備を生身で扱っているのが、身体に負荷が掛からないのか?ISの装備って生身で扱うようには設計されていないと教わっている。
「一旦引けラウラ、出なければ強硬手段に出るが?」
千春が見たことの無い目をしている、ドイツにいた時はこんな感じだったのか?ラウラが驚いた表情をしている。シャルルもそのあいつの威圧に押し潰されそうになっていた。
「くっ……今回は引きます」
横やりを二度も入れられて興がそがれたのか、ラウラはあっさりと戦闘態勢を解除してアリーナゲートへと去って行く。
「次回は無いだろう……」
ラウラと千春と千冬の関係性はいろいろと複雑です。
楯無と千春は弄りあい合戦です。