インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
使えるかどうかは別
あれから3時間ほど経過した、この機体には一応黒式の稼動データを流用しているが悪用されないように百通りのロックをかけさせてもらった。試験的ではあったが相手さんは悔しがっていた、プロトタイプに負けるのは悔しいものなのか。しかし第三世代型の実力だとしてどこか感心している様子でもあったな、これはいけるかもしれないな。
まず俺が開発したこの機体の説明をしよう。機体名はミラージュ・デルタ。この機体はラファール・リヴァイヴの設計思想を元に開発したフランス製(作ったのは俺)第三世代型である。特殊装備に関しては一切出来上がっていないので全てリヴァイヴのものを流用している、アサルトカノンにショットガン、近接ブレード、重機関銃などが装備されている。もちろんシールドに関しても従来のものを使用している。この機体の長所はジェネレーターの出力から成される高機動である。運動性に関しても上がっている。機体は高性能であるが武装は従来のもので貧弱である、俺は日本に戻らなければならないので装備を開発することは不可能だ。だが設計図を渡すことは出来る、そこでデュノア社の作業員に取り組んでもらうことにした。
「装備の方はまだ案が出来ていないが、日本に帰った後にそちらに送信させてもらう」
俺はアルベールと共に再び社長室へと戻った、アルベールからは色々と感謝されたがこれは俺のわがままでしていることだ。彼が気にする必要は無い。
「ありがとう千春さん、貴方のおかげでデュノア社が救われるかもしれない。貴方が作ってくれた希望に感謝します」
「いいさ、俺のわがままを聞いてくれたんだ。そこまで言われることではない」
さてと、後は俺が話したかったことを話して帰るとしよう。
「それでアルベール、シャルロットの話なんだが」
「何でしょうか?」
「いや彼女、性に関して敏感というかなんと言うか……急にぐいぐい来たりするんだ」
「メールで窺ったことの話ですね?それで式はいつ挙げてくれるのですか?」
「いやそれはまだ―――そうじゃなくて、彼女にはそういったものの教育などはしていなかったのか?何というか距離感がおかしいんだ」
「そうですね、その手のことは一切していません」
「そうだったか。」
これは参った。正直シャルロットと二人っきりになると凄い来るんだが、それをなんとか改善したかった。だが現実はそこまで甘くなかった、こうなれば俺が教えるしかないのか?いや他にも最適な人物は居るはずだ、例えば山田先生とか千冬とか……千冬に関してはなんか嫌な予感がするけどな。
「それで式は―――」
「まだそこまでじゃないと言っているだろう!」
このあと俺は話を無理やり切り上げて急いで日本へと帰国した。航空機に乗る頃には既に日曜日の午前11時が過ぎようとしていた。航空機のフライト時間は12時間、俺がつく頃には日本は朝の6時になっているだろう。
「これは……かなりまずい状態だな」
何故そう言っているのか、答えは簡単だ現在は日曜日だが日本につけば六月の最終週になる。つまり学年別トーナメントが始まるということだ、それを間に合わなければ俺とラウラは不戦勝となり失格。勿論ラウラが納得するとは思えない、だからこそ余計まずい事態になっている。
「こうなったら千冬に連絡して―――いや駄目だ余計なことをさせるわけにはいかない」
俺は機内のシートに身を預けて日本につくのを待つしかなかった。
「ちなみに私も日本に行くんだけどね」
隣の席にはアルベールが居た。
六月も最終週に入り、IS学園は月曜から学年別トーナメント一色に変わる。その慌ただしさは予想よりも遥かに凄く、今こうして第一回戦が始まる直前まで、全生徒が雑務や会場の整理、来賓の誘導を行っていた。
それからやっと開放された生徒は急いで各アリーナの更衣室へと走っていく。ちなみに男子組にはこの広い更衣室を二人占めである、気前のいいことだ。反対側の更衣室では本来の倍の女子生徒を収容して、大変なことになっているだろう。千春の姿が無いのが気になったがまあいいだろう。
「それにしても凄いな……」
更衣室のモニターから観客席の様子を見る。そこには各国政府機関、研究所員、企業エージェント、その他諸々の顔ぶれが一堂に会していた。
「三年生にはスカウト、二年生には一年間の成果の確認、それぞれ人が来てるからね。一年生には関係ないと思うけど。それでもトーナメント上位に入れればチェックが入ると思うよ」
「それはご苦労なこった」
あまり興味は無かったので話もそこらで聞いていたのだが、シャルルに全て聞かれていたらしい。
「織斑君はボーデヴィッヒさんとの対戦が気になるみたいだね?」
「まあな、しかもペアが千春なんだそれは気になるだろう」
鈴とセシリアはやっぱりトーナメント参加の許可が下りなかった。今回は辞退せざる得ない状況になっていた。普通の生徒なら良かったものの、セシリア達は国家代表候補生でありその中でも選りすぐりの専用機持ちである。その二人がトーナメントで結果を出すどころか参加も出来ないというのは、二人の立場を悪くする要因になるだろう。
「自分の力を試せないっていうのは、正直辛いだろうな」
例の騒動を思い出し、俺は無意識のうちに左手を強く握り締めていた。
「感情的にならないでね。彼女はおそらく例外を除いて一年の中では現時点最強だと思うから」
「例外って言うのは?」
「千春さんだよ、おそらくだけどまだ全力を出していないと思う」
嘘だろ?あいつが一年の中で最強?そんな訳無い……と思いたいな。
「とりあえずこっちの準備は終わってるよ」
「俺も大丈夫だ」
お互いにISスーツへの着替えは済んでいる。俺はIS装着前の最終チェック、シャルルもスーツの確認をしていた。
「そろそろ対戦表が決まるはずだよ」
どういう理由なんだか知らないが、突然ペア対戦の変更が余儀なくされてから従来まで使用していたシステムが正しく起動しなかったらしい。本当なら前日に出来ているはずの対戦表も。今朝から生徒たちが手作りのくじを作っていた。
「一年の部、Aブロックで一回戦一組目なんて運がいいよな」
「どうして?」
「待ち時間に色々と考えなくていいだろ?こういうのは勢いが肝心だ、出たとこ勝負ってやつだ。思い切りのよさでいきたいだろ?」
「そうかもね、僕からしたら1番最初に手の内を明かすことになるから……ちょっと考えがマイナスになってたかもね」
なんともシャルルらしい考えだ。一見正反対の俺たちだからこそ、馬が合うのかもしれない。このペアを考えた千春はここまで考えていたのか?それでもシャルルが俺に合わせてくれていると思う。
ペアでの特訓を重ねて思ったのが、シャルルの性格の良さ優しさだ。俺の周りには居なかったタイプなのだ。多少天使に見えてしまっても仕方ないだろう。
「あっ!対戦相手決まったよ!」
モニターがトーナメント表に切り替わる。俺もそれまでの思考回路を停止して、そこに表示される文章を食い入るように見つめた。
「「―――え!?」」
出てきた文字を見て、俺とシャルルは同時に驚いた声を上げた。噂をすればなんとやらだろうか、一回戦のペアはボーデヴィッヒ・千春のペアだった。
織斑たちが使っているのとは反対の更衣室、人口過密のそこで一人だけ冷気を放っている一角があった。ラウラ・ボーデヴィッヒである。彼女の放つ異様な気配に、すし詰めで生まれた熱も冷めてしまいそうだった。
(初戦の相手はあいつと邪魔をしてきた金髪か、だが私たちに勝てるものなど居ないだろう。それにしても副教官殿は一体何をしているのだろうか?今朝から全く姿を見ない)
ラウラ達が待機している中、千春がしていたことは―――
「じゃあここで観戦させてもらうね」
「わかったから!俺一回戦目だから!急がないといけないから!」
アルベールに絡まれていた。
なんとかアルベールと分かれた千春は急いで更衣室へと向かっていく。手にはいつものスーツではなく着物が握られていた。
(畜生!時間のかかるもの持って来ちまった!気分が上がっていたとは言え……これは急がないと会場がブーイングで染まる、急いで着替えないと!)
なんとか更衣室にたどり着く、そこにはシャルロットと織斑がいた。だがそんな当たり前のことはどうでもいい、俺はいち早く着替えなくてはいけなかった。
「千春さん」
背後から声が聞こえる、声の正体はシャルロットだろう。俺は「なんだ?」といいながら着替えを続けた。
「一回戦目、勝たせてもらいますから」
「あぁ!俺らが勝たせてもらうからな!」
織斑も同じようなことを言う、こちらも手を抜かなくても済みそうだな。
「あぁ全力で来るがいい」
俺は着替えを終えてシャルロットたちと向かい合う。どこまで抵抗できるのか見ものだな。
「ところで何で着物なんだ?」
「それには触れるな!」
ミラージュ・デルタ
ジェネレーター出力 1,500kW
スラスター総推力 40,000k
本体重量 21.3t
全備重量 24.3t
アポジモーター数 10
開発組織 デュノア社(黒髪千春)
開発拠点 デュノア社
所属国家 フランス