インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
「大丈夫かデュノア、織斑」
「助かりました」
「おう、助かった」
つい数秒前までラウラを見つめていた鋭い眼差しはもう無い。いつものようにキリッとした千春の顔がこちらを見ていた。
「今日はもう上がれ。四時を過ぎたからアリーナの閉館時間だ」
「もうそんな時間か、シャルル銃サンキューな。いろいろと参考になった」
「それなら良かった」
ニッコリと微笑むシャルル、その無防備さに俺は何かに駆られそうになる。だが俺はあくまでもノーマルだ、その気は無い。
「えっと……じゃあ先に着替えていいよ」
シャルルはいつも俺を先に行かせようとする。とにかく俺と一緒にはなりたくないらしい。というか着替えたところを一回も見たことが無い、今日は前もってISスーツを着ていたし。俺は嫌われているのだろうか?うーん……考えないようにしよう。
「たまには一緒に着替えようぜ?」
「いや、僕は黒神さんとちょっと話しがあるからやめておくよ」
「つれないこと言うなよ」
「つれないって……僕は黒神さんと話しがあるっていったよね?どうして僕と着替えたいの?」
「どうしてシャルルは俺と着替えたがらないんだ?千春とは着替えてるのに」
質問を質問で返すのはちょっとマナー違反だが、シャルルにはそこそこ強引にした方がいいことがわかったので問題ない。
「どうしてって……その、恥ずかしいから」
おかしなこと言うやつだなぁ。シャルル自身細身ではあるが、しっかりと鍛えられた体つきに見える。それなのに何故恥ずかしいと言うのだろうか?
「慣れれば大丈夫。さぁ一緒に着替えようぜ」
「いや、えっと……」
何か適当な言い訳を探しているのだろうか、視線が宙をさまよっている。よし、あと一息と見えた。
「なぁ、シャ―――」
「デュノアすまない、こっちの作業が少し遅くなりそうなんで手伝って欲しい」
「わかりました、じゃあね織斑くん!」
そういって千春の方へと走っていった。やっぱり信用の問題だろうか?それとも別の何かだろうか?
「アンタはさっさと着替えなさい。引き際をしらないやつは友達無くすわよ」
鈴に首根っこを掴まれた、いきなりで苦しいからやめてほしいんだが。
「こっちも着替えに行くぞ。セシリアついて来い」
「言われなくともわかりますわよ、箒さん」
仲良さそうに女子達は更衣室へと移動していく。そういえばいつの間にか、女子同士は名前で呼ぶようになったな。俺は箒と鈴には「一夏」と呼ばれているが、他の女子には「織斑くん」「織斑さん」と名字でしか呼ばれない。やっぱり嫌われている?それとも距離を置かれているのか?
「鈴」
「なによ?」
「俺って嫌われてるのかな?」
「さあ?それはわからないわ。皆まだ距離感が掴めてないんじゃない?」
まぁ確かにそれもあるんだろうが……俺の気にしすぎか、千春だって「黒神さん」と名字で呼ばれているしな。
「じゃあ着替えてくる」
「先に待ってるわね」
そうして鈴とは一旦別れて更衣室へと急いだ。
「余計な仕事を増やして悪かったなデュノア」
「いえ、僕にとっては助けでしたから。気にしていないです」
そういわれるのなら有り難い。実際織斑がしつこかったこともあるのか、彼はホッとしていた。すると何処からか視線を感じる、恐らく彼女だろう。振り向くとそこには楯無さんが立っていた。
「まだいたんですね、楯無さん」
「えぇ、色々とあるので。何処まで進みましたか?」
それはISの話をしているのだろうか?それとも計画の話をしているのだろうか?
「ISは基本が終わりました、これから装甲や装備を作成していきます。また装着者である簪にも合うよう、ISの細かい設定などもしていくつもりです」
「そうですか、ではその時には簪ちゃんを呼んであげてくださいね。あの子黒神さん一人に造らせるのは悪いと思っているみたいですので」
「まぁ姉の貴女が言うのであれば、そうしましょう。そのときは貴女も協力してもらいますけどね」
「わかりましたそのときは、お願いしますね?計画の方も……」
釘を刺された、絶対に失敗するなよ?したらどうなってるかわかるよな?という眼で言われた。失敗する気はさらさら無い、必ず成功させるさ。きょとんとした表情でデュノアがこちらを見ているが、こっちの話だから気にしないでと言うと、わかりましたと笑顔で返してくれた。バレていないだけ助かる。そうして楯無さんは格納庫から去っていった。
「よし、とりあえずこれで全部だ。あとはここを去って更衣室に行くぞ」
「はっはい、わかりました」
何で織斑のときは嫌なのに俺のときは拒否しないのだろうか、これがわからない。ばれるのが嫌なのであれば普通は拒否するはずだ、もしかしてばれてもいいと思っているのか?よくわからないやつだな……
がらーんとした更衣室。ロッカーは50ちょいあり、当然室内もそれに見合って広い造りになっている。俺はデュノアから少し離れつなぎを脱いで制服へと着替えていく。あっつなぎじゃんまた整備室に戻しにいかないと。面倒だが明日でいいか。
「オイル臭いな……まぁ昔もそうだったか」
シャワーだけでなくお風呂に入りたいと思ってしまう。噂ではあるが男性操縦者が二人に増えたことで山田先生が入浴場のタイムテーブルを組み直しているらしい、有り難いことこの上ない。
「よし、着替え終わり。デュノアそっちは終わったか?」
「もう少しか掛かります~」
「わかった。」
着替え終わった俺は自販機で飲み物を二つ買っておく、勿論一つはデュノアの分だ。流石に差し入れくらいは持っていかないとな。
「あのー黒神さんとデュノア君はいますかー?」
「はい、いますよ。」
ドア越しに呼んでいる声が聞こえる、声からして山田先生だろう。噂をすれば何とやらと言うことだろう。
「入って大丈夫ですか?まだ着替え中だったりします?」
「デュノアがまだ済んでないですね」
「そうですか、じゃあこのまま言いますねー」
ドア越しに言ってくれる事で時間の無駄を無くしてくれるのは有り難い。
「今月下旬から大浴場が使えるようになりますー。結局時間帯別にすると色々と問題が起きそうだったので、男子は週に二回の使用日を設けることにしましたー」
「そうですか、ありがとうございます」
正直大浴場が使えるのは有り難い、のんびりとしながら湯に浸かれるのであればきっと疲れも取れるだろう。
「いえ、仕事ですから。このことは織斑君にも伝えてあるので、安心してくださいね~」
「わかりました」
ドア越しに山田先生が立ち去る音が聞こえる。大浴場が使えるようになったのはデカイ。感謝します山田先生。
「終わりました」
デュノアが着替えるのを終わらせてこちらに来る、デュノアにもあの話は聞こえていたから大丈夫だろう。
「それじゃあ部屋に戻るぞ」
「はい」
俺とデュノアは寮へと戻っていく。途中で女子に囲まれたのはいうまでも無い、全く勘弁してくれ……俺はデュノアを抱えて一目散に部屋に入った。後々そのときの写真が出回るのだがそれは別の話。
今はのんびりと端末を起動し、メールボックスを展開する。そこにはデュノアの父親であるアルベール・デュノアからのメールがあった。
私は暗殺を企てた一派から守る為に、デュノア家の圧力が届かないIS学園に男装という形で送り込みました。
幸いなことに、貴方がIS学園にいることを知り、安心して送りだすことが出来ました。
貴方がこちらに向かわれるのであれば、六年前と同じようにシャルロットの身を護っていただきたいのです。
ですが最悪の場合あなたの手を汚してしまう可能性があります、勿論ただで解決してほしいとはいいません。
貴方の手が汚れてしまったのは、これを任せてしまった私達の責任です。シャルロットの気持ちも理解できないまま送り出してしまった私たちの責任なのです。
貴方にしか任せられない、そうして押し付けてしまった罪悪感があるのです』
まぁ確かにシャルロットの気持ちを無視してここに送り込んだのはダメだったな、しかし彼女が命を狙われているのであればそれは無視することはできないな、来週には外出届けを出すとしよう。
いやシャルロットが嫌だろ、それこそ彼女の気持ちを理解できていない。彼女には彼女の好きな人がいるはずだ、その気持ちを邪険にするほど俺は鬼じゃない。だが用意出来る限りか……実に魅力的なものだな、ならば第二世代最強の装備を一つ頂くとしようか。デュノア社のロゴつきでな。
そう言えばボディーソープが切れていたな、ここの部屋のボトルが小さいせいだな。デュノアはそれに気がついているだろうか?とりあえずとりやすいように物は出しておくか。休日になったら買い物に行くからそのときに買うとしよう。俺は洗面台に移動し小さい棚から変えのボトルを出す、これをデュノアが取りやすいようにカゴの仲に入れようとした。するとガチャっとドアの開く音が聞こえた―――なんということでしょう。
デュノア社の人の本音が見えたり見えなかったりする話でした、そしてもうそろそろ大浴場が使用可能になりますね!