インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
それは彼女も彼も同じ。
ドアの開く音が聞こえ視線を向ける。シャワー室から出てきたのは―――
「くろ……かみさん?」
何処かで見たことのある「女子」だった。なぜ女子とわかるのか。簡単だ胸がある。
濡れた髪はわずかにウェーブがかかったブロンドで、柔らかさとしなやかさを兼ね備えている。すらりとした身体は脚が長く、腰のくびれが実質的な大きさ異常に胸を強調して見せている。
金髪碧眼という見た目から間違いなく日本人でないことはわかっていた、「デュノア」という名を聞いたときもしやと思った。そのせいだろうか、サイズ的にはたぶんCカップぐらいのバストが大きさとは関係なく絶妙に際立っている。水を弾く若々しい肌には球の雫が乗っていて、まるで宝石のように輝いている。
とにもかくにも女子の裸、全裸。俺は瞬時に煩悩をかき消し、視線を逸らす。だが見てしまったことに変わりは無かった。
「えっとだな……」
言葉が詰まる、なんといえばいいのだろうか?決して覗きをしたかったわけではない。だがどう表現したら良いのかわからず混乱してしまう。とりあえず体を隠してほしいものだ。
「きゃあっ!」
ハッと我に返った少女が慌てて胸を隠しながらシャワールームに逃げ込む。ドアが閉まった大きな音で俺もやっと正常な思考回路を取り戻し、聞こえてくる水音が耳に戻ってくる。
「えっと……変えのボディーソープここに置いておくからな」
「……うん」
会話にはなっていないだろうが、俺はシャワールームの前にボトルを置く。その後は思考回路を落ち着かせるために脱衣場を出た、たった数十秒という短い時間の中でいろいろとあったからな。
「はぁ……」
なんということだ、まさか千冬以外の裸を見るときが来るとは……事故とはいえ見てしまったことには代わりが無い。シャルロットには悪いことをしてしまったな……先の記憶を忘れる為に俺はアルベール・デュノアにメールを返信する。
それでは来週会いましょう。
P.S.
事故とはいえシャルロットの裸を見てしまいました。申し訳ございません。
ですがそういった気はなかったということだけ説明させていただきます。』
送信っと……絶対怒るだろうな、アルベールさん娘思いだから。いやもうフランスに行くの怖くなってきたな、あったらなんて言われるかわかったものじゃない。
メールを送信し終わった後、ガチャッと扉の開く開く音が聞こえる。
「あ、上がりました……」
「あ、あぁ」
背中越しに聞く声はやはりデュノアであった、俺は心臓の音を意識しないようにしながら振り向いた。そこには男性としての姿を捨て、本来の性別である女性としての姿があった。ジャージを着込んでいるが、女性特有の胸のふくらみが目立っていた。やっぱり女の子だとしっかりと再確認できた、あとはあれだけか。
「………………」
「………………」
かれこれ一時間はこうしているだろうか。俺と目の前にいる少女シャルロットはお互いのベットに腰をかけて向かい合っている状態だ、しかし視線はそれぞれ彷徨したまま。無言のときを過ごしていた。
「そのだな……」
らちがあかないので俺から声をかけると、シャルロットはビクッと身を震わせる。そんなにビックリされるとは思わなかった。
「とりあえずお茶飲むか?」
「うん、貰おうかな……」
お互い、何かしら飲み物があったほうが話をしやすいと感じた。俺は電気ケトルでお湯を沸かすとそれを急須へと注ぐ、お茶が出来るまで時間がありまた沈黙の時間が始まった。すると端末が光り振動する。どうやらメールのようだ。起動して届いたメールを確認する。
違う違う、そうじゃそうじゃない。気が早い気が早い!まだそんなこと決断させないで!シャルロットだってこんなこと聞かせたら困惑するに決まってる。式を挙げるにしてもまだ彼女は未成年だろうが!あと会社に関しては経営が駄目なんだろうが!俺はすぐさま誤解を解くために彼に急いでメールを送った、冷や汗が止まらないぞ畜生め。
「もう大丈夫だろ、熱いと思うから冷ましてから飲むといい」
「ありがと―――きゃっ」
湯飲みを渡すときに手が触れてしまった、シャルロットが慌てて手を引っ込める。湯飲みを落としそうになるが、なんとか握り直す。しかしその反動でお茶が手にかかってしまった。
「あっ……水っ水っ」
急いで水道のとこに移動し蛇口を全開にする。水でなんとか手を冷やして事なきを得た。これは軽いものだからそこまで悪化することはないだろう、右は利き手だからあまり傷つけたくないんだけどな。
「ごめん!大丈夫?」
「あぁこれくらいならやけどにはならない。大丈夫だ」
「ちょっと見せて。……赤くなってる。ごめんね」
軽くパニックになっているのか、強引に手をとってお湯の掛かった場所を痛々しげな表情で見つめる。
「直ぐに氷貰ってくるね!」
「その格好で出るのはマズイ、それに氷は冷蔵庫にあるから大丈夫だ。それを取ってくれでばいい」
先も言ったがシャルロットの格好はいつもと同じシャープなラインが入っているスポーツジャージなのだ。俺にバレてしまったのが原因だろうか、胸を隠すためのコルセットをしていない。その上で身体のラインがくっきりと出てしまう服装をしているのだから、胸があることが思いっきりわかってしまうのだ。だからその格好で外に出てはいけない。
「でも―――」
「それよりもだ……さっきから胸が手に当たっているんだが……」
言われてやっと自分の体勢を理解したのか、シャルロットは俺から飛び退くように離れると胸を隠すように自分の身体を抱く。若干弱弱しくはあったが、シャルロットは女子特有の抗議の眼差しを送ってきた。
「心配してるのに、黒神さんのえっち……」
「なっ!?それはシャルロットが―――っ」
俺が悪いのか?だが俺は一度シャルロットの裸を見てしまっている。もしかしたらそういう眼で見てしまっている可能性がある。おかしいな?千冬の時はそこまで無かったのに。
しかし気のせいだろうか、シャルロットの眼差しは抗議だけではなく全体的に恥ずかしそうでどこか嬉しそうな表情をしている。もしかしてシャルロットという名を言ったからだろうか?
「よし、ここまで冷やせば大丈夫だろう」
「う、うん」
今度はちゃんと湯飲みを受け取ったシャルロットは、ゆっくりと一口日本茶を口にする。俺も同じように一度のどを潤すと、先からの疑問であったことを聞いてみた。
「どうして男装を?」
「それは……実家のほうからそうしろって」
「デュノア社の社長から?」
社長のことを言葉に出すと、シャルロットの表情が曇っていく。
「うん。僕はね、愛人の子なんだよ」
知っている。俺が昔デュノア社に訪れたときに聞いてしまったのだから。
「引き取られたのが二年前。丁度お母さんが亡くなったときにね、父の部下がやってきたの。それで色々と検査する過程でIS適応が高いことがわかって、非公式ではあったけれどデュノア社のテストパイロットをやることになってね」
シャルロットは恐らく言いたくは無いのだろう話を健気に喋ってくれた。俺は黙って彼女の話を聞くことに専念した。
「父に会ったのは三回くらい。会話は数回かな。普段は別邸で生活をしているんだけど、二度本邸に呼ばれてね。一度目のときは酷かったよ。本妻の人に殴られたからね。『泥棒猫の娘がー!』ってね。参るよね。お母さんもちょっとは教えてくれたらあんなに戸惑わなかっただろうにね」
愛想笑いをつなげるシャルロット、だがその声は乾いていてちっとも笑ってはいなかった。愛想笑いは返せない。それはシャルロットも望んでいるだろう。俺はこの話を全て知っている、そして一度二人に対して説教をしているはずだ……多分覚えてないけど。
「それから少し経って、デュノア社は経営危機に陥ったの」
「デュノア社は量産機ISのシェアが世界三位だったはずだが?」
「そうだけど、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ。ISの開発ってのはものすごくお金が掛かることは知ってるよね。ほとんどの企業は国からの支援があってやっと成り立っているところばかりだよ。それで、フランスは欧州連合の総合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているからね。第三世代型の開発は急務なの。国防の為もあるけど、資本力で負ける国が最初にアドバンテージを取れないと悲惨なことになるんだよ」
確かに現在欧州連合では第三次イグニッション・プランの次期主力機の選定中だ。今トライアルに参加しているのはイタリアのテンペスタⅡ型、イギリスのティアーズ型、ドイツのレーゲン型。今のところ実用的な面ではイタリアが勝ってはいるものの、実稼働データはそこまで取れていないので厳しい状況が続いていると聞いている。セシリアとラウラは実稼働データを取る為にIS学園へと送られてきたと言うことだろう。
「話を戻すね。それでデュノア社でも第三世代型を開発していたんだけど、遅れに遅れての第二世代型最後発だからね。圧倒的にデータも時間も不足していて、なかなか形にならなかったんだよ。それで政府からの通達で予算を大幅にカットされたの。そして、次のトライアルで選ばれなかった場合は援助を全面カット、その上でIS開発許可も剥奪するって流れになったの」
「なるほど、大体わかった。そして注目を浴びるための広告塔として、男装したと……そういうことだな?」
「うん、そう言う事」
シャルロットは俺から視線を逸らし、どこか苛立ちを含んだ声で続けた。
「同じ男子なら日本で登場した特異なケースと接触しやすい。可能であればその使用機体と本人のデータを取れるだろうってね」
「それは俺でも織斑でも良いって事か?」
「うん、どちらでもいいっていわれてる。そこだけは適当だった」
俺にコンタクトを取る為に送り込まれたのか?そしてアルベールがあえて突き放したようにこちらに送ってきたのは、シャルロットに今の会社の経営を全て話させるため。って感じだろう。
「とまあそんなところかな。でも千春さんにバレちゃったし、きっと僕は本国に呼び戻されるだろうね。デュノア社は、まぁ……潰れるかほかの企業の傘下に入るか、どっちみち今までのようには行かないだろうけど、僕にはどうでもいいことかな」
「……少しは楽になったか?」
「うん、話してたら少し楽になったよ。聞いてくれてありがとう。それと今まで嘘ついてごめんなさい」
深々と頭を下げるシャルロット、俺は気がついたら彼女の隣にいて抱き寄せていた。
「辛かっただろうシャルロット」
「うん、辛かった」
俺は彼女の頭を優しく撫でる、彼女がここまで来るのに無理をしていたのは最初から良くわかっていた。もしこのことが世間に広まってしまえば彼女と言う存在は許されないものになってしまう、それだけは避けたいところだ。
だからこそ内部からの圧力をかけて押さえ込んでいる状況を作っている、あとは国での問題と彼女の身分証明書を作り直すだけだ。それさえ済ませてしまえば彼女は彼女のまま生活を送ることが出来る。
「だがあと少しだけ我慢してくれないか?今色々と調整してるんでな」
「え?調整って……何を?」
「シャルロットを女子としてIS学園に再入学させる手続きだ」
千冬、楯無さんとコンタクトを取り、学園長に頭を下げた。そのおかげで彼女本来の生徒手帳などの発行が行われている状態だ、あとは彼女の写真を撮影し正式に登録をするだけだ。
「そんなこと、出来るの?」
「出来るかどうかじゃない、やるんだよ。シャルロットお前の為にな」
シャルロットは戸惑いながらも話を聞いている。いきなりこんなこと言われても信じられないだろう、だが俺は彼女のために最善の選択を行っている状態だ。既に学園長からの許可は貰っている、あとは彼女自身の問題なのだ。
「今このことを知っているのは俺と織斑先生と生徒会長、そして学園長だ。順調に手はずは整っている。だが決定権はシャルロット、君にある。君が決めるんだ。ここに女子として戻ってくるか、本国に戻るか」
「僕は……」
シャルロットに迫られている選択はそう軽いものではない、片方は確実に絶望もう片方は微かな可能性がある。シャルロット……お前はどっちを選ぶんだ?
はい、シャルロットのこと全部ばれました。何なら裸も見られました。
あの名シーンを言われる立場になるなんて、本当黒神うらやまけしからん。デュノアかわいいですよね(脳死)でもセシリアもラウラも楯無も簪も千冬も束も好きです。(箒と鈴はヒロインではないです。)