インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
場所は保健室。時間は第3アリーナとラウラの件から一時間ほど経過していた。ベットの上では治療を受けて包帯を巻かれた凰とセシリアがむすっとした顔であらぬ方向へと視線を向けていた。
「怪我がたいしたこと無くてよかったな」
「こんなの怪我のうちに入ら―――いたたっ!」
「そもそもこうやって横になっていること自体無意味で―――つうっ!」
はぁ……全くこいつ等は、安静にと言う言葉を知らないのか?なんにしてもケガ人が二名、やれやれどうしたものかな。今回の件で間違いなくラウラは問題児扱いされるだろう、こうなってしまってはもはやどうしようもないのかもしれない。
「二人とも大丈夫か!?」
このことを聞いた織斑が保健室に駆け込んでくる、病室ではないが騒がれるのは迷惑だ。その後ろにはデュノアの姿も見える、彼女のその手には飲み物が握られていた。恐らく飲み物を買ってきてくれたのだろう、気が利くのはいい事だ俺も見習わないとな。
「これくらい大丈夫よ」
「問題ありませんわ」
全く、どうしてこいつ等はやせ我慢するんだ。どう見ても大丈夫ではない、見るからに満身創痍だろうが。
「ウーロン茶と紅茶買って来たよ、とりあえず飲んでね」
「ありがとうございますデュノアさん」
「一応貰っておくわ」
凰とセシリアは渡された飲み物を受け取り、ペットボトルの口をあけるなりごくごくと飲み干す。冷たいものを一気に飲むと身体に悪いんだが大丈夫か?
「落ち着いたら帰っても良いって言われてる、しばらく休んでおけ」
そう言って俺はイスに腰をかける。しばらくして、こちらに近づいてくる音が聞こえる。足音だなしかも複数人いや数十人だな、何があった?またラウラが問題でも引き起こしたか?
「なんの音だ?」
ドカーン!と保健室のドアが吹き飛ぶ。ドアは真っ直ぐに俺のほうに飛んでくる……ドア飛ばすなよ。いや簡単に外れるドアもやばいんだが。
「織斑君!」
「デュノア君!」
「黒神さん!」
数十名の女子生徒が雪崩れ込んでくる。ベットが5つもある広い部屋の保健室なのにも関わらず、室内はあっと言う間に人で埋め尽くされた。しかも織斑とシャルロットを見つけるなり一斉に取り囲む、そして一斉に手を伸ばしてきている軽いホラー状態だ。俺のほうは居ないから安心だな。
「なんなんだ!?」
「ど、どうしたのみんな。ちょっと落ち着いて」
「「「これ!」」」
状況が飲み込めない俺達にバン!と女子生徒一同が出してきたのは、学内の緊急告知文が書かれた申し込み書だった。彼女達から張り紙を一枚受け取り、上記に記載されている文章を読み上げる。
「なに?『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、二人組みでの参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは―――」
「そこまででいいですから!とにかく!」
再び伸びてくる手、なるほどな。
「私と組もう織斑君!」
「私と組んでデュノア君!」
「私と組んでくれませんか黒神さん!」
何故いきなり学年別トーナメントの仕様変更があったのかはわからないが、ともかく今手を差し伸べているのは全員一年の生徒だ。学園内で三人しかいない男子ととにかく組もうと、先手必勝とばかりに勇み迫ってきたのだろう。しかし俺は彼女達と組む気はない。
二人を見てみると困ったような表情でこちらを見る、まぁこの場を簡単に収める方法はあるが……シャルロットが心配だ。だが仕方が無い、こうなってしまった場合の助け舟を出してやるとするか。
「悪いけど織斑とデュノアは既にペアを組んでいる、だから二人の事は諦めてくれ」
しーんと静寂に包まれる。織斑とデュノアは「そんなこと決まってないけど!?」という顔でこちらを見てくる。これが1番楽なんだよ、男同士と言うことで納得されやすいからな。
「まぁそういうことなら……」
「男同士ってのも絵になるし……」
とりあえず納得してくれたようだ。女子達は仕方がないと口にしながら保健室を去っていこうとする。いや~これで一つ問題は取り除けたな~安心安心。
「あれ?黒神さんはどうするの?」
チッ。流石にわかるか。君のような勘の良いガキは嫌いだよ。
「じゃあ千春さんでも良いですから!」
「お願いします!」
180度からペア申し込み所を渡されるが俺は一つも受け取る気は無い。ペアと言うことを聞いた俺の中では誰と組むか、既に腹の中で決めていた。
「悪いけど、君達と組むつもりは無いよ」
どうしても組まないといけないやつがいるからな。簪もそうだが彼女は本音と組むと思っている、彼女達の動きを見て分かったが幾分かあわせやすい波長のようなものを感じた。俺が組むやつは昔から何処か抜けているが、勝負には真面目なやつだそいつと組めるのであれば俺は構わない。
「じゃあ誰と組むんですか!?」
「問題児だよ、軍人上がりの大馬鹿だけどな」
その言葉に女子達のから戸惑いと困惑の声が聞こえる。まぁ誰もラウラとは組まないと思っていたからな、丁度良いという事もある。それに色々と教育が必要だからな仕方が無い。
「なんでラウラと組むんだよ!あいつは鈴たちをこんなにまで痛めつけたんだぞ!」
織斑がそう咆え胸倉を掴んでくる、確かにあいつはここまでの事をした。しかしそれを放置するわけには行かないだろう。
「だからこそだ。あのまま一人で戦わせてしまえばお前達もこうなるかもしれない、だからこそ抑止力になる人が必要なんだよ。わかったか織斑、力だけあっても意味が無いんだ。それを制御できてこそ、成長と言えるのさ。人間としてもな」
「っ……そうかも知れないけど!」
「なんだ不満か?それならお前があいつと組むか?そうなればお前は足手まとい扱いだろうが」
そう言うと織斑は黙り食い下がる。全くそう黙るのであれば最初から黙っていれば良いんだ。そうすれば口論にならなくて済む、だから余計な口を挟むな。
一年生の女子達は保健室から去っていき、それから改めてペア探しが始まったようだった。
「はぁ……」
「一夏!私と組みなさいよ!」
「黒神さん、クラスメイトとして私と組みませんか!」
締め上げそうな勢いである。けが人は安静にしていろといったはずなのだがな。デュノアがこちらを睨みつけているが、悪いことでもしてしまっただろうか。だがあの方法だけが唯一の救いだったんだすまない。
「ダメですよ」
そう言って保健室に入ってきたのは山田先生。いきなり声をかけられてビックリしているのは織斑だけでなく、セシリアと凰も驚いていた。
「お二人のISの状態を確認しましたけど、ダメージレベルがCに届いています。当分は修理に専念しないと、後々重大な欠陥を生じさせますよ。ISを休ませる意味でも、トーナメント参加は許可できません」
ダメージレベルがCまで行っていたか、そこまで追い詰められていたとは思わなかったな。そこまでのレベルになってしまえばたとえ修理をしたとしても、期間内に間に合わないだろう。ISは戦闘経験を含む全ての経験を蓄積することで、より進化した形態へと自ら移行させる。その蓄積経験には損傷時の稼働も含まれ、ISのダメージがCに達した状態で起動させると、その不完全な状態での特殊エネルギーバイパスを構築してしまう為、それらは逆に平常時での稼働に悪影響を及ぼす事がある。
簡単に言えば、骨折しているときに無理をすると筋肉を傷める。というやつだ。
「しかしなんでラウラとバトルすることになったんだ?」
「それは……」
「まぁなんといいますか、プライドを傷つけられたからですわね」
実際には祖国を目の前で侮辱されている。それが許せずに戦ったが返り討ちにあってしまったと言うことだ。この結果は頭に血が上って冷静な判断が出来ずに突貫したことが原因だ、それに相手の特徴を理解すると言うことが大切だったのだ。セシリアが分析し凰が仕留める、この考えであればラウラと善戦できただろう。だが今回ばかりはラウラが一枚上手だったと言うことだ。
「まぁ何はともあれ、お前らの命が無事でよかったよ」
二人の頭を優しく撫でる。背後から何か恐ろしい気配を感じるが気のせいだろう。
「千春さん……」
「うん?」
夕食後、部屋に連れ立って戻るなり、シャルロットが口を開いた。心なしかその声は低く感じる。まだ怒っているのだろうか?
「なんで僕と織斑くんを組ませたんですか?あの状況なら僕と千春さんが組んでもよかったじゃないですか」
「あれか。ラウラのことが絡んでるからな、織斑やシャルロットと組むよりもラウラと組んだ方がいいと考えたんだ。確かにシャルロットを織斑と組ませることに不安はある、だけどそうするしか方法がなかったんだ。すまない」
「……そうですか」
「怒ってるのか?」
「怒ってません!だけど頭は撫でて欲しいです!」
あっだから俺がセシリアたちの頭撫でてるときに睨みつけていたのか。なるほど―――
「嫉妬か」
「違います!」
おっと口に出ていたか。怒って頬を膨らましているシャルロットも可愛いものだな。
「もう怒りました!トーナメントでぼこぼこにします」
「それは出来たらの話だな」
悪いが俺も今回は手加減なしで雪片を使わせてもらう、出し惜しみは無しだ。にやりとしながらそうシャルロットに伝えると、ぐぬぬと表情を歪める。
「じゃあ僕と寝てください。」
「それは同じベットで寝れば良いと言う事か?」
「そうです、一緒に寝てください」
うーんそれはいろいろと問題があるんだが、どうしたものか。これを拒否すれば彼女がむすっとするのは確定だろうしな……一つ賭けをするか。
「わかった、ただし条件がある」
「何ですか?」
「コイントスで決めよう、表か裏か選んでくれ」
コイントスほど簡単なことは無い。さあ表と裏どちらを選ぶかな?
「じゃあ裏で」
「よしわかった」
そういって俺は右ポケットから一枚のコインを取り出す。指で上空に弾き飛ばし、手の甲でしっかりと受け止める。
「裏だといいな?」
「僕は賭け事には強いですからね?」
ゆっくりと手をどかすとそこには表と書いてあるコインがあった。残念だがシャルロットの賭けは負けだ。
「残念表だったな。今回は俺に運が回ったらしい」
「そんな……わかりました。おとなしく寝ます」
そういってしゅんとした表情を浮かべて、彼女はベッドへと身をゆだねた。
ここだけの話俺はこの賭けに小細工をした。俺が先ほど弾いたコインは表しかないものだった、つまり最初から彼女に勝ちは無かったと言うことだ。逆に彼女が表と言っていた場合、俺は左ポケットに忍ばせている裏コインを取り出すだけだ。
悪いとは思っている、反省はしていない。
コインは「シェンムー」を元に書きました。