インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
俺は千冬姉に似たISもどきに突っ込んでいく。今こいつの武器は千春に向いている、ならばここがチャンスということだ。俺は全力で雪片をそいつへと振りかざしていく。
「お前馬鹿!何できた!?」
千春が何か叫んでいるが俺には聞こえない。俺は千冬姉を真似しているこいつが許せなかった、こいつが千春に放った剣技は俺が最初に習った『真剣』の技だった。初めて見たときの事は今でも正確に思い出せる。
『いいか、一夏。刀は振るうものだ、振られるようでは剣術とは言わない』
ずっしりとした鋼鉄のそれは、初めて手にした俺を試すかのように容赦のない重さを持っていた。
手にしているだけでも汗が滲み、構えようにもその重量故に刃が持ち上がらない。
『重いだろう。それが人の命を絶つ武器のその重さだ』
冷たく、鈍色に煌めくその刀。人を斬るために生まれ、作られ、鍛えられたその存在。
『この重さを振るうこと。それがどういった意味を持つのか、しっかりと考えろ。それが強さということだ』
そう言った千冬姉は厳しく、けれどどこか優しげな眼差しをしていた。何か眩しいものを見るかのように、いつもとは違う表情だった。
その後ろでは、千春が刀を構えて何かをしていたような気がするが。興味がなかった俺は一切覚えていない。
「喰らいやがれ!」
そういって刃を振り下ろそうとした瞬間、そいつは千春ごと雪片を振り回す。そのせいで俺は千春に突撃してしまう形となり、その衝撃で二人まとめて壁に叩きつけられる形になってしまった。
「お前……無計画すぎるだろ……」
「チャンスだと思ったんだよ、それにあれは俺が倒すべきなんだ。雪片を受け継いでいる俺が倒さなくちゃいけないんだ」
そういって俺は再び千冬姉を模したISに突っ込もうと構えなおす、俺が倒すんだ!俺が本当の後継者なんだ!
「……受け継いでいるだと?」
そうして突っ込もうとした瞬間、背中を引っ張られる。振り返ると千春が俺の体をつかんでいた。
「お前馬鹿か!どう考えても今のお前じゃ勝てないだろ!死ぬ気か!?」
「離せ!あいつふざけやがって!ぶっ飛ばしてやる!」
「この……冷静になれ!」
俺の頭に衝撃が伝わる。千春に頭を叩かれたらしい、しかもグーでだ。その痛みに俺は悶絶する、毎日受けている出席簿よりも重い一撃だったからだ。
「お前のISはほとんど機能していない、ここは一旦退くんだ!確かにお前が怒る理由の検討はつく、あれは千冬だ。だが千冬のデータを模して作られたものだ。お前はあいつの力を知っているはずだ、満身創痍のなかろくに刀も振れないお前が突っ込んで良いものではない。」
「とにかく俺はあいつをぶん殴る!その為にはあいつを正気に戻す!」
「今のお前に何が出来る!白式のエネルギーもろくに残っていない状況の中で、どう戦うつもりだ!その一振の雪片で何が出来る!」
「それは……」
確かに千春の意見はもっともだ、あの黒いISもどきも恐らくほとんどエネルギーが残っていない状態だろう。だがそれよりもこっちのほうがエネルギーが枯渇している、今の白式には一撃はおろか装甲展開するエネルギーすらなかった。
「お前はあいつを千冬の真似だと言ったが、お前も変わらないだろ!お前の戦闘スタイルはほとんど千冬を真似たものだ、そんな奴が真似事をするななどと言うな!」
ごもっともだ、確かに俺の戦闘スタイルは千冬姉を真似ている。それはしっかりと自覚していた……だからその言葉を聞いた時、言葉を上手く出せなかった。
『非常事態発令!トーナメントの全試合は中止!状況をレベルDと認定、鎮圧のため教師部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難すること!繰り返す!』
「聞いての通りだ、俺らがやらなくても状況は収拾される。だからさっさと下がれ!」
「だから無理に危ない場所に飛び込む必要はないってか?いつまでも子供扱いするな!」
「なっ……」
確かに千春の言っていることは正しいのかもしれない、だけど俺はそれを拒否する。
「これは俺がやりたいからやるんだ。他の誰かがどうだとか、知ったことか。大体こんなところで引いたらそれは俺じゃない、織斑一夏じゃないんだよ」
「何を言っているか理解できない……」
「だから俺は―――」
それ以上言葉は続かなかった。
「もういい、お前は寝てろ」
そう言って千春は俺の腹部にボディーブローを叩き込む、その衝撃と破壊力に俺の意識は沈んでいった。
前回のようにはさせない、こいつには一度力の差をしっかりと教え込む必要がある。勇気と無謀は違う、こいつが先までやろうとしていたことは勇気ではない。ただの無謀だ。意識が沈んだのを確認した俺は、織斑を抱えて戦線を離脱しようと試みる。
デュノアはこちらが逃げれるようにと、ライフルなどで牽制攻撃を繰り返している。だがそれはほとんど無意味だろう、あれが全盛期のころのデータを使用しているのであれば、弾丸などいともたやすく切断されている。その証拠に振り返ると、俺のすぐ後ろでその刃を振り下ろそうとしていた、これは勝てないそう本能が叫んでいる。
たとえデュノアと共闘したとしてもあっという間に押し切られ、二人まとめて吹き飛ばされるのがオチだ。
「千春さん!」
「デュノア、織斑を頼んだ!」
逃げ回っていても埒が明かない、しかも動けない馬鹿を背負っている状態だ。こんなところでお互いに死ぬ気はない、ならば荷物は別に預けてしまえばいい。
織斑をデュノアへと投げ渡す、突然のことだが彼女はしっかりと対応してくれた。さすがと言ったところだろう。これで被害者は一人で収まるな。俺は相手へと突進し吹き飛ばす、しかし俺よりも大きな偽者はそこまで吹き飛ばずに、しっかりと着地しこちらに刃を向ける。
勝負の間合い、ここから少しでも進めば取り返しはつかないだろう。だが既に後退のねじをはずしている俺にはどうでもよかった。
「そこまで殺りあいてえならしっかりとサシでやってやるよ!千冬もどき!」
するとそれは突然剣術の構えを変えた。
おいおいマジかよ……最初から殺る気だったってことか。相手は全盛期の千冬のデータをコピーした模造品、劣化だとしてもそれは千冬に変わりないか。
「ルールは……どちらかが降参を認めるまでだったな」
昔俺と千冬がよくやっていた試合形式だった、少しルールに違いはあるがここまでコピーされているとは思わなかったな。変にまじめなところまでコピーしやがったか、こんなに面倒だと思ったのは久しぶりだ。
どのくらいかというと束が何度も抱きついてくるくらいだ、それも勢いよく。毎回突撃させるのと同じくらい面倒だった。
「千春!今すぐにそこから避難しろ!」
私は今冷静さを省いている状態だ。アリーナの中心には私を似せた人形と、それからデュノアと一夏を逃がす為に犠牲となるであろう千春の姿があったからだ。
あと数分もすれば教師で編成された部隊が到着する、しかしそれまでに彼が無事でいるかどうかは別だ。急いで私は彼に避難勧告をする。
『いや~出来てたらもうしてるんだよな。どうもコイツ俺だけは逃がさないつもりらしいからな、下手に動けないってことだ。それに俺も腹は決まったところだからな』
もう既に手遅れであった、彼はあれを倒す。その為に残ってしまった。二つの黒い機体を見ればそれはまるで―――幼いころの私と千春であった。よく剣道において互いに切磋琢磨した、だがそれは昔のこと互いに腕は落ちてしまっている状況。そんな彼が私に?自分自身でいうのはなんだが彼が正規のルールで勝つことは絶対ないだろう。彼が私に勝ったことなど一度もないのだ、ならば残された道は一つ。黒式に内蔵されているすべての装備を使って時間を稼ぐことだ。それ以外は思いつかない。
「クッ……ならば教師部隊が乗り込むまで耐えてくれ……やばくなったらすぐに逃げろ!良いな!」
『わかってるよ、万が一俺に何かあったらそのときは頼んだぞ』
私はここで彼が無事に帰ってくることを祈ることしか出来なくなってしまった。
耐ええられたら良いな、俺は今まで一度も千冬に勝ったことはない。それは剣の道でも勉学でも、一度もあいつより上を取ったことはない。そんな俺が果たしてこれに勝ち耐え切ることが出来るだろうか?それはやってみなければわからない。
「俺も無謀か……」
そんなことを良いながらも俺は雪片を展開し構える、同じように千冬(偽)も構えはじめる。さて死線を越えるとしますかね!